日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
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72 巻, 3 号
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  • 森本 鎮義, 戎野 庄一, 北川 道夫, 吉田 利彦, 高松 正人, 大川 順正
    1981 年 72 巻 3 号 p. 271-277
    発行日: 1981年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    尿路結石群205例および対照群145例との間で, 血清尿酸値および尿中尿酸排泄量について比較検討した.
    結果は以下の通りである.
    1)血清尿酸値は両群の間で有意差はみられなかつたが, 尿路結石群にて高値を示す傾向がみとめられた.
    2)尿中尿酸排泄量は, 対照群と比較して尿路結石群では有意に高値を示した.
    3)過尿酸尿症の頻度は, 尿路結石群にてより多くみられた. 他方, 高尿酸血症の頻度は, 両群の間で差をみなかつた.
    4)男女別に比較した場合, 尿路結石群での尿酸値異常の特徴は, 男子においてのみ認められた.
    以上の結果より, とりわけ男子症例において, 尿酸値異常が腎結石症の発生に何らかの役割を担つているものとの可能性が示唆された.
  • 里見 佳昭, 高井 修道, 近藤 猪一郎, 岩崎 孝史, 吉邑 貞夫, 福島 修司, 古畑 哲彦, 石塚 栄一
    1981 年 72 巻 3 号 p. 278-287
    発行日: 1981年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1965年から1978年までの14年間の腎細胞癌症例202例について, stage 及び grade と予後の関係を検討し, いくつかの知見を得た. 1) stage 別の5年相対生存率は stage I, 75.6%, stage II, 77.5%, stage III, 53.8%, stage IV, 0%で, stage が予後決定の重要因子であることが示された. 2) grade 別5年相対生存率は grade I, 77.5%, grade II, 59.8%, grade III, 37.2%, grade IV, 17.4%で, grade がその予後に非常によく反映していることがわかる. 3) 全般的には low stage ほど low grade のものが多く, high stage になるほど high grade のものが多かつた. 4) stage Iでは grade に余り関係なくすべて5年相対生存率は70%以上であつた. stage IIIでは low grade 群 (grade I+II) の5年相体生存率は75.9%であるのに対して, high grade 群 (grade III+IV) では32.3%と悪く. grade が予後決定の重要因子であることを示した. 本邦では grade についての検討は皆無に近く, 今後は, 特に stage III群では, grade との関連において予後を検討すべきことを主張した. 5) 以上は5年生存率からの考察であるが, 10年生存率という観点からみると, stage Iでも, 粗生存率30%と5年生存率にくらべ非常に悪く, 腎細胞癌における長期予後観察の必要性と, 再発防止策の必要性がうかがわれる.
  • 河村 毅, 大谷 幹伸, 保坂 義雄, 東海林 文夫, 福谷 恵子, 横山 正夫
    1981 年 72 巻 3 号 p. 288-295
    発行日: 1981年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    昭和40年から昭和54年までの15年間に東人分院泌尿器科であつかつた15歳以下の小児尿路結石症は17名で, この間の全結石症例の1.6%に相当した. 性別は男12, 女5で男女比は2.4:1であつた. 年齢は最年少が8カ月, 8例が5歳以下で最年長に15歳であつた. 結石部位は上部結石13例 (腎結石9, 尿管結石4), 下部結石2例 (膀胱結石2), 上部と下部結石合併2例 (尿管と膀胱結石1, 尿管と尿道結石1) であつた. 臨床症状は肉眼的血尿6例, 発熱3例, 側腹痛3例, 膀胱刺激症状3例, 尿閉1例, 尿失禁1例とさまざまであつた. 上部結石13例のうち観血的治療をおこなつたのは11例, 13回で, このうち腎摘例が2例で腎保存出来たものは9例であつた. 10例に結石成分の分析をおこない燐酸塩系結石4, 修酸塩系3, シスチン2, キサンチン1例であつた. 原因疾患の判明したものは9例, 52.9%で, その内訳はシスチン尿症2, キサンチン尿症1, 尿路奇形と感染3, 長期臥床1, 薬剤の副作用2例であつた. 結石 free の状態となつた12例の平均追跡期間は9.6年で, この間の再発は1例のみで再発率は8.3%であつた.
