日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
73 巻, 5 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
  • 小野 佳成, 絹川 常郎, 松浦 治, 平林 聡, 竹内 宣久, 小川 洋史, 大島 伸一, 梅田 俊一, 藤田 民夫, 浅野 晴好
    1982 年 73 巻 5 号 p. 577-583
    発行日: 1982/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    本邦での死体腎移植は腎の提供が心停止後行なわれるために温阻血の影響をうけ, 腎移植直後より急性尿細管壊死に陥り移植腎機能は発現しないことが多い. この移植腎機能の発現しない期間に高頻度でおこる合併症をより少なくして, 拒絶反応を抑制し移植腎の生着を図るために, methylprednisolone, prednisolone, azathioprine の投与量を生体腎移植例の2/3~3/4に減じ, ALGを十分に投与する免疫抑制法を用い, また, 経日的な移植腎開放腎生検によつて移植の状態を観察して腎移植後の管理を行なつた. 昭和53年1月より昭和55年12月までに9例に上記の方法にて死体腎移植を施行した. 7例に移植直後から18術後日までに移植腎機能の発現をみた. 2例は不可逆性急性尿細管壊死, 急性尿細管壊死と急性拒絶反応により移植腎機能の発現はみられなかつた. 移植腎機能の発現をみた7例のうち2例は回腸穿孔, 腹膜炎および消化管出血にて免疫抑制剤を中止したが, 1例は fulminant type の急性拒絶反応により移植腎機能を喪失した. 腹膜炎より敗血症で死亡した1例を除き4例は血液透析をうけ社会復帰している. 4例は現在のところ3カ月以上の移植腎の生着をみ, 腎機能は良好で全例社会復帰している. 私共の死体腎移植の方法および結果を述べ, 急性尿細管壊死による移植腎機能の発現しない時期の免疫抑制法および急性拒絶反応の診断法について考察を加え報告した.
  • 仲田 浄治郎, 増田 富士男, 大石 幸彦, 小路 良, 陳 瑞昌, 大西 哲郎, 町田 豊平, 佐々木 忠正, 谷野 誠, 古里 征国, ...
    1982 年 73 巻 5 号 p. 584-589
    発行日: 1982/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    慈恵大学病院および関連病院で過去28年間に経験した腎盂移行上皮癌54例について主として併発する尿管腫瘍, 膀胱腫瘍に関して検討した. 症例は男子40例, 女子14例 (男女比2.9:1) で年齢は22~78歳, 平均59歳であつた.
    腎盂腫瘍54例中, 尿管または膀胱腫瘍を併発したものは26例, 48%であつた. 膀胱腫瘍の発生時期をみると, 腎盂腫瘍診断と同時に認められたものは20例中7例であり, 13例は術後に発生し, その期間は3~26カ月, 平均9.8カ月であつた. また2例は膀胱腫瘍の治療後に腎盂腫瘍が発見された. 術後膀胱腫瘍の発生した症例についてみると, 術前に上部尿路の広範囲に腫瘍が発生している場合に頻度は高く, 術式では膀胱壁内尿管を含め腎尿管全摘除術を施行した場合に, 発生頻度は少ない傾向がみられた. なお病理組織学的検査では膀胱腫瘍の Grade は腎盂腫瘍の Grade と類似している場合が多く, また多くは表在性腫瘍であつた.
  • 第1報 免疫化学的測定法確立に関する基礎的検討
    酒井 俊助, 加藤 直樹, 河田 幸道, 西浦 常雄, 沢田 英夫
    1982 年 73 巻 5 号 p. 590-598
    発行日: 1982/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    ヒト前立腺腺腫より硫安分画, phosphate-cellulose column chromatography にて精製された前立腺酸性フォスファターゼは, ホモジネート上清より回収率20%, 40倍に精製され, その精製 PAPase をウサギに免疫して得た抗血清は, 精製 PAPase, 前立腺組織および前立腺腺腫のホモジネート上清液とのみ特異的に反応した. 精製 PAPase に正常ウサギ血清添加の場合には56℃熱処理によりいかなるpHにおいても活性の消失を認めたのに対して, 抗血清添加の場合には56℃熱処理6時間後もpH4.6~pH5.8では100%の活性の残存を認めた. さらにその系に正常ヒト血清を添加した場合にも PAPase 活性の安定化を認めた. 以上より PAPase の免疫学的特異性を利用し, 血清中の PAPase 活性のみを特異的に測定することが可能となつた.
