尿路感染症 (UTI) の診断および治療上の parameter として, 免疫グロブリンやその他の血清蛋白が血沈とともにどのように有用であるかを検討した. 測定した血清蛋白はIgM, IgGおよびC
3以外に prealbumin (Pre), ceruloplasmin (Cp), α
2HS glycoprotein (α
2HS), transferrin (Tf), C
3-activator (C
3-A), β
2 glycoprotein I (β
21), CRPである. 対象はUTI患者140名と健康成人対照25名である. 血沈とCRPは上部UTIの診断と治療効果の判定の基準的 parameter として有用であることが再確認され, 個々の血清蛋白では急性UTIでIgMが増加, 上部UTIの発熱患者で Cp, C
3, C
3-A の増加が著明, Pre, α
2HSは低下, β
2Iは慢性腎盂腎炎 (PN) の急性増悪のみに増加した. 慢性PNをCRP陰性群, 陽性群, 急性増悪群の3群に分けてPre, α
2HS の低下と Cp, C
3, C
3-A の増加および血沈の亢進の2点について検討すると, CRP陰性群と後2群に明らかに差が認められ, CRP陽性の慢性PNは急性増悪の潜伏期と示唆された. 急性PNの回復にともなう正常化はCRPが最も早く, 次いで Pre, α
2HS, C
3, C
3-Aなどの一群, Cpと血沈は遅れる. CRPは早すぎ血沈は遅すぎるので中間群の血清蛋白値は価値がある. 慢性PNの急性増悪ではこれら測定値の正常化が急性PNよりも遅れる. このことは治療継続期間の判定に有用である. これらの血清蛋白の変動はUTIに特異的ではないが, UTIの臨床像, 経過と密接に相関することから, 診断および治療上の有用な parameter となりうる.
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