    小児尿路結石症は結石の早期診断と原因疾患の検索が必要であり, このためには前もつてたてたスケジュールにしたがつて原因疾患の検索をおこなう必要がある. またX線陰性結石の疑いのある場合には腹部CTが診断上有用である.
  • 秦野 直
    1981 年 72 巻 3 号 p. 296-305
    発行日: 1981年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    膀胱筋電図導出における最大の問題点は, 排尿時膀胱壁と電極とがずれることによつて生ずる mechanical artefact が混入することであり, これをいかにして小さくできるかという点に絞られる. 近年時定数を0.03とし低い周波数帯域に含まれる artefact を除去した high frequency EMGが排尿時膀胱筋電図として報告される様になつた. しかしこの high frequency EMGではその電位が10~30μVp-pと小さいため, 交流雑音, 骨格筋および尿管活動電位などが混入しやすい. そこで本研究では, まず, 増幅器に改善を加え, 入力方式を平衡差動入力としたうえ, シールドドライブ法を併用し, 交流雑音の混入を防止した. また時定数は0.03secではなく, 低い周波数帯域に含まれる artefact をより完全に除去できる様にしゃ断周波数f0=5Hz, 1/2f0にて24dB/octの減衰特性をもつハイパスフィルタを使用した. 動物実験として, 成犬を用い, 排尿時の膀胱筋電図導出を試みた. すなわち, 無処置の排尿時および尿道結紮時, 膀胱壁熱変性時などにおいて導出された波形を比較検討し, 混入する可能性のある mechanical artefact 4項目のうち3項目を否定し得た. したがつて, この基礎研究により, 本来の排尿時膀胱筋電図を得るための基本的問題点の一部を解決し得た.
  • 森田 隆, 佐伯 英明, 和田 郁生, 松尾 重樹, 西沢 理, 土田 正義
    1981 年 72 巻 3 号 p. 306-312
    発行日: 1981年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    雄成犬で恥骨を切除して膀膀・膀胱頚部・前立腺・尿道を直視下に露出し, 骨盤神経・下腹神経・陰部神経を剥離し, 各神経刺激時の膀胱・膀胱頚部, 尿道の収縮を肉眼的に観察できる新しい実験モデルを創案した. この方法を用いて観察し次のような知見を得た.
    1) 陰部神経刺激時の尿道括約筋の収縮には, 前立腺直下の外尿道括約筋部の輪状の収縮と, 尿道尿囲横紋筋の縦方向の収縮の2種類の収縮があることが判明した. さらに後者の方が前者より強力であつた. また, 陰部神経を刺激すると激しく直腸, 肛門が収縮し尿道に与える影響が多大であることも解つた.
    2) 骨盤神経を刺激すると膀胱が収縮し膀胱底の筋壁が外上方へ引つばり上げられてその結果膀胱頚部が anatomical に開くような印象を受けた.
    3) 下腹神経刺激時には膀胱頚部の締まるのが観察されたが, 前部尿道の収縮は肉眼的にはほとんど認めら才しなかつた.
    私達の創案した膀胱・尿道収縮の直視下観察方法は, これまで内圧記録などの間接的方法で検討されていた膀胱尿道機能を直接肉眼でも観察できる点が優れており, 今後この分野の実験的研究に役立つと思う.
  • とくに尿中血小板様小体との関係
    河野 南雄, 東 澄雄
    1981 年 72 巻 3 号 p. 313-321
    発行日: 1981年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    尿中の血小板特異タンパクの一つであるβ-thromboglobulin (β-T. G.) を測定し, 尿中血小板様小体 (U-PLB), 尿の成分, 腎機能との関係を検討した.
