日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
ISSN-L : 0021-5287
89 巻, 4 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 津川 昌也, 橋本 英昭, 門田 晃一, 公文 裕巳, 大森 弘之
    1998 年 89 巻 4 号 p. 453-459
    発行日: 1998/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 経尿道的前立腺摘除術 (TUR-P) の術後感染予防における抗菌薬の至適投与法に関する検討を行った.
    (対象と方法) 1995年4月から1996年2月までの期間で, TUR-Pを施行された患者を対象とした. 術前3日以内の尿所見より, 1群 (白血球<5個/hpf, かつ細菌<104CFU/ml), II群 (白血球≧5個/hpf, あるいは細菌≧104CFU/ml) の2群に分け, さらにそれぞれの群を無作為に抗菌薬の投与期間でA, B群に分けた. 予防抗菌薬は cefazolin, あるいは cefotiam とした. 投与期間はIA群 (n=92) では1日のみ, IB群 (n=96) では3日間, IIA群 (n=37) では2日間, IIB群 (n=30) では4日間とし, 手術開始直前から投与を開始した. なお, 原則として, 指定抗菌薬以外の抗菌薬の追加投与は禁止とし, 追加投与の行われた症例は膿尿, 細菌尿の検討からは除外した.
    (結果) いずれの群でも60~70%の症例には指定抗菌薬以外の抗菌薬投与は行われておらず, 膿尿は術後8週目から, 細菌尿は術後2ないし4週目から改善傾向を示した. また, 尿所見の正常化にはいずれの群も約65日を要した. これらに関して抗菌薬の投与期間による有意差は認めなかった. 有熱性感染症はIA群では11例, IB群で5例, IIA群で5例, IIB群で2例に発症していた. I, II群とも抗菌薬短期間投与群で有熱性感染症の発症頻度が高かったが, 統計学的有意差は認めなかった.
    (結論) TUR-P術後感染予防は注射用第I, II世代 cephem 薬の3ないし4日間投与が臨床的には妥当であると考えられる.
  • 畠山 孝仁, 近田 龍一郎, 太田 章三, 久慈 了, 坂井 清英, 阿部 優子, 千田 尚毅, 折笠 精一
    1998 年 89 巻 4 号 p. 460-467
    発行日: 1998/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 一側水腎作成後の水腎と対側腎, 片腎摘出後の残腎の prostaglandin E2 (PGE2) と throm-boxane B2 (TxB2) の腎内局在の変化を検討した.
    (方法) 約3週齢の雄S-Dラットを水腎, 腎摘, コントロールの3群に分け, 1, 3, 6, 12, 24時間, 2, 3, 5, 7, 9日後に屠殺, PGE2とTxB2の腎内局在を免疫組織学的に観察した.
    (結果) PGE2: 水腎では6時間後糸球体 (G) と皮質間質 (CI) に, 3日と5日後CIに発現が増加した. 髄質間質 (M) では1~6時間後と2~9日後に発現の増加が観察された. 水腎対側腎では, 5日と7日後Gに, 3日と5日後Mに増加した. 腎摘後残腎では, Mに3時間後と3~7日後, GとCIには5日と7日後に増加した.
    TxB2: 水腎では6時間後GとCIに, 3~12時間後にMに増加し, 3時間後のMではPGE2より強い発現をみた. その後, 3日と5日後CIに, 2~7日後Mに再び増加した. 水腎対側腎では, Mのみに3時間後と3日後に増加した. 腎摘後残腎では, 3時間後にGとMに, 7日後G, 3~7日後Mに増加した.
    (結論) 水腎でのPGE2とTxA2の不均衡な発現が腎障害進展に寄与すると考えられた. 水腎対側腎と腎摘後残腎では, いずれも一側腎機能喪失を伴うにもかかわらずPGE2あるいはTxA2の発現パターンが異なっており, 水腎の対側腎には腎摘後残腎とは違う他の因子が関与している可能性が示唆された.
  • 佐久間 孝雄, 小川 修, 岩本 直安, 古家 隆, 瀧口 俊一
    1998 年 89 巻 4 号 p. 468-476
    発行日: 1998/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的・対象) 従来行われてきた検尿検診では発見率が低いとされる先天性腎尿路疾患の早期発見, 早期治療を目的として, 3799人の3ヵ月児を対象に, 腎臓超音波検診を行った.
