(目的) 前立腺癌は, たとえ進行癌であってもほとんどの例で初期内分泌療法に反応して, PSAは一旦低下する. しかし, 初期内分泌療法に対する反応が不良の前立腺癌は, まれだが存在する. 今回, MABまたは女性ホルモン剤併用による初期内分泌療法にてもPSAの低下が不充分な例について検討した.
(対象と方法) 対象は, 1992年1月から2005年12月までの間に当院で診断された前立腺癌のうち, MABまたは女性ホルモン剤併用による初期内分泌療法にてもPSAが10ng/ml以下に低下しなかった20例である. これらについて, その頻度, 治療前PSA値, 初期内分泌療法後および全経過中の PSA nadir 値, 二次治療に対するPSA反応について調査し, 予後との関係を検討した.
(結果) MABまたは女性ホルモン剤併用による初期内分泌療法にてもPSAが10ng/ml以下に低下しなかった前立腺癌の割合は, 4.9%であった. それらの癌特異生存率は, 1年75.0%, 3年14.7%ときわめて不良であった. また, 全経過中の PSA nadir 値が高い群, 二次治療が無効であった群の予後は, そうでない群に比べて有意差はなかったが悪い傾向であった.
(結論) MABまたは女性ホルモン剤併用による初期内分泌療法にてもPSAの低下が不充分な例の予後は, きわめて不良であった. この結果は, その後の治療計画立案, 本人・家族に病状や今後の見通しを説明する上で有用である.
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