(目的) 一施設における根治的恥骨後式前立腺全摘除術施行例の臨床的検討.
(対象と方法) 1985年4月から1997年7月に, リンパ節郭清術施行73例を含む76例の前立腺癌に対し, 恥骨後式前立腺全摘除術を行った. その年齢と観察期回中央値は68歳と44ヵ月, 病期はpT0 6例, PT2 29例, pT3 39例, pT4 2例, pN+ 22例であった.
(結果) 切除断端部癌はpT2では10%, pT3では61%に陽性であった. 12例が再発し, その再発所見は生物学的再発が4例, 臨床的再発 (局所再発4例, リンパ節1例, 骨3例) が8例であった. 5年無病生存率 (Kaplan-Meier) はpT0が100%, pT2が82%, pT3が72%, pT4が50%, pN-が77%, pN+が75%, 断端部癌陽性が73%, 陰性が83%で, これら諸因子間に有意差は認められなかった. しかしながら, pT3低分化における術後放射線+ホルモン併用療法施行例は術後ホルモン療法例と比較し, 5年無病生存率において明らかに優れていた (100% vs 27%; p=0.011). 疾患特異別5年生存率はpT0とpT2が100%, pT3が92%, pT4が50%, pN-が94%, pN+が93%, 断端部癌陽性が93%, 陰性が98%, 前述したpT3低分化で併用療法施行例が100%, 非施行例が86%で, これら諸因子間に有意差は認められなかった.
(結論) 我々の成績は根治的前立腺全摘除術が限局性癌と非限局性癌の両方に有用であることを示している. 術後の放射線+ホルモン併用療法はpT3低分化例の再発防止効果に優れている.
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