日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
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72 巻, 7 号
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  • 第1報 マクロファージの検出方法について
    西村 泰司, 金森 幸男, 秋元 成太, 川井 博
    1981 年 72 巻 7 号 p. 785-789
    発行日: 1981/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    前立腺液中に出現する白血球の意義を解明する手がかりとして白血球の subpopulation であるマクロファージの動向を観察するため, まず尿路に出現するマクロファージの識別方法について検討した. はじめにグルタールアルデヒド処理羊赤血球に対する接着能またはラテックスに対する貪食能によりマクロファージを識別することを試みたが, これらの検査に対し多くの多核白血球も陽性を示したことからマクロファージの識別には適さないことが判明した. しかしながらこの方法により尿中に移行した白血球がなお貪食能を有していることが観察され, 尿中白血球の貪食能の検索にこの方法が有用であるという結果を得た.
    最後に前立腺液のスメアーを用いて非特異的エステラーゼ染色を行つた結果, 染色の濃淡により前立腺液に含まれる白血球中のマクロファージの識別が可能なのみならず, その分布が低倍率による検鏡にても一見して認識でき, この方法は前立腺液中のマクロファージの研究に極めて有用であるとの結論に達した.
  • 安本 亮二
    1981 年 72 巻 7 号 p. 790-809
    発行日: 1981/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    慢性糸球体腎炎の病理過程の解析のため, 抗ウサギ腎ニワトリ血清を成熟雌ウサギの一側腎動脈の20分間の結紮中に耳静脈内に注射するという Sarre-Wirtz の方法を, およそ1箇月の間隔で反復することにより一側性反復性馬杉腎炎の作成を試みた. 最長観察期間は発病後199日におよんだが, 抗腎血清の反復注射によつても馬杉腎炎の一側性発生の傾向が失なわれないことを確かめ得た. 患側腎の時間の経過に従う縮小傾向に反して, 対側腎には多少とも肥大するという結果が得られた. 経時的生検および剖検による検索では, 同一糸球体における新旧の増生性糸球体炎像や半月体形成およびその線維化ならびに基底膜の硬化・肥厚のみられる係蹄における新しい細胞増生, 線維化に伴い増生細胞が中軸部に集積した係蹄の周辺側における胞体の明るい内皮細胞由来と思われる細胞の出現が注目された. これらは抗腎血清注射の反復による糸球体炎の再発像と考えられる. その他に, 糸球体係蹄の壊死後の肉芽腫形成像や係蹄の周辺毛細血管壁における“Circumferential mesangial interposition”に相当する像も観察された. このような傷害の強い糸球体に所属する尿細管主部組織には上皮の著明な萎縮, 基底膜の二重化・疎開・蛇行, 萎縮上皮と基底膜との間の線維芽細胞, 膠原線維の出現, 間質の硬化などが注目された. 傷害の強い糸球体に注ぐ細動脈の中膜平滑筋線維の周核空胞形成も観察された.
  • I. 各種尿路感染症における分泌型IgAの検討
    西尾 彰, 熊本 悦明
    1981 年 72 巻 7 号 p. 810-827
    発行日: 1981/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    健康成人女子および各種の尿路感染症を有する成人女子について尿中分泌型IgA (SIgA) の動態について検討した. 測定方法は Single Radial Immunodiffusion 法で抗体には尿から精製したSIgAで家兎を免疫して作成した抗SIgA血清を健康ヒト血清で吸収して得た抗SC血清を使用した. 1) 健康成人女子の尿中SIgA濃度は平均158.6μg/dl. SIgA/u-creatinine 比は平均2.1であつた. 日内変動についてみると午後に高くなる傾向がみられた. 2) 急性単純性膀胱炎例では急性期に著明な分泌上昇が認められ, 尿中SIgA濃度は平均473.8μg/dl, SIgA/u-creatinine 比は平均9.0であつた. これらは化学療法開始後間もなく速やかに低下し非感染時に近づいた. また初感染群と反復感染群を比較すると後者における反応がやや強く, また辱辱下部尿路感染症の既往頻度が低い群において強い反応が認められた. 3) 慢性増殖性変化を伴なう慢性膀胱炎例の尿中SIgA濃度は平均381.7μg/dl, SIgA/u-creatinine 比は平均5.2であつた. 慢性複雑性膀胱炎例の尿中SIgA濃度は平均836.7μg/dl, SIgA/u-creatinine 比は平均12.7で最も強い反応が認められた. 4) Urethral syndrome 例の尿中SIgA濃度は平均241.9μg/dl, SIgA/u-creatinine 比は平均3.2でいずれも軽度の上昇を認めた. 5) 急性腎盂腎炎例の尿中SIgA濃度は219.3μg/dl, SIgA/u-creatinine 比は平均2.8であつた. また慢性腎盂腎炎例では健康成人女子と差を認めなかつた. 6) 上部尿路変更術施行例ではいずれも低値を示し, 尿中SIgA濃度は平均34.6μg/dl, SIgA/u-creatinine 比は平均0.7であつた.
