日本泌尿器科学会雑誌
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94 巻, 6 号
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  • 自験301例での検討
    兼光 紀幸, 平山 きふ, 岡田 晃一, 三矢 英輔, 早瀬 喜正, 小島 宗門
    2003 年 94 巻 6 号 p. 603-607
    発行日: 2003/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 近年, 普及しつつあるPSAを用いる集団検診により前立腺癌の早期発見が可能となっている一方で排尿障害や肉眼的血尿などを契機に発見される前立腺癌が, いまだに多く経験されるのも事実である. そこで, 前立腺癌の早期発見に向けての努力の一助とすべく, 前立腺癌患者の受診理由を中心に検討した.
    (対象と方法) 1988年8月より2001年12月までの間に, 名古屋泌尿器科病院で組織診断された新鮮前立腺癌301例 (平均年齢72.7歳, PSAの中央値20.0ng/dl) を対象に, 受診理由などを調査した. 受診理由の分類は, 前立腺癌取扱い規約 (第3版) に従った.
    (結果) 受診理由は, 有症状が274例 (91%) と大多数であり, 検診によるものは9例 (3%) であった. 有症状274例のうち, 泌尿器系症状が272例 (99%) であり, そのうち250例 (92%) が排尿障害, 19例 (7%) が肉眼的あるいは顕微鏡的血尿であった. 他の泌尿器科医から紹介された患者では, その大部分 (82%) で既にPSAが測定されていたが, 泌尿器科医以外からの紹介では, その割合は50%に過ぎなかった (p<0.0005).
    (結論) 今回の検討から, 名古屋地区のような前立腺癌検診の行われていない地域においては, 排尿障害は前立腺癌発見のための受診契機として重要な症状であることが判明した. 前立腺癌の早期発見を推進するためにも, 排尿障害を訴える患者に対しては, 受診科に関係なく積極的なPSA測定が必要であると思われる.
  • 2機種を用いた臨床的検討
    住野 泰弘, 三股 浩光, 田崎 義久, 佐藤 文憲, 江本 昭雄, 野村 芳雄, 酒本 貞昭, 岩下 光一
    2003 年 94 巻 6 号 p. 608-613
    発行日: 2003/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 下腎杯結石に対する体外衝撃波結石破砕術 (ESWL) 後の排石には下腎杯の解剖が重要な因子であるとされている. 今回われわれは下腎杯結石症例に対するESWL後の排石率におよぼす下腎杯の解剖学的特徴について2つの異なる機種を用いて, その有用性,普遍性について検討した
    (対象) ESWLを施行した結石径2cm以下の下腎杯結石症例93例を対象とし, 64例は Piezolith 2500, 29例は Medstone STSを使用した. 排石予測因子として, 下腎杯腎盂角, 下腎杯縦径, 下腎杯横径, 下腎杯高, 下腎杯縦横径比および下腎杯数を選択した.
    (結果) 完全排石率は Piezolith 2500使用群では53.1% (34/64), Medstone STS使用群では51.7% (15/29), Piezolith 2500と Medstone STS合計群では52.7% (49/93) であった. 単変量解析, 多変量解析による検討ではすべての群において下腎杯縦横径比が最も強い予測因子であった. また下腎杯縦横径比の cut-off 値を7とした時, 下腎杯縦横径比が7未満の症例では排石率が72%以上と高い排石率を得られたが, 縦横径比が7以上の症例では3分の2以上に残石が認められた. また, 結石の最大径1cm未満と1cm以上の2群における排石率も検討したところ下腎杯縦横径比は結石径に関わらず強い独立因子であった,
    (結論) ESWL後の下腎杯結石の排石率は解剖学的特徴に依存していると考えられ, その構造を検討して慎重に治療法を選択すべきである. 特に下腎杯縦横径比は2cm以下のX線非透過性下腎杯単結石には最も有用で, かつ機種間による差異もなく普遍的な排石予測因子であると考えられた.
  • 鈴木 一実, 小林 実, 徳江 章彦
    2003 年 94 巻 6 号 p. 614-620
    発行日: 2003/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 内分泌療法中の前立腺癌患者におけるホットフラッシュ (HF) に関する臨床報告は欧米では数多く認められるが, 本邦における報告は数少ない. そこで内分泌療法中の前立腺癌患者におけるHFの出現頻度および臨床因子との関連を検討した.
    (対象と方法) 対象は内分泌療法中前立腺癌患者68例である. 患者の治療内容は, LH-RHアナログ単独症例 (LH-RHA群) が22例, LH-RHAおよび非ステロイド性アンチアンドロゲン剤併用症例 (LH-RHA+NSAA群) が30例, LH-RHAおよびステロイド性アンチアンドロゲン剤併用症例 (LH-RHA+SAA群) が9例, LH-RHAおよびリン酸エストラムスチン併用症例 (LH-RHA+EP群) が1例, 両側精巣摘除術単独症例 (O群) が5例, O+NSAA群が11例, O+SAA群が1例である. 方法は一定の自己記入式アンケート調査を行い, HFの出現頻度, 臨床的因子との関連, およびSAAや漢方薬のHF抑制効果を分析した.
    (結果) 全体のHF出現頻度は37%であった. 治療内容別の内訳はLH-RHA群が36%, LH-RHA+NSAA群が45%, LH-RHA+SAA群が13%, LH-RHA+EP群が0%, O群が20%, O+NSAA群が45%, O+SAA群が100%であった. またHFの出現と臨床的因子との有意な関連は認められなかった. 一方HFの抑制効果に関しては, SAAで治療した4例中3例, 漢方薬で治療した3例中2例が4週間後にHFが消失した.
