(目的) Grade 3 (G3), 表在性膀胱癌移行上皮癌 (pTaおよびpT 1) の予後因子について検討した.
(対象と方法) 症例は1971年7月から1995年9月までの25年間に当科を初診した51例のG 3, 表在性移行上皮癌における生存率および予後因子について検討した.
(結果) G 3, 表在性移行上皮癌の5年生存率は92.3%で, G 3, pT 2群 (49%) およびG 3, pT 3群 (23%) と比較して有意に良好であった (p<0.001). 初回治療法としては45例 (88%) に経尿道的膀胱腫瘍切除術 (TUR-Bt) が施行された. TUR-Btが施行された45例における膀胱内再発は20例 (44%) に認められた. 術後1年以内の再発が20例中12例 (60%) と最も多く認められたが, 2例 (10%) は術後9年目に再発した. TUR-Btを施行した患者の累積非再発率は1年69.6%, 3年58.8%, 5年49.7%と低下したが, 腫瘍の大きさおよび腫瘍数は再発因子として有意差は認められなかった.
51例中10例 (19.6%) に病期進展が認められ, うち6例 (11.7%) が癌死した. 腫瘍発育形態別の10年生存率は, 非乳頭状群が57.1%に対し乳頭状有茎性群は93.8%と低下傾向が認められた (p=0.140).
(結論) G 3の表在性移行上皮癌は長期の経過観察が必要と思われる. 特に, 非乳頭状発育形態を呈する症例は, 注意深い経過観察とともに, 再発や病期進展が認められた場合には根治的膀胱全摘出術, 補助化学療法あるいは放射線療法などの治療を考慮するべきである.
抄録全体を表示