日本泌尿器科学会雑誌
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90 巻, 4 号
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  • 特に続発性膀胱腫瘍の予測因子について
    宮川 康, 岡 聖次, 野口 智永, 世古 宗仁, 鄭 則秀, 佐藤 英一, 高野 右嗣, 高羽 津, 辻村 晃, 松宮 清美
    1999 年 90 巻 4 号 p. 479-486
    発行日: 1999/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 腎盂尿管腫瘍と膀胱腫瘍の併発症例に関して, 特に続発性膀胱腫瘍の予測因子を検討する.
    (方法) 国立大阪病院泌尿器科にて手術した腎盂尿管腫瘍49例のうち膀胱腫瘍を併発した20例 (40.8%) を対象とした. 膀胱腫瘍の発見された時期により膀胱先行群5例, 膀胱同時群5例, 膀胱続発群10例に分類し, 膀胱非併発群29例と合わせて比較検討した.
    (結果) 膀胱先行群において, 膀胱腫瘍の初回治療から腎盂尿管膀胱診断までの期間は平均54.6ヵ月であり, TURが平均5.2回行われた. また膀胱先行群のみに両側臓器発生症例2例を認めた. 膀胱同時群では腎盂尿管腫瘍が全例 high stage であり, 予後不良であった. また膀胱腫瘍は浸潤傾向を呈し, 5例中3例で膀胱全摘除となった. 一方, 膀胱続発群では, 術後平均13.4ヵ月に発生した続発性膀胱腫瘍はすべて表在性で, TURで切除可能であった. 5年生存率は非併発群, 続発群および先行群ではそれぞれ64.9%, 63.5%, 50%であり, 同時群では0%であった. 腎盂尿管腫瘍の術前の細胞診が陽性を示す例は続発群が非併発群に比べ有意に多かった (875% vs. 44.8%).
    (結論) 腎盂尿管腫瘍と膀胱腫瘍の併発症例は, 膀胱腫瘍の併発時期により異なる特徴を有することが示された. 腎盂尿管腫瘍の術前の尿細胞診は続発性膀胱腫瘍の予測因子となる可能性が示唆された.
  • 病理組織学的因子と予後および喫煙との関係
    原野 裕司, 王 春喜, 高 江平, 内田 豊昭
    1999 年 90 巻 4 号 p. 487-495
    発行日: 1999/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) p53癌抑制遺伝子はヒト悪性腫瘍において最も多く変異の認められる遺伝子の一つである. われわれは, 膀胱癌におけるp53癌抑制遺伝伝子の変異と病理組織学的所見と予後および喫煙との関連について検討したので報告する.
    (対象と方法) 105例の原発性膀胱癌について, PCR-SSCP法を用いてp53遺伝子のエクソン4から9領域を解析した.
    (結果) 膀胱癌105例中38例 (36.2%) にp53遺伝子異常が認められた. p53遺伝子変異率は grade I 群と grade II~III 群間 (p=0.0045) および stage pTa-1群とpT2~pT4群間 (p=0.0148) に有意差が認められた. また変異陽性群は変異陰性群に比して生存率が有意に低下していた (p=0.0098). Stage pTa-1の表在性膀胱癌におけるp53遺伝子変異陽性群は陰性群に比し高い再発率が認められた (p=0.0419). 喫煙群とp53遺伝子異常の関連についてみると, 今回検討した膀胱癌105例中73例 (69.5%) に喫煙歴が認められたが, p53遺伝子変異と喫煙歴および喫煙期間に関連は認められなかった.
    (結論) 膀胱癌の進展過程においてp53遺抑制遺伝子変異が関与していると考えられる. p53遺伝子診断は, 膀胱癌の予後因子マーカーとして有用と思われる.
  • 早川 邦弘, 佐藤 裕之, 青柳 貞一郎, 大橋 正和, 石川 博通, 畠 亮
    1999 年 90 巻 4 号 p. 496-501
    発行日: 1999/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景) 骨盤内悪性腫瘍に対する根治手術に対し, 同種輸血を避ける目的で, rHu-EPO併用自己血貯血を利用した手術を施行した.
    (対象と方法) 対象は根治的前立腺摘除術7症例と根治的膀胱摘除術15症例. rHu-EPO 24,000単位を週1回皮下注し, 連日鉄剤200mgを経口投与した. 根治的前立腺摘除術は800から1,000ml, 根治的膀胱摘除術は800から1,200mlを目標として週1回400mlの術前貯血を行った.
