日本泌尿器科学会雑誌
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88 巻, 3 号
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  • 小松 秀樹
    1997 年 88 巻 3 号 p. 375-385
    発行日: 1997/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
  • 大久保 和俊, 石戸谷 哲, 前田 浩, 鈴木 裕志, 荒井 陽一
    1997 年 88 巻 3 号 p. 386-390
    発行日: 1997/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 上部尿路上皮内癌には確立された治療法がない. 今回上部尿路上皮内癌に対し積極的にBCG腎盂内注入療法を行いその効果を検討した.
    (方法) 1993年8月より1996年1月までに上部尿路上皮内癌と診断した8例9腎を対象とした. 診断基準は1) 自排尿の細胞診が陽性, 2) 膀胱, 尿道の多部位生検で上皮内癌を認めない. 3) 尿路造影で上部尿路に異常がない, 4) 腎盂尿細胞診が同一側で2回以上連続で陽性, のすべてを満たすものとした. 局所麻酔下逆行性に生食50mlに懸濁したBCG 40mgを自然滴下で注入した. 週1回の注入で6回を1コースとした. 1コースで細胞診が陰性化しなかった場合には再評価の上もう1コース追加した. 注入期間中はイソニアジド200mg/日を経口投与した.
    (結果) 9腎中7腎 (78%) は尿細胞診が陰性化した. 陰性化しなかった2腎のうち1腎は, 計3コース行うも自排尿細胞診は陰性化せず経過観察中である. 残りの1例は両側治療例で, 陰性化しなかった側に腎腫瘍を合併していた. 腎尿管摘除を行い, 現在自排尿の細胞診は陰性である. 注入期間中6例 (75%) に38℃以上の発熱を, 4例 (50%) に膀胱刺激症状を認めた. 1例は高度の膀胱刺激症状のため途中で注入を中止した.
    (結論) BCG腎盂内注入療法は上部尿路上皮癌に対して有効かつ安全と思われた.
  • 圧-時間曲線およびATPase染色法による検討
    相沢 正孝, 浪間 孝重, 中川 晴夫, 折笠 精一
    1997 年 88 巻 3 号 p. 391-398
    発行日: 1997/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 骨盤底筋群に内蔵された外尿道括約筋 (PFM) と, 骨盤底筋群とは独立した尿道周囲横紋筋性括約筋 (PUS) の収縮特性について検討した.
    (方法) 雄雑種成犬を使用し, 運動学で用いられる力―時間曲線を応用した圧―時間曲線を用いて比較検討した. さらにATPaseの染色により, それぞれの筋線維組成について検討した.
    (結果) 片側陰部神経刺激に対し, 各括約筋のM波振幅および収縮差圧は, 刺激強度依存性に増大し, 再現性も良好であるため, 圧―時間曲線を用いた検討が可能であった. 尿道収縮差圧は, PUS部尿道がPFM部尿道より有意に高かった. 圧―時間曲線から得られたパラメーターとして, PUSの筋電図反応時間は, PFMより有意に長く, 運動反応時間, 圧ピーク時間は有意に短く, 力発生率も有意に速かった. 組織化学的検討では, PUSは速筋成分が約7割を占めていたのに対し, PFMは速筋成分と遅筋成分の割合はほぼ同程度であり, 圧―時間曲線の結果を裏付けた.
    (結論) 以上から, 犬のPUSとPFMの収縮特性は明らかに異なり, PUSは速く収縮するのに対し, PFMはゆっくり収縮する事が示唆された. また圧―時間曲線を用いる事で, 横紋筋性尿道括約筋の筋線維組成を, ある程度推測可能であると思われた.
  • 中川 修一, 渡邉 泱, 渡辺 真, 野本 剛史, 中村 晃和, 杉本 浩造, 斉藤 雅人, 小島 宗門, 北村 浩二
    1997 年 88 巻 3 号 p. 399-405
    発行日: 1997/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 基本健康診査を受診した55歳以上の男子3,749人のうち前立腺がん検診を希望した2,387人を対象に, 前立腺特異抗原 (PSA) 濾紙法をスクリーニング検査に用いた前立腺がん検診を試行した.