  • 第2報 正常人および前立腺肥大症患者における検討ならびに従来法との比較検討
    酒井 俊助, 加藤 直樹, 説田 修, 鄭 漢彬, 河田 幸道, 西浦 常雄, 沢田 英夫
    1982 年 73 巻 5 号 p. 599-608
    発行日: 1982/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    前立腺腺腫より前立腺酸性フォスファターゼ (PAPase) を精製し, これをウサギに免疫して得られた抗血清より PAPase 活性のみを測定する免疫化学的方法をもちいて, 正常男性7例, 正常女性7例, 前立腺肥大症患者54例の PAPase 活性を測定した. 同時に従来の方法によつて全酵素活性値, L-tartrate 阻害による PAPase 活性も測定し比較検討した. 正常男女および前立腺肥大症患者血清の全酵素活性値, L-tartrate 阻害による PAPase 活性値はいずれの群の間にも差を認めなかつた. 全酵素活性値に対する L-tartrate 阻害の割合において, 正常女性血清では48%前後の高い阻害率を認めた. 免疫化学的方法 (immunochemical method) による PAPase 活性値の前立腺肥大症患者54例における平均は0.33±0.29n moles/min/mlであり, 正常男性 (0.18±0.16) や正常女性 (0.13±0.20) よりは高値を示したが有意の差を認めなかつた.
  • 第3報 前立腺癌患者および他臓器癌患者における検討ならびに従来法との比較検討
    酒井 俊助, 加藤 直樹, 嶋津 良一, 土井 達朗, 清水 保夫, 河田 幸道, 西浦 常雄, 沢田 英夫
    1982 年 73 巻 5 号 p. 609-618
    発行日: 1982/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    前立腺酸性フォスファターゼ (PAPase) 活性のみを測定する免疫化学的方法を用いて, 前立腺癌患者26例, 他臓器癌患者13例 (腎細胞癌3例, 膀胱腫瘍5例, 肝癌5例) の PAPase 活性を測定し, 第2報において報告した前立腺肥大症患者の PAPase 活性と比較検討した. また, 同時に全酵素活性値, L-tartrate 阻害による PAPase 活性も測定し検討した. 全酵素活性値, L-tartrate 阻害による PAPase 活性の検討では, 前立腺癌患者の stage T1T2群は前立腺肥大症患者, 他臓器癌患者と比較した場合には差を認めなかつたのに対し, 免疫化学的方法による PAPase 活性の検討では有意に高かつた.
  • I. 腎盂における自発収縮性の分布
    山口 脩
    1982 年 73 巻 5 号 p. 619-622
    発行日: 1982/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    単腎杯腎の pacemaker system である腎盂を切断し, 各々の自発収縮を検討した.
    自発収縮頻度は腎盂中枢側程高く, 末梢に向うに従い低下するが, 腎盂周方向では頻度の差は認められなかうた. したがつて, 各領域の固有周波数は上下方向では周波数勾配をもち, 周方向では対称に分布している事が判明した.
    心臓に観察される様な特別に分化した pacemaker 領域は, 腎盂中枢側でも見い出せなかつた. また, 中枢部と中間部の切片は, waxing and waning 現象を伴なう自発収縮波を示したが, この事実により腎盂 pacemaker system における coupling 機構の存在が示唆された.
  • II. 腎盂 Pacemaker System における Coupled Oscillator 理論
    山口 脩
    1982 年 73 巻 5 号 p. 623-628
    発行日: 1982/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    自発収縮性をもつ腎盂の各領域を linear oscillator で代表し, その coupling の強さを調節することにより腎盂 pacemaker activity を simulation した.
