日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
72 巻, 10 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 第8報 下部尿路における Prostaglandin E2, Fの作用
    金子 茂男, 加藤 良成, 辻橋 宏典, 朴 英哲, 国方 聖司, 片岡 喜代徳, 永井 信夫, 松浦 健, 八竹 直, 栗田 孝
    1981 年 72 巻 10 号 p. 1221-1226
    発行日: 1981/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    下部尿路におけるプロスタグランディンの作用を明らかにするため, 実験的・臨床的に検討を加えた. 実験では雑種雌成犬を用いα-chloralose 麻酔下でプロスタグランディンE2およびプロスタグランディンFをそれぞれ静脈内投与するとプロスタグランディンE2, プロスタグランディンFともに膀胱内圧を軽度上昇させ, 尿道内圧を低下させる傾向を有することが認められた. 臨床的検討では女性の核下型神経因性膀胱患考を対象とし, プロスタグランディンFの経口投与剤である16- (3-trifluoromethylphenoxy)-ω-tetranor-trans-Δ2-PGF methyl ester を用いたところ, 尿流量率測定 (uroflowmetry), 尿道内圧曲線 (urethral pressure profile) 測定では一定の傾向を認めなかつたが, 膀胱内圧測定上では, tonus limb は上昇し, 膀胱壁の緊張の高まるのが認められた.
  • 星野 嘉伸, 友石 純三, 国沢 義隆, 青木 俊輔
    1981 年 72 巻 10 号 p. 1227-1237
    発行日: 1981/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    悪性腫瘍の為に膀胱全摘除術を施行し, 尿管S状腸吻合術あるいは尿道直腸吻合術を施行した29例について臨床的検討を行なつた.
    10例の死亡例がみられ, 6例は原疾患の再発, 4例は他疾患により死亡した. 19例は生存して居り通常の生活を送つている.
    電解質の平衡異常は尿管吻合部をできるだけ肛門側, 直腸あるいは直腸に近接したS状腸におくことによつて尿意を早く起こさせ頻回に排尿させることで管理できるようである.
    hypokalemia はIVP上にみられる一過性の水腎が回復する頃からはみられなくなり, 又この頃から hyperchloremic acidosis も重曹等の投与により容易に control できる. 尿路感染症も十分に水分を摂ることにより尿量を増すことで防げるようである.
    尿管S状腸吻合術あるいは尿管直腸吻合術は器具装着の必要もなく, 尿臭もないこと等から社会復帰が容易であるので, 尿路変向法として更に利用されて良い方法であると考えられる.
  • 大西 哲郎, 増田 富士男, 佐々木 忠正, 荒井 由和, 小路 良, 陳 瑞昌, 仲田 浄治郎, 島田 作, 町田 豊平
    1981 年 72 巻 10 号 p. 1238-1244
    発行日: 1981/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎細胞癌50例 (stage 1が12例, stage 2が15例, stage 3Aが5例, stage 3Bが2例, stage 3Cが1例, stage 4Aが1例, stage 4Bが14例) の腎動脈撮影時における静脈像所見について検討を行つた.
    腎動脈撮影で腎静脈本幹が描出されたものは, 50例中21例 (42%) で, 正常腎の腎静脈描出率83% (30例中25例) より低かつた. また患側別では, 右側が28例中9例 (32%), 左側が22例中12例 (55%) であり, 右腎静脈は左腎静脈と比較して描出率が低かつた. 一方, high stage (stage 3およびstage 4)は, low stage (stage 1およびstage 2) に比べて, 腎静脈描出率が低かつたが, high stageのうち腎静脈腫瘍血栓を除けば, 腎静脈描出率は low stage のそれと同程度であつた.
    腎動静脈瘻は50例中6例 (12%) に認めたが, そのうち腎静脈腫瘍血栓は3例 (50%) と高率に合併していたが, その予後は必ずしも悪くない傾向であつた.
    腎静脈腫瘍血栓を認めた13例中, 腎動脈撮影で striated vascular pattern は10例 (77%) に描出された.
