日本泌尿器科学会雑誌
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総説
  • 岡田 清己, 山口 健哉, 斎藤 忠則, 高橋 悟
    2019 年 110 巻 3 号 p. 153-159
    発行日: 2019/07/20
    公開日: 2020/07/20
    ジャーナル フリー

    我が国の医療史を言及すると,近世に至るまで主に施療による医療の提供が行われていた.明治期には,健康管理,特に青壮年の育成の重要性から健康保険の必要性が叫ばれ,大正末期には健康保険法が成立した.しかし,国民皆保険の観点からは不十分であり,幾多の改正が行われた.昭和36年(1961年)に国民皆保険医療体制が整い,更なる改正により完成した.

    かくの如き江戸時代から今日までの医療制度の変革のなかで,泌尿器科関連治療の診療報酬がどのようであったかを経時的に集積し,興味ある結果を得た.最後に,日本泌尿器科学会保険委員会の過去の活動につき総括し,現医療保険制度の改革に少なからず影響を与えたことを示した.

原著
  • 梅本 晋, 野口 剛, 堤 壮吾, 小林 幸太, 逢坂 公人, 岸田 健
    2019 年 110 巻 3 号 p. 160-167
    発行日: 2019/07/20
    公開日: 2020/07/20
    ジャーナル フリー

    (目的) がん微小環境によるサイトカイン分泌の結果,末梢血リンパ球数(absolute lymphocyte count:ALC)の減少が起こるとされる.我々は抗癌剤治療を施行した進行性尿路上皮癌症例におけるALCと治療効果,予後との関連性について検討した.

    (対象と方法) 2011年1月から2018年4月までに,根治手術不能または根治術後再発転移例に対し当院でプラチナ製剤による化学療法を施行した63例を後方視的に検討した.

    (結果) 観察期間中央値は12.2カ月で,38例(60%)が癌死し,全生存期間の中央値は15.3カ月であった.非奏功群(SD+PD)における平均ALCは,奏功群(CR+PR)よりも有意に低値であった(1,312/μL,1,666/μL,p = 0.004).奏効性予測における至適リンパ球数をROC曲線で検討するとcut-off値は1,460/μLとなり,リンパ球数減少群(ALC <1,460/μL)は非リンパ球数減少群よりも全生存において有意に予後不良であった(p = 0.001).全生存に対する多変量解析では,リンパ球数減少が独立した予後不良因子であった(HR 3.46,p=0.002).

    (結論) プラチナ製剤による化学療法を施行した進行性尿路上皮癌において,治療開始時のリンパ球数減少は効果不良および予後不良因子であった.

  • 近沢 逸平, 國井 建司郎, 牛本 千春子, 井上 慎也, 中澤 佑介, 福田 悠子, 菅 幸大, 森田 展代, 田中 達朗, 宮澤 克人
    2019 年 110 巻 3 号 p. 168-176
    発行日: 2019/07/20
    公開日: 2020/07/20
    ジャーナル フリー

    一般的にPSAが異常高値で発見される進行性前立腺癌患者は遠隔転移を有するものが多く,予後不良とされてきた.

    (目的) 診断時PSA100ng/ml以上であった症例の予後予測因子,生存期間につき検討した.

    (対象と方法) 2002年から2015年までに診断時PSAが100ng/ml以上で前立腺癌と診断されホルモン治療のみ施行された60例を対象とした.診断時PSA値,Gleason score,Gleason Grading Group,臨床病期,転移部位,PSA nadir値,治療開始からnadirまでの期間(TTN),血清Hb値,血清CRP値,血清LDH値,血清ALP値,臨床経過,生存期間に関し調査した.

    (結果) 年齢中央値は73歳(54~90),初診時PSAは中央値390ng/ml(100~15,823)であった.転移部位,Gleason score,Gleason Grading Group,PSA nadir値,TTN,診断時血清CRP値,血清LDH値,血清ALP値が生存期間に関わる因子であった.多変量解析では診断時血清LDHが独立した予後予測因子であった.

