日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
ISSN-L : 0021-5287
90 巻, 9 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 福田 百邦, 里見 佳昭, 中橋 満, 仙賀 裕, 大古 美治, 宇田川 幸一, 朝倉 智行
    1999 年 90 巻 9 号 p. 753-762
    発行日: 1999/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) T4腎癌の予後規定因子および拡大腎摘の適応を明確にする事を目的として検討した.
    (対象と方法) 対象は1965年より1994年までに横浜市大およびその関連病院で経験したpT4腎癌症例53例で, 生存率を臨床病理学的諸因子 (年齢, 性, 発見契機, 発育型, 腫瘍径, 異型度, 細胞型, 構築型, リンパ節転移の有無, 静脈侵襲の有無, 遠隔転移の有無, 拡大腎摘の有無) の項目別に検討した.
    (結果) 単変量解析で有意差が認められた予後因子は, 発見契機, 遠隔転移の有無, 拡大腎摘の有無であり, リンパ節転移の有無に傾向差を認めた. 拡大腎摘施行例28例に限って検討すると, 遠隔転移のない症例, 腹壁浸潤のない症例および尿路外症状のない症例が予後良好であった.
    (結語) T4腎癌の予後因子の中で, 遠隔転移, リンパ節転移, 尿路外症状および腹壁浸潤の有無が重要であった. 根治的切除が可能と判断される症例は, 手術適応となる症例も認められた. 遠隔転移およびリンパ節転移のある症例では, 原則的には, 手術適応外であるが, 転移巣の発育速度を見極め, slow growing 症例である事が確認できれば, 拡大腎摘を施行する事も一法と考えられた.
  • 坂本 泰樹, 松本 哲朗, 熊澤 淨一
    1999 年 90 巻 9 号 p. 763-768
    発行日: 1999/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 以前より実験的自己免疫性精巣炎 (Experimental Autoimmune Orchitis; EAO) が免疫性男性不妊症のモデルとして研究されている. 臨床的に起こりえる片側精巣損傷 (外傷) により, 対側にEAO, すなわち“交感性精巣炎”を誘導するマウスのモデルを我々はすでに報告した. 今回は, 単なる対側の精巣炎のみの誘導でなく, 長期観察により実際にそれらのマウスが不妊症になることを報告する.
    (対象と方法) 麻酔下にC3H/HeNマウスの片側の精巣を注射針で穿刺し, 持針器で挫滅し, 3, 6または9ヵ月後にメスのマウスとの交配実験を行ない, 妊孕能と対側の精巣の組織像との相関関係を調べた.
    (結果) 経時的観察では損傷後3ヵ月では50%のマウスが妊孕能を失っており, 6ヵ月目では60%のマウスが, 9ヵ月目では70%のマウスが不妊症になっていた. 別の実験では, 3ヵ月で80%のマウスが不妊症になっていた. 長期観察後の対側の精巣組織は間質への細胞浸潤は減少し, 精細管の萎縮を伴うような造精機能障害が著明であった. 同時に, 遅延型過敏反応 (Delayed Type Hypersensitivity; DTH) が自己の精巣細胞 (Testicular Cells; TC) に対して誘導され, また抗TC自己抗体も誘導された.
    (結論) 片側の精巣挫滅損傷によって, 自己免疫性“交感性精巣炎”が誘導されただけではなく, 実際に自己免疫性不妊症が誘導されることが長期観察により確認された. 対側の組織像と不妊症とは大体の相関はあるが, 例外も見られた. 今回の我々の不妊症モデルは臨床的な精巣外傷に類似し, EAOやヒトの免疫性男性不妊症の免疫学的機序の解明や治療法の研究に非常に有用であると思われる.
  • 心因性頻尿・尿意切迫症候群と心因性尿閉の病態追求
    福井 準之助, 貫井 文彦, 紺谷 和彦, 永田 幹男, 黒川 純, 勝田 真行, 杉村 享之, 岡本 重禮, 小松 浩子
    1999 年 90 巻 9 号 p. 769-778
    発行日: 1999/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 我々は心因性下部尿路機能障害 (PLUTD) に於ける心因性頻尿―尿意切迫症候群 (PFUSと略す) と心因性尿閉 (PURと略す) の病態を明らかにし, 両症候群の病因差を追求した.
    (対象と方法) PLUTDの女性45例 (PFUS: 23例, PUR: 22例) に, 心理テスト (Cornell Medical Index: CMI, 東大式エゴグラム: TEG), 尿流動態検査, 精神発汗テストを施行した.
