日本泌尿器科学会雑誌
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94 巻, 4 号
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  • 丸 典夫, 設楽 敏也, 山下 英之, 嶺井 定紀, 志村 哲, 浜島 寿充, 馬場 志郎
    2003 年 94 巻 4 号 p. 481-486
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 高齢, 脳血管障害, 循環器疾患, 前立腺癌など経尿道的前立腺切除術を施行するにはハイリスクと考えられる尿閉患者に対しメモサーム尿道ステント留置術を施行し, その効果につき検討した.
    (対象と方法) 薬物療法で十分な治療効果が得られず尿道留置カテーテルにて尿路管理を行っている患者のうち, 観血的手術療法の適応外となっている17例を対象とした. 術前の平均尿道カテーテル留置期間は12.7ヵ月, 平均年齢は80.6歳であった. 手術は基本的には非ステロイド系消炎鎮痛坐剤と尿道麻酔を併用し, 専用のデリバリーシステムを用いて内視鏡下にステントを前立腺部尿道に留置した. 有効性の評価には自覚症状 (IPSS: International Prostate Symptom Score), 最大尿流率 (ml/秒), 残尿量 (ml), 残尿率 (残尿量/排尿量: %) を用いた.
    (結果) 術後経過観察期間は1週間から8ヵ月であり, 術中術後ともに重篤な副作用は認められなかった. 1症例を除き術直後から自排尿可能となり, 残り1症例も術後約2ヵ月で自排尿が可能となった. 評価可能な7症例の平均最大尿流率は9.7ml/秒で, 残尿量及び残尿率は77.4ml, 27.5%であった. 術後のIPSSの平均値は13.4であった.
    (結論) メモサーム尿道ステントは, 局所麻酔により施行でき, 手術侵襲も少なくハイリスクな尿閉患者に対する有効な治療法の1つであることが示唆された.
  • 根治のために膀胱全摘除術は必須か
    浅野 晃司, 三木 淳, 山田 裕紀, 前田 重孝, 阿部 和弘, 古田 昭, 鈴木 正泰, 大西 哲郎, 木戸 晃, 上田 正山, 河上 ...
    2003 年 94 巻 4 号 p. 487-494
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 尿膜管癌の自験例ならびに本邦報告例における stage, 術式, 予後との関連を検討することにより, 根治性と患者のQOLを維持するうえで最も適切な術式を明らかにすることを目的とした.
    (対象と方法) 過去14年間に経験した尿膜管癌15例を対象とした. 各症例の臨床像を明らかにするとともに, stage, 術式, 予後との関連を検討した. さらに, 最近20年間に本邦で報告された尿膜管癌症例の各術式における stage と転帰との関連を検討した.
    (結果) 15例の stage はすべてIIIA以上で, 予後は現時点で9例 (60%) が癌なし生存しており, 平均生存期間は7年であった. これらは全例 stage IIIAであり, 術式は膀胱全摘除術3例, en bloc segmental resection (以下 en bloc) 6例であった. 再発または癌死した症例は5例で, stage はIIIAが2例, IIIDが3例であり, 術式は en bloc 1例, 膀胱部分切除術3例, 試験開腹1例であった.
    本邦報告例の検討では, 膀胱部分切除術のみが行われた症例は予後が不良であったのに対し, en bloc または膀胱全摘除術が行われた症例は, stage がIIIAまでであれば88~100%が2年以上癌なし生存していた. その一方で, stage IIIC以上の症例に関してはどの術式を施行しても予後は極めて不良であった.
    (結論) 尿膜管癌症例に対する術式は en bloc が最も妥当であり, 膀胱全摘除術の適応は一部の症例にとどまるものと思われる.
  • 関 成人, 内藤 誠二, 大島 伸一, 平尾 佳彦, 東原 英二
    2003 年 94 巻 4 号 p. 495-502
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 本邦における前立腺肥大症 (BPH) に対する外科療法の実施状況と, 各治療法に関する医療者の意識を把握し, 将来的な治療方法の統一評価を図る際の参考資料を提供する.
    (方法) 全国155医療施設を対象に, BPHの代表的外科療法に対する過去の経験と平成12年度の実施状況, ならびに各種意識 (治療法の経済性, 安全性, 侵襲度, 全般効果, 総合的有用性, 選択基準ならびに将来性) に関するアンケート調査を実施した.
