日本泌尿器科学会雑誌
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89 巻, 1 号
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  • 筧 善行
    1998 年 89 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 1998/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
  • 鈴木 央, 吉田 和弘
    1998 年 89 巻 1 号 p. 14-22
    発行日: 1998/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 本研究はヒト腎細胞癌における腫瘍内毛細血管の微細構造を観察し形態的特徴を検討した.
    (対象と方法) 30例の腎細胞癌患者から得られた腫瘍組織についてヘマトキシリン・エオジン染色およびα-アクチン染色を行い光学顕微鏡にて観察した. また, 酢酸ウラン・硝酸鉛二重染色および periodic acid thiosemicarbazide gelatin methenamine silver 染色を行い透過型電子顕微鏡を用いて観察した.
    (結果) 正常腎組織において, 毛細血管は光顕的に尿細管壁周囲に束状に見られるのに対し, 腎癌組織内では集簇的にあるいは点在性に観察された. α-アクチン染色によって陽性を示す周皮細胞は正常毛細血管に比較して腎癌組織では集簇して増生している傾向を示した. 電子顕微鏡的観察において, 腫瘍内毛細血管の特徴は内皮細胞の有窓構造が未発達であるほか, 周皮細胞に多数の細胞突起が観察された. また, 基底膜が多層性を示すなどの多様性がみられた. われわれは特に周皮細胞の細胞突起に着目して, 多く存在するもの (I型) と突起構造の乏しいもの (II型) の2型に分類して検討した. 総計324血管を電顕的に分析した結果, 多血管性症例ではI型が, 乏血管性症例ではII型がそれぞれ優位であった.
    (結論) 周皮細胞の多様な微細構造は正常組織と腎癌組織内の血管における質的相違をあらわしているものと思われる.
  • 邵 仁哲
    1998 年 89 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 1998/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 産業用爆薬を応用した爆轟理論は, 数mgという極微量の爆薬を用いる微小発破においても有効であることが, 私たちの研究により証明されている. この理論を用いて, 微小発破による衝撃波の圧力 (爆轟圧力) と破砕される結石の体積との関係について検討した.
    (対象と方法) ESWL単独療法にて治療された腎結石症例472例を対象とした.
    (結果) ESWL単独療法の有効性の予測に対して, 結石の長径が15mm以下 (有効率95%) と25mmを越える結石 (有効率8%) に関しては, 簡単に測定できる結石の長径が良い指標となった. しかしながら, 長径が15mmから25mmの結石に関しては, 体積が良い指標となり6cm3を境に治療効果に明らかな差が認められた. また, 微小発破による衝撃波の圧力 (爆轟圧力) と破砕される結石の体積との関係式からは, 6cm3の体積の結石が破砕される際の爆轟圧力は80MPaであった.
    (結論) 以上のことから, 現行のESWLの最大焦点圧力は80MPaから120MPaであるので, ESWL単独で破砕される結石の最大体積は6cm3と考えるのが妥当であると思われた.
  • 古谷 雄三, 秋元 晋, 赤倉 功一郎, 伊藤 晴夫
    1998 年 89 巻 1 号 p. 29-32
    発行日: 1998/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 非領域表在リンパ節腫瘍をみた前立腺につき治療法, 予後を検討した.
    (対象と方法) 1986年より1996年までに千葉大学泌尿器科で経験した stage D2前立腺癌205例のうち非領域表在リンパ節腫脹を主訴とした9例を対象とした.
    (結果) 全例で前立腺特異抗原 (PSA), 前立腺酸性フォスファターゼが高値を示し直腸診にて9例中8例に前立腺の硬結を触れた. 転移リンパ節に対しPSAに対する抗体を用いた免疫組織化学が前立腺癌の診断に有用であった. 内分泌療法が奏功し長期生存する例もあった.
    (結論) 表在性リンパ節を触れる高齢者は前立腺癌を念頭に置き, 診断, 治療を進めるべきと考えた.
