日本泌尿器科学会雑誌
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98 巻, 4 号
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  • 三浦 徳宣, 沼田 幸作, 東 浩司, 橋根 勝義, 住吉 義光
    2007 年 98 巻 4 号 p. 589-594
    発行日: 2007/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 局所進行, 及び転移性尿路上皮癌に対し, M-VAC変法を施行し, その奏効率, 奏効期間および有害事象について retrospective に検討した.
    (対象と方法) 1993年10月から2005年2月までに, M-VAC変法を施行した局所進行及び転移性尿路上皮癌患者28例のうち, 評価可能病変を有する25例を対象とした. M-VAC変法は, MTX 30mg/m2 (day 1), VLB 3mg/m2 (day 2), ADM 30mg/m2 (day 2), CDDP 70mg/m2 (day 2) の併用化学療法を3週毎に施行した.
    (結果) M-VAC変法の治療回数は中央値3回で, 効果判定は25例中CR6例, PR 6例で, 奏効率は48%であった. 観察期間中央値65.6ヵ月で, 全生存期間中央値は9.3ヵ月, 1年及び2年全生存率はそれぞれ33.5%, 9.6%であった. 奏効症例の奏効期間中央値は6.0ヵ月であった. 有害事象は Grade 3/4の好中球減少が84.4%, Grade 3/4の血小板減少が40.0%, Grade 3/4のヘモグロビン減少が56.0%, 発熱性好中球減少が20.0%, Grade 3の悪心嘔吐が8.0%にみられた.
    (結論) 今回のM-VAC変法療法の検討で, M-VAC療法と比較して奏効率は同等ながら, 奏効期間は短く, 有害事象の頻度も同等以上であった. 以上より, 今回施行したM-VAC変法の有用性は見出せなかった.
  • 岡村 菊夫, 副島 秀久, 斉藤 史郎, 寺井 章人, 奥村 和弘, 長井 辰哉, 上平 修, 川喜田 睦司, 津島 知靖, 野尻 佳克
    2007 年 98 巻 4 号 p. 595-603
    発行日: 2007/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 日本泌尿器科学会教育施設において, 前立腺全摘除術の周術期管理がどのようになされているか報告されたことはなく, 現状を調査することは有意義であると考えられる.
    (対象と方法) 全国1,213の泌尿器科専門医教育施設に対して, どのように周術期管理を設定しているかを問う郵送アンケート調査を実施した.
    (結果) アンケートの回収率は60% (722/1,213) であり, そのうち657施設 (91%) で前立腺全摘除術を行っていると回答した. 入院は手術2日前, 歩行開始は第1術後日, 食事開始は第2術後日, 持続点滴終了とドレーン抜去は第3術後日, カテーテル抜去は第7術後日, 抗生剤点滴投与期間は3日間, 内服抗生剤投与期間は7日間, 術後退院日は第14術後日に設定しているとの回答がもっとも多かった. ドレーン抜去, カテーテル抜去, 抗生剤投与期間, 入院期間に関して, 病院間の差が著しかった.
    (考察) 本邦における前立腺全摘除術の周術期管理は, 病院によって大きな差異が認められた. 良質な前立腺全摘除術周術期管理を全国で均質に提供するためには, (1) ドレーン抜去時期, (2) 抗生剤投与期間, (3) カテーテル抜去時期について一定のコンセンサスを得ることが重要である.
  • 抗コリン剤 (塩酸プロビベリン) 単独群および抗コリン剤α1受容体遮断薬 (ウラピジル) 併用群間の多施設前向きランダム化試験
    松山 豪泰, 清水 芳幸, 上領 頼啓, 城甲 啓治, 島袋 智之, 須賀 昭信, 竹本 雅彦, 井本 勝彦, 原 好弘, 山本 憲男, 金 ...
