(目的) 近年, 癌の治癒率の改善, 長寿化により一次癌の治療のみでなく, 二次癌の発生の増加が危惧されている. 今回, 膀胱癌における重複癌の現状と問題点を検討した.
(対象と方法) 1976年から1996年までの21年間に経験した男828例, 女141例の969例の膀胱癌を対象とした. 発生頻度, 発症臓器, 発症時期, 予後などにつき検討した.
(結果) 重複癌を81例 (8.36%) に認めた. また, 6例 (0.61%) は三重癌であった. 性別では男70例 (9.78%), 女11例 (7.80%) であった. 重複臓器は前立腺癌が25例 (3.02%), 胃癌23例が (2.37%), 乳癌が3例 (2.13%), 大腸・直腸癌が14例 (1.44%) の順に多くみられた. 発症の時期は膀胱癌よりみて先行発症が28例 (34.6%), 同時発症が28例 (34.6%), 続発発症が31例 (38.3%) であった. 一次癌と二次癌の発症間隔は49±42.5ヵ月であった. 二次癌の発症年齢は70.3±8.8歳であった. 膀胱癌発症時よりの生存率は1年90.8%, 3年68.6%, 5年53.3%, 10年30.3%であった. 死因は膀胱癌が10 例(12.3%), 重複癌は21例 (25.9%), そのほかが16例 (17.5%) であった.
(結語) 膀胱癌の重複癌は8.36%であった. 近年, わが国でも前立腺癌, 大腸・直腸癌, 乳癌など欧米型の癌の増加がみられた. 重複癌症例の予後は単発癌に比べて不良であった.
抄録全体を表示