日本泌尿器科学会雑誌
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91 巻, 1 号
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  • 小林 幹男, 竹沢 豊, 中田 誠司, 井上 雅晴, 栗原 寛, 近藤 忠徳, 古作 望, 松本 和久, 中里 晴樹, 山中 英寿
    2000 年 91 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2000/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 群馬県伊勢崎市の基本住民検診に1997年度よりPSAが検査項目に入りPSA単独の前立腺癌検診が始まった. PSA検診の普及が予想される為, 検診の結果と, 今後前立腺癌検診を如何に進めるべきか考察を行った.
    (対象と方法) 基本住民検診を受診した40~64歳までの男性1,423人中の1,382人である. PSAが4.1ng/ml以上の数値 (TandemR測定キット) を要精密検査値とし2次検診の対象とした. 2次検診の対象者は38人で, 受診者は24人であった. 2次検診受診者は全例PSAが再検され, 23人に直腸診及び経直腸エコーの両者又はその一方が施行された. 3次検診は対象者, 受診者ともに16人で, 全例に前立腺生検が行われた.
    (結果) 50~59歳で1人, 60~64歳で6人に癌が診断され, PSAが4.1~10ng/mlまでの20人中の4人に, 20ng/ml以上の3人全員に癌が診断された.
    PSAが4.1~10ng/mlでT2N0M0の4例と20.1ng/ml以上でT3N0M0の1例に, 前立腺全摘が行われた.
    40歳~64歳までのPSA検診で, 7人 (0.51%) の前立腺癌が診断され, T2N0M0 (57.1%) の4人に根治的手術が行われ, 全で早期癌であった.
    (結論) PSA検診が他の前立腺検診と同様に早期癌を診断出来る事は推測されるが, PSA検診による癌の発見が予後に貢献するか否かは今後の課題であり, 大規模なPSA検診が結果を導くものと思われる.
    今後は, 対象を手術適応年齢の69歳までとし, 周辺地区へ拡大した検診を実施したい.
  • 川島 清隆, 中野 勝也, 宮本 重人, 橋本 勝善, 柴田 康博, 岡崎 浩, 中田 誠司, 高橋 溥朋
    2000 年 91 巻 1 号 p. 8-13
    発行日: 2000/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 肝炎やHIV等の感染症, GVHD等のリスクを伴う同種血輸血を回避する目的で泌尿器科悪性腫瘍手術48例に貯血式自己血輸血を施行し同種血輸血回避の可能性,貯血式自己血輸血の有用性について検討した.
    (方法) 7例にはエリスロポエチン製剤非使用で, 41例にはエリスロポエチン製剤を使用し術前に400mlから1,200mlまでの貯血を行った. 症例は根治的腎摘除術18例 (うち両側2例), 根治的腎尿管摘除術2例, 後腹膜リンパ節郭清 (以下, RPLND) 2例, 根治的前立腺摘除術12例, 根治的膀胱摘除術14例であった.
    (結果) 各術式ごとの出血量は根治的腎摘除術381±522ml (両側1,158±202ml), 根治的腎尿管摘除術517±5ml, RPLND 636±574ml. 根治的前立腺摘除術665±291ml, 根治的膀胱摘除術1,123±417mlであった. 同種血輸血の追加が必要であった症例は3例 (6%) のみであった.
    (結論) 貯血式自己血輸血による同種血輸血の回避率は94%であった. 大きい腎癌や両側症例, 根治的前立腺摘除術, 根治的膀胱摘除術が現時点で自己血輸血の良い適応と考えられたが, さらに輸血そのものの完全回避へ向けての努力が必要と考えられた.
  • 日置 琢一, 山田 泰司, 小川 和彦, 文野 美希, 杉村 芳樹
    2000 年 91 巻 1 号 p. 14-20
    発行日: 2000/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 最近, 末梢血幹細胞移植による大量化学療法が精巣胚細胞腫瘍に対して行なわれてきている. 本研究では, 精巣腫瘍の代表的な導入化学療法である bleomycin+etoposide+cisplatin (BEP) 療法を用いて, 末梢血幹細胞の至適採取時期について検討した.
    (対象と方法) 1996年から1998年の転移を有する精巣腫瘍患者6例10コースにおいて, BEP療法施行中の末梢血CD34陽性細胞比率の推移を測定し, 3例4回の末梢血幹細胞採取を行った. 組み換えヒト顆粒球コロニー刺激因子 (rhG-CSF) は好中球数1,000/μ1以下にて投与を開始した.
    (結果) rhG-CSFを併用したBEP療法において, 化学療法開始から 18~21日目 (中央値19日) に末梢血CD34陽性細胞比率が最高3.0~24.6% (平均10.0%) となった. 末梢血CD34陽性細胞比率が最高値を示した時の白血球数は6,880/μl~23,600/μlで, 9コース中7コースでは18日目以後に初めて白血球数6,000/μlを越えた時であった. 1回の末梢血幹細胞採取にて平均9.5×106/kgのCD34陽性細胞が得られ, 1例あたりの平均は12.6×106/kgであった.