    2007 年 98 巻 4 号 p. 604-613
    発行日: 2007/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 過活動膀胱 (以下OAB) による排尿障害は患者の生活の質を低下させる. 本研究の目的はOAB患者の治療に抗コリン剤とα1受容体遮断薬を併用した際の有用性を明らかにすることである.
    (対象, 方法) 合計100名 (男性: 43, 女性: 57, 平均年齢71.3歳) の頻尿 (一日8回以上) および尿意切迫 (週3回以上) を主訴とする患者を2群 (塩酸プロビベリン単独群 [52例] および塩酸プロビベリン, ウラピジル併用群 [48例]) にランダム化した. 一次評価項目として蓄尿症状 (頻尿, 尿意切迫の回数, 切迫性尿失禁) の改善およびキング健康調査票日本語版 (以下KHQ) をもちいた治療前, 治療開始後2週目, 6週目の生活の質 (以下QOL) の改善を比較した. 二次評価項目として両群の有害事象を比較した.
    (結果) 頻尿および尿意切迫は治療開始後2週目の時点で治療前と比べ両群とも有意の改善を認めた (それぞれp<0.01, <0.05). しかし2群間に有意差をみとめなかった. QOLの改善に関しては全体の平均スコア, 全般的健康感, 生活への影響, 睡眠・活力のドメインにおいて両群とも治療6週目において治療前と比べ有意の改善を認めた. 有害事象に関しては両群とも有意差をみとめなかった.
    (結論) 両群とも有意の蓄尿障害の改善と耐用性をみとめたがα1受容体遮断薬の併用効果は認められなかった.
  • 当院健康管理センターで発見された腎細胞癌の臨床的検討
    山下 慎一, 及川 克彦, 相沢 正孝, 竹内 晃, 神山 佳展, 寺沢 良夫, 名倉 宏, 遠藤 希之, 折笠 精一, 庵谷 尚正
    2007 年 98 巻 4 号 p. 614-618
    発行日: 2007/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 当院健康管理センターで発見された腎細胞癌について病理学的に再評価し, 長期予後との関係を検討した.
    (対象と方法) 1987年1月から2005年12月までに当科で診断・治療を行った腎細胞癌症例556例中, 当院健康管理センターの健康診断で発見された56例を対象とした. 臨床病期は2002年のTNM分類, 組織学的分類は2004年のWHO分類に従った.
    (結果) 年齢は37から68歳 (中央値54歳), 男性が50例, 女性6例であった. 患側は右側が22例, 左側が34例であった. pT1a: 40例 (71%), pT1b: 13例 (23%), pT2: 2例 (4%), pT3b: 1例 (2%) で, pT3bの1例のみN2M1であった. 術後の観察期間は3から215ヵ月 (中央値121ヵ月), 癌死症例は7例あった. その内訳は, pT1a: 1例 (術後64ヵ月), pT1b: 4例 (47, 91, 119, 163ヵ月), pT2: 1例 (39ヵ月), pT3b: 1例 (13ヵ月) で, pT1a, pT1bの10年疾患特異的生存率はそれぞれ97%, 57% (p<0.01) であった.
    (結論) 健診で発見された腎細胞癌の大部分がpT1aであり, pT1aはpT1bに比べ予後良好であった. 腎癌死を減少させるには健診等の腹部超音波検査をさらに普及させ, 早期発見に努める必要があると考えられた.
  • 2003年度から2005年度の3年間のPSA単独検診結果
    中村 敏之, 悦永 徹, 佐々木 靖, 新田 貴士, 奥木 宏延, 岡崎 浩, 加藤 宣雄, 山本 巧, 鈴木 和浩
    2007 年 98 巻 4 号 p. 619-628
    発行日: 2007/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 2003年度より基本健康診査にPSA (前立腺特異抗原) 単独検診による前立腺癌検診を組み込んで行ったので, その3年間の結果について検討した.
    (対象と方法) 50歳以上の基本健康診査を受ける男性のうち希望者を前立腺癌検診の対象とし, PSA単独検診にて, 集団検診および市内各医療機関での個別検診の2本立てで行った. 年齢階層別PSAを用いた. また一次検診時に検診結果の解析の同意を文書にて得た.