    (結果) 一次検診受診者のうち139人 (3.7%) が要二次検診と判断され, その所見は, CECの解離が大半 (91%) を占めた. 二次検診受診者135人のうち33人 (24.4%) (一次検診受診者の0.9%) に腎尿路疾患を認めた. 疾患の内訳は, VURが17例 (25腎尿管) と最も多く, その他水腎症10例, 腎無形成2例, 矮小腎2例, 尿管瘤2例, 馬蹄腎1例, 巨大尿管症1例, 軽度拡張尿管1例であった(重複有り). VURの10腎尿管 (40%) は, 一次検診で異常を認めなかった側に発見された.「腎盂拡大」(軽度の腎盂の拡大を認めるが腎杯の拡張所見を認めない) を78人に認め, 男児の左側の頻度が高かった. 経過観察中, 尿路感染症をVURの5例と異所性尿管瘤の1例に認めた. 発見されたVURの44%は, その後自然消失した. 外科的治療をVUR4例, 尿管瘤2例の計6例に対して行った.
    (結論) 先天性腎尿路疾患の早期発見に, 腎臓超音波検査によるスクリーニングが, 有用で優れていることが確認された. ただし, 超音波検査を契機としたVURの発見には限界があると考えられた.
  • 人工尿におけるウレアーゼ誘発結晶形成の検討
    小村 隆洋
    1998 年 89 巻 4 号 p. 477-483
    発行日: 1998/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) Griffith らの人工尿とアグリゴメーターを用い, ウレアーゼによる結晶形成を検討した.
    (方法) 人工尿200μlにウレアーゼ1000U/mlを10μl添加し, 結晶形成能を混濁度として測定し, 混濁度曲線として経時的に記録した. 人工尿の組成濃度を変化させ, 混濁度曲線への影響を調べた.
    (結果) (1) 人工尿にウレアーゼを添加すると二相性の混濁度曲線が得られた. まず緩徐な混濁 (early crystallizaztion) が出現し, その後, 急激な混濁 (late crystallization) が生じた. (2) pH5.7の人工尿にウレアーゼ添加すると, 約3分でpH7.3以上, アンモニア濃度0.05Mとなり early crystallization が出現した. その後, 約13分でpH8.5以上, アンモニア濃度0.06~0.08Mとなり late crystallization 生じた. (3) early crystallization は, 小顆粒状のリン酸カリシウムであり, この混濁度はカルシウム濃度依存性であった. Late crystallization は, 西洋棺蓋状結晶のリン酸マグネシウムアンモニウムであり, この混濁度はマグネシウム濃度依存性であった.
    (結論) ウレアーゼによる結晶形成には, pHが最も重要であり, 一定量以上のカルシウムとマグネシウムが必要であることが示唆された.
  • 血中I型プロコラーゲンC末端プロペプチド, I型コラーゲンCテロペプチド, 尿中デオキシピリジノリン濃度を中心として
    今井 利一, 本田 幹彦, 前田 節夫, 細谷 吉克, 荒井 哲也, 寿美 周平, 梅田 宏, 矢野 雅隆, 古賀 文隆, 新井 京子, 吉 ...
    1998 年 89 巻 4 号 p. 484-491
    発行日: 1998/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 前立腺癌における骨転移の診断は骨シンチグラフィーを中心とする画像診断で行われている. しかし, 既存の方法では診断に読影者の主観的要素が入ったり, 定量化出来ないなどの欠点がある. そこで骨転移の検索およびその指標として, 血中I型プロコラーゲンC末端プロペプチド (PICP), 血中I型コラーゲンCテロペプチド (ICTP), および尿中デオキシビリジノリン (D-Pyr) 濃度の測定が有用であるか否かにつき検討を行った.
    (対象と方法) 対象は骨転移を有しない前立腺癌患者15例, 骨転移を有する前立腺癌患者22例, 前立腺肥大症 (BPH) 患者16例でいずれも末治療例であった. 血中PICPおよびICTPについてはラジオイムノアッセイ法にて, また尿中D-Pyr濃度についてはELISA系にて測定した. なお, 尿中D-Pyr濃度についてはクレアチニン比で表現した.
    (結果) 血中PICP, ICTP値, 尿中D-Pyr値はいずれもBPH群に比して骨転移陽性群で有意な高値を示した. 血中PICP値は前立腺癌骨転移陰性群に比し骨転移陽性群において有意の高値を示した. 前立腺癌骨転移陰性群の血中ICTP値はBPH群に比して有意の高値を示したが, 骨転移陽性群との間には有意差がみられなかった.
    これに比し尿中D-Pyrの前立腺癌骨転移陰性群はBPH群, 骨転移陽性群いづれの間においても, 有意差がみられなかった.
    しかし, 骨転移陽性群において, 骨吸収の指の標である血中ICTPと尿中D-Pyrの間に有意な相関を認め, また骨形成の指標であるPICPと総アルカリフォフファターゼ (ALP) 活性との間で有意な相関を認めた.