    (結果) 根治的前立腺摘除術では貯血量885.7±157.4mlで7例中6例 (85.7%) に, 根治的膀胱摘除術では貯血量1,033.3±167.6mlで15例中14例 (93.3%) に自己血のみで手術可能であった. 術中出血量は, 同種輸血を利用した対照群との比較で有意差がなく, 術後の経過は安定していた. rHu-EPO併用自己血貯血の利用によると考えられる重篤な副作用や合併症は認められなかった.
    (結論) 根治的前立腺摘除術, 根治的膀胱摘除術において自己血貯血を利用した手術は安全に実施可能であり, 悪性腫瘍の長期予後に及ぼす影響については今後検討を要するが, 周術期において同種輸血を避けるうえで有効な方法であると考えた.
  • 入江 啓, 李 漢栄, 門脇 和臣, 戸田 京子, 山田 好則
    1999 年 90 巻 4 号 p. 502-508
    発行日: 1999/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 経尿道的前立腺切除術 (TUR-P) 後の炎症性サイトカインの動態を検討した.
    (対象と方法) TUR-Pを施行した55例を対象に, 血中および尿中の tumor necrosis factor-α(TNF), interleukin-6 (IL 6), interleukin-1β(IL 1) の濃度を, 術前・術後経時的にELISAで測定した. また, 比較のため消化器外科手術を施行した23例についても同様にサイトカイン濃度を測定した.
    (結果) TUR-P後, 血中TNFは6時間目に有意に上昇したが, 血中IL 6およびIL 1は上昇しなかった. 尿中の, TNF, IL 6, IL 1はいずれも術後有意に上昇し, 尿中TNFは特に術前に尿路感染を認めた症例で非感染症例に比べ有意に高値を示した. また尿中TNFは, 前立腺切除重量および灌流液量に相関して上昇した. 消化器外科手術後, 血中TNFおよび尿中TNF, IL 6, IL 1は変動しなかった.
    (結論) TUR-P後, 血中および尿中TNFは有意に上昇し, これらの変動はTUR-Pに特有な現象と考えられた. TNFの測定は, TURPにおける手術侵襲の評価や術中術後の病態の理解に有用と考えられた.
  • 田代 和也, 岩室 紳也, 波多野 孝史, 古田 昭, 滝沢 明利, 大石 幸彦, 五十嵐 宏, 長谷川 倫男, 浅野 晃司, 青木 元
    1999 年 90 巻 4 号 p. 509-513
    発行日: 1999/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 近年, 癌の治癒率の改善, 長寿化により一次癌の治療のみでなく, 二次癌の発生の増加が危惧されている. 今回, 膀胱癌における重複癌の現状と問題点を検討した.
    (対象と方法) 1976年から1996年までの21年間に経験した男828例, 女141例の969例の膀胱癌を対象とした. 発生頻度, 発症臓器, 発症時期, 予後などにつき検討した.
    (結果) 重複癌を81例 (8.36%) に認めた. また, 6例 (0.61%) は三重癌であった. 性別では男70例 (9.78%), 女11例 (7.80%) であった. 重複臓器は前立腺癌が25例 (3.02%), 胃癌23例が (2.37%), 乳癌が3例 (2.13%), 大腸・直腸癌が14例 (1.44%) の順に多くみられた. 発症の時期は膀胱癌よりみて先行発症が28例 (34.6%), 同時発症が28例 (34.6%), 続発発症が31例 (38.3%) であった. 一次癌と二次癌の発症間隔は49±42.5ヵ月であった. 二次癌の発症年齢は70.3±8.8歳であった. 膀胱癌発症時よりの生存率は1年90.8%, 3年68.6%, 5年53.3%, 10年30.3%であった. 死因は膀胱癌が10 例(12.3%), 重複癌は21例 (25.9%), そのほかが16例 (17.5%) であった.
    (結語) 膀胱癌の重複癌は8.36%であった. 近年, わが国でも前立腺癌, 大腸・直腸癌, 乳癌など欧米型の癌の増加がみられた. 重複癌症例の予後は単発癌に比べて不良であった.