    Coupling が弱い時には, 腎盂中枢部の oscillator がそれ以下の oscillator を駆動するのが不十分で伝播のブロック現象が観察され, coupling を充分強くすると, 腎盂中枢部の oscillator の振動は中間部から末梢部 oscillator まで伝播されて蠕動収縮波の伝播を simulation できた. また帯状切除片に観察された waxing and waning 現象も, 腎盂周方向に適当な両方向性 coupling を仮定して再現する事ができた.
    以上の結果より腎盂 pacemaker system の本態は, coupling 機構に在ることが推定された.
  • IV. 無尿期血流について
    有馬 正明, 宇都宮 正登, 市川 靖二, 井原 英有, 石橋 道男, 佐川 史郎, 高羽 津, 園田 孝夫
    1982 年 73 巻 5 号 p. 629-635
    発行日: 1982/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    死体腎移植直後の急性腎不全期および生体腎移植後の無尿症例に対し, 超音波ドプラ法による移植腎血行動態の検索を施行し, 血流パターンの推移から, 移植腎の予後, 移移腎機能の発現時期, 無尿期の拒絶反応の診断を行なつた.
    対象は, いづれも1回以上の術後血液透析を必要とした5例の生体腎移植, 3例の死体腎移植患者である, 生体腎移植5例中4例は拒絶反応後長期に亘る透析後, 機能の回復を見た症例であり, 残り1例と死体腎移植3例は術後急性腎不全により透析が必要であつた症例である.
    急性腎不全による無尿期においては, 血流状態は一般に低下しており, 血流パターン上収縮期相には著変はないが拡張期相では重症度に対応した血流速の低下が認められた. また拡張期相の血流の改善状態から, 腎機能回復, 発現の時期が予知し得た.
    拒絶反応における無尿期において, 血流状態から拒絶反応の進行度が診断でき, 拒絶反応からの可逆性, 非可逆性が診断できた.
    本法は検査法の極めて制限される無尿状態で, 移植腎の病態を把握するのに有効な検査法である.
  • 馬場 志郎
    1982 年 73 巻 5 号 p. 636-643
    発行日: 1982/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    Cyproterone acetate の投与による睾丸の造精機能および内分泌機能の変化を雄ラットで検討する目的で, 成熟雄ラットに cyproterone acetate を10mg/kg/day連日2週間又は4週間投与し, 投与終了時に血漿中LH, FSH, testosterone 値を測定し, 電気刺激射精法によつて得られた精液中精子数を算定した. さらに摘出睾丸潅流法により睾丸の progesterone, 17α-hydroxyprogesterone および testosterone 分泌能を測定し, 睾丸間質の組織学的所見と併せて対照群と cyproterone acetate 投与群と比較検討した. Cyproterone acetate 投与後の睾丸重量は, 対照群と比べ有意差はなく, 組織学的には, 精細管精子細胞の変性が認められたが, 睾丸間質細胞数には対照群と差はなかつた. 射精液中の精子数は対照群で742±200×104 (mean±SEM) に対し, cyproterone acetate 投与群で399±89×104と減少したが両者間に有意差はなかつた. 血中LH, FSH値は本剤投与により有意に上昇し (p<0.001), 逆に testosterone 値は有意に減少した (p<0.05). 睾丸潅流法による testosterone 分泌能は, 対照群の3.39±0.67ng/minに対し, 投与2週後で1.55±0.67ng/minと減少し, 投与4週後には0.91±0.21ng/minと有意に抑制された (p<0.001). また cyproterone acetate 投与により, 睾丸の progesterone 分泌能は対照群と比べ有意差はなかつたが, 17α-hydroxyprogesterone 分泌能は有意に増加した (p<0.05). この事実から cyproterone acetate が睾丸の17, 20 desmolase もしくは 17ketosteroid reductase 活性を抑制する可能性が示唆された.
