日本泌尿器科学会雑誌
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89 巻, 10 号
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  • 古家 琢也, 米山 高弘, 鈴木 昭夫, 山内 崇生, 川口 俊明, 高橋 伸也, 高橋 信好, 鈴木 唯司, 浜田 和一郎
    1998 年 89 巻 10 号 p. 803-807
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 1968年から1994年までに弘前大学医学部尿泌尿器科において, クッシング症候群に対して副腎摘除術を受けた12例について, 術後ステロイドホルモン補充療法の離脱時期の決定における rapid ACTH 試験の有用性の検討を行った.
    (対象及び方法) 症例は男性3名, 女性9名で, 年齢は19歳から61歳 (平均34.3歳) であった. 術後ステロイドホルモン補充療法終了時まで, 経時的に rapid ACTH 試験を行った. rapid ACTH 試験はACTH1μgを静注し, 投与前, 投与後30分, 60分, 90分, 120分, 180分に採血し血漿コルチゾール値 (F) を測定した. クッシング症候群では健側副腎機能が抑制されていることを考慮し, ACTH静注後のFの最大増加値 (ΔF) が5μg/dl以上を回復の指標とした.
    (結果) 術前Fの基礎値は13.7~20.8μg/dlで, 全例日内変動は消失していた. 術後のステロイドホルモン投与期間は, 7~33ヵ月, 平均15±9.2ヵ月であった. 血漿ACTH及びFの基礎値が正常に回復するまでの期間は, それぞれ3.4±2.9ヵ月, 12.2±8.2ヵ月で, ACTHの回復がFに比べ早い傾向が見られた.ΔFの上昇はFの基礎値の回復とは一致せず, やや遅れて上昇した.
    (考察) 血漿ACTH, F値の上昇のみで副腎機能の回復を判断するには不十分で, コルチゾールが正常域に達しても厳重な観察が必要であり, ステロイドホルモン離脱時期の決定に rapid ACTH 試験は有用であると思われた.
  • 大西 哲郎, 大石 幸彦, 鈴木 英訓, 浅野 晃司, 波多野 孝史, 中條 洋, 細部 高英, 冨田 雅之, 阿部 和弘
    1998 年 89 巻 10 号 p. 808-815
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 悪性腫瘍の増加に伴い, 重複癌の報告も多く認められるが, 臨床経過中の腎細胞癌に関する重複癌の纏った報告は無い. 男女に区分してその臨床的特徴を解析した.
    (症例と方法) 804例の腎細胞癌中38例 (4.7%: 25例, 女性13例) の重複癌に関して臨床的特徴を男女に区分して検討した.
    (結果) 全体としてみた場合, 胃癌が最も多く14例 (36.8%), 続いて肺癌, 前立腺癌,膀胱癌, 子宮癌がそれぞれ3例 (7.9%), 直腸癌, 甲状腺癌が2例 (5.3%), 咽頭癌, 食道癌, T-cell lymphoma, 慢性リンパ性白血病 (CLL), 腎盂癌, S状結腸癌, 脳腫瘍, 大腸癌が各々1例 (2.6%) ずつであった. この内男性では, 胃癌10例 (2例直接死因: 20%), 肺癌3例 (2例直接死因: 66.7%), 前立腺癌3例 (2例直接死因: 66.7), 膀胱癌3例 (1例直接死因: 33.3%), その他, 咽頭癌 (直接死因), 食道癌, T-cell lymphoma, CLL, 腎盂癌, S状結腸癌 (直接死因) が各々1例ずつであった. 女性では, 胃癌4例 (全て直接死因), 子宮癌3例 (全て直接死因), 直腸癌2例 (全て直接死因), 甲状腺癌2例 (1例直接死因), 脳腫瘍1例, 大腸癌1例であった. 加えて, 重複癌の発見の時期を検討した結果, 男性は同時性が10例 (40%) を占めたのに比較して, 女性は同時性の症例は認められ無かった.
    (結論) 男女とも胃癌が重複として最も頻度が高かっが, 女性では重複癌による死亡が多く, 加えて同時性発見例がみられなかった.
  • 野口 純男, 高瀬 和紀, 窪田 吉信, 上村 博司, 斎藤 和男, 増田 光伸, 矢尾 正祐, 穂坂 正彦
    1998 年 89 巻 10 号 p. 816-822
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 局所浸潤膀胱移行上皮癌で膀胱全摘除術及び骨盤内リンパ節郭清術が施行された症例の生存率と予後を規定する因子について検討し, 特に, この10年で生存率が改善しているかどうかを検討した.