    側副静脈は50例中11例 (22%) に認めたが, そのうち腎静脈腫瘍血栓の合併は5例 (45%) で, 残り6例は腎静脈腫瘍血栓が認められないにもかかわらず, 側副静脈が描出されており, 腎静脈腫瘍血栓と側副静脈描出の関連性は少ないと考えられた.
  • 尿管膀胱接合部を中心として
    松野 正
    1981 年 72 巻 10 号 p. 1245-1255
    発行日: 1981/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    胎生3~21週の胎児17例, 新生児2例の腎・尿管・膀胱について組織形態学的検討を行い, 特に胎生期の尿の分泌と尿管平滑筋の分化との関係, および尿管膀胱接合部の筋構築の形成過程に注目した. 腎の組織所見, 腎盂・尿管の拡張, 尿管内腔の膀胱への交通という点から, 尿の有意な量の分泌は8週頃から開始すると考えた. 膀胱利尿筋は7週頃膀胱頂部から分化をはじめ17週頃までにはほぼその筋層構築を完成する. superficial periureteral sheath は12週で確認された. 腎盂および上位尿管筋は12週で分化を開始し, その後ラセン状走向を示しながら下方へ発育してゆく. しかし膀胱壁内尿管筋の分化は遅れ, 筋束をなすのは14~16週であり deep periureteral sheath も同様であつた. 三角部筋の成熟度は膀胱壁内尿管筋のそれと同程度かそれ以下であつた. これらの発生学的経過は尿管膀胱接合部とその周辺の疾患群 (先天性膀胱憩室, VUR, 尿管瘤, 尿管異所開口, 巨大尿管症, etc) の発生に深く関与しているものと思われる. これら尿管膀胱接合部とその周辺の疾患群について若干の考察を加えた.
  • 第1報 面接法による前立腺癌高危険度群の検討
    三品 輝男, 渡辺 泱, 荒木 博孝, 都田 慶一, 藤原 光文, 小林 徳朗, 前川 幹雄
    1981 年 72 巻 10 号 p. 1256-1279
    発行日: 1981/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    前立腺癌の高危険度群を知る目的で, 学歴, 職業, 収入, 信仰, 結婚状況, 性生活, 食生活, 身体状況, 既往歴および家族歴を重点調査目標とする111項目よりなる独自の前立腺癌疫学調査用質問用紙を作製し, インタビュー方式により, 前立腺癌100例と, それらの症例に年齢と現住所を一致させた正常対照者100例とを対象に, matched pair analysis による case-control study を行つた. その結果, 前立腺癌群において正常対照群よりリスクが高いと考えられたのは, 次の諸点であつた (危険率10%以内のものにはアンダーラインを付さず, 危険率5%以内のものにはアンダーラインを付した).
    1) 職業については管理的職業に従事せず, 軍隊歴がなく, 染料を取り扱つたことがある. 2) 収入については, むしろ低い. 3) 結婚状況については, 早婚で, 結婚継続年数が長い. 4)性生活については, 最初の性交年齢が若く, 青壮年期の性交回数は多いが, 老年期に入ると性交回数が少なく, 性活動停止時期も早い.
    5) 食生活については, 魚介類はあまり摂らぬ西欧型の食事内容で, 緑黄色野菜の摂取が少なく, 香辛料や塩つぱいものを好む. アルコール, 喫煙はあまり関係がない. 6) 既往歴としては, 前立腺肥大症およびロイマの既往あり. 7) 学歴, 信仰, 身体状況および家族歴には特記すべきものはなかつた.
    すなわち前立腺癌の高危険度群は, 特に性生活と食生活に特異なパターンを有する人達であることが明らかになつた.
