(背景と目的) T4腎癌の予後規定因子および拡大腎摘の適応を明確にする事を目的として検討した.
(対象と方法) 対象は1965年より1994年までに横浜市大およびその関連病院で経験したpT4腎癌症例53例で, 生存率を臨床病理学的諸因子 (年齢, 性, 発見契機, 発育型, 腫瘍径, 異型度, 細胞型, 構築型, リンパ節転移の有無, 静脈侵襲の有無, 遠隔転移の有無, 拡大腎摘の有無) の項目別に検討した.
(結果) 単変量解析で有意差が認められた予後因子は, 発見契機, 遠隔転移の有無, 拡大腎摘の有無であり, リンパ節転移の有無に傾向差を認めた. 拡大腎摘施行例28例に限って検討すると, 遠隔転移のない症例, 腹壁浸潤のない症例および尿路外症状のない症例が予後良好であった.
(結語) T4腎癌の予後因子の中で, 遠隔転移, リンパ節転移, 尿路外症状および腹壁浸潤の有無が重要であった. 根治的切除が可能と判断される症例は, 手術適応となる症例も認められた. 遠隔転移およびリンパ節転移のある症例では, 原則的には, 手術適応外であるが, 転移巣の発育速度を見極め, slow growing 症例である事が確認できれば, 拡大腎摘を施行する事も一法と考えられた.
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