    (対象と方法) PSAの測定は Delfia PSA 測定キットを用い, 静脈血濾紙法PSA測定で行った. PSAのカットオフ値は4.0ng/mlとし, 4.1ng/ml以上を要精密検査とした. 精密検査は10.1ng/ml以上は直腸内指診 (DRE), 経直腸的超音波断層法 (TRS) を行った上で, 必ず超音波穿刺術による無作為6ヵ所生検を施行した. 4.1~10.0ng/ml (グレーゾーン) はDRE・TRS・PSA density (>0.15) のいずれかでがんを疑う場合に生検を行った.
    (結果) 4.1ng/ml以上の者は全受診者の7.1%にあたる170人で, そのうち150人 (88.2%) が実際に精密検査を受診した. 要生検者106人中102人に生検を行い, 28人 (全受診者の1.2%) に前立腺がんを検出した. その内訳は臨床病期B17人 (60.7%), C5人 (17.9%), D6人 (21.4%), 高分化16人 (57.1%), 中分化9人 (32.1%), 低分化3人 (10.7%) と, 高分化の早期がんが多かった.
    (結論) 本検診の特徴は, (1) PSA濾紙法を単独でスクリーニング検査に用いた, (2) 基本健康診査に相乗りしたことで高い受診率を得た, (3) 個別検診という新しい受診方法で行えた, ことであった. 本検診試行は, 将来国家レベルでの老人保健事業として前立腺がん検診を行うことの可能性を, 具体的に立証するものであると考えられた.
  • その診断的役割の検討
    能登 顕彰, 藤目 真, 磯部 英行, 和久本 芳彰, 川地 義雄
    1997 年 88 巻 3 号 p. 406-413
    発行日: 1997/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) CA19-9は膵癌などで診断価値の高い腫瘍マーカーとして知られているが最近では尿路上皮癌においても血清及び尿CA19-9値の上昇をみた症例の報告が散見される. 本研究では尿路上皮癌における尿及び血清CA19-9の測定と免疫組織染色を行ない, その診断的有層既について検討することを目的とした.
    (対象) 尿路上皮癌として膀胱癌32例・腎盂尿管癌4例 (G1 10例, G2 14例, G3 12例), 対象群として腎癌5例, 前立腺癌13例, その他の悪性腫瘍5例, 前立腺肥大症10例, 尿路結石6例, その他の良性疾患7例の計82例を対象とした.
    (方法) 早朝一回尿及び血清CA19-9値を Centocor 社製CA19-9キットを用いてEIA法により測定した. 尿値については同一検体中のクレアチニンで補正した値を用い, 単位をU/mg creatinine (Cr) で表し, 尿細胞診との比較も行った. 手術標本についてはオリスエ業社製ヒスト19-9キットを用いてABC法により免疫組織染色を行なった.
    (結果) 血清, 尿のカットオフ値を各々37U/ml, 100U/mg Crとした. 尿CA19-9値は尿路上皮癌で390.9±934.1U/mg Crと対象群91.48±20.0U/mg Crに比べ有意に上昇し, G1, G2症例がG3症例により陽性率, 測定値とも高い傾向を示したが, 血清値ではカットオフ値を超えたものは27.8%に過ぎなかった. また, 免疫染色を行なった尿路上皮癌21例全例にCA19-9陽性細胞を認め, 浸潤癌では陽性細胞数が著しく減少していたのに対し, 表在癌では16例中8例で90%以上の細胞にCA19-9の発現がみられた. 尿細胞診との比較でも尿CA19-9値は高分化癌でより高い陽性率を示した.
    (結論) 尿CA19-9値の尿路上皮癌における腫瘍マーカーとしての有用性が示唆され, 特に分化度の高い腫瘍においては測定値も高く尿細胞診より高い陽性率を示したため, これらの癌の診断に有用であると思われた.
  • 山本 晶弘, 鳴尾 精一, 香川 征, 山本 修三, 炭谷 晴雄, 大森 正志, 平石 攻治, 桜井 紀嗣, 桑原 守正
    1997 年 88 巻 3 号 p. 414-419
    発行日: 1997/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) Kock pouch の輸入脚合併症の経験から, われわれは Le Due-Camey 法による尿管回腸吻合術を施行してきた. 今回その長期成績について検討した.
