日本泌尿器科学会雑誌
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98 巻, 7 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 中田 誠司, 古谷 洋介, 蓮見 勝, 中野 勝也, 高橋 溥朋
    2007 年 98 巻 7 号 p. 803-807
    発行日: 2007/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 前立腺癌は, たとえ進行癌であってもほとんどの例で初期内分泌療法に反応して, PSAは一旦低下する. しかし, 初期内分泌療法に対する反応が不良の前立腺癌は, まれだが存在する. 今回, MABまたは女性ホルモン剤併用による初期内分泌療法にてもPSAの低下が不充分な例について検討した.
    (対象と方法) 対象は, 1992年1月から2005年12月までの間に当院で診断された前立腺癌のうち, MABまたは女性ホルモン剤併用による初期内分泌療法にてもPSAが10ng/ml以下に低下しなかった20例である. これらについて, その頻度, 治療前PSA値, 初期内分泌療法後および全経過中の PSA nadir 値, 二次治療に対するPSA反応について調査し, 予後との関係を検討した.
    (結果) MABまたは女性ホルモン剤併用による初期内分泌療法にてもPSAが10ng/ml以下に低下しなかった前立腺癌の割合は, 4.9%であった. それらの癌特異生存率は, 1年75.0%, 3年14.7%ときわめて不良であった. また, 全経過中の PSA nadir 値が高い群, 二次治療が無効であった群の予後は, そうでない群に比べて有意差はなかったが悪い傾向であった.
    (結論) MABまたは女性ホルモン剤併用による初期内分泌療法にてもPSAの低下が不充分な例の予後は, きわめて不良であった. この結果は, その後の治療計画立案, 本人・家族に病状や今後の見通しを説明する上で有用である.
  • 井上 啓史, 山崎 一郎, 深田 聡, 飯山 達雄, 辛島 尚, 執印 太郎, 倉林 睦, 大朏 祐治, 八田 章光
    2007 年 98 巻 7 号 p. 808-818
    発行日: 2007/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) マイクロ波凝固療法 (MCT), ラジオ波焼灼療法 (RFA), 超音波駆動メス (USS) 使用の最適化を図るべく, 腎臓における熱および電気伝導に関する検討を行った.
    (対象・方法) 全身麻酔下のブタ生体腎に対して腎動脈遮断および腎盂内還流冷却の処置を加え, 各治療を行った. 腎実質の温度変化は温度感知装置にて測定し, 組織変化は病理組織学的に評価した.
    (結果) MCTにおいて, 腎動脈遮断による影響は認めなかった. また腎盂内環流冷却により温度上昇は抑制されたが, 組織変化には有意な影響はなかった. RFAにおいて,腎動脈遮断および腎盂内環流冷却により温度上昇はともに亢進し, 組織変化範囲も有意に拡大した. USSにおいて, 腎動脈遮断により温度上昇は亢進し, 組織変化の範囲も有意に増大した. また腎盂内環流冷却による影響は認めなかった. 次に電気伝導率 (EC) の異なる腎盂内環流冷却水を使用した場合, MCTおよびUSSではいずれの冷却水にも影響を受けなかったが, RFAでは水道水 (EC: 133μS/cm) を使用した場合と比較して, 生理食塩水 (EC: 15,800μS/cm) では温度上昇が亢進, 組織変化の範囲が拡大し, ブドウ糖液 (EC: 8.6μS/cm) では温度上昇および組織変化の範囲が抑制された.
    (結語) RFAやUSSは治療域周囲環境の影響を受けやすく, その電気・熱伝導性に留意して治療すべきである.
  • 湯村 寧, 森山 正敏, 佐々木 毅, 高瀬 和紀, 大古 美治, 野口 純男, 三浦 猛, 窪田 吉信
    2007 年 98 巻 7 号 p. 819-825
    発行日: 2007/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 陰茎癌は症例数が少なく, 治療方針も施設間で大きく異なる場合がある. 陰茎癌自験症例59例の病理所見・治療法と予後についての関連を検討しその特徴を明らかにすることを目的とした.
    (対象と方法) 1988年4月~2006年1月の間に, 陰茎癌の診断をうけた患者59名の臨床所見・病理所見を調査し, 生存率との関連・予後因子の調査を単変量・多変量解析を用いて検討した.
    (結果) 59例の年齢中央値は66歳 (47~91歳), 追跡期間の中央値は37.7ヵ月であった. 生存率に関して, 腫瘍径・Stage・Grade・年齢・リンパ節転移, 脈管浸潤, 遠隔転移転移の有無・進展様式・治療法などを因子とし単変量及び多変量解析を用いて調査を行った. 期間内の癌死例は13例 (22.0%) であり, 5年生存率は67.4%であった. 多変量解析において術式 (p=0.0471 Hazard ratio 3.364), 静脈浸潤の有無 (p=0.0014 Hazard ratio 5.921) が生存に関与する因子と考えられた.
    (結論) 陰茎癌はまれな疾患であり, 治療に関する決まった regimen がない. 今回の検討から詳細な病理診断と, それを参考にした統一された集学的な治療方針が必要だと考えられた.
  • 自験例と本邦報告例の検討
    日向 信之, 田口 功, 福本 亮, 今西 治, 山中 望
    2007 年 98 巻 7 号 p. 826-831
    発行日: 2007/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (緒言) S状結腸憩室炎による膀胱S状結腸瘻を7例経験した. 1994年以降の本邦報告130例を集計し, 自験例と併せ検討した.
    (対象と方法) 1994年から2006年までの12年間に当科で経験した結腸憩室炎による膀胱S状結腸瘻7例を対象とし, 臨床症状, 診断法, 治療法につき集計を行った.
