日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
ISSN-L : 0021-5287
94 巻, 5 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 渡辺 政信, 冨士 幸蔵, 鈴木 康太, 北村 朋之, 奥村 大輔, 笠原 敏夫, 五十嵐 敦, 益山 恒夫, 平森 基起, 檜垣 昌夫, ...
    2003 年 94 巻 5 号 p. 543-550
    発行日: 2003/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 精巣腫瘍における視床下部-下垂体-精巣系機能を検討した.
    (対象と方法) 精巣腫瘍20例において高位精巣摘除術前後に血中LH, FSH, hCG-β測定, Gn-RH試験を行い, 精液検査, 血中 testosterone (T), free testosterone (F-T), estradiol (E2) 測定は術前に行った. 術後Gn-RH試験は術前血中 gonadotropin (Gn) が測定感度以下の症例に行った.
    (結果) 術前血中Gn非検出は血中hCG-β陽性8例中6例, 血中hCG-β陰性12例中4例に認めた. 術前Gn-RH試験ではGn非検出10例は無反応を, Gn検出10例は有意な (P<0.01) 反応を示した. 術後Gn-RH試験では9例中7例に有意な (P<0.01) 反応を認めたが, 術後血中hCG-β陽性の2例では抑制が持続していた. 血中hCG-β陰性例に対し血中hCG-β陽性例では精子濃度は有意に (P<0.002) 低く, T値に差を認めないが, F-T値, E2値は有意に (P<0.002, P=0.002) 高値であった.
    (結論) hCG産生精巣腫瘍では下垂体レベルでのGn-RH反応が抑制され, 血中hCGにより精子形成能低下, androgen, E2分泌増加がみられることが示唆された. さらにhCG非産生精巣腫瘍でも gonadotropin 分泌抑制がみられ, hCG以外の抑制因子の存在も示唆された.
  • 葉酸経口摂取量と葉酸血清濃度
    近藤 厚生, 木村 恭祐, 磯部 安朗, 上平 修, 松浦 治, 後藤 百万, 岡井 いくよ
    2003 年 94 巻 5 号 p. 551-559
    発行日: 2003/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 神経管閉鎖障害に罹患する胎児の発生リスクは, 母親が妊娠前に葉酸を摂取すると低減できる. 研究目的は, 女性が食事から摂取する葉酸について検討し, 葉酸血清濃度を測定することである.
    (対象と方法) 対象者は一般女性, 二分脊椎患者の母親, 妊婦, 二分脊椎患者, 看護学生の5群からなる222名の女性. 食事から摂取した葉酸量は, 食事記録を5訂日本食品標準成分表に準拠して解析した. 葉酸血清濃度は化学発光免疫測定法で測定した.
    (結果) 対象者は食事から葉酸を平均293μg/日摂取しており, 血清濃度は平均8.1ng/ml, エネルギー摂取量は平均1,857Kcalであった. 妊婦が食事から葉酸を最も多く摂っており, 血中濃度も最高値を示した.「日本人の栄養所要量」が規定する葉酸量を充足しない対象者の割合は, 成人女性が22%, 妊婦が72%であった. 葉酸は第3食品群 (香川綾分類) から最も多く摂取されていた. 葉酸サプリメント400μg/日を16週間内服すると, 基線値は7.8ng/mlから17.3へ上昇した.
    (結論) 葉酸経口摂取量は平均293μg/日, 血清濃度は平均8.1ng/mlであった. 妊婦の過半数は政府が勧告する葉酸量を摂取していなかった. 妊娠可能期の女性は葉酸に富む第3食品群を多く摂り, 妊娠を計画する女性は妊娠4週前から妊娠12週まで葉酸サプリメント400μg/日の内服が望ましい.
  • 本間 之夫, 塚本 泰司, 安田 耕作, 大園 誠一郎, 吉田 正貴, 山口 拓洋
    2003 年 94 巻 5 号 p. 560-569
    発行日: 2003/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) International Prostate Symptom Score (IPSS) と BPH Impact Index (BII) の日本語訳の計量心理学的妥当性を検討すること.
    (方法) IPSSとBIIの日本語質問表について, 103例の前立腺肥大症患者と23例の主観的には無症状の男性より回答を得た. 82例の患者については2週間後に再度調査し, 再現性を検討した. このうち21例の患者では, 更に2週間後に「この1か月」を「この1週間」とした質問紙にも回答を求めた. 反応性を検討するために, 22例の患者で治療後にも再調査した. あわせて, 内的一貫性, 構成的妥当性, 判別的妥当性も検討した.
    (結果) 再現性は, 全ての項目で重み付きκ係数が0.62以上と, 良好であった. 年齢, 症状重症度, 施設類型, 質問の対象期間が「この1か月」か「この1週間」かで, 再現性は有意な影響を受けなかった. Cronbach's αは0.83以上で, 内的一貫性も高かった. 主成分分析ではIPSSには2つ, BIIでは1つの主成分を検出し, 第一主成分にはどの項目も関与しており, ある程度の一次元性が確認された. ほとんどの項目は他の項目や外的基準 (最大尿流率, 残尿量, 前立腺体積) と有意な相関を示した. 全ての項目でスコアは無症状の男性に比べて患者で明かに高値で, 治療により減少した.