  • 高野 學
    1981 年 72 巻 10 号 p. 1280-1297
    発行日: 1981/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    精管切断術による精管と副睾丸の自律神経支配における変化を明らかにする目的で, ラットを用い組織化学的方法と薬理学的方法により実験的研究を行なつた. 1側精管を切断し対側は対照とした68匹と, 1側精管を結紮した38匹の計106匹のラットを使用した. それぞれ5~9匹を術後1, 2, 3, 4週後と, 2, 3, 6ヵ月後に屠殺して副睾丸と精管を摘出し, その自律神経支配について, 組織化学的には Falck-Hillarp 法により交感神経節後線維, El-Badawi および Schenk の Karnovsky 変法により acetylchoinesterase 陽性線維の分布を観察し, 薬理学的には生体外での摘出精管の張力測定法により, 精管の自律神経系薬物に対する感受性を検討した. 得られた結果は以下のごとくである.
    1) 精管の切断や結紮により, 同部より睾丸側の精管と副睾丸尾部は, 術後1週後には除神経された.
    2) 精管結紮後では自律神経支配の再生は術後2週後以内に開始され, 精管内は1ヵ月間に約1cmの速度で自律神経線維が再生したが, 精管切断後では自律神経支配の再生開始は遅延しており, 6ヵ月後でも自律神経支配の再生を認めない例がみられた. 3) 精管に再生した自律神経線維の分布は, 筋層においては対照側と類似した分布を示したが, 粘膜下層における acetylcholinesterase 陽性線維の再生は, 対照側の密な分布に比し粗であり障害されていると考えられた.
    なお精管と副睾丸の自律神経支配における精管切断術による変化の臨床的意義について考察した.
  • 萬谷 嘉明
    1981 年 72 巻 10 号 p. 1298-1319
    発行日: 1981/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    9個体 (11~77歳) の正常精巣組織と6個体 (25~33歳) の精子発生不全例の精巣組織を透過型電子顕微鏡用切片とし, 精巣間質の微細構造について観察した.
    精巣問質内には毛細リンパ管がしばしば存在し, これに Leydig 細胞が近接する像も認められた. 基底層の著しく乏しいリンパ管内皮には, 所により内皮細胞相互間の幅2μmにも達するような隙間が存在することが明らかとなつた. さらに, 多くの個体に齧歯類動物の精巣間質におけるリンパ類洞に酷似した構造を認めた. 以上から, 精巣ホルモンの流出路の一つとしてのリンパ管系の果たす役割りが推察された. 精細管境界組織は, 1. 精細管上皮基底層, 2. 線維成分 (膠原原線維, 微細細線維および微細細糸を含む), および3. 細胞成分 (筋様細胞と線維芽細胞からなる) より構成され, 正常精巣組織内でも加齢に伴つて特に上記1と2の厚みが次第に増加する一方, 2に含まれる単一膠原原線維の太さは逆に減少するという一般的傾向を認めた. 6個体の精子発生不全例においては, 比較的若年齢でも高齢者の正常精巣組織内にみられる変化に匹敵するような境界組織の肥厚を認めた. さらに, 本研究で調査した60歳以上の全6個体と3個体の無精子症 (25, 31, 32歳) では, 花弁状の横断面を示す異常膠原原線維 (Ehlers-Danlos 症候群I型, VII型等の例でみられることが知られている) の出現が認められた. 比較的若年者でも精子発生不全例では, 高齢者にみられる精巣間質内の変化がすでに生じていることは注目に価すると考えられた.
  • 沢木 勝
    1981 年 72 巻 10 号 p. 1320-1328
    発行日: 1981/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    ラットの実験的水腎症における腎乳頭間質の変化を光顕的, 電顕的に観察した. 特に間質細胞内に存在する腎プロスタグランディンの前駆物質とされる顆粒の変動に注目した. 水腎症は左側中部尿管の完全結紮により作成し, 尿管結紮後2日および1~5週の各週ごとに腎を摘出し試料とした. また尿管結紮後5週目まで収縮期血圧を測定した. 水腎症における初期変化として間質の水腫がみられ, 水腫の消褪とともに間質細胞は線維芽細胞様細胞に変化した. 上皮の基底膜は肥厚および屈曲を示し, 膠原線維, microfibrilおよび基底膜様物質の増加が認められた. 間質細胞内顆粒数は2日目に最高となり, 以後減少し, 正常に比し, 2日, 1週目は有意の高値を示し, 2週目以降は日を経るにしたがつて有意の低値を示した (p<0.01). 収縮期血圧は5週目まで, 偽手術群と水腎症群の間に有意の差は認められなかつた. 以上の所見より, 水腎症における尿濃縮力障害に, 早期には間質の水腫およびそれに伴う腎プロスタグランディン合成の亢進が, また後期には間質の修復に伴う間質構成成分の量的, 質的変化が関与していることが考えられた.