    (結果) 全例が男性で, 年齢は41歳から82歳 (平均60.7歳) であった. 症状は, 気尿5例, 混濁尿, 糞尿5例, 膀胱刺激症状6例, 下腹部痛6例, 難治性尿路感染症が5例, 肉眼的血尿が2例, 熱発は1例において認められた. 全症例において複数の症状を認めた. 膀胱鏡での異常所見は全例に認められた. 全例において結腸切除術および膀胱部分切除術を施行した.
    (結論) 本邦において増加している結腸憩室炎によるS状結腸膀胱瘻は泌尿器科的症状で外来を受診することが多く, 膀胱刺激症状や下腹部痛, 治療抵抗性の膿尿などを診察する際には本症を念頭に置き, 上述の検査を行うことが肝要である. 診断後, 現状では手術療法が標準的であり, 慎重な術式の選択により良好な転帰が期待できる.
  • 金子 智之, 小串 哲生, 朝蔭 裕之, 北村 唯一
    2007 年 98 巻 7 号 p. 832-834
    発行日: 2007/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は54歳, 男性. 血尿による膀胱タンポナーデにて受診した. CT, MRIにて左腎盂内に脂肪成分に富む腫瘍を認めた. 脂肪肉腫または血管筋脂肪腫が疑われたが, 尿路上皮癌の可能性も否定できず, 左腎尿管全摘除術を施行した. 病理組織検査にて, 腎盂内を主体とする腎血管筋脂肪腫であった. 腎盂内に進展し, 腎盂腫瘍様の所見を呈する腎血管筋脂肪腫は稀であり, 調べえた限りでは本邦初の報告例と考えられた.
  • 南田 諭, 岩村 正嗣, 宋 成浩, 笹本 治子, 石川 弥, 黒坂 眞二, 藤田 哲夫, 馬場 志郎
    2007 年 98 巻 7 号 p. 835-838
    発行日: 2007/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は44歳女性. 既往歴に多発性硬化症がありステロイド剤を服用していた. 経過中に左腎盂尿管移行部 (UPJ) 狭窄による水腎症を診断され, Double-Pigtail Stent (D-Pステント) を留置されていた. UPJの狭窄に対しホルミウム-YAGレーザーによる Endopyelotomy を施行したが, 再狭窄を認めた為に, Anderson-Hynes 法による腹腔鏡下腎盂形成術を施行した. 術中UPJ腹側を横断する交差血管を含む索状物を認めたため, 金属性血管用クリップを用いてクリッピング後に切断した.
    術後経過は良好で, 水腎症の改善を認めていたが, 術後1年10ヵ月目のKUBにて左腎盂内結石を認め, 術中に使用した金属クリップが腎盂内に迷入した為に生じた腎盂結石と診断した. そのため軟性尿管鏡による経尿道的尿管砕石術 (TUL: Transurethral ureterolithotripsy) を施行, 尿管鉗子を使用し金属クリップを摘出した. クリップの迷入による腎盂内結石の形成は極めて稀であり, 我々が調べ得た限りでは本例が一例目である. 若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 田口 功, 寺川 智章, 常森 寛行, 今西 治, 山中 望, 近藤 武史, 伊藤 利江子
    2007 年 98 巻 7 号 p. 839-842
    発行日: 2007/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は69歳女性. 左腎腫瘤を指摘され当科受診した. 腹部CTでは左腎上極に内部が不均一に造影される50mm大の腫瘤を認めた. 画像検査からは原発性腎悪性腫瘍を疑ったが, 病歴および腫瘍マーカーからは転移性腫瘍の可能性も否定できず, 経皮的CTガイド下針生検を行った. 生検組織標本は炎症性肉芽腫の像であった. 一部の組織球の細胞質内に Michaelis-Gutmann 小体を認め, 腎実質性マラコプラキアの診断に至った. Levofloxacin の経口投与を行い, 治療開始から約4ヵ月で腫瘤は消失した. その後, 22ヵ月間のフオロー期間中に再発を認めなかった. マラコプラキアは比較的稀な慢性肉芽腫性炎症性疾患である. 本疾患は膀胱をはじめとする尿路生殖器系に好発するが, 腎実質発生例はきわめて稀である. また, 本邦での保存的治療施行例の報告は少なく, われわれの調べえた限り, 自験例が本邦2例目であった.
  • 桝永 浩一, 稲留 彰人, 杉山 豊, 前田 喜寛, 里地 葉, 高橋 渡, 吉田 正貴, 上田 昭一, 池田 和義, 高野 雄一, 矢津田 ...
    2007 年 98 巻 7 号 p. 843-847
    発行日: 2007/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    患者は32歳男性. 家族歴は妹が von Hippel-Lindau (VHL) 病. 高血圧にて近医を受診していたが, 精査目的で撮影したCTにて両側副腎腫瘍を指摘され, 平成18年1月に当科入院. 血中及び尿中のカテコラミンの上昇, 131I-MIBGシンチで両側副腎に著明な集積, MRIにて小脳血管芽腫・脊髄血管芽腫が認められた. VHL病に合併した両側褐色細胞腫と診断し, 2月22日に経腹的に両側副腎摘出術を施行した. また, 左腎静脈内に達する腫瘍血栓が術中に認められた為, 左腎摘出術も同時に施行した. 病理診断も褐色細胞腫であり, 術後に血圧や炎症所見などが正常化し, 術後8ヵ月の現在経過良好である. VHL病に合併した両側褐色細胞腫は自験例が本邦報告11例目である.
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