    尿中にはβ-T. G. が常に排泄されている.
    健康成人尿上清のβ-T. G. は平均0.577ng/mlで, 尿沈渣のそれとほぼ等しかつた. いわゆる特発性腎出血2例と急性糸球体腎炎1例の尿上清のβ-T. G. は比較的高値で, これらの沈渣では11ng/ml以上もあつた. 慢性糸球体腎炎7例中3例の尿沈渣のβ-T. G. は上清よりも高値で, 尿沈渣に超音波処理を加えたものでは無処置のものよりも更に高値であつた. しかしその他の慢性糸球体腎炎では尿沈渣のβ-T. G. の方が上清よりも低値であつた. かかる事実はU-PLBについてのこれまでの報告を裏付けるものであつた. 高血圧症4例, 特発性浮腫1例の尿上清のβ-T. G. の方が沈渣よりも高値で, とくに高血圧症2例の尿沈渣のβ-T. G. は微量すぎて測定不能であつた.
    尿の浸透圧. Crea・Urea-N・Na・K・Caなどや Ccr と, 尿上清と沈渣のβ-T. G. との関係は両者で異なつており, この検討よりもU-PLBは存在する. 尿のβ-T. G. はβ-T. G. そのものとしても排泄されるが, その他に症例によつてはU-PLBに残存するβ-T. G. としても排泄される. そしてβ-T. G. の尿中への排泄は腎機能や腎病変と関係があることが示唆された.
  • 妹尾 康平, 永友 和之, 宮崎 徳義, 新川 徹, 斉藤 康
    1981 年 72 巻 3 号 p. 322-331
    発行日: 1981年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    先天性腎動静脈瘻1例, 腎細胞癌によるもの2例, 外傷性腎動静脈瘻1例, 炎症性 (結核性) 腎動静脈瘻1例を供覧した. 高血圧が3例に, 肉眼的血尿が2例に認められ, 手術によつて全ての症状は改善された. 手術は腎癌の2例では経腹的腎摘出術を施行したが, 良性動静脈瘻の3例のうち, 先天性動静脈瘻は病変が広範囲に及び, 外傷性動静脈瘻では腎と腎周囲の炎症性病変の拡大が強く疑われたため経腰的腎摘出術を, 結核性腎動静脈瘻には腎部分切除術を適用した. さらに原因の違いによる各型の分類について文献的考察を行ない, 症状, 診断, 治療について検討した. 治療法の選択に関しては外傷性の場合の保存的治療の適応, 経皮的カテーテル法についても簡述した.
    また, 炎症性腎動静脈瘻は稀であるが, 中でも結核性のそれは一段と稀なものであり, 病理組織学的に確認されているのは今回の症例が最初と思われる. しかし, これとても結核が動静脈瘻の真の原因かあるいは単に併存しただけのものなのかは断定できぬ面があり, この点は一般に他の炎症性動静脈瘻といわれるものについても同様の観がある.
  • 主として血清蛋白各成分について
    後藤 俊弘
    1981 年 72 巻 3 号 p. 332-348
    発行日: 1981年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    尿路感染症 (UTI) の診断および治療上の parameter として, 免疫グロブリンやその他の血清蛋白が血沈とともにどのように有用であるかを検討した. 測定した血清蛋白はIgM, IgGおよびC3以外に prealbumin (Pre), ceruloplasmin (Cp), α2HS glycoprotein (α2HS), transferrin (Tf), C3-activator (C3-A), β2 glycoprotein I (β21), CRPである. 対象はUTI患者140名と健康成人対照25名である. 血沈とCRPは上部UTIの診断と治療効果の判定の基準的 parameter として有用であることが再確認され, 個々の血清蛋白では急性UTIでIgMが増加, 上部UTIの発熱患者で Cp, C3, C3-A の増加が著明, Pre, α2HSは低下, β2Iは慢性腎盂腎炎 (PN) の急性増悪のみに増加した. 慢性PNをCRP陰性群, 陽性群, 急性増悪群の3群に分けてPre, α2HS の低下と Cp, C3, C3-A の増加および血沈の亢進の2点について検討すると, CRP陰性群と後2群に明らかに差が認められ, CRP陽性の慢性PNは急性増悪の潜伏期と示唆された. 急性PNの回復にともなう正常化はCRPが最も早く, 次いで Pre, α2HS, C3, C3-Aなどの一群, Cpと血沈は遅れる. CRPは早すぎ血沈は遅すぎるので中間群の血清蛋白値は価値がある. 慢性PNの急性増悪ではこれら測定値の正常化が急性PNよりも遅れる. このことは治療継続期間の判定に有用である. これらの血清蛋白の変動はUTIに特異的ではないが, UTIの臨床像, 経過と密接に相関することから, 診断および治療上の有用な parameter となりうる.