    (対象と方法) 1989年より1994年までの間に本法による尿管回腸吻合術を施行し, 術後2年以上経過観察できた39例 (73 renal units) を対象とした. 男性32例, 女性7例で, 年齢は34~77歳 (平均61.3歳), 経過観察期間は24~71ヵ月 (平均44.8ヵ月) であった. 症例は Kock pouch 28例 (52 renal units), ileal neobladder 11例 (21 renal units) であった. 吻合は Le Duc-Camey の原法に従い, また操作を容易にするため reservoir 前壁の約5cmの window を通して行った. 原則として術後1年目以降, 年1回DIPを施行した.
    (結果) 術後2~5年の最終のDIPによる評価では68 renal units (93.1%) に水腎症を認めなかった. 水腎症は5 renal units (6.9%) に認め, うち3 renal units (4.1%) は軽度, 1 renal unit (1.4%) は中等度, 1 renal unit (1.4%) は吻合部狭窄による高度水腎症を認めた. 上部尿路への逆流は全例認めず, その他の本法に起因した合併症も認めなかった.
    (結論) Le Duc-Camey 法は手技的に簡単で, 逆流防止も満足すべき結果であり, また長期的にみても安定していることより, Kock pouch あるいは ileal neobladder の尿管回腸吻合術として有用性が高いと考えられた.
  • 山本 雅司, 山田 薫, 平田 直也, 平山 暁秀, 柏井 浩希, 百瀬 均, 末盛 毅, 塩見 努, 平尾 佳彦, 岡島 英五郎
    1997 年 88 巻 3 号 p. 420-426
    発行日: 1997/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 我々は, 1991年より挙児を希望する脊髄損傷患者に対し, 電気射精 (EE) を施行してきた. 今回, EEの成績およびEEにて得られた精液を用いての人工授精の成績について検討した.
    (対象・方法) 1991年5月より1995年10月までにEEを施行した脊髄損傷患者69例を対象とした. EEには Seager NRH Model 12を用い, 順行性射精の誘発率, 得られた精液の所見, 副作用について検討した. 人工授精としては, 配偶者間人工授精 (AIH), 体外受精 (IVF), 卵細胞質内精子注入法 (ICSI) を施行した. AIHは当院にて, IVFおよびICSIは府中病院不妊センターにて行った.
    (結果) 69例に対しEEを施行し, 60例 (86.9%) に順行性射精を誘発できた. 下位型膀胱麻痺を有する症例の順行性射精の誘発率は58.3%と低下していた. EEで得られた精液の量は平均1.0ml, 精子濃度は平均40×106ml, 運動率は平均9.4%であった. 副作用としては, 自律神経過反射が21例, 下腹部痛が17例にみられたが, 重篤なものはなかった. 現在までにAIHを13例80回, IVFを1例2回, ICSIを4例5回の計87回の人工授精を施行し, AIHを施行した2例, ICSIを施行した1例において挙児に成功した.
    (結語) 脊髄損傷患者に対するEEは手技が簡便で, 順行性射精の誘発率が高く, 副作用のコントロールも容易である. 適切な人工授精法との併用により挙児の希望に応え得る有用な方法と考えられた.
  • 鈴木 康之, 大石 幸彦, 山崎 春城, 遠藤 勝久, 斑目 旬, 吉野 恭正, 大西 哲郎, 高坂 哲, 絹川 直子
    1997 年 88 巻 3 号 p. 427-433
    発行日: 1997/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 腹圧性尿失禁に対するホルモン補充療法 (H. R. T.) の効果を検討した.
    (対象と方法) 対象は閉経後の腹圧性尿失禁患者で1日失禁量が15g以下の軽症例25名 (54歳から73歳, 平均65.5歳) である. これらの患者に結合型エストロゲン0.625mg/dayと酢酸メドロキシプロゲステロン2.5mg/dayを4ヵ月間投与し, 1日の失禁量, 自覚症状ならびに尿流動態検査 (尿道内圧測定) での他覚所見の変化を比較した. 評価時期は投与前と投与後2ヵ月目, 4ヵ月目とした.
    (結果) 4ヵ月後に5名 (20.8%) で自覚症状と他覚所見ともに改善し, 6名 (25.0%) で自覚症状のみ改善し, 2名 (8.3%) で他覚所見のみ改善し, 残り11名 (45.8%) は不変であり, 悪化した症例はなかった. 副作用は8例で出現し1例は不正性器出血と帯下にて投与中止となり, 1例は乳房緊満にて減量投与となったが, 残り6例は投与継続できた.
    (結論) H. R. T. は, 腹圧性尿失禁に対する他の保存療法より優れているとは断定できなかったが, 保存療法の治療手段が増える点で意義あるものと考えられた.