    (方法) 1977年1月より1996年12月までの20年間に大学にて診断, 治療された局所浸潤膀胱移行上皮癌 (T2-T4N0M0) で膀胱全摘除術及び骨盤内リンパ節郭清術が施行された101症例に関して, 予後規定因子に関して, Kaplan-Meier 法にて生存率を算出し, 単変量解析および多変量解析を施行した. また, 1988年以前の症例と以後の症例で年代別に生存率を検討した.
    (結果) (1) 予後規定因子として重要な項目は単変量解析では性別, 膀胱全摘前のPS, 水腎症の有無, 腫瘍の大きさ, 腫瘍の型, INF, pT, pL, pN, neo-adjuvant 療法としてCDDPを含むか否か, adjuvant 療法としてCDDPを含むか否かの11項目であり, 多変量解析ではPSとpNに重みが生存した. (2) MVAC療法が導入された1988年以後の症例はそれ以前の症例と比較して有意に予後良好であった. (3) 術前療法により摘出標本に病理学的に癌細胞が存在しないpT0症例は13例であったが, そのうちpN+であった2例は癌死し, 残りの11例は癌なし生存中である.
    (結論) これらの結果より, 局所浸潤膀胱癌で膀胱全摘除が施行された症例における予後規定因子としては術前のPSとリンパ節転移が重要であることがわかった.
  • 篠島 弘和, 関 利盛, 熊谷 章, 丹田 勝敏
    1998 年 89 巻 10 号 p. 823-827
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 当科における腎腫瘤性病変に対する腎保存手術例につき検討した.
    (方法) 1994年3月から1997年10月までの3年8ヵ月間に腎腫瘤性病変19例に対し腎保存手術を施行した. 年齢は38~75歳, 性別は男性11例, 女性8例, 患側は右12例, 左7例, 腫瘍径は8~40mmであり, 発見の契機は, 殆どが偶然に発見されたものであった.
    (結果) 手術を施行した19例の内, 6例が腎細胞癌であった. 年齢, 性別, 腫瘍径およびCT所見では, 癌症例と非癌症例の2群間に有意差を認めず, MRI所見ではT2でisoである症例で有意に腎細胞癌が多かった. 術前後の腎機能の比較では, 有意な差を認めなかった.
    (結論) MRI所見でT2でisoであることが腎細胞癌と良性疾患との鑑別に有用であった.
  • 大西 哲郎, 大石 幸彦, 後藤 博一, 鈴木 英訓, 浅野 晃司, 波多野 孝史, 阿部 和弘, 冨田 雅之, 今川 健一
    1998 年 89 巻 10 号 p. 828-835
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) T-helper (Th) 2優位の液性免疫状態にある腎細胞癌の免疫環境を, Th1優位の細胞性免疫誘導を目的としたDNA-methyltransferase inhibitor 投与, およびIFN-α/β併用に伴う抗腫瘍効果増強を検討した.
    (実験材料および方法) マウス自然発生腎細胞癌 (RC-2) を用いて, DNA-methyltransferase inhibitor (Procainamide; 10mg/kg, 20mg/kg, 30mg/kg, i. p., 連日3週間投与) および natural murine IFN-α/β(1×104IU/mouse, s. c., 3回/週, 計9回投与), さらに両薬剤の併用投与を行なった. また, 免疫的効果を観察する目的でマウス脾臓のTh1/Th2関連 cytokine mRNA発現をRT-PCR法で検討した.
    (結果) 1) Procainamide およびIFN-α/β単独投与では有効な抗腫瘍効果は得られなかった. しかし Procainamide (30mg/kg) 併用IFN-α/β投与では, 相対的平均腫瘍重量比 (21.8%), 平均腫瘍重量, 宿主マウス延命効果のいずれも有効な効果が観察された. ただ, 組織学的には grade IIbと viable な腫瘍細胞の残存が観察された. 2) Procainamide 投与によりTh1関連 cytokine mRNA (IFN-γ, IL-2, TNF-β) 発現と, 逆にTh2関連 cytokine mRNA (IL-4, IL-5, IL-6) 発現消失が認められた.
    (結論) DNA-methyltransferase inhibitor 投与により, 腫瘍―宿主間の免疫応答は細胞性免疫環境に誘導可能で, この免疫環境でのIFN-α/β投与は腎細胞癌に対して効果的療法となることが示唆された.
  • 高橋 宏明
    1998 年 89 巻 10 号 p. 836-845
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) ヒト前立腺癌細胞の増殖機構での線維芽細胞成長因子 (FGFs) とその受容体 (FGF-Rs) の意義を検討した.
