日本泌尿器科学会雑誌
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90 巻, 7 号
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  • 工藤 貴正, 下田 直威, 西沢 理, 加藤 哲郎
    1999 年 90 巻 7 号 p. 651-656
    発行日: 1999/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    尿道閉塞疾患では膀胱組織ならびに支配神経に変化が生じるとされるが, 閉塞解除したのちの膀胱機能の変化については不明な点が多い. 本研究では, 尿道部分閉塞ならびに解除時の膀胱機能と膀胱で産生される nerve growth factor (NGF) の経時的変動を系統的に検討した.
    8週~20週齢の wistar 系メスラットを使用し, 非閉塞群, 持続閉塞群, 1週目閉塞解除群, 6週目閉塞解除群の4群に区分して検討した. 測定時期は持続閉塞群で閉塞後1日~12週, 閉塞解除群で解除後1週~6週に設定した. 膀胱機能として, 排尿反射連続惹起時の静止時膀胱内圧, 最大膀胱収縮圧, 膀胱収縮採続時間ならびに膀胱収縮頻度を検討した. 膀胱NGFの測定は two-site ELISA 法で行った.
    尿道閉塞により, 最大膀胱収縮圧は一旦減少したのち上昇し, 6週以降は正常の1.5倍に上昇した. 膀胱NGFは閉塞1日目に急激に増加して5倍に達し, 2週以降は漸減するものの高値で推移した.
    尿道閉塞解除を1週と6週後に行うと解除6週目までに最大膀胱収縮圧と膀胱NGFは閉塞前値に回復した.
    以上から, 尿道閉塞により膀胱は収縮能を亢進させて尿道抵抗に対応するとともにNGF産生を亢進させるが, これらの変化は閉塞解除により可逆的に回復すると考えられた.
  • 村岡 邦康, 高橋 千寛, 山本 泰久, 渡辺 健志, 平川 真治, 宮川 征男
    1999 年 90 巻 7 号 p. 657-662
    発行日: 1999/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    血清PSA値 (PSA), 前立腺直腸診 (DRE) のいずれかまたは両方で前立腺癌が疑われた143例と, visual laser ablation of prostate (VLAP) 施行時に systematic biopsy を施行した2例, 合計145例を対象に, 経直腸的超音波断層法 (TRUS) ガイド下 systematic biopsy を施行した結果を retrospective に解析し, 前立腺癌診断における systematic biopsy の適応について検討した. DRE, PSA, TRUSの癌診断効率について検討するとともに, 経腹的超音波検査で前立腺体積を計測した134例について, 我々が設定した前立腺体積別PSA基準値, および PSA density (PSAD) の診断効率についてそれぞれ検討した.
    4.0≦PSA<10.0ng/ml (gray zone 症例) での癌陽性率は69例中10例, 14.5%であり, 前立腺癌患者10例はすべてDREまたはTRUSが陽性であった. DREおよびTRUSが陰性であった27例には癌は認められなかった. 体積別PSA基準値, DRE, TRUSを組み合わせることで, PSA 4.0ng/ml以上の非癌患者29症例 (21.5%) を systematic biopsy の適応から除外することができた.
    以上より, 前立腺癌診断において, DREとTRUSに十分習熟すれば, DRE, TRUSと体積別PSA基準値を組み合わせることにより, 侵襲のある前立腺生検の頻度を減らすことが可能であると考えられた.
  • 後藤 智隆, 柿澤 至恕
    1999 年 90 巻 7 号 p. 663-668
    発行日: 1999/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 小児の急性陰嚢症の診断は困難な事がしばしばある. 我々が経験した小児急性陰嚢症について検討した.
    (対象) 1986年4月1日から1998年3月31日までの12年間に, 国立小児病院で急性陰嚢症の診断にて手術が施行され, 診断が確定した15歳以下の小児40例を対象とした.
