日本泌尿器科学会雑誌
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90 巻, 8 号
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  • 阿部 貴之
    1999 年 90 巻 8 号 p. 697-705
    発行日: 1999/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 血清D-アラビニトール測定により, カンジダ腎感染症と無症候性カンジダ尿症との鑑別が可能か, またカンジダ腎感染症の早期診断および治療のモニタリングとして有用かを検討した. カンジテック®と血清β-D-グルカンとの比較も同時に行った.
    (対象と方法) 1.実験的検討: カンジダ腎感染ラットと正常ラットの血清D-アラビニトールを測定し, 両群の比較からカットオフ値を設定した. 次にラットにカンジダ接種後, 血清D-アラビニトール, カンジテックを経時的に測定した. さらにカンジダ腎感染ラットに経日的に抗真菌薬であるフルコナゾールを0.5mg投与し, 両者の推移を追った. 2. 臨床的検討: 尿培養でカンジダ属が検出された臨床症例において, 血清D-アラビニトール, カンジテックに血清β-D-グルカンも加え同時に測定し, カンジダ腎感染症の診断が可能かを比較検討した.
    (結果) 診断感度を重視し, なおかつ特異度も高くなる2.0μg/mlを血清D-アラビニトールのカットオフ値とした. ラットにおいてカンジダ腎感染成立にともない血清D-アラビニトール値は上昇し, 治療開始により低下傾向を示した. カンジテックはすべて陰性であった. また臨床例においてもカンジダ腎感染症では血清D-アラビニトールとβ-D-グルカンはほとんどの症例で高値を示し, 治療により低下した. カンジテックの陽性率は低かった.
    (結論) 血清D-アラビニトールはカンジダ腎感染症の早期診断として, また治療のモニタリングとしての有用性が示唆された.
  • 長谷川 倫男, 三木 健太, 加藤 伸樹, 大石 幸彦
    1999 年 90 巻 8 号 p. 706-712
    発行日: 1999/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) MR Urography (MRU)は, 尿の滞留状態を非侵襲的に描出可能な画像診断法である. 今回尿路通過障害が疑われた症例にMRUを施行, 点滴静注尿路造影 (DIP) および逆行性尿路造影 (RP)と比較し, MRUの有用性を検討した.
    (方法) 対象は超音波検査などで尿路の通過障害が疑われた65症例で, MRUは全例に, DIPは47例, RPは27例に施行した.
    以下の2つを検討した.
    1) MRUで, どの程度の尿の停滞を描出できるか.
    2) 各画像検査の描出度を以下のように点数化し, 評価した.
    尿路の描出を全く認めず0点
    尿路やや描出1点
    閉塞部位がわかる2点
    閉塞の部位の描出が明瞭3点.
    (結果) 1) DIPで閉塞部までの全尿管の走行が描出される程度の軽度の尿の停滞でもMRUは描出できた. 2) DIPとMRUの比較では, DIPで尿管が全く描出されなかった24例はMRUで平均2.4点と良好に描出された. 逆にDIPで尿流が良好な場合, MRUは描出不良であった. RPで尿管にカテーテルが入らなかった10例 (37%) も, MRUでは描出できた (平均2.1点).
    (結論) MRUの適応症例は, DIPで上部尿路の描出が不良でかつRP不可能な尿路腫瘍における腫瘍存在部の確認, ヨードアレルギーや腎機能低下で造影剤が使用できない疾患における尿路閉塞状態の経過観察に良いと思われる.
  • 13例の長期予後について
    梅川 徹, 井口 正典, 尼崎 直也, 山手 貴詔, 紺屋 英児, 栗田 孝
    1999 年 90 巻 8 号 p. 713-717
    発行日: 1999/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 腎盂尿管移行部狭窄症 (ureteropelvic junction obstruction: UPJO) に対する治療法として, アキュサイス尿管切開バルーン装置を用いた逆行性エンドピェロトミーの有用性と長期成績を検討した.
    (対象と方法) 13例の腎盂尿管移行部狭窄症 (原発性12例, 続発性1例, 男性7例, 女性6例, 平均年齢36歳) をアキュサイスでの治療の対象とした. レントゲン透視下で狭窄部を電気的に切開した後に, 7~14Frの尿管カテーテルを6~8週間挿入した.