  • 蓮見 勝, 加藤 舞, 大津 晃, 村松 和道, 清水 信明
    2019 年 110 巻 3 号 p. 177-184
    発行日: 2019/07/20
    公開日: 2020/07/20
    ジャーナル フリー

    (目的) 去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)症例に対するアビラテロンの治療効果と全生存率に関連する予後因子,安全性について検討した.

    (対象と方法) 群馬県立がんセンターにおいて2014年10月から2017年6月までにアビラテロンを投与したCRPC症例50例.投与量は1,000mg/day.投与後PSA値を測定した46例を対象にPSA奏功率を検討した.一次内分泌療法の内容,投与開始時PSA値,Gleason score(GS),CRPCまでの期間(Time to CRPC),PSA奏効率,エンザルタミド投与歴,ドセタキセル投与歴,転移の状態と全生存率との関連を後ろ向きに検討した.

    (結果) 年齢中央値74.5歳,アビラテロン開始時PSAは中央値15.9ng/ml,GS 8以上が39例(78%)であった.50%以上PSA奏功は,ドセタキセル投与前症例11例(45.8%),ドセタキセル後1例(4.5%),エンザルタミド投与前症例11例(55%),エンザルタミド後1例(3.8%)に得られた.Time to CRPCが1年以上の群の全生存期間は1年未満の群に対し有意に延長していた.有害事象は肝機能障害(22%)や疲労(6%)などを認めたが重篤なものはなかった.

    (結論) CRPCに対するアビラテロン投与は比較的安全であり,Time to CRPCが1年以上の症例において,より効果が期待できると考えられた.

  • 辻本 裕一, 谷 優, 山道 岳, 辻村 剛, 中田 渡, 任 幹夫, 辻畑 正雄
    2019 年 110 巻 3 号 p. 185-190
    発行日: 2019/07/20
    公開日: 2020/07/20
    ジャーナル フリー

    (目的) 2016年11月から2018年6月までに包括的排尿ケアを行った207例(泌尿器科112例,他科95例)の臨床的検討を行った.

    (対象と方法) 年齢は27から94歳(平均73),男性170例,女性37例,BMIは11.6から43.7(平均23.3),生活自立度(J/A/B/C)は132/23/28/24例,既往歴は糖尿病ありが47例,脳神経疾患ありが36例,尿閉ありが25例,入院時にバルーンカテーテル留置ありが17例,緊急入院が53例,入院時に手術予定ありが174例であった.

    (結果) 泌尿器科112例はロボット支援下前立腺全摘除術が60例,経尿道的前立腺切除術とホルミニウムレーザー前立腺核出術が36例,その他が16例であった.1年後のパッドフリー(パッドフリーはパッド1枚以下/日と定義)率は92%,カテーテルフリー率は93%であった.他科95例の1年後のカテーテルフリー率は66%,1人を除いて全て100日以内であった.またカテーテルフリーの症例と自己導尿の手技を習得した排尿自立については1年で91%であった.多変量解析ではカテーテルフリーに関しては下部尿路機能4以下が,排尿自立に関しては排尿自立度(4以下)が有意に独立した良好な因子であった.

    (結論) カテーテルフリーや排尿自立を目指すには包括的な排尿ケアが重要であることが示唆された.

症例報告
  • 大橋 朋悦, 田中 順子, 浅井 健太郎, 島田 聡子, 高橋 洋平, 古川 亨
    2019 年 110 巻 3 号 p. 191-195
    発行日: 2019/07/20
    公開日: 2020/07/20
    ジャーナル フリー

    症例は80歳男性.外傷時に撮影したcomputed tomography(CT)にて偶発的に左腎盂腫瘤を指摘され,当科紹介受診した.精査の造影CTにて左腎盂を占拠する不均一な造影効果を有する腫瘍性病変および,大動静脈周囲の多発リンパ節腫大を認めた.左腎盂癌cT3N2M0の術前診断で,左腎尿管全摘除術およびリンパ節郭清術を施行した.病理結果は腎洞に限局した限局性結節性アミロイドーシスであった.

