日本泌尿器科学会雑誌
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99 巻, 1 号
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  • 辻本 裕一, 小森 和彦, 辻本 正彦, 波多野 浩士, 高田 剛, 本多 正人, 松宮 清美, 藤岡 秀樹
    2008 年 99 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2008/01/20
    公開日: 2011/01/04
    ジャーナル フリー
    (目的) 31例の腎盂尿管癌について臨床病理学的・免疫組織学的に予後と膀胱内再発予測因子について検討を行った.
    (対象と方法) 男性が19名, 女性12名で, 年齢は43歳から84歳中央値は69歳であった. 観察期間の中央値は79ヵ月であった. 腎盂尿管癌組織を用いてp53, Ki-67, E-cadherin, β-catenin の免疫組織学的検討を行った.
    (結果・結論) 31例の疾患特異的5年生存率は77.4%であった. 単変量解析では腫瘍数, 異型度, 浸潤様式, リンパ管侵襲が有意な予後因子であった. さらにそれらの因子についてCoxの比例ハザードモデルによる多変量解析を行うと腫瘍数とリンパ管侵襲が独立した予後予測因子であった. また31例の5年膀胱内非再発率は60.9%であった. 単変量解析では E-cadherin の発現のみが膀胱内非再発率へ影響を及ぼす有意な因子であった.
  • 高橋 良輔, 木元 康介
    2008 年 99 巻 1 号 p. 7-13
    発行日: 2008/01/20
    公開日: 2011/01/04
    ジャーナル フリー
    (目的) 当院では頚髄損傷四肢麻痺患者に対して, 良好な失禁性排尿を獲得・維持する目的にて経尿道的括約筋切開術 (以下, 括約筋切開術) を積極的に施行してきた. 今回はその長期成績について検討した.
    (対象と方法) 当院開設 (1979年6月) 以降, 受傷急性期より当院にて排尿管理を行い括約筋切開術を施行, 現在まで外来にて5年以上経過観察可能な39症例とした. 性別は全て男性. 平均年齢は36.2歳平均経過観察期間は13.1年 (5~27年) であった.
    (結果) 39症例中30症例は失禁性排尿を維持していたが, 9症例では何らかの尿路管理の変更を要していた (膀胱瘻造設4例, 自己導尿可能2例, 介助者による導尿必要2例, その他1例). その主な原因は「尿排出不良に伴う自律神経過緊張症状の増悪」であり, その要因のひとつとして術後徐々に排尿筋反射が減弱することが考えられた. また上記原因にて尿路管理変更を要した群では, 術前の排尿筋反射時の最大膀胱内圧が有意に低値であった.
    (結論) 括約筋切開術を含む失禁性排尿による排尿管理は長期成績も比較的良好であり, 今後も頚損患者の排尿管理において有用な一選択肢と考えられた. しかしながら排尿筋反射は術後徐々に減弱していく傾向にあり, 経過観察時にはこのことに留意しておくべきと考えられた.
  • 佐藤 文美, 島津 太一, 栗山 進一, 大森 芳, 中谷 直樹, 辻 一郎, 荒井 陽一
    2008 年 99 巻 1 号 p. 14-21
    発行日: 2008/01/20
    公開日: 2011/01/04
    ジャーナル フリー
    (目的) 魚摂取と前立腺癌罹患リスク低下との関連に関する従来の前向きコホート研究の結果は一致しておらず, 魚摂取の多い国での検討は少ない. 本研究の目的は日本人を対象に, 魚摂取と前立腺癌罹患リスクとの関連について検討することである.
    (対象と方法) 宮城県大崎保健所管内に居住する40~79歳の国民健康保険に加入している男性全員を対象に, 1994年10月から12月に自記式質問票を配布した. 回収率は94% (24,895名) であった. 質問票の魚摂取頻度より魚摂取量を算出し, 対象者を四分位に分類した. 魚摂取量最小四分位群を基準として, 他群の前立腺癌罹患のハザード比 (HR), 95%信頼区間 (95%CI) をCox比例ハザードモデルにて算出した.
    (結果) 7年間の追跡期間中, 95例の前立腺癌罹患を確認した. 前立腺癌罹患の多変量補正HR (95%CI) は魚摂取量の最も多い群で0.72 (0.40~1.33) (傾向性のP値=0.23) であった. 70歳未満では関連がみられなかったが, 70歳以上の多変量補正HR (95%CI) は魚摂取量の最も多い群で0.44 (0.18~1.11) (傾向性のP値=0.08) であった.
