日本泌尿器科学会雑誌
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92 巻, 7 号
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  • 初期17例の治療成績
    川端 岳, 原 勲, 原 章二, 磯谷 周治, 酒井 豊, 和田 義孝, 三宅 秀明, 後藤 章暢, 長久 裕史, 藤澤 正人, 岡田 弘, ...
    2001 年 92 巻 7 号 p. 647-655
    発行日: 2001/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 限局性前立腺癌に対する腹腔鏡下前立腺全摘除術の初期成績を報告する.
    (対象と方法) 2000年4月から12月の間に, 臨床病期T1cからT2bの17名の患者に腹腔鏡下前立腺全摘除術を行った. 各中央値を示すと, 患者の年齢は70.9歳, 術前PSA値は7.1ng/ml, 経直腸的前立腺生検標本の Gleason score は6であった. 手術手技は Montsouris 法に準じ, 2本の10mmと3本の5mmの計5本のトロカーを用いて経腹腔的に手術を行った. 骨盤内リンパ節郭清術は1例 (症例3) にのみ行った. 尿道膀胱吻合は3-0吸収糸を用い, 6から9針の結節縫合で行った.
    (結果) 全例において開腹手術への移行や, 再手術は行わなかった. 手術時間の中央値は450分, 尿を含んだ出血量は600mlであった. 1例 (症例3) にのみ同種血輸血を要した. 術後尿道カテーテル留置期間は9日であった. 手術手技に関連した術中合併症は, 直腸損傷1例, 膀胱損傷3例であり, それぞれ腹腔鏡下に縫合し得た. 重大な合併症として, 症例3で術中完全A-Vブロックが起こり手術を一時中断した. 摘除標本の病理組織学的検査の結果, 断端陰性は13例であり, 病理学的病期はpT0 1例, pT2a 5例, pT2b 7例でpT3aが4例であった. 全症例で術後PSA値は<0.2ng/mlとならた. 術後6ヵ月で初期の4例中4例 (100%) が完全尿禁制であった.
    (結論) 本術式は今だ通常の開創手術と比して手術時間が長いが, 拡大された手術視野が得られるため特に前立腺尖部の剥離がより精緻で安全に行い得る. さらに症例数を重ねることにより手術時間は短縮しうると考えられるため, 腹腔鏡下前立腺全摘除術は今後限局性前立腺癌に対する治療の選択肢の一つになりうると考えている.
  • 腫瘍再発および予後との関連
    池上 修生, 吉村 一良, 辻 明, 瀬田 香織, 木村 文宏, 小田島 邦男, 浅野 友彦, 早川 正道
    2001 年 92 巻 7 号 p. 656-665
    発行日: 2001/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 表在性膀胱腫瘍の治療上の問題点として, 膀胱内再発の頻度が高いことがあげられる. 特にG3成分を含む表在性膀胱腫瘍は, 容易に再発や, 病期進展をきたしやすい. しかし従来の組織病理学的検索からは, 再発や進展を予測することは困難であった. 我々は Grade 3の表在性膀胱腫瘍において, p53およびKi-67 index の腫瘍の再発, 予後因子としての有用性について検討した.
    (対象および方法) 1986年1月から1998年4月までに当科でTUR-BTを施行した初発表在性G3膀胱腫瘍の41例を対象とし, そのホルマリン固定パラフィン包埋切片について, p53およびKi-67 index を免疫組織化学的に評価し, これら発現率と再発, 進展および予後について臨床病理学的に検討した.