  • 金田 隆志, 星 宣次, 毛 厚平, 高橋 とし子, 鈴木 謙一, 佐藤 信, 折笠 精一
    1998 年 89 巻 1 号 p. 33-42
    発行日: 1998/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 健常者の末梢血液中にはケラチン19は存在せず, もし血液中から検出されれば上皮性癌細胞が存在しているものと考えられる. そこで nested RT-PCR法を用いて, 種々の尿路性器悪性腫瘍患者の末梢血液からケラチン19mRNAの発現の有無を検討し, 転移との関連を検討した.
    (方法) ヒト尿路性器癌培養細胞12種類, 泌尿生殖器担癌患者39例, 健常者9例を対象とし, 患者および健常者の末梢静脈から血液6mlを採血し, Ficoll を用いてリンパ球層を回収した. そして培養細胞, リンパ球層沈渣から total RNAを抽出し, ケラチン19のプライマーを用いて nested RT-PCRを行い, サザンプロッティングで確認した.
    (結果) 用いた培養細胞は全て陽性で, 検出率は健常者リンパ球1×107個に対して腎癌細胞TOS-1は1個の混入でもケラチン19mRNAが検出され, 膀胱癌細胞KK47では1×106個の混入ではじめてケラチン19mRNAが検出された. 健常者9例の末梢血は全例陰性であった. 尿路性器悪性腫瘍患者の末梢血では転移のみられない症例よりも, 転移を有する症例のほうが nested RT-PCRの陽性率が高く, またリンパ節のみの転移よりも他の遠隔転移を有する症例のほうが陽性率が高かった. また, 短期間の観察であるが, 転移を有する場合でも nested RT-PCR陽性のほうが予後不良であった. 疾患別では, 精巣腫瘍は検出されにくく陰茎癌は検出されやすい印象であった.
    (結論) RT-PCR法を用いたケラチン19mRNAの末梢血よりの検出法は尿路性器腫瘍にも利用できる.
  • 逆流根治術単独群と逆流根治術, 膀胱拡大術, スリング手術併用群との比較
    辻 克和, 斉藤 政彦, 近藤 厚生, 成島 雅博, 小谷 俊一
    1998 年 89 巻 1 号 p. 43-49
    発行日: 1998/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 二分脊椎症での膀胱尿管逆流と尿失禁の発生率は高度である. これらに対する手術成績を逆流根治術 (クロスオーバー法) のみで治療した群 (単独群) と逆流根治術 (折笠法) と膀胱拡大術を併用した群 (併用群) の2群に分け後ろ向きに解析した.
    (対象と方法) 単独群は17例, 併用群は21例で, 後者の11名は膀胱頚部スリング手術も同時に受けた. 逆流消失率, 膀胱容量, 膀胱コンプライアンス, 手術合併症, 腎機能を比較検討した. また, 郵送アンケート法により自覚的評価を調査した.
    (結果) 逆流消失率は単独群79%及び併用群86%で統計的有意差はなかった. 膀胱容量と膀胱コンプライアンスは, 併用群では著明に改善したが, 単独群では僅かにしか改善しなかった. 手術合併症は単独群では尿管閉塞が1例, 併用群では脳室腹腔シャントの再手術4例, 不全イレウス3例, 膀胱結石1例であった. 総腎機能が低下したのは単独群のみであった. アンケート調査の結果では腎盂炎の頻度は併用群で単独群より少なかったが, 現在の導尿回数, 尿失禁の程度, 尿失禁量の変化, 手術満足度に対する自覚的評価では2群間で差は認めなかった.
    (結論) 手術合併症が併用群でより多く発生したが, 膀胱容量と膀胱コンプライアンスの改善は有意に優れていた. 二分脊椎症患者の逆流, 尿失禁の改善に保存的治療が無効なら逆流防止術と膀胱拡大術とスリング手術を含む手術療法を積極的に施行することの重要性が示唆された.
  • 尾山 博則, 福井 巌, 前田 康秀, 吉村 耕治, 前田 浩, 泉谷 敏文, 山内 民男, 河合 恒雄, 石川 雄一, 山本 智理子
    1998 年 89 巻 1 号 p. 50-53
    発行日: 1998/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は36歳主婦. 偶然発見腎腫瘍精査目的にて来院. 腹部CTで腫瘍は30mm大, 円形, 内部均一で造影効果が高いものの, 腎動脈造影では hypovascular であった. 腎細胞癌を疑い, 根治的腎摘除術を施行した. 病理組織学的には腎血管周皮細胞腫であった. 免疫組織化学的検索では, 周皮由来の腫瘍細胞は強陽性であったが, 抗第8因子抗体には陰性であった. 自験例は腎原発の血管周皮細胞腫としては本邦6例目で偶然発見腎腫瘍としては第1例目と考えられる.