  • II. E. coli の尿路上皮細胞附着に対する分泌型 IgA の阻止作用について
    西尾 彰, 熊本 悦明, 広瀬 嵩興
    1981 年 72 巻 7 号 p. 828-841
    発行日: 1981/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    尿中分泌型IgA (SIgA) の感染防禦機構における機能を検討する目的で細菌が粘膜の上皮細胞に附着する過程においてSIgAがどのような作用を果たしているかを検討した. 上皮細胞は膀胱洗滌で採取し, また細菌は急性単純性膀胱炎の患者尿から分離した E. coli を用いた. SIgAは健康成人女子尿から精製したものを用いた. 1) 健康成人女子例では1個の上皮細胞に平均18個の E. coli が附着し, SIgA添加 (200μg/dl) により平均14個に減少した (減少率: 22%). 2) 下部尿路感染症の既往を有する女子例では平均44個の E. coli が附着し, 既往頻度の高い例では E. coli 附着数が増加した. SIgAを添加した場合附着数は平均25個に減少した (減少率: 58%). 3) 尿中SIgA濃度に対応させた試験管内SIgA濃度を用いた E. coli の附着阻止作用の検討から, SIgAの E. coli 附着阻止作用の効果発現濃度は, 非感染時の尿中SIgA濃度附近にあることが推測された.
  • 蓚酸カルシウム結石患者における結晶凝集の検討
    鈴木 孝治
    1981 年 72 巻 7 号 p. 842-855
    発行日: 1981/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    蓚酸カルシウム結石の発生機序解明の目的で, 正常人と結石患者の尿における差を検討した. 1) 結石患者とくに再発性結石患者では尿中カルシウムの著明な増加と蓚酸の軽度増加が認められた. 尿酸に差はなかつた. 結石症の severity はカルシウム×修酸/クレアチニンと相関した. 2) 尿中蓚酸カルシウム結晶のみられた正常人と再発性結石患者における結晶量を Coulter counter 法で測定した結果, 正常人では小さな結晶がみられ, 結石患者では大きくかつ凝集された結晶が観察された. 全体積量は0.37±0.05 (mean±SEM)×105μm3/ml, 2.21±0.21×106μm3/mlであり両者に有意差を認めた. 3) 結晶の成長はなく凝集のみが反応する系を確立した. この凝集系に正常人・結石患者の尿を添加し凝集阻止能を測定した結果, 尿は非常に強い凝集阻止能をもつことが判明した. また1%にあたる尿添加時の変化では再発性結石患者に明らかな凝集阻止能の低下をみた. 4) 凝集系を利用し種々の物質の阻止能を測定した. citrate, magnesium, pyrophosphate, sodium copper chlorophyllin, glycosaminoglycan に濃度依存性の強い阻止能が認められた. 正常尿中に存在する物質のうちとくに heparin が強い阻止能を示した. urea, creatinine, methylene blue, EDTA に阻止能は認められなかつた.
  • 正常女性における性周期が尿中クエン酸および電解質排泄量に及ぼす影響について
    井口 正典, 片岡 喜代徳, 郡 健二郎, 八竹 直, 栗田 孝
    1981 年 72 巻 7 号 p. 856-864
    発行日: 1981/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    尿路結石症の発生原因を究明するための一環として尿中クエン酸排泄量を検討するにあたり, まずその基礎的検討として, 女性性周期が尿中クエン酸ならびに電解質排泄量に及ぼす影響を検討した. 対象は正常性周期を持つ未婚の20歳健康成熟期女性29名で, 約1カ月間に定期的に8回早朝尿を採取し, 尿中エストロゲン, クエン酸, Ca, Mg, P, Na, K, Cl, 尿酸を測定し, クレアチニンで補正し比較検討した. また個々の性周期にあわせて, 月経開始前 (第I期), 月経終了前後 (第II期), 排卵期 (第III期), 第III期と次の第I期の中間 (第IV期) の4時期に一致する検体を選び, 時期を一致させた上で女性性周期が各因子に及ぼす影響を検討した. その結果, クエン酸排泄量は時期を無視した場合, 平均309.5±161.5mg/g・creatinine であつたが, 性周期を考慮すると, 第II期で最低値 (245.7mg/g・creatinine) をしめし, また第IV期で最高値 (363.0mg/g・creatinine) をとり, 時期により有意な変動を認めた (p<0.05). 以上の結果は, 尿中クエン酸排泄量の検討にあたつては, 女性性周期を十分考慮する必要があることを示唆していると考えられた. また各時期で各因子間の相関を比較してみたところ, 第III期には他の時期で相関のみられた多くの因子間の相関がくずれるという結果を得た. すなわち女性ホルモンの排卵期における急激な変動が, 尿中排泄物質に及ぼす影響は予想以上に大きいことが判明した.
