日本泌尿器科学会雑誌
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92 巻, 1 号
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  • NMP22, BTA, 尿細胞診との比較
    大枝 忠史, 真鍋 大輔
    2001 年 92 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2001/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 膀胱癌のスクリーニングにおける尿中フィブリン/フィブリノーゲン分解産物 (FDP) の有用性を検討した.
    (対象と方法) 一連の患者87例 (男61例, 女26例, 平均70.7歳) について, 膀胱鏡の際に自然排出尿を採取し, 同一検体でFDP, 核マトリックス蛋白22(NMP22), 膀胱腫瘍関連抗原 (BTA), 細胞診検査を行い結果を示した. FDP, NMP22, 細胞診はそれぞれ0.2μg/ml, 12.1U/ml, クラスIII以上を陽性とした.
    (結果) 病理組織学的に膀胱癌と確認されたものは14例で, FDP, NMP22, BTA, 細胞診の全体の感受性はそれぞれ79, 64, 36, 36%であった. FDPの感受性はBTAと細胞診よりも有意に高かったが, NMP22との間には有意差を認めなかっだ. また, 癌を認めなかったものは73例で, 4法の特異性はそれぞれ69, 78, 92, 90%であった.FDPとNMP22の特異性はBTAと細胞診よりも有意に低かった.
    G2以下の低異型度の癌10例に対する4法の感受性はそれぞれ70, 50, 30, 10%であり, T1以下の非浸潤性癌12例に対する感受性はそれぞれ75, 58, 33, 25%であった. FDPは低異型度, 非浸潤性の癌にも高い感受性を示す可能性があると考えられた.
    (結論) 尿中FDPは低異型度, 非浸潤性の膀胱癌に対しても高い感受性を示し, スクリーニング検査として有用である. そしてその診断能力はNMP22と比較し同等あるいは優れている可能性がある.
  • 中里 晴樹, 鈴木 和浩, 伊藤 一人, 深堀 能立, 黒川 公平, 山中 英壽
    2001 年 92 巻 1 号 p. 6-12
    発行日: 2001/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 進行性前立腺癌において diethylstilbestrol diphosphate (DES-DP) 先行投与 (flare up 予防) 後にLH-RH agonist と flutamide を併用することが下垂体―副腎系のホルモン動態に対し, どのような効果をもつのかを検討した.
    (対象と方法) 未治療進行性前立腺癌症例9例を対象とし, DES-DPによる flare up 予防後, LH-RH agonist 単独群 (n=4) と flutamide 併用群 (n=5) に分けて, 下垂体―副腎系のホルモンを測定し比較検討した.
    (結果) Flutamide 併用群にはDES-DPによる副腎性アンドロゲンの抑制を維持する傾向がみられた. 同時にACTHについても抑制の持続が観察された. 一方, LH-RH agonist 単独群ではこれらの傾向は認められなかった.
    (結論) DES-DP投与後の副腎性アンドロゲン抑制状態が flutamide の投与により維持されることが判明した. その背景にACTHの基礎値の関与が示唆された.
  • 窪田 泰江, 佐々木 昌一, 窪田 裕樹, 田貫 浩之, 郡 健二郎
    2001 年 92 巻 1 号 p. 13-22
    発行日: 2001/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 精管結紮後に認める造精機能障害におけるアポトーシスの関与について, 成獣ラットモデルを用いて生化学的および微細組織学的に調べた. 特に精子形成細胞におけるアポトーシスの発現機序を調べる目的で, iNOSおよびその上流に位置する転写因子の一つであるNFκBの関与を検討した.
    (対象と方法) 10週齢のウィスター系ラットの左側精管を結紮し, 術後1, 2, 5, 10週目の結紮側, 非結紮側精巣及び sham operation を施行したコントロール精巣に対して, アポトーシスの検出をTUNEL法および電子顕微鏡にて調べた. iNOSの発現は, Western Blottiong 法および免疫組織化学染色により検討した. NFκBについては抗p65抗体を用いた免疫組織化学染色によって行った.
    (結果) 術後5週目より結紮側精巣において, 精細管極造の荒廃とともにアポトーシス陽性精子形成細胞の著明な増加がみられた (5, 10週目p<0.01). 電子顕微鏡では, 凝集した核を持つ精子形成細胞を確認した. また, 術後の経過とともにiNOS蛋白の発現の増加を認め, 特にアポトーシス陽性精子形成細胞において, iNOS蛋白の発現の増加を認めた. NFκBp65蛋白は, コントロール群と比較して有意に精子形成細胞の核内に移行していた.
    (結論) 精管結紮術後にみられる造精機能障害は, アポトーシスを介しており, その発現機序にはiNosおよびNFκBが深く関与している可能性が考えられた.
  • 加藤 司顯, 多武保 光宏, 吉松 正, 太田 雅也, 金城 真実, 野田 治久, 渡辺 和吉, 宮田 晃臣, 村田 明弘, 三浦 一郎, ...
    2001 年 92 巻 1 号 p. 23-29
    発行日: 2001/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 1995年より3年間, 三鷹市で前立腺癌検診を施行し, 検診の結果を外来受診で前立腺癌と診断された症例と比較した. また前立腺癌検診におけるfree-PSAの前立腺癌スクリーニング上の有用性についても検討した.