  • 山川 義憲
    1981 年 72 巻 10 号 p. 1329-1342
    発行日: 1981/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    金沢医科大学病院において, 1975年3月より1980年12月までに46例の生体血縁者間の腎移植術が行われた. 1例のみに両側の固有腎摘除術を施行した. このうち, 19例を対象として移植後の腎機能を経時的に測定した. 19例に延べ33回の急性拒絶反応が認められ, 拒絶反応の判定指標として他の指標と併せて, 殊に free water clearance について検討した結果以下の点が判明した.
    拒絶反応の48~72時間前に free water clearance の有意の変動 (p<0.05) が認められ, 拒絶反応の早期診断に重要である. osmolar clearance の変動も拒絶反応の診断に重要である.
    拒絶反応の際に, EFNa についてはほとんど変動がみられず, EFkの上昇とU/P creatinine の減少が認められたが有意ではなかつた.
    拒絶反応と判定された時点における negative free water clearance の良好な症例ほど, 拒絶反応よりの回復が速やかであつた. また, osmolar clearance についても同様のことが観察された.
    術後早期の拒絶反応の認められない時期において, HLA-C match の症例はHLA-A match に比べて negative free water clearance は低値を示した.
    移植直後には, 19症例の約半数は positive free water clearance を示したが, 術後4日目には全例共に negative free water clearance を呈し, この状態は急性拒絶反応に至るまで持続した.
    以上のごとく, 急性拒絶反応の判定には negative free water clearance の減少が重要であり, 早期に出現し且つ信頼性のおける検査法であり, また拒絶反応よりの回復性をみる上でも重要な指標であると結論づけられる.
  • 藤田 民夫, 浅野 晴好, 柳岡 正範, 松井 基治, 森口 隆一郎, 置塩 則彦, 名出 頼男, 笠原 正男
    1981 年 72 巻 10 号 p. 1343-1349
    発行日: 1981/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    42歳男子にみられた, 腎杯憩室に発生した移行上皮癌の1例を報告した. 主訴は無症候性血尿であつたが, 理学的検査, 血液学的検査, 尿細胞診, 胸部腹部レントゲン検査にて全く異常を認めなかつた. 膀胱鏡検査にて, 左側尿管尿が血性であることが判明した. IVPにて左腎中央で腎杯, 腎盂の圧排像を認めると共に, 選択的腎動脈造影にて8×8cmの大きさの血管像の乏しい嚢胞が, 左腎中央に認められた. 逆行性腎盂造影にて, 腎杯と嚢胞との交通は証明されなかつたが, その後に行つたCTにて, 嚢胞内容が造影され, 腎杯と嚢胞との交通が強く疑われた. CT上, 嚢胞壁は若干厚く, 内面は多少不整であり, 同時に嚢胞穿刺を試みたが, 穿刺は不能であつた.
    この為, 診断的開腹術を行い, 左腎を露出し, その中央前面にある嚢胞壁を開くと, 内面は疣贅状であつた. 嚢胞壁の氷結標本による迅速病理診断で, 移行上皮癌との診断を得たため, 腎周囲脂肪組織を含め, 腎尿管全摘除術を施行した.
    光顕, 電顕的観察による組織学的診断で, 嚢胞内面は正常, あるいは異形成性を示す移行上皮と, grade II~IIIの移行上皮癌とが混在することが明らかとなつた. 以上より, 腎杯憩室の内面に発生した移行上皮癌と診断した.
    我々が調べえた限りでは. 本例は本邦初例の腎杯憩室に発生した移行上皮癌であつたためここに報告した.
feedback
Top