(目的)開腹膀胱全摘除術(ORC)を施行した膀胱癌症例において周術期の静脈血栓塞栓症(VTE)につき検討した.
(対象と方法)当院で2020年4月から2023年10月までにORCを受けた57例を対象とした.術前はDダイマー高値の症例に,術後は全例に対して下肢静脈超音波検査を施行し深部静脈血栓症(DVT)の評価を行った.術前後のVTE発症の有無と患者背景,膀胱癌の臨床学的所見および術中因子との関連を検討した.
(結果)57例のうち,術前にVTEを認めたのは13例(22.8%)であった.そのうち肺静脈塞栓症(PE)は4例(7.0%)であった.一方,術前にVTEを認めなかった44例のうち,術直後新規にVTEを7例(15.9%)に認め,経過中にさらに4例(9.1%)に認めた.11例中3例(6.8%)でPEの併存を認めた.術前後ともに致死的となった症例はなかった.術前VTEを認めた群は認めなかった群と比較して,術前補助化学療法(NAC)を2コース以上施行した症例および女性の割合が有意に高かった.また術前後ともに,VTEを認めた症例において有意にDダイマー値が高かった.
(結論)ORC症例においてNAC施行の有無と術前のVTE発症に関連があることが示された.しかしながら早期介入にて致死的な症例を認めなかったことから,周術期のVTEスクリーニングは有用であることが示唆された.
(目的)稀な組織型である膀胱神経内分泌癌の患者特性および治療成績を評価した.
(対象・方法)2005年8月から2022年8月の期間,経尿道的膀胱腫瘍切除術を施行した膀胱癌2,133例を病理組織学的に再評価し,膀胱神経内分泌癌の確定診断症例について,臨床病理学的因子,治療方法,予後を解析した.
(結果)2,133例中12例(0.56%)が神経内分泌癌と診断され,免疫組織化学染色にて小細胞癌が10例(83.3%),大細胞癌が2例(16.7%)だった.年齢の中央値は79歳,performance status 2以上が3例だった.診断時に限局癌は7例,遠隔転移症例は5例で,4例に膀胱全摘除術が施行された.化学療法を施行した症例3例のうち,一次治療プラチナベース化学療法は2例で病勢コントロールが得られた.二次治療以降,ペムブロリズマブやエンホルツマブベドチンが奏功した症例はなかった.全症例のoverall survival(OS)の中央値は12.5カ月であった.なお,遠隔転移のない症例で膀胱全摘除術を施行した群のOSの中央値は26カ月,非施行群の中央値は8.2カ月で有意差を認めた(p=0.05).
(結論)膀胱神経内分泌癌は高齢発症が多く,予後不良だった.限局癌は可能ならば膀胱全摘除術を行うことが望ましい.
女性排尿障害3例に尿流動態検査(urodynamic study:UDS)と排尿時膀胱尿道造影法(voiding cystourethrography:VCUG)または透視下尿流動態検査で膀胱出口部閉塞(bladder outlet obstruction:BOO)と排尿筋低活動(detrusor underactivity:DU)の鑑別診断を行った.症例1:排尿困難が主訴の72歳女性.UDSで排尿筋収縮あり(最大尿流時排尿筋圧detrusor pressure at maximum flow:PdetQmax 86.6cmH2O),尿勢低下(最大尿流量maximum flow rate:Qmax 2.2ml/s).VCUGで膀胱頸部開大不良,両側膀胱尿管逆流あり.膀胱頸部開大不全によるBOOと診断.症例2:排尿困難が主訴の74歳女性.UDSで排尿筋収縮あり(PdetQmax 27.7cmH2O),尿勢低下(Qmax 5.3ml/s).VCUGで中部尿道の開大不良あり.尿道括約筋機能不全によるBOOと診断.症例3:夜間頻尿が主訴の85歳女性.UDSで排尿筋収縮弱く(PdetQmax 18.3cmH2O),尿勢低下(Qmax 3.8ml/s).VCUGで尿道は開大.DUと診断.女性の排尿障害に対するUDS,VCUGの併用はDUとBOOの鑑別診断に有用な手段である.