    (結果) PLUTDの年齢は20歳代と50~60歳代に多く, 1/4以上に膿尿を認めた. 最大尿流率ではPURでは低値を示し残尿が多く, 機能的膀胱容量ではPFUSの半数以上が100ml未満であった. 尿流動態検査から多くのPFUSでは失禁なしに400mlまで尿意我慢が可能なこと, 尿意闘値幅の減少, 15%強の無抑制収縮の存在等が分かった. 圧測定から両症候群とも低コンプライアンス膀胱が多いため上部尿路検索が必要なこと, PFUSでは排尿時の排尿筋収縮圧は高く, PURでは無反射か高収縮圧排尿であることが分かった. 両症候群とも円形の膀胱造影像が多かったことから膀胱壁の緊張状態が判明した. 精神性発汗テストではPFUSでは各種負荷試験で陽性動向を, PURでは心理負荷テストで陰性傾向を認めた. 心理テストのCMIでIIIおよびIV型 (神経症) の比率は, PFUSで40%弱, PURで55%強と高かった. TEGでは特定の傾向が認められなかった.
    (結論) 心因性下部尿路障害は種々の心因反応を反映しているため, その診断には泌尿器科的, 心理学的, 自律神経学的検査という多方面からの検索が必要であると考えられた.
  • 伊藤 貴章, 間宮 良美, 相澤 卓, 秋山 昭人, 続 真弘, 山本 真也, 大野 芳正, 三木 誠, 古里 征国
    1999 年 90 巻 9 号 p. 779-783
    発行日: 1999/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) stage B, Cの前立腺癌に対する, CAB療法によるネオアジュバント療法の病理組織学的治療効果及びそれに影響を与える因子について検討した.
    (方法) CAB療法を行い前立腺全摘を施行した20例を対象とし, 針生検と全摘標本に対し, クロモグラニンA, p53 (mutant type), bcl-2の免疫組織化学的検討を行った. 組織学的治療効果判定は前立腺癌取り扱い規約に準じて行い, 術前PSA値, Gleason grade も合わせて検討した.
    (結果) 治療効果は, G0:1例, G1:10例, G2:6例, G3:3例であった. 30%で down grading を認め, 全例生検標本でbcl-2が陰性であった (p=0.008). 35% (7例) で down staging を認め, 全例切除断端陰性でうち5例がT3であった. Grade 0, 1群 (A群) と, Grade 2, 3群 (B群) に分けて検討した. Gleason 分類の4・5の成分の有無では, A群に多い傾向にあり (p=0.027), bcl-2の発現も, A群に多い傾向にあった (p=0.006). bcl-2, p53のどちらか一方あるいは両者が陽性のものも, A群に多い傾向にあった (p=0.007).
    (結論) 半数以上の症例で down grading, down staging は期待できないと思われた. T3症例では surgical failure を減らせる可能性が示唆された. Gleason 4・5を含まず, p53, bcl-2が陰性の症例では良好な組織学的治療効果が得られると考えられた.
  • 近接効果に関する検討
    平山 暁秀, 柏井 浩希, 小野 隆征, 河田 陽一, 平田 直也, 山本 雅司, 山田 薫, 百瀬 均, 塩見 努
    1999 年 90 巻 9 号 p. 784-789
    発行日: 1999/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 二分脊椎症患者の膀胱尿管逆流症 (以下VUR) に対しコラーゲンによる内視鏡的逆流防止術を行いその効果について検討した.
    (方法) 国際分類にて, grade II以上のVURに対し, コラーゲンによる内視鏡的逆流防止術を行った. 術後3ヵ月以上経過観察 (平均5ヵ月) しえた男性6例, 女性8例 (平均14.4歳) 22尿管を対象とした. 術前全例に対しコラーゲン皮内反応を行い全例陰性である事を確認し, IVP, CG, UDSを施行した. 術後は原則として1, 3, 12ヵ月, 以後1年に一度のCGにてVURの再発を調査した.
    (結果) 4症例が無麻酔で行い得た. コラーゲン注入による副作用は認めなかった. 1回の注入にてVURが消失したものは, 17尿管 (77%), 2回の注入にて消失したものは2尿管 (9%)であった. 初回注入による治療効果を尿管口の形態, VURの grade, 膀胱コンプライアンス, detrusor hyperreflexia の有無にて比較したが, 明らかな関係は認められなかった.
    (結語) 二分脊椎症例のVURに対するコラーゲンによる内視鏡的逆流防止術は, 簡便で患者に対する侵襲も少なく, 短期成績では十分な効果が得られたが, 再発の問題もあり, 長期成績を十分に検討した上で, 二分脊椎症例のVURに対する治療における本治療法の位置付けを考えていくことが重要であると思われた.
