(目的) 膀胱癌のスクリーニングにおける尿中フィブリン/フィブリノーゲン分解産物 (FDP) の有用性を検討した.
(対象と方法) 一連の患者87例 (男61例, 女26例, 平均70.7歳) について, 膀胱鏡の際に自然排出尿を採取し, 同一検体でFDP, 核マトリックス蛋白22(NMP22), 膀胱腫瘍関連抗原 (BTA), 細胞診検査を行い結果を示した. FDP, NMP22, 細胞診はそれぞれ0.2μg/ml, 12.1U/ml, クラスIII以上を陽性とした.
(結果) 病理組織学的に膀胱癌と確認されたものは14例で, FDP, NMP22, BTA, 細胞診の全体の感受性はそれぞれ79, 64, 36, 36%であった. FDPの感受性はBTAと細胞診よりも有意に高かったが, NMP22との間には有意差を認めなかっだ. また, 癌を認めなかったものは73例で, 4法の特異性はそれぞれ69, 78, 92, 90%であった.FDPとNMP22の特異性はBTAと細胞診よりも有意に低かった.
G2以下の低異型度の癌10例に対する4法の感受性はそれぞれ70, 50, 30, 10%であり, T1以下の非浸潤性癌12例に対する感受性はそれぞれ75, 58, 33, 25%であった. FDPは低異型度, 非浸潤性の癌にも高い感受性を示す可能性があると考えられた.
(結論) 尿中FDPは低異型度, 非浸潤性の膀胱癌に対しても高い感受性を示し, スクリーニング検査として有用である. そしてその診断能力はNMP22と比較し同等あるいは優れている可能性がある.
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