    (対象および方法) ヒト前立腺癌株のLNCaP, PC3, ヒト前立腺肥大症組織由来初代培養上皮細胞 (PE), 間質細胞 (PS) でFGF1, FGF2, FGF7, FGF-R1, FGF-R2 (IIIb) およびFGF-R2 (IIIc) のmRNA発現をRT-PCR法で検討した. 前立腺癌17例ではFGF-R2 (IIIb, IIIc) のmRNA発現をRT-PCR法で検討し, FGF-R1は半定量的PCR法で発現量を比較した.
    (結果) PSにFGF2およびFGF7を認めた. ヒト前立腺癌樹立細胞株では, FGF1はLNCaP, PC3共に, FGF2はPC3に発現し, FGF7は共に発現しなかった. FGF-R1はPEおよびPSに発現したが, FGF-R2は, PEのみにFGF-R2 (IIIb) を認めた. 樹立細胞株ではFGF-R2 (IIIb) をLNCaPにFGF-R2 (IIIc) をPC3に認めた. 前立腺癌組織ではFGF-R2 (IIIb) を2例に, FGF-R2 (IIIc) を15例に認めた. FGF-R1は全ての癌組織に発現し, その発現量はLNCaPよりPC3が多く, ヒト前立腺癌では中, 低分化癌が高分化癌に比較して多かった (p<0.05).
    (結論) ヒト前立腺癌において, 複数のFGFsとFGF-Rsの発現変化が悪性化と関連することが示唆された.
  • 清水 朋一, 山崎 雄一郎, 巴 ひかる, 西野 整一, 東間 紘, 柴田 亮行, 小林 槇雄
    1998 年 89 巻 10 号 p. 846-849
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    von Recklinghausen 病の血管病変の多くは腎動脈にみられ, 動脈の狭窄により高血圧をもたらす事が知られている. しかし極めてまれに血管壁の脆弱に伴い自然破裂を来たすことがある. 今回, 腹部大動脈と腰動脈分岐部の自然破裂を来した von Recklinghausen 病の一例を経験した. 患者は救命し得なかったが, 全身の血管の病理所見を検討した結果, すべての筋性動脈に dysplasia を伴うという特異な所見を認めた. 本症例は動脈自然破裂症例としては世界で26例目, 本邦では21例目であった.
  • 牛田 博, 金 哲將, 林田 英資, 小西 平, 朴 勺, 友吉 唯夫, 岡田 裕作
    1998 年 89 巻 10 号 p. 850-853
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    患者は, 42歳女性. 18歳のとき, 結節性硬化症と診断され, 32歳のとき, 高血圧の精査中に両側腎血管筋脂肪腫 (AML) を指摘された. 左腎腫瘍による強い左側腹部痛と腹部膨満感を訴え来院. 精査にて, AMLと診断し, 左腎門部腫瘍を含む左腎摘出術を施行した. 摘出標本は1120gで, 腫瘍は腎を包み込むように成長していた. 左腎腫瘍と腎門部腫瘍の病理組織学的診断は, AMLであった. 自験例では, 両側の自然気胸を合併し, 胸部CTにて両側の肺に多発性の嚢胞が確認できた. 右肺の胸腔鏡下生検標本の病理組織学的診断は, 肺リンパ管筋腫症 (LAM) であった. その他の合併症としては, 頭蓋内の尾状核部石灰化, 顔面皮脂腺腫, そして手足の爪下線維腫が見られた.
  • 田原 秀男, 今西 正昭, 石井 徳味, 西岡 伯, 松浦 健, 秋山 隆弘, 栗田 孝
    1998 年 89 巻 10 号 p. 854-857
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    生体腎移植後の機能廃絶腎周囲に発生した粘液型脂肪肉腫の1例を経験したので報告する. 患者は19歳男性. 1988年6月15日母親をドナーとして生体腎移植を施行した. 腎移植3年後慢性拒絶反応が徐々に増悪し, 1991年6月に透析導入となった. 1992年1月腹部腫瘤に気付き受診した. CTにて移植腎周囲に巨大な低吸収像を示す腫瘤を認めた. 移植腎を一塊として摘出した. 腫瘤は病理組織学的に粘液型脂肪肉腫と診断された. 腫瘍細胞はHLA-DRB1 DNA typing によって, レシピエント細胞由来のものであることが証明された. 手術後再発もなく外来にて経過観察していたが1993年脳内出血にて死亡した.
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