症例は47歳男性.球部尿道狭窄症に対して内尿道切開術を3回施行された.3回目の内尿道切開術の際に内視鏡操作で直腸損傷を来たし,尿道直腸瘻を続発した.以降,尿道狭窄部は閉塞し,瘻孔を経由して経直腸的に排尿していた.球部尿道狭窄症の診断から12年後に再建手術目的で当院紹介初診となった.経会陰的に狭窄部切除・尿道端々吻合術と瘻孔閉鎖術を施行したが,自排尿開始後間もなく尿道吻合部が再狭窄した.初回手術から6年後に2回目の狭窄部切除・尿道端々吻合術を施行したが,間もなく再狭窄した.間欠的セルフブジーで経過観察していたが,広範囲な狭窄に進展したため,2回目手術から5年後に陰茎包皮利用チューブフラップ法による救済尿道形成術を施行した.幅3cmの環状切開により作成した陰茎包皮フラップを会陰部へ授動し,管腔形成した.狭窄部を完全切除し,管腔形成した陰茎包皮フラップを間置した.術後第24日目に自排尿を開始,術後16カ月現在,再狭窄なく良好な排尿状態を保っている.経尿道的治療は尿道狭窄症に対する簡便で広く普及した治療法であるが,繰り返すことによる狭窄の複雑化や,後の尿道形成術に及ぼす負の影響を認識しておくことが肝要である.
当院では2015年12月から2023年9月までにロボット支援前立腺全摘除術(RARP)を221例行った.218例で前立腺前脂肪を病理組織学的に評価し,14例(6.4%)で前立腺前脂肪組織内にリンパ節を認め,3例(1.4%)でそのリンパ節に転移を認めた.それら3例を以下に提示する.
症例1は63歳.前立腺癌cT2cN0M0,iPSA 24.522ng/ml,Gleason score 3+4に対してRARPを行い,結果はpT3a,Gleason score 3+4であった.術後PSA nadir 0.205ng/ml,生化学的再発と診断した.ホルモン療法と救済放射線療法を行い,以後現在まで再発なし.
症例2は62歳.前立腺癌cT2aN0M0,iPSA 10.418ng/ml,Gleason score 4+4に対してRARPを行い,結果はpT2c,Gleason score 4+4であった.術後PSA nadir 0.401ng/ml,生化学的再発と診断した.現在もホルモン療法を施行中.
症例3は76歳.前立腺癌cT2aN0M0,iPSA 4.676ng/ml,Gleason score 4+3に対してRARPを行い,結果はpT2c,Gleason score 3+4であった.術後PSA nadir 0.031ng/ml,現在まで再発なし.
70才男性.PSA38.9ng/mlで生検しGleason score(GS)4+4=8の前立腺癌cT3aN0M0と診断された.一年間のmaximum androgen blockade後,PSA0.1ng/mlとなりロボット支援腹腔鏡下根治的前立腺全摘除術を施行した.結果は前立腺癌GS 4+4=8,pT3bN1,切除断端は陰性であった.術後PSAは2カ月0.007・5カ月0.0019 ng/mlであった.術後6カ月左水腎が出現,尿管癌の所見はなかった.PSA0.055ng/mlと微増だがCEA19.2ng/mlと高値のため消化管検査したが陰性であった.術後9カ月肺・肝・腹腔リンパ節・ポート部に腫瘤を認めた.F-18 FDG PET/CTで原発は不明でPSA0.185ng/mlまた小細胞癌のマーカーは陰性であった.再度消化管検査するも所見なく再発性前立腺癌と判断した.術後10カ月除睾とポート部腫瘤切除を行い,ドセタキセルを開始した.病理結果は腺癌CK7(-)・CK20(+)・CDX2(+)・PSA(-),腸型で全摘標本と異なった.3コース後病変は増大しCEA上昇したためゲノム検査を行った.KRAS遺伝子変異を認め腸型腺癌と一致,術後14カ月大腸癌化学療法を開始した.しかし進行し術後19カ月で死亡した.特異な再発をした場合,腫瘍の免疫組織とゲノム検査は診断に必要と思われた.
症例は79歳男性.前医で筋層浸潤性膀胱癌(Urothelial carcinoma with squamous differentiation,pT2N0M0)の診断となり,当院泌尿器科に紹介となった.術前のCT検査では膀胱腫瘍に伴う左水腎症,および両側肺野胸膜直下を主体として網状影を認めた.Gemcitabine+Cisplatin療法による術前補助化学療法を施行し,膀胱癌に対してロボット支援下膀胱全摘術(RARC)+尿管皮膚瘻造設術を施行した.術後2日目でSpO2の低下がありCT検査を施行したところ両肺のすりガラス影の増悪を認めた.間質性肺炎(IP)の急性増悪の診断となり,同日速やかにMethylprednisolone(mPSL)1,000mg/日によるステロイドパルス療法およびNasal high flow(NHF)を開始した.ステロイド治療により術後9日目にはNHFから離脱できた.その後IPの再増悪はしなかったため,在宅酸素療法を導入して退院となった.IP急性増悪から6カ月の時点でのCT検査では,IPの再増悪はなく膀胱癌再発所見もなかった.