  • 吉田 哲也, 金 哲將, 小西 平, 吉貴 達寛, 朴 勺, 友吉 唯夫
    1998 年 89 巻 1 号 p. 54-57
    発行日: 1998/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    53歳の男性. 1965年に尿路結核に対し, 右腎摘出術, 回腸利用膀胱拡大術 (Pyrah 法) を施行された. 1996年3月に他院にて, 膀胱と遊離回腸の吻合部に発生した腫瘍に対し経尿道的切除術が施行された. 病理組織学的診断は, 低分化型粘液産生性腺癌であり, 浸潤性を認めたため当院紹介された. 同年5月遊離回腸全摘術を含めた膀胱部分切除術, 回腸利用膀胱拡大術, 新尿管回腸吻合術を施行した. 5cm大の腫瘍は, 膀胱回腸吻合部と遊離回腸末梢部に存在した. 病理組織学的診断はいずれも低分化型粘液産生性腺癌であった. 術後12ヵ月を経た現在腫瘍再発の徴候は認めていない. 回腸利用膀胱拡大術後の腺癌はまれであり, この症例は日本で8例目の報告であると考えられる.
  • 遠藤 文康, 松本 信也, 中 朗, 今田 世紀, 立川 隆光, 金子 昌司, 石井 泰憲
    1998 年 89 巻 1 号 p. 58-61
    発行日: 1998/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    57歳, 男性. 右側腹部疝痛発作として発症した. 逆行性尿路造影, CT, MRI等の画像検査で右尿管の腫瘍と診断された. 細胞診では悪性細胞を検出しえなかったものの, 術前検索では良性腫瘍と診断が確定せず尿管癌を想定して腎尿管全摘術を予定した. 腫瘍は周囲組織に浸潤していたものの病理組織所見からは, 悪性像のない炎症所見のみから構成されていたため尿管原発の inflammatory pseudotumor と診断された.
    本疾患は肺, 肝に発生する腫瘤病変であり, その頻度は非常に稀である. 尿路でも腎, 膀胱に発生する例は報告されているものの尿管原発例は非常に稀な疾患であった. 肺や肝の症例では自然消退例や副腎皮質ステロイドによる消失例が報告されているが, 尿路発生例での自然史は不明で, 悪性との鑑別も困難であることも多く手術療法が必要であると思われた.
  • 相川 雅美, 榛葉 隆文, 土橋 靖志, 井上 純雄, 葛原 敬八郎, 大坪 修
    1998 年 89 巻 1 号 p. 62-65
    発行日: 1998/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    馬蹄腎ドナーからの生体腎移植を経験したので報告する. レシピエントは31歳男性で, 慢性腎炎による腎不全のため1年前より血液透析を行っている. ドナーは55歳の父親で馬蹄腎を有しており, 腎機能はs-Cr1.0mg/dl, Ccr93.1ml/minと良好. 血管造影では左右腎動静脈とも1本ずつで, 峡部への動脈も1本認めた. レノグラムで軽度機能の低い左腎を移植腎とした. 手術の危険性を繰り返しドナー, レシピエント, 家族に説明し手術を施行した. ドナー手術では腹部正中切開で入り, 左腎動静脈, 峡部栄養動脈を剥離. 左腎動脈より冷コリンズ液で灌流しながら, 峡部を microwave にて切離した. これを bench surgery で断端を縫合後, レシピエントの右腸骨窩に移植した. 術後, ドナーは合併症もなくs-Cr1.5mg/dlで退院した. レシピエントは免疫抑制剤はCyA, PSL, Aza, ALGの4者併用とした. 移植後, 174日目に s-Cr1.7mg/dlで退院するまで拒絶反応はなかったが, 断端腎盂からの尿漏の治療に難渋した.
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