    (結果) 2003年度の館林市の50歳以上の男性は15,303名であった. PSA検診を受けたのは, 2003年度, 2004年度, 2005年度各々11.8%, 12.2%, 12.7%でありこの3年のPSA暴露率は20.6%であった. 要2次検診受診者は各々208名, 165名, 179名であり, 2次検診受診率は各々80.3%, 61.2%, 55.3%であった. 2次検診受診者のうち前立腺生検を各々123名 (73.2%), 54名 (53.5%), 38名 (38.4%), に施行し, 前立腺癌患者を各々60名, 28名, 16名見いだした. これは1次検診者の各々3.4%, 1.5%, 0.8%, 3年間では1.85%であり, 初回検診を受けた人に限ると3.2%であった. 病期診断を行った101名の臨床病期は Stage B 86名 (85.1%), Stage C 9名 (8.9%), Stage D 6名 (5.9%) だった. この101名の治療としては内分泌療法が46名 (45.5%), 根治的前立腺全摘除術が31名 (30.7%), 外照射が5名 (5.0%), 無治療経過観察が6名 (5.9%), 他院での加療希望が7名 (6.3%), 加療拒否が6名 (5.9%) であった.
    (結論) 3年間で一次検診者の1.85%に前立腺癌が発見された. 病期診断を行った101名のうち85.1%が stage Bであり, 前立腺癌の早期加療につながった. このことが将来的な死亡率の低下につながることを期待している.
  • 大きな腎腫瘍に対する鏡視下腎摘出術の適応の検討
    三塚 浩二, 伊藤 明宏, 並木 俊一, 加藤 正典, 斉藤 誠一, 荒井 陽一
    2007 年 98 巻 4 号 p. 629-633
    発行日: 2007/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は67歳男性. 高血圧の精査中に左腎腫瘍を指摘され当科紹介された. 左側腹部に可動性のある腫瘤を触れCTでは左腎下極に充実性で造影効果のある径11cmの腫瘤を認めた. リンパ節・肺転移は認めず骨シンチでも異常集積を認めなかった.
    2006年1月26日全身麻酔下, 右側臥位にて腹腔鏡下に左腎摘出術を施行した. 腹直筋鞘外縁に12mmポートを置きさらに4本のポートを追加した. 腎前面で下行結腸外側の癒合筋膜を切開し頭側は胃の大彎外側まで切開を延長した. 腎下極では腫瘍と腸間膜との癒着が強く剥離不能と判断し, 外科に依頼して鏡視下に結腸部分切除を施行した. その後腎門部の血管を処理し尿管を切断し左腎を摘出した. 結腸の断端は創外で端々吻合した. 手術時間は420分, 出血量は約30mlであった. 病理所見はRCC (clear cell type) であり結腸・腸間膜への浸潤は認めなかった. 術後は1週間絶飲食としたが翌日から歩行可能であり術後14日目に退院した.
    文献および当科の経験 (7cm以上の腎腫瘍に対する鏡視下手術) から大きな腎腫瘍に対する鏡視下手術の適応を考察した. 大きな腎腫瘍では特に安全性・根治性を大前提とした上で鏡視下手術の利点・問題点を十分検討し手術を行うべきである.