  • 田代 和也, 岩室 紳也, 中條 洋, 波多野 孝史, 古田 昭, 野田 賢治郎, 川島 淳
    1997 年 88 巻 3 号 p. 434-438
    発行日: 1997/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的と背景) ESWL後に残石なしとなった症例の上部尿路結石の再発率を知るため検討を行った.
    (対象と方法) 対象は1989年7月から1994年12月までにESWLを施行し, 残石なしとなった単一部位結石で6ヵ月以上経過観察しえた395例であった. 再発確認は原則KUB, 時に超音波断層で行った. 検討項目は全体の再発率および性別, 患側, 結石の数, 部位, 大きさ, 結石既往症の有無, 基礎疾患の有無, 水腎症の有無に関して検討した. また, 同時に対側再発率についても検討した. 再発期間は残石なしとなった日から起算し再発が確認された日までの実測非再発率で算定した.
    (結果) 全体の同側非再発率は1年96.5%, 3年78.8%, 5年65.3%であった. 対側の非再発率は1年98.1%, 3年92.5%, 5年87.2%であった. 因子別5年非再発率は結石の数で単発71.1%, 多発31.6% (p<0.01), 既往例別ではなしが77.1%, ありが35.7% (p<0.01), 基礎疾患別でなしが67.7%, ありが35.7% (p<0.01) で統計学的有意差を認めた. しかし, 性別, 患側, 部位, 大きさ, 水腎症の有無は同側再発に影響を認めなかった.
    (結論) 上部尿路結石のESWL後の同側再発では結石の数, 既往例, 基礎疾患のあるものが危険因子と考えられた. また, ESWLは従来の開放性手術に比べ再発率を増加させる可能性が危惧された.
  • 石田 武之, 小泉 久志
    1997 年 88 巻 3 号 p. 439-442
    発行日: 1997/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は48歳女性. C型肝炎の経過観察中にCEA値の上昇がみられ, 腹部超音波検査にて膀胱内の腫瘤を指摘された. 既往歴では, 1957年 (当時10歳) に尿路結核のため左腎摘除術および萎縮膀胱に対して回腸を利用した膀胱拡大術を受け, 1990年に, 膀胱拡大術に利用された余剰回腸の切除術が施行された. 経尿道的に膀胱生検を施行し, 腺癌が認められ, その後遊離回腸切除を含め膀胱全摘除術および右尿管皮膚瘻術が施行された. 病理組織学的には, 周囲にかなり広汎に異型上皮を伴った高分化型の腺癌が, 回腸部分を中心に認められた. 術後CEA値は正常化している. 回腸を利用した膀胱拡大術後に悪性腫瘍が発生した症例は, 本邦では自験例が9例目であり, 術後期間では自験例が38年間と報告例中最も長期間であった. 全症例が, 原疾患が結核であり, 組織型は発生部位に依らず全症例が腺癌であった. 摘出標本のマッピングを行ない, 病理組織学的に腺癌細胞周囲に異型腺細胞および腸上皮化生が確認された. 若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 若杉 英子, 石井 徳味, 秋山 隆弘, 栗田 孝, 門脇 照雄, 植村 匡志
    1997 年 88 巻 3 号 p. 443-446
    発行日: 1997/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    患者は70歳, 男性である. 1991年10月, 右陰嚢内に腫瘤を触知し, 右精巣上体腫瘍の診断にて手術を施行した. 組織学的にはアデノマトイド腫瘍であった. 1992年6月, 右鼠径部に腫瘤を触知し, 腫瘤摘出術を施行した. 組織学的には悪性中皮腫と診断されたため, 後腹膜リンパ節郭清術および放射線療法を施行した. 1993年5月, 右陰嚢内, 陰茎周囲に腫瘤が再発し, 全除精術を施行した. 組織学的には悪性中皮腫の再発であった. 同年9月, 皮弁近傍に悪性中皮腫が再発, また11月には肺転移巣も認めた. 化学療法により皮膚転移巣は軽快したが, 肺転移巣は不変であった. 休薬期間中に病状が悪化し, 死亡した. 精巣固有鞘膜より発生する悪性中皮腫は極めて稀である. また予後が極めて不良であり, 可及的早期に拡大根治手術を含めた集学的治療が必要であると考えられた.
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