日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
ISSN-L : 0021-5287
91 巻, 7-8 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 古田 昭, 簗田 周一, 滝沢 明利, 岩室 紳也, 鈴木 正泰, 田代 和也, 波多野 孝史, 大石 幸彦
    2000 年 91 巻 7-8 号 p. 573-578
    発行日: 2000/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 前立腺癌内分泌療法が続発性骨粗鬆症を誘発することが大きな問題となっている. われわれはその原因を調べ, 今後の対策について検討した.
    (対象と方法) luteinizing hormone releasing hormone agonists (LHRH-a) 単独または chlormadinone acetate (CMA) を併用した前立腺癌患者31例と未治療患者19例を対象とした. 骨量測定は, quantitative computed tomography 法を用いた.
    (結果) 1) 加齢による骨への影響が大きかった (p<0.01). 2) 未治療群と比較してCMA+LHRH-a群に骨量の有意な低下を認めた (p<0.05). 3) CMAは骨量維持に重要な役割を果たしている副腎性アンドロゲンを有意に低下させた (p<0.01).
    (結論) 前立腺癌患者に対して内分泌療法を選択する場合, 治療前に骨量を測定することが必要である. また, 治療前に骨量低下を認める患者に対してはCMAの併用を避けるか, 骨粗鬆症治療薬の予防的投与が望ましいと思われた.
  • 市川 孝治, 中山 恭樹, 山田 大介, 三枝 道尚, 浅野 聰平, 荒巻 謙二
    2000 年 91 巻 7-8 号 p. 579-583
    発行日: 2000/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 膀胱癌における腫瘍マーカーとしての尿中BFPの有用性を検討した.
    (対象と方法) 膀胱癌が疑われた66例に対して, 同一随時尿より検尿, 尿細胞診を行い, 尿中BFPを測定した. また全例で膀胱生検を施行した.
    (結果) 66例中, 膀胱癌は54例, 良性は12例であった. 尿中BFP, 尿細胞診の sensitivity はそれぞれ38.9%, 48.1%, specificity は58.3%, 75.0%, positive predictive value は80.8%, 89.7%であり, 両者に有意差は認めなかった. 尿中BFP単独の正診率は42%, 尿細胞診単独では53%で, 両者の併用により65%と正診率は向上した. 膀胱癌異型度別の尿中BFPの sensitivity には一定の傾向は認めなかったのに対し, 尿細胞診では異型度が上がるにつれ sensitivity は向上した. 浸潤度別では両者の sensitivity は浸潤癌で高値を示したが, CIS症例では尿中BFPの sensitivity は30%のみであった. 尿中BFP値と腫瘍径との間にはr=0.695なる正の相関を認めた. また, 尿中BFP値と尿中WBCとの間にもr=0.737なる正の相関が認められ, 偽陽性の原因と考えられた.
    (結論) 尿中BFPは尿細胞診との併用により正診率を向上させるものの, 単独では優れたマーカーとは言えず, 今後さらに有効な腫瘍マーカーが期待される.
  • 中田 誠司, 高橋 博朋, 竹澤 豊, 小林 幹男, 松本 和久, 古作 望, 川島 清隆
    2000 年 91 巻 7-8 号 p. 584-588
    発行日: 2000/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 前立腺癌の内分泌療法後には, 一般的にPSAは低下するが, 再燃時にほとんどの例で上昇する. しかし, その上昇の速度には症例によってかなりの差がある. 今回われわれは, 内分泌療法により一旦PSAが低下し, その後再上昇した例についてPSA倍加時間 (PSA-DT) を測定し, 他のパラメーターとの関係について検討した.
    (対象と方法) 対象は, 1991年から98年までの間に診断され, 初期治療として内分泌療法を受けた前立腺癌患者で, 一旦PSAが10ng/ml以下に下降し, その後持続的に再上昇した55例である. まず, 再上昇時のPSAの上昇が直線的であるのか指数関数的であるのか, それぞれの場合における時間とPSAとの相関係数をもとめた. その後, PSA-DTをもとめ, 臨床病期, 組織学的分化度, 臨床的再燃部位, 治療開始からPSA再燃までの期間, 治療前PSA値, 予後との関係について検討した. 各群間におけるPSA-DTの差の検定は Kruskal-Wallis 検定で, 生存率の差の検定は log-rank 検定にて行った.
    (結果) 再燃後のPSAは, 指数関数的に上昇した. 全症例でのPSA-DTは0.5~26.3ヵ月まで分布し, 平均4.4±4.8 (S.D.) ヵ月, 中央値2.5ヵ月であった. 初診時に進行している例ほど, 治療開始からPSA再燃までの期間が短いほど, 治療前PSA値が高いほど再燃時のPSA-DTが有意に (p<0.01) 短かった. 初診時の分化度が低いほど再燃時のPSA-DTが短い傾向であったが, 有意差はなかった. 遠隔転移による再燃例の方が局所再燃例よりもPSA-DTが短い傾向であったが, 有意差はなかった. PSA-DTが短い例ほど, 有意に診断時からまたは再燃時からの予後が悪かった.
