(背景と目的) 悪性腫瘍の増加に伴い, 重複癌の報告も多く認められるが, 臨床経過中の腎細胞癌に関する重複癌の纏った報告は無い. 男女に区分してその臨床的特徴を解析した.
(症例と方法) 804例の腎細胞癌中38例 (4.7%: 25例, 女性13例) の重複癌に関して臨床的特徴を男女に区分して検討した.
(結果) 全体としてみた場合, 胃癌が最も多く14例 (36.8%), 続いて肺癌, 前立腺癌,膀胱癌, 子宮癌がそれぞれ3例 (7.9%), 直腸癌, 甲状腺癌が2例 (5.3%), 咽頭癌, 食道癌, T-cell lymphoma, 慢性リンパ性白血病 (CLL), 腎盂癌, S状結腸癌, 脳腫瘍, 大腸癌が各々1例 (2.6%) ずつであった. この内男性では, 胃癌10例 (2例直接死因: 20%), 肺癌3例 (2例直接死因: 66.7%), 前立腺癌3例 (2例直接死因: 66.7), 膀胱癌3例 (1例直接死因: 33.3%), その他, 咽頭癌 (直接死因), 食道癌, T-cell lymphoma, CLL, 腎盂癌, S状結腸癌 (直接死因) が各々1例ずつであった. 女性では, 胃癌4例 (全て直接死因), 子宮癌3例 (全て直接死因), 直腸癌2例 (全て直接死因), 甲状腺癌2例 (1例直接死因), 脳腫瘍1例, 大腸癌1例であった. 加えて, 重複癌の発見の時期を検討した結果, 男性は同時性が10例 (40%) を占めたのに比較して, 女性は同時性の症例は認められ無かった.
(結論) 男女とも胃癌が重複として最も頻度が高かっが, 女性では重複癌による死亡が多く, 加えて同時性発見例がみられなかった.
抄録全体を表示