    (結果) 平均手術時間は43分で, 術後在院日数 (中央値) は4日であった. 手術成績 (術後8~40ヵ月, 平均27ヵ月の観察) は, 主訴 (腹痛) の消失による自覚的成功率: 92% (11/12) で, レントゲン検査による他覚的成功率: 62% (8/13) であった. 輸血を要する症例が1例あったが他に特記すべき合併症はなかった. 不成功例5例は, 経過観察中である.
    (結論) 今回の結果から, アキュサイスを用いたエンドピエロトミーは, 他の手術法に比べ低侵襲で, やや劣るもののある程度の有効性が認められた. 本法は, UPJOに対する外科治療の一つの選択肢になり得ると考える.
  • 特に併発非 transition zone 部癌巣の臨床的意義について
    坂本 直孝, 長谷川 淑博, 黒岩 顕太郎, 古賀 寛史, 小藤 秀嗣, 中島 信能, 内藤 誠二
    1999 年 90 巻 8 号 p. 718-723
    発行日: 1999/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景) 前立腺癌において超音波ガイド下系統的生検の普及により, transition zone (TZ) 癌の発見の機会が増加している. 今回, 我々はTZ部癌巣を主腫瘍とする, いわゆるTZ癌症例における, 併発非TZ部癌巣の臨床的意義を検討した.
    (対象および方法) 根治的前立腺全摘術または膀胱前立腺全摘術が施行されたTZ癌症例20例を対象とし, 階段組織切片にてTZ部癌巣と併発非TZ部癌巣について臨床病理学的に検討した.
    (結果) TZ部癌巣により被膜外浸潤, 精嚢腺浸潤, 切除断端陽性, 膀胱頸部浸潤は各々5例 (25%), 2例 (10%), 6例 (30%), 4例 (20%) に認められ, 被膜外浸潤は全例前立腺前方で, 切除断端陽性は全例前立腺尖部側の前方で生じていた. 一方, 併発非TZ部癌巣は17例 (85%) に認められ, 16例は多発していた. これらにより被膜外浸潤, 精嚢腺浸潤は各々3例 (15%), 1例 (5%) に認められ, また, 1例 (5%) では神経温存手術のための切り込みにより切除断端陽性となった. 被膜外浸潤, 切除断端陽性は全例前立腺後側方にて生じていた. 3例において主腫瘍であるTZ部癌巣は前立腺限局癌であったにもかかわらず, 併発非TZ部癌巣が被膜外浸潤, 精嚢腺浸潤, 切除断端陽性の原因になっていた.
    (結論) TZ癌症例において, 併発非TZ部癌巣の存在も念頭に置く必要があり, 神経温存手術の選択などには注意が必要であると考えられた.
  • 高岩 正至, 中野 路子, 吉田 純也, 鎌田 竜彦
    1999 年 90 巻 8 号 p. 724-730
    発行日: 1999/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 本研究の目的はカテーテルの出口部が腹壁に開く腎瘻造設法を開発することである.
    (対象と方法) 対象はこの新しい方法について同意のとれた7例の水腎症患者であった. 通常の腎瘻造設法により14Fr. まで腎瘻を拡張の後, 腎瘻の出口部に長さ3cm, また腹部のカテーテル出口予定部に長さ5mmの皮膚切開を加え, 特製のタンネラーにて両者間に皮下トンネルを作製した. タンネラーの尾部に接続して皮下トンネル内に8号ネラトンカテーテルを貫通させた後, ネラトンカテーテルの内腔にガイドワイヤーを通しそれを腎盂まで誘導し, 次にそのガイドワイヤーを利用して14Fマレオコットカテーテルを腹壁の皮膚切開部から腎盂まで誘導した.
    (結果) 症例1から症例4には術直後のトラブルを認めたが, 症例5から7にはトラブルを認めなかった. 本法の手術時間と侵襲は腎瘻造設術と同程度であり, 患者が自己管理する手技は尿管皮膚瘻術と同程度であった.