    (結論) 本邦の内分泌療法中前立腺癌患者おいても欧米同様, HFは大きな副作用であることが示唆された. またSAAや漢方薬はHFの治療に有用であると考えられる.
  • リンパ腫の1例と本邦22報告例の分析
    福谷 恵子, 小山 康弘, 藤森 雅弘, 石田 俊光
    2003 年 94 巻 6 号 p. 621-625
    発行日: 2003/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    前立腺原発悪性リンパ腫は非ホジキンリンパ腫の中でも極めて稀な腫瘍である. われわれは排尿障害, 会陰部痛を主訴とし, 前立腺に腫大, 硬結を認めた70歳男性に針生検を行い, びまん性大細胞型B細胞リンパ腫と診断した. 骨盤CTにより右内, 外腸骨リンパ節腫脹を見たが腹部CT, 消化管内視鏡検査, 骨髄生検で病変を認めないため病期IIと判定した. 多剤併用化学療法CHOPを5サイクル施行したところ自覚症状および画像, 病理組織検査上完全寛解を認め, その後2年以上再発なく生存している. わが国でこれまでに22例の前立腺原発悪性リンパ腫症例が報告されている. 自験例を含め23例の集計中, 半数以上が60歳を超え, 大多数がびまん性リンパ腫で Working Formulation 分類の中等度悪性群に相当した. また23例中19例 (83%) が病期I, IIの限局期症例であった. 前立腺全摘または放射線照射のみで治療された5例中3例は死亡ないし悪化の転帰をとったが, 単独, 他治療併用あわせて化学療法を行った16例中11例 (69%) で完全寛解が得られている. 高齢者に好発し, 中等度悪性群に属する本疾患はこれまで予後の悪い腫瘍と報告されてきたが, 限局期症例では化学療法によく反応するのでより長期の寛解を期待し得る.
  • 加藤 祐司, 芳生 旭辰, 堀 淳一, 谷口 成実, 山口 聡, 八竹 直, 安住 誠, 小山内 裕昭
    2003 年 94 巻 6 号 p. 626-629
    発行日: 2003/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は68歳, 女性. 1997年, 洞不全症候群のためペースメーカ植え込み術を施行. 2002年2月, 左背部痛を自覚. 左上部尿管に13×7mmの結石を認め当科入院. ペースメーカはDDD mode に設定されていたが, 実際にはAA Imode で100%作動していた. 循環器科医師, ペースメーカテクニシャンの同席のもと, ペースメーカの作動条件を変更せずに体外衝撃波砕石術 (SWL) を施行した. 施行中, 心房ペーシングにより衝撃波が数回不規則に発射されたが, ペースメーカ機能に影響はなかった. SWL施行中, 施行後の循環動態にも異常を認めなかった. 結石は砕石され, 現在残石なく経過観察中である. ペースメーカ患者に対するSWL治療例は, 本邦では9例目であった.
  • 石橋 啓, 一條 貞敏, 山口 脩
    2003 年 94 巻 6 号 p. 630-633
    発行日: 2003/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は出生1日の男児で出生当日より左陰嚢内容の腫脹を認めたため翌日産婦人科より当科紹介となった. 受診時, 左精巣は硬く腫脹しておりさらに右精巣も硬く触れた. 超音波検査および血液検査上, 両側精巣捻転より両側精巣腫瘍を考えた. その翌日手術を施行し, 両側の精巣捻転と判明した. 左精巣摘除術と右精巣生検および固定術を施行した. 組織診断は両側とも壊死組織であった.
  • 齋藤 満, 柿沼 秀秋, 飯沼 昌宏, 土谷 順彦, 下田 直威, 大山 力, 佐藤 滋, 佐藤 一成, 加藤 哲郎
    2003 年 94 巻 6 号 p. 634-638
    発行日: 2003/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    精神発達遅滞, 癲癇および尿路結石の既往歴がある43歳女性に右腎腫瘤を認めた. 結節性硬化症 (Tuberous sclerosis, TSC) に特徴的な鼻翼に広がるアクネ様皮診と歯エナメル質陥凹を認め, 顔面皮診の生検でTSCと診断した. 腹腔鏡下右腎摘除術を施行し, 病理診断は出血性腎嚢胞中の renal cell carcinoma であった. 結節性硬化症に合併した腎細胞癌は若年発症と両側発症の傾向があった. これまで本邦で26例の報告があり, 本症例は27例目である.
  • 柿崎 弘, 國井 拓也, 加藤 智幸, 冨田 善彦
    2003 年 94 巻 6 号 p. 639-642
    発行日: 2003/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    デジタルカメラの進歩が著しいが, 泌尿器科領域におけるデジタルカメラでの内視鏡画像撮影は普及していない. 市販デジタルカメラを使用し, 内視鏡画像の撮影を試みた. 内視鏡用カプラー (アイピース) にデジタルカメラ用ステップアップリングを接着させアッタチメントを作製した. 内視鏡レンズ, アッタチメント, デジタルカメラを接続し, 内視鏡画像を撮影した. 内視鏡用のビデオカメラシステムで撮影したものより高画質の画像が得られた. 使用可能なデジタルカメラの条件は, レンズ部分にフィルター取り付け用のねじが付いていることである. 問題点はカメラ自体の滅菌ができない, 防水でないということであるが, 高画質の画像が安価で撮影可能であり, かつ画像の整理, 保存に優れており有用と考えられた.
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