    (結果) G3表在性膀胱腫瘍41例中, pTa症例, pT1a症例とpT1b症例のp53およびKI-67 index はそれぞれ, 26.4±30.1%, 28.6±30.0%, 34.6±32.6% (p53) と20.5±22.5%, 20.0±29.3%, 29.2±28.4% (Ki-67) であったが, どちらの index も stage 間で有意な差はみられなかった. 膀胱内再発が認められたのは18例 (43.9%) であった. 再発 (-) (23例), 再発 (+) 進展 (-) (12例), 進展 (+) (6例) の3群の初回治療時のp53 index はそれぞれ19.7±28.2%, 42.0±28.7%, 42.5±32.0%であった. 再発 (-) 群と再発 (+) 進展 (-) 群の2群で初回治療時のp53 index に関して有意差が認められた (p<0.05). Ki-67 index はp53と同様の傾向が認められたが, 有意差はみられなかった. 進展症例6例中4例は, 初回治療後6ヵ月以内に既に進展が認められた. さらに進展6例中3例が癌死した. 多変量解析を用いて再発および予後に及ぼす影響を検討すると, 腫瘍数 (p=0.01), BCG膀胱注入療法 (p=0.04), p53 index (p=0.01), Ki-67 index (p=0.02) は腫瘍の再発因子として, さらにp53 index (p=0.03) のみが予後因子として有意であった.
    (結論) 免疫組織化学的検討の結果から, p53は grade 3の表在性膀胱腫瘍の再発, 予後因子として有用である.
  • 白井 將文, 滝本 至得, 石井 延久, 岩本 晃明
    2001 年 92 巻 7 号 p. 666-673
    発行日: 2001/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) われわれはEDが生活にもたらす影響やEDに関する受療行動とその阻害要因等について明らかにするため, 一般市民に対してアンケート調査を実施した.
    (対象と方法) 2000年4月, 全国の30~79歳の既婚男女を対象に郵送でアンケートを実施し, 男性2,034人 (回収率37%), 女性1,820人 (同38%) より回答を得た.
    (結果) 男性回答者のうち29.9%がEDであることを自覚しており, また女性回答者のうち夫のEDを認識している割合は30.1%であった. これらの男女では, 性交回数の減少や性生活に対する満足度が低く, EDの男性では23.6%が, またEDの夫を持つ女性の16%が夫婦生活に影響をもたらしていると答えている.
    しかし, これらED男性のうち医療機関に相談した者はわずか4.8%であった. このように医療機関を訪れない理由をみると「日常生活にさほど影響がない」「困ったことがない」「セックスに関心がない」などの回答が多くを占め, また受療阻害要因として「恥ずかしい」「どこの病院に行ったらよいかわからない」「費用が高い」などが多かった. 最後に, EDに対する保険適用については「制限つきで保険適用すべき」を含め, 男女ともに80%以上がED治療に対し何らかの保険適用をすべきと考えていることが判った.
    (結論) EDはかなりの頻度で認められたが, 適切な治療を受けている者はわずか4.8%であった. 一方, 80%以上の男女がED治療に保険を適用すべきど考えていることが判明した.
  • DSAとCT angiography, 超音波ドプラーの比較
    川西 泰夫, 木村 和哲, 李 慶寿, 小泉 貴裕, 中逵 弘能, 小島 圭二, 山本 明, 沼田 明
    2001 年 92 巻 7 号 p. 674-681
    発行日: 2001/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) この研究の目的は内陰部動脈の描出力について CT angiography, 超音波ドプラ検査と従来の標準検査であるDSAとを比較することである.
    (対象と方法) 動脈性勃起障害の患者18例にインフォームドコンセントの後, DSA, CT angiography, カラードプラ検査を施行した. CT angiography は陰茎海綿体内にプロスタグランディンE1を投与した後, 造影剤を急速に静脈投与して撮影を行った. 左右の内陰部動脈, 海綿体動脈についてDSA像と比較した. 海綿体動脈については超音波検査成績との比較も行った.
    (結果) 18例, 計36本の内陰部動脈のうちDSAでは22血管が正常像, 14血管が異常像と判断された. CT angiography では15血管で正常像, 21血管で閉塞像を示した. DSA所見に対する CT angiography の感度, 特異度, 精度はそれぞれ1.00, 0.68, 0.81であった. 海綿体動脈やさらに細径の動脈の描出についてはDSAの描画能力が優れていた. しかし CT angiography で得られる骨盤下方から観察した画像や矢状断面を内側下方から観察した画像は特に恥骨部の内陰部動脈の描出に優れていた. CT angiography の所見は超音波検査装置で測定された収縮期血流速度により診断よりも優れていた. 各検査の施行に重大な合併症は見られなかった.