  • 菅藤 哲, 徳山 聡, 沼畑 健司, 中川 晴夫, 斉藤 誠一, 荒井 陽一
    2007 年 98 巻 4 号 p. 634-637
    発行日: 2007/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    精巣腫瘍晩期再発症例の治療は標準化されておらず, しばしば治療に難渋し, 良好な結果を得にくい. 我々は右精巣原発の胎児性癌, 卵黄嚢腫の症例において, human chorionic gonadotropin (HCG) 上昇による晩期再発後5年間にわたり, あらゆる画像診断をもっても転移存在部位を特定できず, 幾種もの化学療法により毎回HCG正常化するも再発をきたした症例を経験した. 最終的に腫瘍が化学療法に抵抗性となった際, 全身CTを骨条件にて再検索したところ, 第4腰椎椎体に通常の軟部組織条件では発見できない転移巣を確認した. そこで同部に対し放射線照射したところ, HCGは半減期に沿って下降し, 放射線終了後再び上昇をきたしたため, 同部が唯一の転移部位であると断定し, 放射線照射を同部に追加した後, 第4腰椎椎体切除を行った. 術後HCGは正常化し, 18ヵ月経過したが再発の徴候なく, リハビリ後自立した生活が可能となった. 精巣腫瘍晩期再発には画像診断で特定されない腫瘍マーカーのみの再発例も報告されているが, 腫瘍存在部位の特定にCT骨条件が極めて有効で, また化学療法抵抗性の非セミノーマの晩期再発に対して放射線療法, 救済手術療法により完全寛解に至った症例を経験したので, ここに報告する.
  • 石引 雄二, 松村 勉, 瓦井 美津江, 福士 剛彦
    2007 年 98 巻 4 号 p. 638-642
    発行日: 2007/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は79歳, 男性. 2004年1月11日より全身倦怠感, 発熱出現. 既往歴はS状結腸癌. 近医CTで左後腹膜腔に腫瘤あり. 当院外科に紹介受診. 腹部エコーは低エコーの腫瘤. CTは内部均一, 軽度造影効果のある腫瘍. MRIはT1強調画像で高信号, T2強調画像で低信号から等信号であった. 血管造影施行し, 左腎上前区動脈を栄養動脈とする左後腹膜腫瘍の診断. 3月10日紹介で当科初診. 後腹膜腫瘍の診断で, 3月22日左腎と共に腫瘍摘出術施行. 摘出標本は大きさ21×18×7cm, 重さ1,100gであった. 病理組織診断は storiform-pleomorphic type の悪性線維性組織球腫. 術後11ヵ月目のCTで左後腹膜腔再発を認め, 放射線治療 (45Gy) を施行した. 12月20日多発性肺転移及び多発性骨転移のため永眠された. 本邦報告された腎周囲組織発生のMFHは10例と比較的稀であった.
  • 丸 晋太朗, 山下 登, 信野 祐一郎
    2007 年 98 巻 4 号 p. 643-645
    発行日: 2007/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は79歳男性. 感冒, 体重減少を主訴に近医受診し, 腹部CTにて右副腎腫瘍を認め, 精査目的に当科入院. 腹部CT上, 内部不均一な腫瘤を呈し, 血中, 尿中ホルモン検査は正常値で, MIBGシンチ上 uptake なし. 131Iアドステロール副腎シンチでは右副腎に集積低下を認めた. 内分泌非活性副腎癌も考慮し右副腎腫瘍摘出術を施行した. 摘出物は肉眼的に蜂窩状を呈しており, 組織学的には内部に少数の原頭節と虫卵を認めた. ELISA, Western Blot 法にて血清学的にエキノコックス陽性が確認され, 多包性エキノコックス症と診断された. 肝, 脳, 肺等, 他に病巣は認めなかった. エキノコックス症には, 単包性, 多包性が存在し, ヨーロッパ諸国, 地中海沿岸はおもに単包性が多く, 日本では多包性が多く生息する. 多包性エキノコックス症は約98%が肝原発であり, 稀に脳, 肺, 骨にも感染するが, 副腎発生での症例報告は本邦においてはない. またヨーロッパにおいては単包性での副腎発生の症例報告はあるが, 頻度は0.05%と低い. 多包性副腎エキノコックス症の報告は調べ得た範囲で世界に報告がなく, 第1例目と考えられる. 泌尿器科領域ではまれな寄生虫感染症も北海道居住歴の患者では, 副腎腫瘍の鑑別診断として念頭にいれる必要があると思われた.
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