    (考案) 本法のQOLは尿管皮膚瘻術のQOLと同程度と思われる. さらに, 本法は, 様々な尿路変向術後に水腎症をきたした症例に対しても, 本法は通常の腎瘻術に比べれば, 患者の承諾を得やすいと考える.
  • 滝本 至得, 児玉 雅仁, 杉本 周路, 濱田 隆正, 布施 卓郎, 川田 望, 平方 仁, 細川 広巳
    1999 年 90 巻 8 号 p. 731-740
    発行日: 1999/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    抗コリン剤に抵抗性の頻尿症状を訴える糖尿病患者17例に5-HT 2アンタゴニストである塩酸サルポグレラート (アンプラーグ®) を2週間投与しIPSS, QOLスコアを用いて検討した. 17例全例で頻尿症状の改善がみられ, 有効と判定された. QOLスコアが著しく改善していた. 一回排尿量の増加が認められた. 薬剤投与前後で, 尿流量率, 残尿量に有意差は認められなかった. 一方, 前立腺肥大症を中心とした対照例14例では, 頻尿症状の改善は殆どみられなかった.
    糖尿病患者で過活動型を示す膀胱排尿筋では5-HTに対する反応性が亢進していることが推測され, その反応は, 5-HT 2リセプターを介しているものと解釈できる.
  • 松本 富美, 宮本 賀, 薮本 秀典
    1999 年 90 巻 8 号 p. 741-744
    発行日: 1999/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    23生日, 女児. 在胎29週, 胎児超音波検査にて著明に拡張した膀胱と両側水腎症を指摘された. 在胎33週5日, 巨大膀胱と水腎症の増悪がみられたため, 帝王切開にて出生. 出生体重2,510g. Apgar score 8/9. 外表奇形無し. 出生直後の導尿は困難無く行われ, 190mlの尿流出と水腎症の改善がみられた. 13生日に行われた排尿時膀胱尿道造影ではVURを認めず, 尿道の拡張もなかった. また, 生後2日目に上部消化管造影, 注腸造影が行われたが, 異常はみられなかった. さらに, 頭部CT, 脊髄MRI所見も正常であった. 生後30日目の膀胱内圧測定では detrusor hypocontractility の像を呈し, 以後母親による間欠的導尿が導入された. 12ヵ月現在, 尿路感染の既往なく, 腎機能も正常に保たれている. しかしながら, 離乳食の増加に伴い, 高度の便秘がみられ, 次第に下部消化管の機能的通過障害が明らかとなった.
    本症例は新生児期に先天性巨大膀胱を唯一の症状とした idiopathic intestinal pseudo-obstruction syndrome の1例であるが, 同様の報告はこれまでにみられない. 尿路異常が出生前に診断されるにも関わらず, 消化器症状の発現が遅れてみられることから, 新生児期以後の管理には尿路のみならず消化管に対しても充分な注意を要する.
  • 戸田 房子, 奥田 比佐志, 近藤 典子, 井口 靖浩, 伊藤 文夫, 龍治 修, 田邉 一成, 合谷 信行, 中沢 速和, 東間 紘
    1999 年 90 巻 8 号 p. 745-749
    発行日: 1999/08/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は41歳・女性. 1995年12月, 右側腹部痛を主訴に前医を受診した. 精査にて, 右腎静脈から右心房に至る腫瘍塞栓を伴う右腎血管脂肪腫と腫瘤の破裂による側腹部痛と診断した. 人工心肺下, 心拍動下に根治的右腎摘除術および腫瘍塞栓摘出術を行った. 右心房内の腫瘍塞栓は周囲との癒着はなく, 約8cmの下大静脈切開を行い腎腫瘤と一塊に摘出した. 腫瘤最大径は18cmで, 腫瘍塞栓長は約13cmであった. 結節性硬化症の合併は認めなかった. 術後3年目の現在, 健在である. 欧米文献を含め下大静脈腫瘍塞栓を伴う腎血管筋脂肪腫は19例報告されているが, 右心房に達する腫瘍塞栓の報告例としては, 検索し得た限り第3例目と思われた. 心房内に腫瘍塞栓を有する腎血管筋脂肪腫であっても, 根治的治療が可能であった.
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