    (結果) 過去に経験した治療法, および平成12年度に実施した治療法のいずれも, 経尿道的前立腺切除術 (TURP) に続いて thick-loop を用いた経尿道的前立腺電気蒸散術 (TUVP) が多かった. 意識調査では ,経済性がTURP, 全般効果は開腹術, 安全性はラジオ波高温度治療 (TURF) がそれぞれ最も優れ, 総合的有用性はTURPに続いてTUVPが高いと認識されていた. 今後の普及が見込める治療法として順位の高かったものは, TUVP, 組織内レーザー凝固術 (ILCP), 経尿道的マイクロ波高温度治療術 (TUMT) であった.
    (結論) 各低侵襲治療法はいずれもTURPと比べて安全性と侵襲度において優れ, 全般効果と経済性では劣り, 総合的有用性でTURPを凌駕すると認識されたものはなかった. そのなかでTUVP (thick-loop) は全般効果や経済性でもTURPにほぼ匹敵し, 今後の普及が見込まれる治療法であった. 今後, BPHにおける外科療法の位置づけを確立するには, その安全性や侵襲度とともに長期有効性の十分な検討が必要と考えられた.
  • 藤川 慶太, 粟倉 康夫, 岡部 達士郎, 渡辺 励, 西村 周三
    2003 年 94 巻 4 号 p. 503-512
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景) Bayoumi らが指摘しているように (J. Natl. Cancer Inst. 2000, vol 92, p1731), Luteinizing Hormone Releasing Hormone (LHRH) analogue による前立腺癌の治療は去勢術に比べて費用が高い. しかし, 実際の診療においては LHRH analogue を使用している場合が大多数と思われるが, 泌尿器科医は, より費用が高く Quality-Adjusted Life Year (QALY) が低い治療を選択しているということであろうか. そこで, LHRH analogue は strictly dominated (高費用, 低効果) な治療であるのかどうかという点について, 泌尿器科の立場から再検討した.
    (方法) 我々は, Bayoumi, et al が用いた仮定を基本的に利用し, meta-analysis と文献検索に基づいて作成した Markov model を用いて, 保険者の立場で費用効用分析を行った. 基本症例は, 症状を呈する転移性前立腺癌の65歳の男性とした. モデルの time horizon は10年とした. 初期治療として5種類のホルモン療法について検討した: diethylstilbestrol diphosphate (DES), 去勢術, 去勢術+non-steroidal antiandrogen (NSAA), LHRH, LHRH analogue+NSAA. 効果の評価にはQALY, 総医療費, incremental cost-effectiveness ratios (増分費用/増分効果) を用いた.
    (結果) DESの費用が最も安かったがQALYは最低であった. 一方 LHRH analogue は2番目に費用が高かったがQALYは最高であった. DESと比較したLHRHの incremental cost-effectiveness ratios (\4,288,295/QALY) は, LHRHに対する去勢術の quality of life (QOL) weight を0.94と仮定した場合, 去勢術の Incremental cost-effectiveness ratio よりも低かった. 一方, LHRH+NSAAは strict dominance により選択から除外され, Orchiectomy+NSAA は extended dominance (増分費用/増分効果が相対的に高い) によって除外された.
    (結論) LHRH analogue は去勢術に比べて費用がかかるが, よりよいQALYを提供することができる. DESと比較したLHRHの費用/QALYは\4,288,295/QALYであり, 去勢術のQOL weight が0.94より低いと感じているのであれば, 許容できる範囲内である. どの治療法を選択するかは患者の選択による.
  • その現状と問題点
    齋藤 和男, 鈴木 康太郎, 野口 和美, 小川 毅彦, 武田 光正, 穂坂 正彦, 湯村 寧, 岩崎 晧, 佐藤 和彦, 菅野 ひとみ, ...
    2003 年 94 巻 4 号 p. 513-520
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 精子凍結保存の現状と問題点を明らかにする.
    (対象と方法) 精子凍結保存のために過去10年間に当科受診した14歳から51歳の152人の癌患者と2人の良性疾患患者を検討した.
    (結果) 化学療法開始前に受診した精巣腫瘍患者35人の中でWHOの精液所見の基準値を満たしたのは7名 (20%) であったが, 1例を除き凍結保存できた. 化学療法後に転移あるいは反対側に再発した精巣腫瘍患者2名の精子も保存している. 白血病や悪性リンパ腫患者で化学療法前に受診した20例中10例 (50%) はWHOの基準値を満たし, すべて凍結保存できた. 一方, 化学療法開始後に受診した69例中9例 (13%) はWHOの基準値を満たしたが, 29例 (42%) は無精子症であった.