    (結論) 40~69歳では関連は見られなかった. 一方, 70歳以上ではリスクが低下する傾向が見られたが, 有意ではなかった.
  • リセドロネートの検討
    木村 将貴, 佐藤 威文, 岡崎 美代子, 田畑 健一, 坪井 俊樹, 兵藤 透, 横山 英二, 松本 和将, 宋 成浩, 岩村 正嗣, 早 ...
    2008 年 99 巻 1 号 p. 22-28
    発行日: 2008/01/20
    公開日: 2011/01/04
    ジャーナル フリー
    (目的) 前立腺癌に対するアンドロゲン除去療法に伴う骨密度の減少に対するリセドロネートの有用性について, prospective に検討を行った.
    (対象と方法) 2004年4月より2005年12月にGnRHアゴニスト投与を含めた内分泌療法を開始したホルモンナイーブ前立腺癌症例69例 (リセドロネート2.5mg/day服用群58例, コントロール群11例) を対象とした. 治療開始前に骨密度, ならびに尿中NTXを測定し, 以後6ヵ月毎に測定・フォローアップを行った.
    (結果) ベースラインにおける両群の腰椎と大腿骨頸部の骨密度に有意差は認めなかった. 骨密度に関しては, 6ヵ月後の時点で腰椎 (p=0.002) と大腿骨頸部 (p=0.030) において, 12ヵ月後の時点で腰椎 (p=0.038) において, リセドロネート群がコントロール群と比較してベースラインからの骨密度変化率 (%) が有意に低かった. 尿中NTXに関しては, 12ヵ月後の時点でリセドロネート群がコントロール群と比較してベースラインからの尿中NTX変化率 (%) が有意に低かった (p=0.017).
    (結論) アンドロゲン除去療法においては, すでに加療後6ヵ月の時点で骨量は減少を呈してきている事が確認された. 同病態に対して骨塩量減少の予防および維持のため, 急性期からのリセドロネート内服が短期的には有用であることが確認された.
  • 我が国の新しい結核医療の基準に沿った尿路結核の治療
    金子 卓司, 工藤 茂高, 松下 希, 柏原 裕樹, 田村 健, 吉田 郁彦, 野村 一雄
    2008 年 99 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 2008/01/20
    公開日: 2011/01/04
    ジャーナル フリー
    24歳男性. 19歳時より年に数回, 肉眼的血尿と排尿痛の増悪を認めていたが放置していた. 21歳時当科初診し急性膀胱炎の診断で抗生剤を投与された. しかし, 症状持続するも放置していた. 24歳時頻尿増悪し, 紹介医を受診, 難治性のため検査を施行された. 経直腸超音波検査で膀胱壁の肥厚・右側膀胱頚部の陥凹・左膀胱頚部から側壁の腫瘤状所見を認め当科紹介. 紹介医から尿結核菌陽性との報告を受け, リファンピシン (RFP), イソニアジド (INH), ピラジナミド (PZA) の3剤を2ヵ月, 続いてRFP, INHの2剤を4ヵ月投与した. 治療開始1ヵ月後より頻尿が著明に改善され, 4ヵ月後の膀胱容量は420mlであった. 現在外来経過観察中であるが再発を認めていない. 私共が調べ得た限りでは, 自験例は10代発症の尿路結核として1995年以降9例目であった. 結核予防法施行規則第22条の規定により, 結核医療の中核をなす化学療法, 外科的療法等については厚生労働大臣の定める「結核医療の基準」によることとされており, 2004年に改正されている. しかし, 医師の「結核医療の基準」に対する意識の低さが指摘されている. 尿路結核を診る機会が激減した現在, 我々泌尿器科医は尿路結核の治療もこの基準に準拠することを認識しなければならない.
  • 金子 智之, 西松 寛明, 小串 哲生, 杉本 雅幸, 朝蔭 裕之, 北村 唯一
    2008 年 99 巻 1 号 p. 35-38
    発行日: 2008/01/20
    公開日: 2011/01/04
    ジャーナル フリー
    症例は56歳, 男性. 陰茎腹側の硬結を主訴に来院した. 1歳時と2歳時に尿道下裂に対して尿道形成術を施行された既往があった. 5年前と2年前に尿道結石に対して尿道切石術を施行されていた. 尿道結石再発と診断し, 尿道切石術を施行した. 結石には尿道から発生した多数の毛が含まれており, 形成尿道からの発毛が結石形成の原因と考えられた. 結石再発の予防目的に除毛剤の尿道内注入を行ったが除毛効果がみられなかったため, 半導体レーザーを用いて経尿道的レーザー脱毛を行った. 術後5ヵ月で再発毛を1本認めるのみであり, ほぼ完全な脱毛が得られている. 尿道発毛は皮膚弁を用いた尿道形成術後にみられる晩期合併症であり, 結石形成や尿路感染の原因となる. 経尿道的レーザー脱毛は, 尿道発毛に対して有用な低侵襲治療と考えられた.