  • 小出 卓生, 武本 征人, 板谷 宏彬, 高羽 津, 園田 孝夫
    1982 年 73 巻 5 号 p. 644-651
    発行日: 1982/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    尿中高分子領域に存在する蓚酸カルシウム結晶凝集阻止活性測定法を, in vitro の non-crystal-seed system をもちいて確立し, 尿中高分子阻止活性の阻止作用様式および再発性結石患者尿中高分子阻止活性について検討を加えた. 結果, 尿中高分子物質は結晶核生成過程すなわち蓚酸カルシウムの formation product に何らの影響をおよぼすことなく結晶凝集を強く抑制することが判明した. また, 再発性結石患者と正常人の尿中高分子阻止活性を比較すると, 再発性結石患者ではこの尿中高分子阻止活性が有意に低下していた. すなわち再発性結石患者では尿中高分子阻止物質の質的変化ないしは量的減少が生じており, これが in vivo での結石形成要因として深く関与していることが示唆された.
  • 小出 卓生, 武本 征人, 板谷 宏彬, 高羽 津, 園田 孝夫
    1982 年 73 巻 5 号 p. 652-657
    発行日: 1982/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    我々は先に, 結晶凝集に関する尿中高分子阻止物質が in vivo での結石形成阻止に重要な役割を演じていると考えられ, 再発性結石患者ではこの尿中高分子阻止活性が有意に低下していることを報告したが, 本論文ではさらにの尿中高分子阻止物質の性質について検討を加えた. 結果, 尿中高分子阻止活性はタンパク消化によりその活性の70~90%が失われ, 阻止物質の主成分はタンパク部分を有する物質であることが示唆された. さらに Sephacryl S-300ゲル炉過の結果, これらの尿中高分子阻止物質はタンパク複合物質であろうと推測された. 他方, 従来尿中高分子阻止物質の可能性を示唆されている酸性ムコ多糖類やRNA様物質についても検討を加えたが, 酸性ムコ多糖類に関しては尿中に存在する酸性ムコ多糖類も確かにある程度の阻止活性を示すもののその尿中高分子阻止活性に占める役割はわずかであり, また再発性結石患者と正常人の間でこの尿中酸性ムコ多糖類に由来する阻止活性に有意の差を認めなかつた. また尿中RNA様物質は尿中高分子阻止活性に寄与していないと考えられた.
  • 高崎 悦司, 村橋 勲
    1982 年 73 巻 5 号 p. 658-665
    発行日: 1982/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1953年より1980年までの28年間に経験した1,020尿石患者から得た結石を赤外分光分析した. 結石部位としては右上部尿路407 (男285, 女122), 左上部尿路463 (男337, 女126), 下部尿路133 (男112, 女21), 前立腺17であり, 最年少は2歳男児 (膀胱結石), 最高齢は89歳女子 (膀胱結石) であつた (Table 1~3, Fig. 1-2).
    分析の結果は次の通り:
    1) 1,020結石の化学的組成は蓚酸カルシウム・燐酸カルシウム結石が74.0%, 燐酸マグネシウムアンモニウム結石 (燐酸1水素マグネシウム結石も含め) 15.6%, 蓚酸やルシウムとの混合結石が5.0%, 尿酸および尿酸塩結石が4.1%, シスチン結石1.1%, 蛋白石0.1%であつた (Table 4).
    2) 上部尿路結石では蓚酸カルシウム・燐酸カルシウム結石が多く (約80%), 女子の上部尿路結石は男子と比べ燐酸マグネシウムアンモニウム結石がやや多い (Table 4).
    3) 燐酸塩結石は下部尿路, 前立腺および60歳以上の高齢者の結石に頻度が高い. また尿酸結石は比較的高齢者に, 尿酸塩結石は若年者にみられた (Table 4).
    4) 28年間の調査期間中で1961年以後は燐酸マグネシウムアンモニウム結石の占める頻度が低くなつている. 尿酸・尿酸塩結石とシスチン結石の頻度には著変がない (Table 6, Fig. 3).
feedback
Top