(目的) 腎細胞癌脳転移症例の臨床病理学的特徴および治療効果の検討を行った.
(方法) 1976年6月より1996年5月までの20年間に慶応義塾大学病院を受診し, 長期に経過観察した腎細胞癌306例中, 脳転移を認めた20例 (6.5%) を対象とした. 転移出現率, 生存率は Kaplan-Meier 法を用いて算出し, log-rank 法を用いて有意差検定を行った.
(結果) 脳転移が診断された時期に関しては, 初診時すでに脳転移が認められたものが6例で, 他の14例は原発巣の病理学的診断後に診断されており, 脳転移出現までの期間は平均53.9ヵ月で, 転移までに長期間を要する傾向が認められた. 脳への単独転移は2例のみで, 20例中17例 (85.%) が肺転移を, また10例 (50.0%) が骨転移を合併しており, 腎細胞癌の脳転移は他臓器転移を伴う傾向が認められた. 治療法として, 免疫療法は18例に施行されたが, 単独で転移巣の縮小を認めた例はなかった. また, 肺転移症例において, Interleukin-2 には脳転移出現を惹起する可能性があることが示唆された. 手術療法は20例中9例に施行されたが, 手術群は非手術群より予後良好である傾向がみられ, 脳転移後5年以上生存した症例は2例のみであったが, 2例とも脳転移巣の外科的切除を施行されていた.
(結論) 腎細胞癌脳転移症例においては, 免疫療法による治療効果には限界がある一方, 転移巣が摘除可能であれば, 外科的治療を施行することにより, 予後の改善が得られる可能性があることが示唆された.
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