    その他の悪性腫瘍を含めると, 未化学療法の癌患者のうち96.1%は精子を保存可能であったが, 化学療法後の患者では45.3%であった.
    凍結保存精子を使用した4例 (4%) では妊娠例は得られていない. また1例は患者死亡後に凍結精子の使用の申し出があった.
    精子を凍結保存した癌患者108例の中で転帰の明らかな32例の生殖細胞性腫瘍患者では死亡例はなかったが, 非生殖細胞性腫瘍患者60例中13例 (22%) は死亡している.
    萎縮精巣の対側に生じた精巣回転症患者の精子を凍結保存した.
    (結論) 化学療法開始前ならば原疾患に関わらず大部分の患者では精子を凍結保存できる. しかし, 化学療法後に受診した患者の半数は凍結保存することができず, 若い癌患者に対しては診断後速やかに精子凍結保存についての説明がなされなければならない. また, 凍結保存方法やその使用に関しては未解決の問題が多く今後の検討が必要である.
  • 小杉 道男, 花輪 靖雅, 門間 哲雄, 斉藤 史郎, 廣瀬 茂道
    2003 年 94 巻 4 号 p. 521-524
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    前立腺癌にみられる neuroendocrine (NE) differentiation は予後不良の因子とされ, ホルモン療法抵抗性で非常に進行が早いことが特徴であり, いまのところ有効な治療法は確立されていない. 前立腺癌に NE differentiation がみられる頻度は, 10%から92%までの報告がありその見解は一定しないが, 前立腺の純粋な NE carcinoma は非常にまれである. 今回, 前立腺腺癌と診断された後, ホルモン療法施行中に治療抵抗性となり, 病状の急速な進行をみた2例の前立腺の NE carcinoma を経験した.
  • 新井 啓, 川上 芳明, 大澤 哲雄, 波田野 彰彦, 糸井 俊之, 水澤 隆樹, 筒井 寿基, 谷川 俊貴, 高橋 公太
    2003 年 94 巻 4 号 p. 525-528
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は, 28歳男性および30歳男性の兄弟. 弟は左精巣の腫脹を主訴に受診し精巣腫瘍を疑われ手術となった. 術中, 子宮・卵管の遺残を認めたため, 交叉性精巣転移を伴うミュラー管遺残症候群に精巣腫瘍を合併したものと診断された. 兄は不妊症を主訴に受診し精巣の生検の際, 子宮・卵管の遺残を認め, 交叉性精巣転移を伴うミュラー管遺残症候群と診断された.
  • 砂倉 瑞明, 塚本 哲郎, 米瀬 淳二, 中石 真行, 前沢 卓也, 瀧本 啓太, 福井 巖
    2003 年 94 巻 4 号 p. 529-532
    発行日: 2003/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は74歳男性. 2年半前から薬局で購入したメチルテストステロンを含む男性ホルモン剤を強壮目的に週に2~3回内服していた. 食欲不振にて近医を受診した際, 直腸診上前立腺の硬結を指摘され当科に紹介された. PSAは41ng/mlと高値で, 前立腺は全体に硬く, 一部表面不整血中テストステロン値は23.5ng/dl, 血清LHは0.5mIU/mlと低値であった. 前立腺生検にて中分化腺癌, Gleason score 3+4の診断, CTにて右閉鎖リンパ節腫大を認め前立腺癌 stage D1 (T3aN1M0) と診断した. テストステロン値は除睾レベルであったがテストステロン製剤の中止により血中テストステロンが上昇することが危惧されたため, 治療としては combinationan drogen blockade (CAB) 療法 (LHRH agonist+ビカルタミド) を開始した. 6ヵ月間のホルモン療法によりPSAは正常化, リンパ節転移巣も縮小したため, 前立腺全摘術と限局骨盤内リンパ節郭清術を施行した. 病理組織学的にはpT2bN0, 前立腺癌取扱い規約による組織学的効果は grade 2であった. 術後8ヵ月後にはテストステロン値はほぼ正常値まで回復した (288ng/dl) が, 12ヵ月以上の間PSAは測定限界以下で再発の兆候を認めていない. 外因性の男性ホルモン剤服用中の前立腺癌症例においては血清テストステロン値が低く抑えられていてもCAB療法が有効であることが考えられた. また, テストステロン低値の前立腺癌患者では市販強壮薬の服用歴に関する問診も忘れてはならない.
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