    (結論) CT angiography の所見はDSAの所見と相関が認められた. CT angiography は微細な血管の描出においては, DSAに及ばないが, 陰茎の動脈の評価に有用な画像を提供することが可能である. 撮影条件の改良によって CT angiography は陰茎の動脈病変の診断においてDSAに代わりうると期待される.
  • 斉藤 史郎, 中島 淳, 中島 洋介, 池内 幸一, 柴山 太郎, 長倉 和彦, 名出 頼男, 早川 正道, 小川 由英, 畠 亮, 中薗 ...
    2001 年 92 巻 7 号 p. 682-693
    発行日: 2001/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景・目的) 多施設合同研究により, ステージD1, D2前立腺癌治療における酢酸リュプロレリン (リュープリン®) の有効性および安全性, またリン酸エストラムスチンナトリウム (エストラサイト®)との併用効果の検討を行う.
    (対象と方法) 22施設よりの102症例は3治療群 (I群; リュープリン単独, II群; リュープリンとエストラサイト併用; III群; エストラサイト単独) に分けられた. 治療開始後12週目, 24ヵ月目に自覚症状, マーカーを含めた病巣の変化を指標に治療効果判定を行い, 24ヵ月間治療終了時に progression freesurvival, overall survival を解析した.
    (結果) 不適当例を除いた97症例 (I群; 35例, II群36例, III群; 26例) において, 12週間の治療中の血清テストステロン値の低下に差はなく, 自覚症状の改善度, 抗腫瘍効果においては12週目, 24ヵ月目ともに3群間に有意差はなかった. 副作用の発現率は1群8.6%, II群472%, III群26.9%と3群間に有意差があり, 副作用のために治療が中止された症例はI群1例, II群13例, III群6例であった. progression free survival の中央値はI群661日, II群731日, III群517日で, 24ヵ月目の overallsurvival はI群77.5%, II群83.0%, III群72.4%であり, いずれも3群間の有意差は認めなかった.
    (結語) 副作用のため治療が中止された症例が多かったものの, 今回の解析では進行性前立腺癌ではリュープリンとエストラサイトの併用では, それぞれの単独治療以上の治療効果は得られなかった.
  • 篠島 利明, 中島 洋介, 木口 英子
    2001 年 92 巻 7 号 p. 694-697
    発行日: 2001/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    47歳, 女性. 42歳時に左腎細胞癌T1bN0M0に対し, 根治的左腎摘除術を施行した. 術後4年目の骨盤部CTにて, 子宮背側に径9cm大の腫瘤性病変を認めた. 左卵巣腫瘍が疑われたが, 原発性卵巣腫瘍と転移性卵巣腫瘍の鑑別は画像上困難であった. 1999年9月, 当院婦人科にて子宮全摘ならびに両付属器切除術を施行した. 左卵巣に径11×9×7cm, 割面では一部に小嚢胞を伴った充実性の黄色の腫瘍を認めた. 病理組織学的に細胞質が明るく核異型が比較的弱い淡明細胞を認めた. 肉眼的所見が腎細胞癌に特徴的な黄色充実性の腫瘍であること, 病理組織学的に卵巣明細胞腺癌の典型像とは異なることより, 腎細胞癌卵巣転移と診断した. 術後12ヵ月の現在明らかな再発の所見を認めていない. 腎細胞癌の転移先臓器として卵巣は極めて稀であり, 1980年以降検索し得た範囲では自験例を含め12例を数えるのみであった.