  • 竹前 克朗
    1981 年 72 巻 7 号 p. 865-879
    発行日: 1981/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    ウィスター系雄性ラットを用いて, 代償性腎肥大におよぼす mitomycin C あるいは5-fluorouracil の影響を核酸量および蛋白量の変化を指標として検討した. 観察日数は手術後1, 3, 5, 7, 10, 14日目とし, 抗癌剤はLD50の1/10量を1回腹腔内投与した. 腎, 皮質, 髄質の各重量ともに, 腎摘除術のみの群では14日目まで経日的な増加傾向が認められた. 一方, 抗癌剤投与群では10日目までほぼ同様の傾向が認められたが, 14日後には腎摘除術のみの群に比し有意に低値を示した. 細胞の hypertrophy は皮質, 髄質ともに腎摘除術のみの群では1日以内に始まり, 14日目まで継続していると考えられた. 一方, hyperplasia は皮質では1日目と3日目の間に強く, 以後も軽度ではあるが持続した. 髄質でも同様の傾向であつたが皮質に比し軽度であつた. これに対し mitomycin C 投与では, 皮質, 髄質の hypertrophy に与える影響は少ないが, hyperplasia に対する抑制は強く, 7日目には細胞の核の崩壊によると考えられるDNA含量の著しい低下が認められた. しかしその後は急速な同復傾向が認められた. 5-fluorouracil 投与では, 皮質, 髄質ともに1日目までの hypertrophy の強い抑制と3日目までの hyperplasia の軽度の抑制が認められたが, 以後の影響は少なかつた.
  • とくにCTよりみた脳内病変部位との関係について
    土田 正義, 能登 宏光, 山口 脩, 西沢 理, 森田 隆, 西本 正
    1981 年 72 巻 7 号 p. 880-891
    発行日: 1981/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    脳血管障害に基く排尿異常患者34例 (男性24例, 女性10例, 年齢49~80歳, 平均67.1歳) を対象にし, 神経学的検査, 頭部 Computed tomography (CT) および一部脳血管撮影により, これら患者の脳内病変部位の確認を行い, 脳内病変部位によつて下部尿路機能がどのように変化するか, 尿道内圧曲線, 膀胱内圧曲線および外括約筋筋電図同時測定等の urodynamic study で検討を行つた.
    その結果, 次のような結論が得られた.
    1) 膀胱内圧曲線は34例中25例 (74%) で hyperactive bladder を示し, 外括約筋筋電図は14例 (50%) が normal sphincter を示した.
    2) 被殻に病変が認められた症例では, 膀胱内圧曲線は大部分 hyperactive bladder を示したが (78%), 外括約筋筋電図は外括約筋がまだ随意調節下にあることを示した (67%).
    3) 大脳皮質前頭葉あるいは内包に病変が認められた症例では, 膀胱内圧曲線はほとんどが hyperactive bladder を示し (89%), 外括約筋筋電図は detrusor hyperrefiexia に伴い外括約筋のuninhibited reflex relaxation を示す傾向が認められた (56%).
    4) 膀胱内圧曲線上 inactive bladder を示した症例の多くは, CT所見上脳全体の萎縮しか認められなかつた. これらの症例では利尿筋運動中枢があるといわれる橋-中脳網様体に萎縮性変化が及んでいる可能性を否定できない.