    (対象および方法) 50歳以上の男性を対象とし, 一次検診として, International prostate symptom score・Quality of life score の記入, Tandem-Rによる Prostate specific antigen (PSA) の測定, および直腸指診を行った. PSAが4.1ng/ml 以上もしくは直腸指診で異常を認めた場合を二次検診該当者とした. 二次検診として free PSA (Tandem-R) の測定, 経直腸超音波ガイド下に6ヵ所前立腺針生検を施行した.
    (結果) 1,375名の受診者の内320名 (320/1,375; 23.2%) が二次検診の対象となった. その内199名 (199/320; 62.1%) に前立腺生検を施行し21名に前立腺癌を認めた (21/1,375; 1.5%). 同時期に外来受診で前立腺癌と診断された症例 (n=141) との臨床病期の比較では, 有意差をもって検診受診者が早期に診断されていた (p=0.0047). ROC曲線から求めた free-PSA ratio の境界値12%をPSA 4.1ng/ml以上と併用すると Positive predictive value は18%から50%に上昇した.
    (結語) 前立腺癌患者は検診によって外来患者よりも早期の病期で診断され, また, PSAと free-PSAとを併用することで, 検診効率を上げられることが示唆された.
  • 本邦報告20例の集計
    佐久間 孝雄, 田 珠相
    2001 年 92 巻 1 号 p. 30-33
    発行日: 2001/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    本症の1例を報告し, 本邦報告例20例を集計するとともに文献的考察を加えた. 症例は31歳, 男性. 主訴は右腰背部痛と陰嚢部痛. 右精巣に著明な圧痛を認めた. 超音波検査では, 精巣内に類円形の低エコー域が散在していた. 精巣腫瘍を疑い, 右高位精巣摘除術を行い, 病理組織検査にて肉芽腫性精巣炎と診断された. 肉芽腫性精巣炎は稀な疾患であり, 症状, 臨床経過, 諸検査所見などにより, 本症を精巣腫瘍と明確に鑑別することは困難である. また, 病理組織検査では正常構造が大部分失われており, 精巣を温存する意義は低い. 抗生物質の投与は大半が無効で, 確定診断ならびに疼痛を含めた症状の緩和を目的とした精巣摘除術は, 現時点では妥当な治療と考える. 保存的治療としてステロイド療法があるが, 今後, 適応ならびに有用性につきさらに検討する必要がある.
  • 中野間 隆, 上野 宗久, 野中 昭一, 塚本 拓司, 出口 修宏
    2001 年 92 巻 1 号 p. 34-37
    発行日: 2001/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は, 62歳男性. 発熱, 腰痛, 体重減少を主訴にて精査したところ, 下大静脈腫瘍塞栓を伴う左副腎腫瘍と診断された. 腫瘍, 左腎, 脾臓の合併切除及び下大静脈を切開し, 腫瘍塞栓を摘出した. 病理組織学的には下大静脈腫瘍血栓を伴う左副腎皮質癌であった. 術後経過は順調であったが, 肺転移にて術後4ヵ月で死亡した. 下大静脈腫瘍塞栓を伴う左副腎癌はまれであり, 欧米文献を含め7例が報告されている. その約15ヵ月の平均生存期間に比較すると, 本症例は極めて予後不良な症例と考えられた.
  • 平塚 裕一郎, 池田 仁, 菅谷 泰宏, 戸塚 一彦, 山田 茂樹
    2001 年 92 巻 1 号 p. 38-41
    発行日: 2001/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は54歳, 女性. 乳癌で左乳房切断術, 子宮頸癌で子宮全摘除術を受けている. 6ヵ月前より左腰背部痛が持続するため当センター受診. 腹部CTにて左腎門部に4×3cm大で軽度の造影効果を示す内部不均一な腫瘤を認めた. MRI検査, 腎動脈造影の結果から転移性腎腫瘍を考え, 左根治的腎摘除術を施行した. 病理診断は左腎静脈より発生した平滑筋肉腫であった. 現在術後1年10ヵ月を経過しているが再発転移は認められない. 自験例は腎静脈原発平滑筋肉腫の本邦第7例目である.
  • 徳光 正行, 稲田 文衛, 増井 則昭, 石田 裕則, 石田 初一, 谷口 成実, 佐賀 祐司, 橋本 博, 金子 茂男, 八竹 直
    2001 年 92 巻 1 号 p. 42-46
    発行日: 2001/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は42歳男性. 19歳時より嚢胞腎による慢性腎不全に対し, 血液透析を施行していた. 透析開始19年目の定期US検査にて左腎細胞癌を発見. 根治的左腎摘除術を施行し, 以後の画像検査では再発, 転移などの異常は認められなかった. 透析21年目, 無症候性肉眼的血尿が出現. 画像検査にて残存右腎および周囲リンパ節に急速に進展する腎腫瘍が認められた. 右腎摘除およびリンパ節摘除術, さらに後療法としてインターフェロン療法を施行したが, 全身多臓器転移をきたし, 透析22年2ヵ月目に癌死した.
    われわれの調べ得た範囲において, 嚢胞腎による血液透析患者に発生した両側性腎細胞癌報告例は本症例が本邦初であった. また血液透析患者に発生した両側腎細胞癌のうち, 詳細の明らかな本邦19例につき検討を加えた.
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