  • 浅野 晃司, 阿部 和弘, 加藤 伸樹, 三木 健太, 古田 希, 清田 浩, 大西 哲郎, 古里 征国, 小野寺 昭一, 大石 幸彦
    1999 年 90 巻 4 号 p. 514-520
    発行日: 1999/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 尿路 Inverted papilloma の再発例や悪性合併例を中心に検討することにより, Inverted papilloma の生物学的特性を明らかにし, 尿路上皮腫瘍における Inverted papilloma の位置づけを行うことを目的とした.
    (対象と方法) 過去22年間に慈恵医大で治療した尿路 Inverted papilloma 35例を対象とした. 各症例につき年齢, 性別, 初発症状, 発生部位等の臨床像を明らかにするとともに, 再発の有無を中心とした予後調査を施行した. また, 過去に報告された Inverted papilloma と移行上皮癌の合併例および再発例を集計した.
    (結果) 初診時の年齢は24歳から77歳 (平均54歳) で, 性別は男性31例, 女性4例であった. 初発症状は肉眼的血尿が23例 (65.7%) と最も多く, 発生部位は90%以上が膀胱内であった. 移行上皮癌との合併は2例 (5.7%) に認めた. 予後調査の結果は, 35症例中追跡可能であった症例が29例で, 追跡期間は8ヵ月から19年 (中央値5年4ヵ月) であった. 追跡可能であった29例中, 再発は2例 (7%) に認めた. 過去の報告例の集計では, Inverted papilloma と移行上皮癌との合併報告例は上部尿路症例に多い傾向がみられた. また, Inverted papilloma の再発報告例では再発時に移行上皮癌で発症する例が多かった.
    (結論) すべての尿路 Inverted papilloma に対して, low grade/low stage の移行上皮癌に対するのと同様の注意を払う必要があり, 少なくとも術後2年以上は定期的に経過を追うべきであると思われる.
  • 松浦 浩, 桜井 正樹, 有馬 公伸
    1999 年 90 巻 4 号 p. 521-525
    発行日: 1999/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    患者は28歳男性. 39度の発熱, 腹痛が出現し, 大動脈周囲リンパ節の腫大を指摘され, 当院に入院した. 左鎖骨上リンパ節腫大も認め, 生検にて胚細胞腫の転移が疑われ, 当科に紹介となった. AFP, hCGおよびβ-hCGは各々異常高値を示した. 精査にて後腹膜原発性腺外胚細胞腫と診断した. 発熱は腫瘍壊死が原因と考えられた. BEP療法3コース施行後, 左鎖骨上リンパ節腫大は消失したものの, マーカーは完全には正常化せず, 後腹膜には残存腫瘍が見られた. 次に, 末梢血幹細胞移植 (PBSCT) を併用した大量化学療法 (HDC) を行うことにした. 採取前化学療法として etoposide (500mg/m2) を行い, 計19.5×106個/kgのCD34陽性細胞が採取できた. HDC (CBDCA 250mg/m2/day, etoposide 300mg/m2/day, IFM 1.5g/m2/day, 各々Day-7~-3) に続き, PBSCT (Day 0に全量注入) を施行した. 白血球数, 血小板数は低下したが, 血小板輸血, G-CSFの併用により, 迅速に回復した. 消化管, 呼吸器感染が出現し, 抗生物質および抗真菌剤の投与により改善した. 10日間無菌室に入室した. HDC後各マーカーは正常値に下降したが, 後腹膜に残存腫瘍を認めた. 残存腫瘍摘出術及び後腹膜リンパ節郭清術を施行した. 病理学的には壊死組織のみであった. 術後9ヵ月経過したが, 再発なく生存している.
  • 鈴木 一弘, 横尾 彰文, 酒井 茂, 島村 昭吾, 水無瀬 昂
    1999 年 90 巻 4 号 p. 526-529
    発行日: 1999/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は左精巣腫瘍の既往があり, 高位精巣摘除術を施行されている22歳男性. 左右肺野に腫瘤を認め, 経気管支的肺腫瘍生検で胚細胞腫瘍と診断された. 受診時, AFR, hCG-βは高値を示した. 右精巣は触診上, 異常を認めなかったが, 超音波検査上, 内部に高エコー領域を認めたため, 手術を施行した. 高エコー領域と一致した精巣白膜下に微小な白色硬結を認め, これを含め, 部分切除を施行した. 同部の病理組織検査より burned-out testicular tumor と診断した. 本症例は, burned-outtesticular tumor が対側精巣に異時発生した両側精巣腫瘍であると考えられた.
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