  • 松田 聖士, 藤広 茂, 蟹本 雄右, 兼松 稔, 坂 義人, 河田 幸道, 西浦 常雄
    1981 年 72 巻 7 号 p. 892-899
    発行日: 1981/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    最近10年間に当科において実施した腎盂形成術の中で術後経過を少なくとも6カ月以上, 追跡し得た26症例 (28腎盂) の術後経過を検討した. 術後経過は水腎症の程度と尿路感染について検討したが, 水腎症に関してはX線上, 形態面の改善度と排泄能の改善度および両者の総合成績を点数によつて評価した. また, 尿路感染については尿沈渣の白血球数が毎視野5個以上を感染ありとして調査した. 結果は, 1) 腎盂形成術による総合的な改善度は小児の方が成人よりもすぐれていた. しかし, 原因 (UPJ-S), 術式 (Anderson-Hynes 法) が一致した7例 (小児4例, 成人3例) に限定すれば成人の方がすぐれた成績を示しているなど, 必ずしも小児の方が手術成績がよいとは断定できない. 2) Anderson Hynes 法と Culp-Scardino 法の手術成績を比較すると両者間に差はみられなかつた. 3) 術後の水腎症の改善が進行する期間は多くが1年以内であるので術後の経過観察は術後1年間に重点をおき, その後, 2年間行なえぼよいと考えられた. 4) 術前に尿路感染症を有しなかつた症例の術後の尿路感染症消失時期は長いものでカテーテル抜去後, 約3カ月である. 一方, 尿路感染症を有した症例は約5カ月と後者の方が長びく傾向が認められた. しかし, いずれも合併症がなければ約半年以内に尿路感染症の消失することが判明した. 5) 術後の尿路感染症はカテーテル留置期間が4週間を越えると増加する傾向がみられるため, カテーテル留置期間は少なくとも3週間以内とし, できれば closed drainage system で2週間以内にとどめることが望ましい.
  • 鵜飼 麟三, 田中 求平, 仁平 寛巳, 松本 暁, 平山 多秋, 桐本 孝次
    1981 年 72 巻 7 号 p. 900-909
    発行日: 1981/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎孟癌を合併した Thorotrast kidney の2例を経験したので報告する. これらの症例では腹部単純X線撮影にて特徴ある腎部石灰化様陰影を認めたが, Thorotrast を使用した逆行性腎盂造影の既往は明らかでなかつた.
    第1例は64歳の男子で発熱, 全身倦怠感を主訴として来院したが, 原発巣不明のまま転移性肺癌にて死亡した. 腎の腫瘍組織は中等度分化型の扁平上皮癌で, 腎盂の粘膜下組織には粗大顆粒状褐色色素の沈着がみられた.
    第2例は86歳の男子で, 約50年前に右腎結石のため右腎摘除術を受けている. 主訴は肉眼的血尿であるが, 入院後腎不全のため死亡した. 剖検時には腎盂腫瘍を認めなかつたが, 組織学的には腺腔形成を伴う移行上皮癌の像であつた. 腎盂の粘膜下組織には第1例と同様の色素顆粒が沈着していた.
    この沈着顆粒は軟X線撮影, microautoradiograph, γ線 energy spectrum により Thorotrast であることが証明された.
  • 堀江 正宣
    1981 年 72 巻 7 号 p. 910-927
    発行日: 1981/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    長期カテーテル留置混合感染症例の20例で, 尿中分離菌の個別菌数, 血清抗体価, 尿中抗体価, Recoated・antibody coated bacteria (R・ACB) の検出, および尿中免疫グロブリンの測定を行ない, 以下の結論を得た.
    1. 患者の自己糞便分離菌の血清抗体価の測定から, 尿路感染症の抗体価陽性限界値を128倍以上とした.
    2. 一尿路より分離された複数分離菌の血清抗体価は, 菌数に比例して高値となる傾向を認めた.
    3. 2週間の間隔を置く2時点の抗体価の変動も菌量の増減に比較的よく同調する傾向を認めた.
    4. R・ACBの検討で, IgGのS-R・ACBは血清抗体価とU-R・ACBは尿中抗体価と相関する傾向を認めた. 抗体分析の結果は, S-R・ACBではIgG, IgAで陽性率が高く, U-R・ACBではIgG, S-IgAで陽性率が高値を示した.
    5. U-R・ACB陽性の尿中免疫グロブリンはS-IgAで高値を示し, 陽性率は低いがIgMでも高値を示した. IgG, IgAでは尿中免疫グロブリン量とUR・ACB陽性間に相関を認めなかつた.
    6. 尿中抗体価陽性率は12症例中3例 (25%) であつた. 尿中抗体価陽性株は全例IgGのU-R・ACBが陽性であつた. 一尿路の分離菌のうち複数の分離菌が, 血清抗体価, 尿中抗体価, R・ACB陽性であつた.
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