  • 柯 昭仁, 江藤 弘, 荒川 創一, 守殿 貞夫
    1999 年 90 巻 9 号 p. 790-797
    発行日: 1999/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 前立腺組織における特異抗原の解析を目的として, ヒト前立腺組織を免疫原としてモノクローナル抗体を作製した.
    (方法) 細胞融合法によりハイブリドーマを作製し, ヒト前立腺癌培養細胞PC-3およびヒト膀胱癌培養細胞T-24による1次スクリーニング, 各種ヒト正常および癌組織を用いた免疫染色による2次スクリーニングから前立腺のみに反応するものを選び, さらに正常前立腺および前立腺癌の免疫染色によるPAP, PSAの各抗体との抗原分布の比較.精漿を用いた western blotting およびゲル濾過画分との反応性をPAP, PSA, γ-Smの各抗体と比較検討した.
    (結果) 1次および2次スクリーニングから最終的に前立腺組織に特異的なモノクローナル抗体KP-9を得た. KP-9抗体の特異性は各種培養細胞および各種正常ならびに腫瘍組織を用いた免疫染色による検討からヒト前立腺癌培養細胞PC-3, 前立腺腺上皮細胞の apical site および腺腔内分泌物, 一部の前立腺癌に陽性であった. 生化学的解析からKP-9の認抗原はPAP, PSAおよびγ-Smとは分子量, 抗原性の明らかに異なる分子量30万以上のタンパクで, そのエピトープは糖鎖の関与しない部分である可能性が示唆された.
    (結論) KP-9抗体の認識抗原は前立腺腺上皮細胞に特異的に存在し, 前立腺癌にも発現されていることから, 従来の前立腺における特異抗原と同様に腫瘍マーカーとして応用し得る可能性が示唆された.
  • 黒川 泰史, 李 慶寿, 横田 欣也, 金山 博臣, 香川 征
    1999 年 90 巻 9 号 p. 798-801
    発行日: 1999/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は4歳, 男児. 生来多飲多尿で1歳時に尿蛋白陽性を指摘された既往有り. 感冒様症状および腹痛下痢を主訴に当院小児科を受診し, 尿路感染症及び腎機能障害を認め精査のため入院. 超音波検査にて両側腎盂腎杯の拡張を認めたため当科紹介.
    腹部・骨盤部CTにて両側水腎 (右萎縮腎)・水尿管・巨大膀胱を指摘. 排尿時膀胱尿道造影にて両側 grade Vの膀胱尿管逆流症, 膀胱容量の増大 (300ml以上) および残尿のない排尿を認めた. 尿流計は最大尿流量率21.6ml/sec, 排尿量110ml, 残尿量24mlであった.
    以上より Megaureter-megacystis syndrome と診断し, Cohen 法による両側尿管逆流防止術を施行, 術後経過良好で外来観察中である.
    Megaureter-megacystis syndrome は非常に稀であり, 本邦3例目と思われた.
  • 荒井 好昭, 續 真弘, 大久保 雄平, 相澤 卓, 三木 誠
    1999 年 90 巻 9 号 p. 802-805
    発行日: 1999/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    47歳女性, 子宮筋腫の診断で, 近医にて単純子宮摘出術を施行された後, 定期的に施行した超音波検査にて膀胱内腫瘤性病変を指摘された. 膀胱鏡検査では, 前壁に表面平滑な拇指頭大の隆起が認められたが粘膜に異常は無かった. 骨盤CTにて周囲との境界明瞭な直径3cm大の粘膜下腫瘤を認め, 造影効果は無かった. MRIではT1強調画像で低信号, T2強調画像で高信号で内部やや不均一な像がみられた.
    その後の増大の可能性を考慮し, また悪性の可能性も否定できないため, 膀胱部分切除術を施行した. 摘出標本は4cm×2.5cm×2.5cm, 12g, 粘膜面には著変をみとめず, 割面は多胞性で, 褐色やや粘稠な内溶液を含んでいた. 組織学的には, 管状腺管構造の内面が繊毛円柱上皮で覆われており, muller 管由来の腫瘍性病変 (mullerianosis) である endosalpingiosis と診断した.
    Endosalpingiosis は1990年に Batt が初めて提唱した比較的新しい概念であり, 本邦での膀胱発症例の報告はなく, 今までに世界で3例が報告されているのみである. 強い自覚症状はなく, 外科的治療が第一選択であると考えられた. 的確に日本語訳した文献がないため以下では endosalpingiosis のまま記載する.
feedback
Top