(目的) 健常者の末梢血液中にはケラチン19は存在せず, もし血液中から検出されれば上皮性癌細胞が存在しているものと考えられる. そこで nested RT-PCR法を用いて, 種々の尿路性器悪性腫瘍患者の末梢血液からケラチン19mRNAの発現の有無を検討し, 転移との関連を検討した.
(方法) ヒト尿路性器癌培養細胞12種類, 泌尿生殖器担癌患者39例, 健常者9例を対象とし, 患者および健常者の末梢静脈から血液6mlを採血し, Ficoll を用いてリンパ球層を回収した. そして培養細胞, リンパ球層沈渣から total RNAを抽出し, ケラチン19のプライマーを用いて nested RT-PCRを行い, サザンプロッティングで確認した.
(結果) 用いた培養細胞は全て陽性で, 検出率は健常者リンパ球1×10
7個に対して腎癌細胞TOS-1は1個の混入でもケラチン19mRNAが検出され, 膀胱癌細胞KK47では1×10
6個の混入ではじめてケラチン19mRNAが検出された. 健常者9例の末梢血は全例陰性であった. 尿路性器悪性腫瘍患者の末梢血では転移のみられない症例よりも, 転移を有する症例のほうが nested RT-PCRの陽性率が高く, またリンパ節のみの転移よりも他の遠隔転移を有する症例のほうが陽性率が高かった. また, 短期間の観察であるが, 転移を有する場合でも nested RT-PCR陽性のほうが予後不良であった. 疾患別では, 精巣腫瘍は検出されにくく陰茎癌は検出されやすい印象であった.
(結論) RT-PCR法を用いたケラチン19mRNAの末梢血よりの検出法は尿路性器腫瘍にも利用できる.
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