(目的) 表在性膀胱腫瘍の治療上の問題点として, 膀胱内再発の頻度が高いことがあげられる. 特にG3成分を含む表在性膀胱腫瘍は, 容易に再発や, 病期進展をきたしやすい. しかし従来の組織病理学的検索からは, 再発や進展を予測することは困難であった. 我々は Grade 3の表在性膀胱腫瘍において, p53およびKi-67 index の腫瘍の再発, 予後因子としての有用性について検討した.
(対象および方法) 1986年1月から1998年4月までに当科でTUR-BTを施行した初発表在性G3膀胱腫瘍の41例を対象とし, そのホルマリン固定パラフィン包埋切片について, p53およびKi-67 index を免疫組織化学的に評価し, これら発現率と再発, 進展および予後について臨床病理学的に検討した.
(結果) G3表在性膀胱腫瘍41例中, pTa症例, pT1a症例とpT1b症例のp53およびKI-67 index はそれぞれ, 26.4±30.1%, 28.6±30.0%, 34.6±32.6% (p53) と20.5±22.5%, 20.0±29.3%, 29.2±28.4% (Ki-67) であったが, どちらの index も stage 間で有意な差はみられなかった. 膀胱内再発が認められたのは18例 (43.9%) であった. 再発 (-) (23例), 再発 (+) 進展 (-) (12例), 進展 (+) (6例) の3群の初回治療時のp53 index はそれぞれ19.7±28.2%, 42.0±28.7%, 42.5±32.0%であった. 再発 (-) 群と再発 (+) 進展 (-) 群の2群で初回治療時のp53 index に関して有意差が認められた (p<0.05). Ki-67 index はp53と同様の傾向が認められたが, 有意差はみられなかった. 進展症例6例中4例は, 初回治療後6ヵ月以内に既に進展が認められた. さらに進展6例中3例が癌死した. 多変量解析を用いて再発および予後に及ぼす影響を検討すると, 腫瘍数 (p=0.01), BCG膀胱注入療法 (p=0.04), p53 index (p=0.01), Ki-67 index (p=0.02) は腫瘍の再発因子として, さらにp53 index (p=0.03) のみが予後因子として有意であった.
(結論) 免疫組織化学的検討の結果から, p53は grade 3の表在性膀胱腫瘍の再発, 予後因子として有用である.
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