  • 伊藤 英, 山岸 敦史, 黒川 真行, 堀江 繁光, 八木 真由, 黒田 悠太, 菅野 秀典, 櫻井 俊彦, 西田 隼人, 内藤 整, 柴崎 ...
    2019 年 110 巻 3 号 p. 196-200
    発行日: 2019/07/20
    公開日: 2020/07/20
    ジャーナル フリー

    症例は28歳男性.主訴は両側腰背部の疼痛と発熱で前医を受診し右複雑性腎囊胞(Bosniak分類 IIF,出血性囊胞の疑い)と右腎結石症と診断され当院へ紹介された.結石陥頓が疑われflexible transurethral lithotomyを施行されたが症状は改善せず,精査を継続したところAPTTの延長が認められ,von Willebrand disease(VWD)と診断された.出血性腎囊胞による疼痛が否定できず,腎部分切除術(PN)を施行することとした.周術期はvon Willebrand factor(VWF)活性を測定しながら,VWFを補充した.術中の出血コントロールは良好でありVWF活性も十分であったが,術後6日目に仮性動脈瘤からの出血を認めた.緊急で動脈塞栓術を施行し,VWFの補充を再開した.術後14日目に凝固因子の補充を終了し,手術後23日目に退院した.以降出血や疼痛の再発はない.VWD患者においては周術期にデスモプレシンの投与またはVWFの補充を行うことが推奨されている.それにより,安全に手術を施行した報告が散見されるものの,これまでVWD患者におけるPNの報告は本症例を含め3例のみである.本症例においては周術期のVWF活性が十分であったにも関わらず,術後出血をきたした.VWF患者におけるPNでは,周術期の出血性合併症の可能性を念頭に置いた慎重な経過観察が必要である.

  • 石井 龍, 井手 知子, 宮嶋 哲匡, 冨永 光将, 宮島 茂郎, 平 浩志, 原岡 誠司
    2019 年 110 巻 3 号 p. 201-205
    発行日: 2019/07/20
    公開日: 2020/07/20
    ジャーナル フリー

    74歳男性.2012年に前立腺癌cT4N0M0,Gleason score 5+4と診断された.LH-RHアゴニストとビカルタミドを開始しPSAは25.55ng/mlから0.02ng/mlに低下した.

    治療開始して3年後,PSAが4.81ng/mlに上昇し,広範囲にわたる高度のリンパ節腫大を伴った転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)となった.左鎖骨上リンパ節の開放生検で前立腺由来の低分化腺癌の転移と判明した.LH-RHアゴニストとビカルタミド継続下にドセタキセルとプレドニゾロンの化学療法を行った.CTで骨盤内の1個のリンパ節を除いて多くのリンパ節は縮小し,部分奏効(PR)を得た.しかしその1個のリンパ節が次第に増大し,CRPCに対するドセタキセルの効果に不均一性が見られた.ドセタキセルは有害事象と病勢進行(PD)のため7コースで終了した.

    エンザルタミドによる2次ホルモン療法を開始した.治療6カ月後,CTでリンパ節腫大は消失し固形がんの治療効果判定(RECIST)の判定基準で完全奏効(CR)となり,PSAは0.01ng/mlに低下した.現在28カ月間CRを継続している.

  • 勝又 有記, 髙井 優季, 黒本 暁人, 諸角 謙人, 星 宣次, 沼畑 健司, 笹野 公伸
    2019 年 110 巻 3 号 p. 206-210
    発行日: 2019/07/20
    公開日: 2020/07/20
    ジャーナル フリー