    (結果) 術後の確定診断は, 精索捻転症14例 (35%), 精巣付属器捻転症22例 (55%), 急性精巣上体炎3例 (75%), 鼠径ヘルニアの嵌頓1例 (25%) で, 付属器捻転症が最も多くその内訳は, 精巣垂捻転症が20例, 精巣上体垂捻転症が2例であった. 次いで精索捻転症が多くその内訳は, 鞘膜内捻転11例, 鞘膜外捻転3例であった. 年齢分布は精索捻転症でピークが2歳と14歳の二峰性を示したが, 付属器捻転症ではピークが9歳で一峰性であった. 精巣上体炎は全例2歳以下であった. 精索捻転症では14例中6例で精巣壊死のため精巣摘除となった.
    (結論) 精巣付属器捻転症に対し手術を不要とする意見もあるが, 症状が重い場合や持続, 反復する場合は積極的に手術を行うべきと考えている.
  • 及能 久隆, 内田 豊昭, 小林 聖二, 斎藤 毅, 佐藤 威文, 村本 将俊, 志村 哲, 柴田 雄二, 小柴 健
    1999 年 90 巻 7 号 p. 669-674
    発行日: 1999/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) Grade 3 (G3), 表在性膀胱癌移行上皮癌 (pTaおよびpT 1) の予後因子について検討した.
    (対象と方法) 症例は1971年7月から1995年9月までの25年間に当科を初診した51例のG 3, 表在性移行上皮癌における生存率および予後因子について検討した.
    (結果) G 3, 表在性移行上皮癌の5年生存率は92.3%で, G 3, pT 2群 (49%) およびG 3, pT 3群 (23%) と比較して有意に良好であった (p<0.001). 初回治療法としては45例 (88%) に経尿道的膀胱腫瘍切除術 (TUR-Bt) が施行された. TUR-Btが施行された45例における膀胱内再発は20例 (44%) に認められた. 術後1年以内の再発が20例中12例 (60%) と最も多く認められたが, 2例 (10%) は術後9年目に再発した. TUR-Btを施行した患者の累積非再発率は1年69.6%, 3年58.8%, 5年49.7%と低下したが, 腫瘍の大きさおよび腫瘍数は再発因子として有意差は認められなかった.
    51例中10例 (19.6%) に病期進展が認められ, うち6例 (11.7%) が癌死した. 腫瘍発育形態別の10年生存率は, 非乳頭状群が57.1%に対し乳頭状有茎性群は93.8%と低下傾向が認められた (p=0.140).
    (結論) G 3の表在性移行上皮癌は長期の経過観察が必要と思われる. 特に, 非乳頭状発育形態を呈する症例は, 注意深い経過観察とともに, 再発や病期進展が認められた場合には根治的膀胱全摘出術, 補助化学療法あるいは放射線療法などの治療を考慮するべきである.
  • 江越 賢一, 赤倉 功一郎, 植田 健, 武井 一城, 伊藤 晴夫
    1999 年 90 巻 7 号 p. 675-680
    発行日: 1999/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 尿路結石症の診断治療において, 尿中蓚酸測定は重要であり, 正確で簡便で低コストな測定法が求められている. 我々は, 臨床上現在よく用いられている3方法を比較検討した.
    (対象と方法) 1996年10月1日から1997年6月30日までの間に, 尿路結石症患者144人から146検体を24時間酸性蓄尿にて採取した. 検体中の蓚酸を比色法・酵素法・イオンクロマトグラフ法 (IC法) の3方法で測定し, 相関関係を検討した.
    (結果) 3方法の相関を蓚酸濃度でみると, 比色法とIC法は相関係数が0.86, 酵素法とIC法は0.91, 比色法と酵素法は0.90であった. 蓚酸尿中1日排泄量でみると, それぞれ0.76, 0.87, 0.82といずれも相関係数が低くなった. 高蓚酸尿群と正常蓚酸尿群にわけて相関をみると, 比色法とIC法の相関係数は高蓚酸尿群で0.58, 正常蓚酸尿群で0.34. 酵素法とIC法では高蓚酸尿群で0.93, 正常蓚酸尿群で0.71であった.
    (結論) 比色法は最も安価で簡便だが, 有用性は低かった. 酵素法はIC法より安価で簡便だが同様に有用であった.
