(目的) 排尿障害は年齢依存的に発生し, 高齢者の quality of life (QOL) を著しく障害する. 本研究では, 検診受診者を対象として加齢に伴う下部尿路症状および排尿状態の変動を検討した.
(対象と方法) 男性225名 (20~79歳) において, International prostate symptom score (IPSS), QOLスコア, 尿流量測定, 経腹的超音波による前立腺容量, 残尿量を評価した. また, 女性539名 (20~89歳) においてIPSS, QOLスコアを調査した.
(結果) 男女とも, 排尿障害を有する比率は年齢依存的に増加した. 男性においては, QOLスコアは増加する傾向があり, IPSS, 前立腺容量ならびに残尿量が有意に増加し, 排尿量, 最大尿流率は低下した. QOLスコアとIPSS各項目との検討において, 残尿感, 尿勢低下と強い正の相関を示した. 最大尿流率とは負の相関を認めた. また, 前立腺肥大症診療ガイドラインによる症状分類を用いると, 中程度とされる比率が年齢依存的に有意に増加した. 一方, 女性のQOLスコアには大きな変動はなく, IPSSも軽度の上昇を認めるのみであった. 2時間以内の頻尿と, 残尿感, QOLスコアは強い正の相関を示した.
(結論) 今回の検討により, 男女とも年齢依存的な下部尿路障害を認めた. とくに, 男性では前立腺肥大症治療の適応とされる中程度症状が, 50~60歳代の約半数に認められ, 加齢に伴うさらなる下部尿路症状の悪化が予想された.
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