    症例は48歳男性,2017年6月強い頭痛,血圧上昇を主訴に受診し高血圧クリーゼの診断で入院,ICU管理となる.単純CTにて右副腎にφ60 mm大の腫瘤を認めた.MIBGシンチグラフィは陰性であったが血液検査・蓄尿検査にてカテコラミンの異常高値を認め褐色細胞腫の診断となった.厳重な循環動態管理の上で大量補液・薬物加療を行い,循環血液量の是正および脈拍・血圧の安定化を行った後に,第15病日に手術を施行した.十分な術前管理の結果,術中は腫瘤の圧排による血圧変動は少なく,摘出後の血圧低下も軽度であり,術後昇圧剤は速やかに中止可能であった.本症例は病理の免疫染色においてMIBGシンチグラフィ陰性と関連するSDHB変異は否定的であった.病理学的にも褐色細胞腫の診断であったが全体に壊死組織が目立ち,広範な梗塞・壊死像を呈していた.本症例は亜急性の腫瘍虚血から広範な壊死を来し,なんらかのきっかけで壊死した腫瘍細胞から急激にカテコラミンが大量放出されクリーゼに至ったものと考えられた.また広範な壊死によってMIBGの取り込みが低下しシンチグラフィ陰性に至ったと推察された.

  • 佐々木 雄太郎, 塩崎 啓登, 中西 良一, 井﨑 博文, 神田 和哉
    2019 年 110 巻 3 号 p. 211-214
    発行日: 2019/07/20
    公開日: 2020/07/20
    ジャーナル フリー

    回腸導管造設術の合併症として,腎盂腎炎,腸閉塞,創部感染などの頻度が高いが,回腸導管・小腸瘻は稀である.今回,我々はロボット支援体腔内回腸導管造設術後に生じた回腸導管・小腸瘻の1例を経験したので報告する.81歳,男性.筋層浸潤性膀胱癌に対して,ロボット支援膀胱全摘除術及び体腔内回腸導管造設術を施行した.術後22日目に糞尿があったため回腸導管造影を行ったところ,回腸導管・小腸瘻を認めた.絶食として中心静脈栄養を開始し,保存的加療を行った.術後48日目に再び回腸導管造影を行ったところ,瘻孔の残存を認めた.そこで,術後51日目に瘻孔閉鎖術を行った.本邦における本疾患の報告は4例のみであり,それらの文献的考察も併せて報告する.

  • 藤本 幸太, 松山 聡子, 松井 太, 矢澤 浩治, 松本 富美
    2019 年 110 巻 3 号 p. 215-218
    発行日: 2019/07/20
    公開日: 2020/07/20
    ジャーナル フリー

    症例は,6歳,女児.肉眼的血尿と右側腹部痛を主訴に前医を受診した.画像診断で右腎に2~10mmの囊胞をびまん性に認め,精査・加療目的に当科紹介となった.悪性腫瘍を否定できなかったため,後腹膜鏡下右腎摘除術を施行した.病理組織検査では,腎皮質から髄質,腎乳頭にかけて大小多数の囊胞があり,被膜を持たず,正常の腎組織に囲まれた囊胞性病変でlocalized cystic disease of the kidney:LCDKと診断された.LCDKは稀な囊胞性腎疾患で,Wilms' tumorの好発年齢である10歳未満の小児ではこれまでに5例の報告しかない.非進行性で,非遺伝性の囊胞性腎疾患で,病変部以外の腎機能は保たれており,保存的治療が望ましい.しかしながら,本症例では症候性であったこと,画像診断で腫瘍との鑑別が困難であったこと,びまん性であったことより腎摘除に至った.

  • 松井 宏考, 加藤 久美子, 川西 秀治, 村松 知昭, 加藤 隆, 平林 裕樹, 鈴木 省治, 服部 良平
    2019 年 110 巻 3 号 p. 219-222
    発行日: 2019/07/20
    公開日: 2020/07/20
    ジャーナル フリー

    骨盤臓器脱と間違えられた尿道脱を2例経験した.症例1は87歳女性で,子宮脱疑いで婦人科クリニックから紹介された.症例2は84歳女性で,経腟メッシュ手術後の膀胱瘤の再発として総合病院泌尿器科から紹介された.いずれの症例も内診,膀胱鏡検査で腫瘤と腟口,外尿道口の位置関係を確認して尿道脱と診断し,4分円切除法で治癒できた.尿道脱は比較的稀な疾患で,泌尿器科医や婦人科医でも経験が少なく誤診する可能性があり,啓発が必要である.

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