    (結論) 内分泌療法後に再燃した前立腺癌のPSAは, 指数関数的に上昇した. そのPSA-DTはかなり広範に分布し, これが癌の悪性度, 予後を反映していると考えられた. PSA-DTが再燃後の治療方針をたてる上で, ひとつの判断材料になると思われた.
  • 北村 雅哉, 西村 憲二, 三浦 秀信, 小森 和彦, 古賀 実, 藤岡 秀樹, 竹山 政美, 松宮 清美, 奥山 明彦
    2000 年 91 巻 7-8 号 p. 589-594
    発行日: 2000/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) TESE-ICSIは非閉塞性無精子症に対して広く用いられてきたが, その適応については今だ議論の残るところである. 今回われわれは精子回収の可否, ICSIの結果などについてそれを予見する術前のパラメータがないか, 後向き検討を行った.
    (対象と方法) 1997年7月から1999年9月まで大阪大学医学部泌尿器科およびその関連施設でTESE-ICSIを施行した非閉塞性無精子症の症例, 44例においてその臨床的パラメーターとTESE, ICSIの結果との相関を調査した.
    (結果) 1) 44例中32例 (72.7%) で精子の回収に成功し, うち29例でICSIを施行, 15例 (46.9%) で妊娠が成立した. 10例は Sertoli-cell-only の組織型が確認されていたが, うち3例 (30%) で不動精子が回収された. 2) 精巣容量, JSC, FSHが精子回収の可否を有意に予測するパラメーターであったが, 閉塞性の要因の関与も考えられるJSC8以上の症例を除外するとその有意差は無くなった. 染色体異常の有無は精子回収の可否を予測するパラメーターとはならなかった. 3) 妻の年齢, 精子運動性の有無, 精巣容量は受精の可否を予測するパラメーターとなった. 染色体異常は受精の可否を予測するパラメーターとはならなかった.
    (結論) 非閉塞性無精子症で精子の回収を予測する絶対的なパラメーターはなかった. 非閉塞性無精子症のすべての症例がTESE-ICSIの適応となり, またTESE-ICSIなしでは絶対不妊の診断は下せないものと思われた.
  • 高岩 正至, 中野 路子, 小関 清夫, 吉田 純也, 岩崎 充晴, 熊 佳伸, 鎌田 竜彦, 櫛田 伸博, 横田 崇, 山口 脩
    2000 年 91 巻 7-8 号 p. 595-598
    発行日: 2000/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    感染を伴い腫大した嚢胞腎に対し腎動脈塞栓を施行し良好な結果を得た. 患者は72歳の女性. 嚢胞腎として当科外来にて経過観察していたが, 1998年5月1日より, 右側腹部の疼痛を伴う腫脹と発熱を認め, 症状が次第に増悪し5月12日当科に入院した. 入院後もCTにて右嚢胞腎はさらに腫大し, 全身状態も次第に悪化した. 5月18日に右腎動脈の塞栓術を無水アルコールとゼラチンスポンジにて施行した. 白血球, CRP, TP, LDH, 体温, 食餌量など術10日から20日後には正常化した. 全身状態の回復を待ち6月17日退院した. 腎塞栓術は (1) 腎内圧力の低下と腎の体積を減少させ, 消化器や肺など周囲臓器への圧迫を軽減させ, (2) 腎内感染巣から細菌が腎静脈を介して全身に波及することを抑制したと考える.
  • Etoposide および Cisplatin の血中薬物動態
    上水流 雅人, 岩田 裕之, 寺田 隆久, 加藤 禎一, 吉原 秀高
    2000 年 91 巻 7-8 号 p. 599-603
    発行日: 2000/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    精巣腫瘍を合併した透析患者に, etoposide, cisplatin を併用するEP療法を施行した. 症例は37歳, 男子. 主訴は食欲不振, 左陰嚢腫脹. 入院時検査にて慢性腎不全及び stage IIIAの精巣腫瘍と診断した. 左高位除睾術を施行し, 組織型はセミノーマであった. 1994年10月4日より化学療法を開始したが, 骨髄抑制が強く出現した. 投与量を減量し, 11月28日, 1995年1月9日そして2月13日より2, 3,4クールの化学療法を施行した. 1クールは cisplatin を day 1, 3, 5に7mg/m2, day 2, 4に14mg/m2, etoposide を day 1~5に70mg/m2ずつ30分間で投与し, day 2, 4には投与開始後1時間目より血液透析を4時間施行した. 2~4クールは day 1, 3, 5に cisplatin を14mg/m2, etoposide を day 1~5に35mg/m2ずつ投与し, day 1, 3, 5に血液透析を施行した. 蛋白非結合型 cisplatin の area under the blood concentration-time curve (AUC) は72時間で1クールは6.82μg・hr/ml, 2クールは4.07μg・hr/mlで, 最高血中濃度は0.58μg/ml, 0.43μg/mlであった. etoposide のAUCは72時間で1クールは241.9μg・hr/ml, 2クールは216.9μg・hr/mlであった. 計4クールを施行し大動脈周囲リンパ節転移は消失し, 治療終了後5年たった現在も再発を認めず, 通院透析治療中である.
feedback
Top