  • 舟橋 康人, 上平 修, 萩倉 祥一, 春日井 震, 木村 恭祐, 深津 顕俊, 松浦 治
    2008 年 99 巻 1 号 p. 39-42
    発行日: 2008/01/20
    公開日: 2011/01/04
    ジャーナル フリー
    症例は58歳女性, 検診で左腎嚢胞を指摘され当科受診した. 腹部CTにて左腎の水腎を伴う20×12×11cm大の腫瘍を認めた. 血清CA19-9は4,400U/mlであった. 左腎盂尿細胞診は陰性であり, 術前に腫瘤が腎細胞癌か腎盂癌か確定できなかった. 根治的左腎摘除術時に迅速診断にて腎細胞癌と診断された. 免疫組織化学染色にてCA19-9は腎盂粘膜に限局しており腫瘍細胞には含まれなかった. 術後, CA19-9は正常域に下降した. CA19-9は尿路上皮癌で時に上昇することが知られているが腎細胞癌で上昇することは稀である. 自験例では腫瘍の閉塞による水腎症が原因で上昇したものと考えられた.
  • 押野見 和彦, 辻井 俊彦, 南方 良仁, 實重 学, 佐藤 裕之, 浅沼 宏, 宍戸 清一郎
    2008 年 99 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 2008/01/20
    公開日: 2011/01/04
    ジャーナル フリー
    尿管ポリープは尿管の良性腫瘍で最も一般的であるものの, その疫学に不明な点は多く, また多発性, 両側性の発生はきわめて稀である. 今回我々は, 間欠性水腎症を呈した両側尿管ポリープ症例を経験したので報告する.
    症例は8歳男児. 右側腹部痛と肉眼的血尿を主訴に前医受診し, 超音波検査にて水腎症を指摘された. 自然軽快するもののその後同様の症状を繰り返すため当院を紹介受診した. 経静脈性腎盂造影および逆行性腎盂尿管造影にて両側上部尿管に約5cmの陰影欠損像を認めた. また, 超音波検査では疼痛発作時には明らかな水腎症の増悪を認めた. 尿管ポリープによる間欠性水腎症と診断し, 症状の明らかな右側の腎周囲を剥離. 下方への授動後, 約7cmの尿管部分切除および尿管尿管吻合術を施行した. 切除組織の病理所見は fibroepithelial polyp (FEP) であった. 左側に関しては経過観察していたが. 6年後に左側腹部痛と肉眼的血尿が出現したため, 同様に左尿管部分切除, 尿管尿管吻合術を施行した. 切除組織の病理所見は同様にFEPであった. 左側術後1年経過し, 水腎症や尿管ポリープの再発は認めていない.
  • 鍬田 知子, 稲留 彰人, 松本 賢士, 吉田 正貴, 上田 昭一
    2008 年 99 巻 1 号 p. 48-51
    発行日: 2008/01/20
    公開日: 2011/01/04
    ジャーナル フリー
    石灰化線維性偽腫瘍は通常は四肢, 体幹, 腋窩, 肋膜, 縦隔と腹膜の軟組織に発生する病理学的に特異な腫瘍である. 今回副腎石灰化線維性偽腫瘍の1例を経験したので報告する. 症例は29歳女性. 左腰痛を主訴に近医受診し, CTで左副腎腫瘍を指摘された. 採血上生化学・ホルモン学的に異常はなかったが, 尿中カテコールアミンではノルアドレナリンとドーパミンのみ高値を認めた. 画像上, 副腎癌や褐色細胞腫は否定できなかったが, 典型的な所見はなく, 副腎シンチ (I131アドステロール) でも有意な取り込みは認められなかった. 悪性の可能性を否定できず腹腔鏡下左副腎摘出術を行い, 病理学的に副腎石灰化線維性偽腫瘍と診断された. 副腎石灰化線維性偽腫瘍は, 我々が調べた限りでは海外の報告例も含め4例目で本邦1例目であると考えられた.
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