  • 江本 昭雄, 奈須 伸吉, 三股 浩光, 野村 芳雄, 溝口 裕昭, 和田 瑞隆
    2001 年 92 巻 7 号 p. 698-701
    発行日: 2001/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    82歳男性. stage C の前立腺低分化腺癌に対して精巣摘出術後フルタミドの内服にて治療PSA上昇し再燃と診断. リン酸エストラムスチン560mg/日開始. 副作用である乳房の腫脹が出現したため半量に減量. 症状は改善したが, 数ヵ月後再びPSA上昇したため, 無効と判断し中止したが, その後両側乳房の硬結及び疼痛が出現. 外科的諸検査にて両側原発性乳癌の診断で, 両側乳房摘出術施行. 病理組織は浸潤性腺管癌であった. 術後4ヵ月後肺腫瘍 (原発性か転移性かは不明) により死亡. 原発性乳癌の根拠は左乳癌組織のプロゲステロンレセプターの発現に対し, 右乳癌は未発現であった. しかしPSA免疫組織染色は両側陽性であった. 乳癌に対してPSA免疫染色を施行すると8例中5例陽性. このことよりPSAの発現のみでは前立腺癌の転移とはいえない.
  • 澤田 卓人, 渡辺 岳志, 大古 美治, 岩崎 晧, 石塚 榮一
    2001 年 92 巻 7 号 p. 702-705
    発行日: 2001/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は66歳の男性で, 心筋梗塞の既往があり, ワーファリンカリウム (以下ワーファリン) による抗凝固療法中であった. 前立腺肥大症の診断で塩酸タムスロシン0.2mg/dayを投与されていたが, 排尿困難感が強くなり経尿道的前立腺切除術を希望した. 循環器専門医が, 抗凝固療法の中止により心筋梗塞が起こりえると判断したため, 抗凝固療法を継続する方針となった. 術前6日目よりワーファリン2mg/day P. O. をヘパリンナトリウム (以下ヘパリン) 5000u×2/day S. O. に変更し, 手術当日は中止したが翌日から再開した. 術後18日目に四肢に紫斑が出現, 凝固能に異常は認めなかったが, 血小板数が0.2万/mm3と著明に減少していた. ヘパリンを中止して13日目には22.8万/mm3まで回復した. 他に合併症は生じなかった. 臨床経過より自験例をヘパリン起因性血小板減少症と診断した.
    近年, 本邦でも抗凝固療法中の患者は増加しており, ヘパリンを使用する機会も増えると考えられるので, その際には注意深い血小数のモニタリングが必要である
  • 加藤 久美子, 鈴木 弘一, 佐井 紹徳, 千田 基宏, 村瀬 達良
    2001 年 92 巻 7 号 p. 706-709
    発行日: 2001/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は60歳男性. PSAの漸増のため前立腺超音波ガイド下6ヵ所針生検を行い, 直後に抗生剤を筋注した. 悪寒戦標を伴う発熱で緊急入院した後 (生検から39時間後) に血圧が56/40mmHgまで下降し, WBC800/mm3, 血小板6.9×104/mm3 (翌日更に0.4×104/mm3へ下降), FDP51μg/dlであった. 敗血症性ショック, DICに対し, ポリミキシンB固定化ファイバー (PMX) を用いたエンドトキシン吸着療法を含む集中治療を行い救命し得た. 前立腺生検数の増加の著しい現在, 合併症対策にも十全の注意が必要と考える.
  • 堀川 直樹, 千原 良友, 林 美樹, 藤本 清秀, 細川 幸成, 雄谷 剛士, 大園 誠一郎, 平尾 佳彦
    2001 年 92 巻 7 号 p. 710-713
    発行日: 2001/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    われわれは腫瘍径5cm以下の小さな腎細胞癌61腎59症例に対して, 患側腎温存を目的に microwave tissue coagulator (MTC) を用いた無阻血腫瘍完全核出術を施行し, その安全性と良好な治療成績を報告してきたが, これらのうち二次的腎摘除術を余儀なくされた2症例を経験したので報告する. 1例は, 腫瘍核出時に随伴する嚢胞壁を同時に切除したところ嚢胞壁にも腫瘍を認めた症例であった. 他の1例は, 腫瘍が悪性度の高い紡錘細胞癌の症例であった. 2例とも elective case であり, その根治性を考慮し, 術前の説明と同意に基づいて二次的腎摘除術を施行した. 患側腎温存術に対するわれわれの適応とその治療成績を示す.
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