    (結論) rhG-CSFを併用したBEP療法を初回治療に用いた場合には, 十分な末梢血幹細胞動員が可能であった. 我で々の結果からは, BEP療法では18日目以後に白血球数が6,000/μlを越えた日とその翌口の2回PBSC採取を施行する方法が最も勧められる.
  • 佐々木 隆聖, 羽渕 友則, 小川 修, 加藤 哲郎, 松尾 重樹, 佐々木 秀平, 三浦 邦夫, 武村 尊生, 増田 豊, 清水 徹男
    2000 年 91 巻 1 号 p. 21-28
    発行日: 2000/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 前立腺全摘除術は限局性前立腺癌の治療法として確立されているが, 近年手術後のQOLの優劣が重要視されるようになってきた. そこで前立腺全摘除術が患者のQOLに与える影響を, General Health Questionnaire (一般健康調査票) を中心とした質問用紙法を用いて検討した.
    (対象と方法) 当院で施行した前立腺全摘除術施行症例のうち無作為に抽出した22例を対象とした. 一般的QOLの評価は一般健康調査を用い, 疾患特異QOLは, 排尿と性機能の2項目に主眼をおいた質問用紙法によって検討した. 同時に排尿と性機能に関しては, visual analogue scale (VAS) を用いて検討し質問用紙法との比較検討を行った.
    (結果) 前立腺全摘除術は一般的QOLへの影響は少ないが, 性機能といった疾患特異QOLを低下させることが認められた. VAS利用の質問用紙は疾患特異QOLの評価に有用であるだけでなく, QOLの数量化が容易であると思われた.
  • 小関 清夫, 中野 路子, 高岩 正至, 鎌田 竜彦, 吉田 純也
    2000 年 91 巻 1 号 p. 29-32
    発行日: 2000/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎癌術後IFNα投与中止後の自殺企図の3例を経験したので報告する. 症例1, IFN投与中に鬱状態をきたし投与を中止した. 中止後, 約7ヵ月目に自殺企図.症例2, 3では投与中の鬱状態は認めないものの, 投与中止後, それぞれ約40日目, 7ヵ月目に自殺企図.
    IFN誘発の抑鬱状態は薬剤投与中止後消退するとは限らず, 投与中止後も厳重な精神症状の経過観察を続ける, むしろ強化する必要がある. IFN投与においては, 重篤な精神症状の副作用も考慮し慎重な投与が必要と思われる.
  • 松木 孝和, 西浦 啓之, 常 義政, 木下 博之, 森岡 政明, 田中 啓幹
    2000 年 91 巻 1 号 p. 33-36
    発行日: 2000/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    家族性原発性上皮小体機能亢進症の1家系について報告する. 58歳の兄は蛋白尿の精査中に高カルシウム血症を指摘され上皮小体機能亢進症の疑いで紹介された. 入院時, 高カルシウム血症と低リン血症および Intact-PTH, Gastrin の上昇を認めた. 頸部CTで両側にそれぞれ2腺ずつ上皮小体の腫大が見つかり, 原発性上皮小体機能亢進症の診断で腫瘍切除術および自家移植術が行われた. 病理組織学的には上皮小体過形成の診断だった. 52歳の妹は繰り返す尿路結石を認めたため家族性原発性上皮小体機能亢進症が疑われ, 受診した. 血液検査の結果は兄と同様で頸部CT上両側の上皮小体と胸腺に3ヵ所上皮小体の腫大が認められた. 原発性上皮小体機能亢進症の診断で腫瘍摘除術および自家移植術が行われた. 病理組織学的診断ではやはり上皮小体過形成だった. 術後4年を経て経過良好である. 家族性原発性上皮小体機能亢進症は他の多発性内分泌腫瘍と区別されており, 本邦においてはわずか10家系が報告されているのみである。
  • 敦川 浩之, 井内 裕満, 小山内 裕昭, 山口 聡, 橋本 博, 金子 茂男, 八竹 直
    2000 年 91 巻 1 号 p. 37-40
    発行日: 2000/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は76歳の女性. 高血圧, 狭心症にて通院中, 超音波検査で左腎腫瘤を指摘され当科に紹介された. その腫瘤は長径2cm大で, CTでは腎実質に比べやや high density でわずかに造影されていた. MRIではT1, T2ともに低信号, 血管造影では乏血管性であった. 以上の所見は通常の腎細胞癌と異なっていたが, 悪性腫瘍を否定できず根治的腎摘除術を施行した. 摘出組織では, 腫瘍は23×20mmの淡黄色を呈する弾性硬で左腎下極に髄質と連続していた. 組織学的には, 紡錘形細胞を主体とした腫瘍実質と豊富な間質組織から構成される腎髄質間質細胞腫であった. 腎髄質間質細胞腫は, 臨床的に診断されることは稀な良性腫瘍である.
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