    (結論) 血中PICP, ICTP値, 尿中D-Pyr濃度の測定は前立腺癌患者の骨転移巣が評価できる可能性が示唆された. また血中ICTP値の測定は, 画像では診断できない骨吸収性の転移を発見し得る可能性を示唆したものと思われた.
  • 田丁 貴俊
    1998 年 89 巻 4 号 p. 492-498
    発行日: 1998/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) SV40を用いてラット前立腺背側葉初代培養細胞を形質転換し, 安定な間質細胞株 (PSSVH) が得られた. 前立腺疾患の基礎的検討におけるこの細胞株の有用性をみるため, 基本的な特性, 成長因子およびその受容体の有無について検討した.
    (方法) PSSVH細胞の基本的な特性としてサイトケラチン, ビメンチンおよびSV40 T抗原の存在を免疫組織学的に検討し, Gバンド法による染色体分析を行った. [3H]-チミジン取り込み法によるDNA合成活性を指標としてアンドロゲン添加の影響を検討した. また, PSSVH細胞から poly (A) RNAを抽出し, EGF, bFGF, KGF, TGF-α, TGF-β1, EGF受容体 (EGFR), FGF受容体1 (FGFR1) およびTGF-β受容体 (type II: TGFβR2) mRNA発現の有無, アンドロゲン添加の影響についてノーザンブロット法を用いて検討した.
    (結果) PSSVH細胞は免疫組織学的にケラチン陰性, ビメンチンおよびT抗原陽性であった. 本細胞はすべて異数体で, marker chromosome は認められなかった. 10-10M-10-6MのTおよびDHTの添加はこの細胞の増殖に影響しなかった. また, KGF, TGF-α, TGF-β1, EGFRおよびTGF-βR2のmRNAがそれぞれ発現しており, これらの発現はアンドロゲン添加の影響を受けなかった.
    (結論) PSSVH細胞はアンドロゲン非依存性の前立腺由来間質細胞として, 前立腺細胞の基礎的検討に有用であると考えられた.
  • 新井 豊, 曽我 弘樹, 小西 平, 友吉 唯夫
    1998 年 89 巻 4 号 p. 499-502
    発行日: 1998/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    患者は65歳女性で, 左尿管結石の症状を契機に, DIPにて, 偶然に右腎盂に多数の円形の陰影欠損が発見された. 左尿管結石に対してESWLを施行した. 結石自排後に右腎盂の陰影欠損に対して精査を施行した. RPはDIPと同様の所見であり, 腎盂尿の細胞診は class I であった. またCTにてX線陰影結石は否定された. 諸検査所見より嚢胞性腎盂炎が示唆された. 軟性尿管鏡を用い, 腰椎麻酔下に腎盂内の観察と生検が施行された. 腎盂内に白色の半球状の表面平滑な小嚢胞がみられ, 病理組織所見より嚢胞性腎盂炎と診断された.
    これまでに本邦では, 内視鏡検査が施行された腎盂尿管炎は自験例もふくめ18例の報告がある. これらの報告例での本症のX線検査所見および内視鏡所見を検討した. X線検査では, 大きさは3~5mmとほぼ均一であり, 円形の辺縁平滑な多発の陰影欠損を示し, 他方, 内視鏡検査では多発で白色ないしは黄白色で球状から半球状の表面平滑な小嚢胞であった. このような所見が18例中15例にみられ, これらは本症の特徴的な所見と考えられた. 本症は, あくまで良性の病変であり前癌状態ではないが, 悪性腫瘍を合併した報告もあり, 内視鏡下の生検や定期的経過観察も必要である.
  • 竹山 康, 加藤 隆一, 赤樫 圭吾, 高木 良雄, 若林 淳一, 小六 幹夫, 門野 雅夫
    1998 年 89 巻 4 号 p. 503-506
    発行日: 1998/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は50歳女性. 主訴は尿潜血陽性. DIP, RP及び腹部CT上左陰影欠損を認め, 左腎盂腫瘍が疑われた. 左腎尿管全摘除術を施行した. 病理所見は腎盂の Fibroepithelial polyp であった. 腎盂に発生する Fibroepithelial polyp は稀で, 術前に腎盂の悪性腫瘍と鑑別することは難しいと言われている.
  • 三方 律治, 今尾 貞夫, 中村 陽, 時枝 圭, 川原 穣
    1998 年 89 巻 4 号 p. 507-510
    発行日: 1998/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    24歳男性の約半年間続く右精巣腫脹に対して, 右高位精巣摘除術を行った. 病理組織学的診断は精上皮腫, 胎児性癌, 絨毛癌と Leydig 細胞腫瘍であった. 我々の調べえた範囲では, 同一精巣に Leydig 細胞腫瘍と複合組織型胚細胞腫瘍とが混在する症例はみられなかった.
feedback
Top