日本泌尿器科学会雑誌
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94 巻, 1 号
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  • 山内 智之, 塚本 拓司, 森 義明, 杉山 健, 藤岡 俊夫
    2003 年 94 巻 1 号 p. 8-14
    発行日: 2003/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 尿管結石に対するESWL治療後も水腎症が改善せず, 尿管狭窄が残存していると思われることがあるが, これら原因に関する報告は少ない. そこでESWL治療後も残存した尿管狭窄の危険因子について検討を加えた.
    (対象・方法) 当院では1991年よりESWLの治療を開始し, 1996年までの間に16例の尿管狭窄を経験している. 尿管狭窄の危険因子を検討するため, 1994年から1996年に初回治療としてESWLを行なった556例のうち, 尿管狭窄を合併せず治療し得た549例を非狭窄群とし, 尿管狭窄群と比較した. 検討を加えた項目は, 年齢, 性別, 主訴, 結石の位置, 大きさ, 成分, 尿潜血, 水腎症の程度, 尿路感染症の有無, ESWLの砕石回数, 結石の嵌頓期間, ESWL後の治療で, これらに関し多重ロジステッィク回帰分析にて検討を加えた. (結果) 尿管狭窄は術前に尿路感染症のある症例や検診等で偶然発見された症例 (偶発例) に多く認められる傾向を示したが, 多重ロジスティック回帰分析の結果, 明らかに有意差の認められたものは術前の水腎症の grade と砕石回数とESWL後の治療の内TULであった. 特に1994年から1996年の間に限定すると, grade 4と5の症例では29例中5例に尿管狭窄の合併をみた.
    (結論) 水腎症の grade の高い症例では, 尿管狭窄の可能性を考慮し慎重に治療を進める必要がある. 特に grade 4と5の症例に関しては, 早期にESWL以外の治療法も考えるべきである. またTULでの追加治療も尿管狭窄に注意する必要がある.
  • 近藤 厚生, 後藤 百万, 磯部 安朗, 木村 恭祐, 上平 修, 松浦 治
    2003 年 94 巻 1 号 p. 15-19
    発行日: 2003/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 二分脊椎症患者における尿路結石の発生頻度と治療法を検討すること.
    (患者と方法) 過去27年間に303名の二分脊椎症患者を治療し, その内50名には膀胱拡大術を実施した. カルテと患者ファイルを参照して, 尿路結石の発生頻度と治療法を検討した.
    (結果) 尿路結石は15名に20回発生し, 18回は膀胱結石であり, 2回は腎結石であった. 10名は膀胱拡大術を受けた後に発生した. 結石患者の男女比は11:4で平均年齢は22歳であり, 全症例における尿路結石の発生頻度は5% (15/303) であった. 膀胱拡大術を受けた患者での発生頻度は20% (10/50), 拡大術を受けていない患者群では2% (5/253) であり, この両群間の差異は統計的に有意であった (p<0.01). 20回の内11回は内視鏡的に砕石し, 4回は膀胱切石術を採用し, 小さな膀胱結石は3回にわたりは自然排泄された. 腎結石の2例中1例はESWLで破砕し, 他の1名は経過観察中である. 結石成分はリン酸マグネシウムアンモニウム結石, またはこれを主成分とするものが10回と最多であった.
    (結論) 膀胱拡大術を受けた患者群の結石発生頻度は, 非膀胱拡大術群の10倍と高率であった. 前群の患者では清潔間欠導尿を確実に実施せず, または膀胱洗浄を疎かにした結果, 尿路結石の発生した事例が多かった. 膀胱拡大術を受けた患者が尿路結石を防止するためには適切な清潔間欠導尿と定期的な膀胱洗浄が必要である.
  • 本間 一也, 尾田 寿朗, 清水 崇, 宮尾 則臣, 立木 仁, 田仲 紀明
    2003 年 94 巻 1 号 p. 20-24
    発行日: 2003/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 病期診断としての腹腔鏡下骨盤内リンパ節郭清術 (laparoscopic pelvic lymph node dissection; LPLND) について, その手術成績を含め臨床的に検討した.
    (対象と方法) 原体照射法による放射線療法を前提とした限局性ならびに局所浸潤性前立腺癌症例 (T1~3) 27例にLPLNDを行った. 郭清範囲は左右閉鎖リンパ節とした.
