日本泌尿器科学会雑誌
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96 巻, 3 号
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  • 斉藤 博
    2005 年 96 巻 3 号 p. 432-441
    発行日: 2005/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) ヒポクラテス (紀元前460年頃) は古代ギリシア, コスの有名な医師で, 彼の業績は, 後世『ヒポクラテス全集』に記載されている. 私は『ヒポクラテス全集』での排尿障害を検討した.(方法)『ヒポクラテス全集』での排尿障害をラーブ, 大槻, 今版で採集し, コス学派とクニドス学派とで排尿障害を比較した.
    (結果) 排尿障害が67ヵ所 (文, または, 節): 排尿困難50, 尿閉15, 尿失尿2, または, 3 (排尿困難との合併が1) 記載されていた. 術語としてストラングリエ (滴状尿) は20ヵ所中コス学派12 (60%), クニドス学派5 (25%), ドゥスリエ (排尿困難) は30ヵ所中コス学派13 (43%), クニドス学派17 (53%) であったが, 有意ではなかった (X2検定で, p>0.05). 激しい疼痛を伴う排尿困難, 尿閉はコス学派の記載で認められた. ストラングリエは慢性化するが, 合併症がなければ死ぬことはない. 2種類の尿失禁があり, 多量の尿失禁と, 滴状尿失禁で, 前者は神経因性膀胱, 後者は溢流性尿失禁と考えられる. 尿道カテーテル法, 利尿剤が, すでに,『ヒポクラテス全集』に記載されていた. 瀉血法, 鎮痛剤が排尿困難の治療に用いられていた.
    (結論) 排尿障害は4種類認められる. すなわち, 排尿困難, または, ディスリア, 滴状排尿困難症, または, ストラングリ, 尿閉と尿失禁である. 重症の排尿障害はコス学派の記載に多く認められる.
  • 河合 正記, 上村 博司, 蓮見 壽史, 長田 裕, 太田 純一, 三好 康秀, 三賢 訓久, 大内 秀紀, 杉浦 晋平, 藤浪 潔, 窪田 ...
    2005 年 96 巻 3 号 p. 442-447
    発行日: 2005/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 前立腺癌の予後予測は, 臨床病期と組織学的分化度によって行われてきた. PSA doubling time (PSA-DT), PSA density などが予後因子として検討されてきたが, 正確に予後を反映する訳ではない. そこで, 再燃前立腺癌患者の中で stage D症例について, PSA値や骨転移病巣の数の指標であるEOD分類等と予後との関連について再検討した.
    (対象と方法) 対象は, 初期治療として内分泌療法を施行し, 一旦PSAが減少したものが再上昇した前立腺癌 stage Dの29例である. これらについて, (1) 臨床病期 (2) 組織学的分化度 (3) EOD分類の分類別生存曲線を, カプランマイヤー法でプロットし, 予後との関連を検討した. さらに, (4) 初診時PSA値 (5) Nadir PSA値 (6) 再燃時PSA値 (7) PSA-DT (8) PSA値 Nadir までの期間 (9) 再燃までの期間について, Cox の比例ハザードモデルを使用して解析し, 予後との関連を検討した.
    (結果) 癌疾患特異別生存期間, 再燃後の生存期間のどちらにおいても, EOD分類のみが有意差のある予後因子であった.
    (結論) EOD分類は予後因子, 特に再燃後の因子として重要であると考えられた. PSA関連パラメータは, PSAの絶対値が必ずしも腫瘍体積と相関しないため, 単独では予後判定因子とはならないと思われた.
  • 木内 寛, 古賀 実, 平井 利明, 難波 行臣, 竹山 政美
    2005 年 96 巻 3 号 p. 448-452
    発行日: 2005/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 腹腔鏡下精索静脈瘤根治術における新しい血管シーリング装置使用の安全性, 有用性を検討した.
    (対象と方法) 安全性については当科にて左精索静脈瘤と診断され, 静脈瘤根治術にて得た内精索静脈 (n=8) を用いて, 血管シーリング装置 LigaSure™ LAPにてシーリングし, 破裂圧を測定した. 有用性については両側精索静脈瘤と診断され, 腹腔鏡下両側精索動静脈結紮術を行った26例を対象とした. LigaSure™ LAPにて血管処理を行った13例 (以下 LigaSure 群) とクリップにて血管処理をした13例 (クリップ群) について, 手術時間, 合併症に関して比較, 検討した.