    (結論) IPSSとBIIの日本語訳は, 日本人において信頼性, 妥当性, 一次元性が示された. これらの日本語訳は原文に相当すると考えられる.
  • 自験例を含む32例の免疫組織化学的検討
    古田 昭, 成岡 健人, 長谷川 倫男, 鈴木 康之, 池本 庸, 大石 幸彦
    2003 年 94 巻 5 号 p. 570-573
    発行日: 2003/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    前立腺粘液癌は非常に稀な腺癌であり, その病態はあまり知られていない. われわれは免疫染色にて prostate specific antigen (以下PSA) 陽性, carcinoembryonic antigen (以下CEA) 陰性で, 印環細胞を認めず, 通常の腺癌を合併した症例を経験した.
    免疫染色にてPSAとCEAの両方が検索されていた自験例を含む32例の報告について検討した結果, PSA染色陽性23例中17例, CEA染色陽性10例中3例に通常の腺癌の合併が認められた. また, 印環細胞は6例に認められ, そのすべてがCEA染色陽性であった. このことは, 前立腺粘液癌のなかにはPSA染色陽性で通常の腺癌の一亜型と考えられるものと, PSA染色陰性かつCEA染色陽性で前立腺部尿道の腸上皮化生に由来するものの2つのタイプが存在する可能性が示唆された.
  • 木村 恭祐, 松浦 治, 磯部 安朗, 上平 修, 近藤 厚生
    2003 年 94 巻 5 号 p. 574-577
    発行日: 2003/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    59歳男性. 3回のTUR-Bt (TCC, G1~G2) 後再発予防のためBCG膀胱内注入療法を施行. BCGは週1回80mgを注入したが, 膀胱刺激症状強く6回目より40mgに減量. 8回目注入直後より膀胱刺激症状は更に増悪し, 一回排尿量も15~30mlと減少した. 対症療法を試みるも奏効せずステロイドパルス療法を施行したところ,症状の劇的な改善を認めた. BCGによる重度膀胱刺激症状に対しステロイドパルス療法は試みる価値があると思われた.
  • 多武保 光宏, 太田 雅也, 村田 明弘, 桶川 隆嗣, 堀江 重郎, 奴田原 紀久雄, 東原 英二
    2003 年 94 巻 5 号 p. 578-581
    発行日: 2003/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    50歳, 男性. 会陰部打撲後9日目で持続勃起症を発症し, 陰茎血液ガス分析, 陰茎海綿体造影, 陰茎カラードップラー超音波検査, 内陰部動脈造影にて流入過剰型持続勃起症と診断した. 薬物療法では一過性の改善しか得られず, 発症後25日目に内陰部動脈塞栓術を行った. 術後3ヵ月目に勃起能の回復を得た.
    流入過剰型持続勃起症について, 過去に報告された64症例 (自験例を含む) を対象に検討する. 流入過剰型持続勃起症の勃起能回復率は良好であり (94%, 62例中58例), 治療として内陰部動脈塞栓術を行うことが多く, 良好な結果 (勃起能回復率98%, 43例中42例) を得ている. 経過観察症例では29%においてインポテンツになっており, 流入過剰型持続勃起症に対し内陰部動脈塞栓術を行うことが妥当と考える.
  • 牛山 知己, 鈴木 和雄, 青木 雅信, 高山 達也, 影山 慎二, 大田原 佳久, 藤田 公生, 内久保 明伸
    2003 年 94 巻 5 号 p. 582-586
    発行日: 2003/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    遠隔手術支援システムを用いて腹腔鏡下副腎摘除術を行った. 手術室と約100メートル離れた外来に設置したコントロールルームの間を光ファイバーでつなぎ, 手術室には端末モニター, 視野方向を制御可能なカメラ (OES Image Trac Video SystemTM, オリンパス社製), 画像伝送コントローラー, デジタル画像伝送装置, 外景を写すカメラを設置し, コントロールルームに端末モニター, 内視鏡カメラのコントローラー, 画像伝送コントローラー, デジタル画像伝送装置, 外景を写すカメラを設置した. 指導者と術者はヘッドマイクロフォンをつけて双方向で会話できるようにした. 指導者は音声, モニター上でのポインティングで指示し, カメラ視野のコントロールを行った. 患者は52歳男, 径2cmの左副腎腫瘍による原発性アルドステロン症. 手術は合併症なく手術時間3時間15分, 出血量少量で終了した. 手術中に器械のトラブルもなく, リアルタイムに鮮明な画像を送受信することができ, 離れた場所からのカメラ視野のコントロールもスムーズに行うことができた. 遠隔手術支援システムは腹腔鏡下手術のトレーニングや手術支援に有用な手段となる可能性が示された.
feedback
Top