    (結果) 手術時間は中央値103分, 出血量は中央値5mlであった. 摘出リンパ節数は中央値8.0個であり, 十分な数の摘出が可能であった. 術後食事開始は中央値1.0日, 歩行開始は中央値1.0日であった.
    (結論) LPLNDは比較的低侵襲で, また十分な数のリンパ節摘出が可能であり, 病期決定に安全で有用であると考えられた.
  • 古屋 亮兒, 尾田 寿朗, 立木 仁, 宮尾 則臣
    2003 年 94 巻 1 号 p. 25-28
    発行日: 2003/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 希釈式自己血輸血は自己血輸血のひとつであり, 比較的安価に行うことが可能である. 今回我々は希釈式自己血輸血の泌尿器科手術における有用性を検討した.
    (対象と方法) 対象は1996年10月から2001年2月までの間に当科においてある程度の出血が予想される手術において希釈式自己血輸血を施行した47例である. 術後の血液学的検討および同種血輸血の回避について検討した.
    (結果) 出血量の中央値は400ml (範囲10~2,340ml), 自己血採血量は中央値800ml (範囲300~1,023ml) であった. 出血量1,000ml以上であった手術症例14例で検討すると, 手術翌日のヘマトクリット値は出血量から換算したヘマトクリット値よりも有意に高かった. 希釈式自己血輸血例全例における同種血輸血回避率は98%であり, 根治的膀胱摘除術症例および根治的前立腺摘除術症例における回避率は94%であった.
    (結論) 出血量が1,000ml以上の症例では, 実測のヘマトクリット値は出血量から換算したヘマトクリット値よりも有意に高いことから, 希釈式自己血輸血によって手術中の赤血球量の喪失をある程度軽減できたと考えられた. 今回の検討では同種血輸血の回避率は全例では98%, 根治的膀胱摘除術症例および根治的前立腺摘除術症例では94%であり, 他の自己血輸血法の報告と比較しても遜色のない成績であることから, 本法は自己血輸血の1つとして有用であると考えられた.
  • 池田 大助, 福田 護, 高島 博, 布施 春樹, 平野 章治, 増田 信二
    2003 年 94 巻 1 号 p. 29-32
    発行日: 2003/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    病理組織所見が腎結核に極めて似ているが, 実際は結核感染症ではない「偽結核性腎盂腎炎」症例を報告する. 症例は56歳女性で, 主訴は左側腹部痛であった. 左さんご状結石に腎膿瘍が形成され, それが後腹膜腔に進展したものと診断された. 術前の尿培養では, 抗酸菌を含むいかなる細菌も検出されなかった. 左腎摘除術が施行された. 摘出腎には, 乾酪性壊死や類上皮細胞からなる結核結節が認められ, 腎結核を示唆する所見であったが, 腎病巣および術野で得られた膿を検体とした諸検査では, 抗酸菌の存在を証明できなかった. 以上の所見より, 本症例は偽結核性腎盂腎炎に腎膿瘍が合併したものと診断された. 近年本疾患についての報告が散見されるが, 十分に認知されているとは言い難い. 不必要な抗結核療法を回避するためにも, 本疾患についての十分な認識が必要である.
  • 本邦報告例の検討
    加藤 祐司, 玉木 岳, 徳光 正行, 山口 聡, 八竹 直, 奥山 光彦
    2003 年 94 巻 1 号 p. 33-36
    発行日: 2003/01/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は56歳, 女性. 1993年, 胃全摘後の絞扼性腸閉塞により小腸大量切除術 (残存小腸20cm) を受け, 以後短腸症候群の状態となった. 1996年, 腹部CTで左腎結石を指摘されるも放置していた. 2000年, 左腎結石の増大と右腎結石の形成を認め当科入院となった. 24時間尿生化学検査で蓚酸排泄量103.8mg/日と著明に高値を示し, 短腸症候群に起因した腸性過蓚酸尿症による尿路結石症と診断した. 左腎結石に対してはESWLを施行し, 結石成分分析では蓚酸カルシウムとリン酸カルシウムの混合結石であった. 結石の増大予防のため, 乳酸カルシウム, クエン酸ナトリウム/カリウム, 酸化マグネシウムを内服し, 現在経過観察中である.
    短腸症候群の生命予後は向上しており, それに伴い尿路結石症の合併例は増加するものと思われる. 短腸症候群症例では術後早期からの結石の診断と個々の症例に応じた予防が不可欠である.
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