  • 小友 良, 下田 直威, 佐藤 滋, 佐藤 一成, 小川 修, 加藤 哲郎
    1999 年 90 巻 7 号 p. 681-687
    発行日: 1999/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 膀胱収縮には atropine 抵抗性の部分があることが知られている. これにはNANC (non-adrenerffic, non-cholinergic) 収縮が含まれており, その伝達物質の一つとしてATPがあげられている. そこで我々は, 下部尿路機能制御におけるATP受容体の役割を検討した.
    (対象と方法) urethane 麻酔下S-D系雌ラット52頭を対象とした. 等容量性律動性膀胱収縮モデルを用いて膀胱内圧と尿道内圧を記録し, 動脈投与におけるATP関連薬剤の効果を検討した.
    (結果) 膀胱では, αβmetATP投与直後に最大膀胱収縮圧が上昇し, 引き続くP2X受容体脱感作相では最大膀胱収縮圧が低下したが, 静止時膀胱内圧は変化しなかった. RB-2は膀胱活動に何ら変化を与えなかった. 尿道では, αβmetATPによるP2X受容体脱感作相に静止時尿道内圧が低下し, またRB-2により静止時尿道内圧が上昇した. いっぽう排尿反射時の最大尿道弛緩圧はATP関連薬剤の影響をほとんど受けなかった.
    (結論) 膀胱ではATP受容体は蓄尿時にほとんど関与せず排尿時にP2X受容体を介して収縮を促進すること, 尿道ではATP受容体は蓄尿時にP2X受容体を介する緊張促進とP2Y受容体を介する緊張抑制の双方で関与して尿道緊張を制御するが, 排尿時の弛緩には関与しないことが示された.
  • 田上 隆一, 奈路田 拓史, 田村 雅人, 金山 博臣, 香川 征
    1999 年 90 巻 7 号 p. 688-691
    発行日: 1999/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    尿の自然腎盂外溢流は尿管結石など急性尿路閉塞の合併症としてしばしば経験するが, 嚢胞内への溢流は非常にまれであり調べ得た限りでは海外で1例の報告をみるのみである. 今回われわれは腎洞嚢胞内への溢流を認めた症例を経験したので報告する.
    症例は進行前立腺癌に対してホルモン療法施行中の71歳の男性で, 左側腹部痛を主訴に受診した. 排泄性尿路造影にて左上部尿管結石による閉塞および造影剤の腎盂・腎杯外への溢流を認めた. 嚢胞を避け経皮的腎瘻を造設し造影したところ, 以前より認めていた腎洞嚢胞内への溢流が認められた. 結石は体外衝撃波結石破砕術により治療され, 閉塞・溢流は消失した. 1ヵ月後の腹部CTでは結石は消失し, 嚢胞は縮小していた.
  • 牛田 博, 林田 英資, 金 哲將, 朴 勺, 岡田 裕作
    1999 年 90 巻 7 号 p. 692-695
    発行日: 1999/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    56歳独身男性. 4~5年前より両側陰嚢内容の腫脹があり, 1年前より両側陰嚢内容の腫脹の増大傾向と疼痛を認めたため当院受診. 術前超音波検査にて両側多房性陰嚢水腫と診断し, 同根治術を施行したが, 精巣鞘膜には漿液の貯留は認められず, 精巣上体に大小不同の多房性嚢胞が認められた. 術中所見から両側多房性精巣上体嚢胞と考えられ, 両側精巣上体嚢胞摘出術を施行した. 摘出病変の大きさは, 右直径12×6cm, 左直径8×5.5cmであった.
    精巣上体嚢胞は精巣上体管や精巣輸出管が閉塞することにより精液が貯留したもので, 好発部位は精巣上体頭部, 通常は一側性で1cm以下が大部分で単房性ときに多房性を呈するといわれている. 自験例では, 明らかな原因もなく両側同時発生し, 1cm以上あり, しかも精巣上体全体が嚢胞化している非常にまれな症例であると考えられた.
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