    (結果) 内精索静脈の平均血管径は2.5±0.8mm (平均±標準偏差), 破裂圧は449±95.2mmHgであった. 破裂場所は8例中6例が正常血管壁で, 2例がシーリング部分であり, 平均の破裂圧はそれぞれ442mmHg, 508mmHgと統計学的に有意差を認めなかった. 手術時間はクリップ群では117±27分であるのに対し, シーリング法では70±20分と有意に短縮した (p<0.05). どちらの方法も出血量は少量, 術中・術後合併症は認められなかった.
    (考察) 新しい血管シーリング装置を用いた腹腔鏡下精索静脈瘤根治術はクリップと同様に安全に血管処理を行うことができ, 手術時間の短縮を図ることが可能であった
  • 天野 俊康, 竹前 克朗, 酒井 英明, 菅生 元康, 近藤 恵子
    2005 年 96 巻 3 号 p. 453-461
    発行日: 2005/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 骨盤内手術後の女性性機能障害を明らかにするために, 郵送法によるアンケート調査を施行した.
    (対象と方法) 子宮筋腫術後の118名 (Group A) および直腸癌または膀胱癌術後のオストメイト56名 (Group B) の計174名を対象とし, 年齢, パートナーの有無, 性機能障害に関する相談相手, 性生活の重要度, さらに術前後での性交頻度, 性欲, 膣の湿潤度, 性器の変形, 性交時痛, 性器の痛みや痒み, オーガスムなどを質問した.
    (結果) 174名中78名より回答を得た (回収率45%). 男性パートナーのいない19名とあっても術前から性活動がなかった18名は, 性欲が非常に低く, 性生活も重要とは考えていなかった. 25名 (Group Aの18名とBの7名) は術後も術前と同様に性活動を継続していた. しかしながら, 16名 (Group Aの5名とBの11名) は, 性欲低下, 膣の湿潤度の低下, オーガスムの減少などのため, 術後の性生活に支障を認めた. さらに Group Bでは Group Aに比べ有意に性活動に支障を来しており, ストーマが大きな悩みであった.
    (結論) 男性パートナーがない, またはあっても術前から性活動がない例は, 性機能に関して注意を払う必要はないと考えられた. 術前に性活動のあったうち約60%は術後も問題なく性活動を継続していたが, 約40%は性機能障害に悩んでおり, 特にオストメイトでは重要な問題であった.
  • 小林 博仁, 熊谷 仁平, 大野 俊一, 酒井 真人, 平野 美和, 手島 伸一, 井上 滋彦, 河村 毅
    2005 年 96 巻 3 号 p. 462-465
    発行日: 2005/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は81歳男性. 1999年1月14日に排尿困難を主訴に当科受診. 経直腸的超音波検査上, 前立腺に接して長径4cmの多房性嚢胞を認めたが, 本人精査希望せず放置していた. 2002年8月頃より排尿困難が悪化, 尿閉となり精査目的に9月10日入院となる. RUG, DIPで膀胱, 前立腺部尿道の左側への圧排を認め, CTでは骨盤内に径12×7cmの多房性嚢胞を認めた. その他に骨盤MRI, リンパ管シンチ, 精管造影, 注腸造影等施行するも, 骨盤内嚢胞の由来は確定できなかった. PSA 3.7ng/ml, CEA 1.2ng/mlと正常であったが, CA19-9は111.4U/mlと高値であった. 排尿状態改善のため10月1日骨盤内嚢胞摘除術施行. 病理組織診断は前立腺嚢胞性腺腫であった. 術後排尿状態は良好となり, 現在外来経過観察中である.
  • 沼田 幸作, 東 浩司, 橋根 勝義, 住吉 義光
    2005 年 96 巻 3 号 p. 466-469
    発行日: 2005/03/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    二次癌とは最初に発生した癌 (一次癌) の治療後に発生した癌であり, 子宮頚癌などの放射線照射後の二次性膀胱癌はしばしば臨床上でも遭遇する. 米国では全悪性腫瘍の6~9%が二次癌 (放射線治療以外も含む) であるとされている. 近年, 前立腺癌の治療で放射線治療はますます重要視されておりその症例数は増加傾向にある. 今回, われわれは前立腺癌への放射線療法後発生した二次性膀胱癌と思われる2例を経験した.
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