  • 本間 之夫, 小松 秀樹, 三方 律治, 木下 健二, 昌子 正実
    1981 年 72 巻 3 号 p. 349-354
    発行日: 1981年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    同時発見した左腎盂癌, 右尿管癌の症例を報告した. 症例は76歳女で, 全身倦怠と意識障害を訴えて来院した. 腎機能障害, 右尿管下端部閉塞と診断, 右側に腎瘻を設置し臨床症状は改善した. 更に, 左側の逆行性腎盂造影, 左腎盂内洗浄液の細胞診, 右尿管口付近の腫瘤の生検を施行し, 左腎盂癌, 右尿管・膀胱癌と診断した. 左腎尿管全摘, 右尿管全摘及び膀胱全摘を施行した. 病理検査では, 右尿管下端部の癌は扁平上皮化を伴う invasive urothelial carcinoma であり, 膀胱及び周囲の組織に浸潤していた. 左腎盂癌も invasive urothelial carcinoma で, 腎実質内に浸潤していた. 左腎門部リンパ節6個中3個に転移をみとめた. 患者は術後9カ月で多発性肝転移で死亡した. 文献的には, 両側性の上部尿路上皮腫瘍の頻度は0.8~10%と報告されており, 48例の症例報告を集録できた. そのうち, 偏側もしくは両側に腎盂腫瘍を有する14例の手術法と予後に関して検討したが, 腫瘍のとり残しのない手術をすることは必要であるが, それが十分の治療であるか否かは明らかではなかつた. また腎盂癌は時に腎実質に直接浸潤して, 無機能腎の原因となりうることも指摘した.
  • 本間 之夫, 小松 秀樹, 三方 律治, 木下 健二, 桶田 理喜
    1981 年 72 巻 3 号 p. 355-358
    発行日: 1981年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は59歳男. 4カ月来の血尿を訴え受診. 精査の結果, 右尿管口付近の膀胱癌と, その尿管閉塞による右水腎症と診断し, 右腎尿管膀胱全摘, 左尿管S状結腸吻合施行. 術中右腎に穴があき, 粘血性の液体が多量に流出した. 病理検査で, 右腎盂の粘液産生性の低分化腺癌, 右尿管膀胱移行上皮癌, 前立腺癌を確認. 術後40日目に術創に腎盂腺癌再発し, 70日目に死亡. 本例は泌尿器系三重複癌の4例目, 腎盂腺癌の39例目にあたる.
  • 香村 衡一, 安田 耕作, 浜 年樹, 中山 朝行, 島崎 淳
    1981 年 72 巻 3 号 p. 359-364
    発行日: 1981年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    繰り返す尿路感染を示す8歳女児に, X線検査で, 不完全縦隔壁膀胱と左膀胱尿管逆流現象を伴う左無機能発育不全腎を見出した. 隔壁を含めた膀胱部分切除術と左腎尿管全摘除術を施行した. 本例は, 我々の調べ得た範囲で, 木邦に於ける膀胱電複奇形の26例目の隔壁膀胱の縦位型としては3例目の報告例である.
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