日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
73 巻, 6 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
  • 森田 隆
    1982 年 73 巻 6 号 p. 701-711
    発行日: 1982/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎盂尿管蠕動に対する noradrenaline, isoproterenol の反応をin vivo, in vitro の実験方法によつて検討した. noradrenaline は in vivo で腎盂内圧を高め, 尿管蠕動を pacemaker 収縮と1:1に対応するまで頻発させた. また, isoproterenol は in vivo で投与すると腎盂内圧は低下し, 腎盂収縮波は消失し, 尿管蠕動も記録されなくなつた. 腎盂尿管筋電図, 腎盂内圧を同時に記録する in vitro の実験で isoproterenol を投与すると, 腎盂内圧変動波は記録されなくなり, 腎盂の中央部以下の蠕動も消失するが, 腎杯腎盂境界部の pacemaker の微小放電は依然として記録されていた. これらの結果から, noradre naline, isoproterenol 共, 尿管蠕動に対しては pacemaker そのものというより, 蠕動伝播に働いて, noradreraline は伝播を促進し, isoproterenol は伝播を抑制すると結論づけられた. また, isoproterenol 投与時は, 腎盂内圧は腎盂の Pacemaker activity を反映しないことが判明した.
  • 第2報 除睾及び性ホルモン投与によるプロラクチン分泌動態
    生垣 舜二, 丸田 浩, 熊本 悦明
    1982 年 73 巻 6 号 p. 712-723
    発行日: 1982/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    除睾並びに性ホルモン剤投与による血中PRL値の変化を前立腺癌患者, Klinefelter's syndrome を主たる対象として検討した.
    前立腺癌患者にこおいて除睾術前及び除睾術約2週後の血中PRL値及びTRHに対する反応を比較したが有意な変化は認めなかつた.
    前立腺癌患者すなわち高年齢男子にこおいては, 除睾にこよりPRL分泌動態には影響を及ぼさないものと考えられた.
    estrogen 投与では, 急性及び慢性に投与しても血中PRL値は上昇し, TRHに対する反応も増大した. estrogen 投与による高PRL値は, L-DOPA, CB-154投与にこより容易に抑制される結果を得た.
    testosterone 投与により血中PRL値は上昇し, TRHに対する反応も増強した. しかし, この血中PRL値の上昇は estrogen 投与に比し低く, 上昇までに時間を要する結果であつた. dihydrotestosterone 投与では, 血中PRL値は変化せず, DHTはPRL分泌には何ら影響を与えないものと考えられた.
  • 第1報 基礎的検討および各種疾患における尿中 feritin 値
    東條 俊司, 大橋 輝久, 広中 孝作, 松村 陽右, 大森 弘之
    1982 年 73 巻 6 号 p. 724-731
    発行日: 1982/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    泌尿器科疾患患者285名た対し, 2-site immunoradometric assay による尿中 ferritin 測定を行ない, 検討の結果以下の如き成績を得た.
    1) 本法の回収率は97.9±5.05%であり, intraassay variance 9.3%, interassay variance 11.4%であつた.
    2) 日内変動に関しては午前10時頃にやや上昇を認めたが, 明確な日内変動はみられなかつた. さらに24時間尿と一回尿の ferritin 値にはほとんど差がなく, 一回尿測定で臨床応用は充分である事が考えられた. また血尿, 感染尿と清澄尿との間に有意の差は認められなかつた.
    3) 血清Fe, TIBC, 血清 ferritin と尿中 ferritin との間に密接な関連性はみられず, これら血清因子の影響をほとんど受けない事が判明した.
    4) 良性疾患の大部分は30mg/ml以下であつたが, 糸球体腎炎, 腎盂腎炎, 上部尿路腫瘍では著萌に尿中 ferritin の上昇を認めた. この事より, 尿細管細胞の傷害も尿中 ferritin 増加に何らかの役割を果たしている事が示唆された.
  • カテーテルセットの開発と無菌的操作の可能性について
    岩坪 暎二, 小嶺 信一郎, 山下 博志, 岩川 愛一郎, 倉本 博
    1982 年 73 巻 6 号 p. 732-739
    発行日: 1982/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    自己導尿法は過去10年間, 陳旧性神経因性膀胱の管理法としてその有用性が認められてきたが, それでも細菌感染の全くない神経因性膀胱に対して細菌感染を持ち込む危険性が考えられる. われわれは安全で簡便な自己導尿セットを開発し, 脊損陳旧例25例と新鮮例24例に応用してきた. 陳旧例25例では, 8例中6例に水腎症の, 8例中1例に逆流現象の, そして17例中15例に尿失禁の消失をみた (治療経過63週). 完全麻痺例は膀胱が回復しても尿意がないために尿失禁となる.
    我々は脊髄ショック期に意図的に膀胱過伸展な起すプログラムIIで, 頚損男子をのぞく全脊損の完全麻痺例を管理した. 自己導尿法は受傷後12遇頃から可能となつたが, 11例は冷水テスト陰性のままであり, 13例は平均12.8±7.6週で膀胱の回復を迎えた. しかし膀胱の収縮は尿路水力学的に調べると, 微弱で, 核上型膀胱で低緊張型とでも言うべき所見を示し, 尿失禁を起こすことなく自己導尿できるようになつた. 尿感染率は急性期無菌間歇導尿 (平均12週) 中が15.0±15.2%であつたのにたいし自己導尿期間 (平均23週) 中は18.4±13.0%で, 予防的化学療法をおこなわなくても良好で両群間に有意差がなかつた. われわれが開発した自己導尿セットは安全, かつ有用で脊損完全麻痺例の尿失禁を防ぐ自己導尿治療を可能にするものである.
  • 戸塚 一彦, 阿部 裕行, 箕輪 龍雄, 近喰 利光, 須藤 俊男
    1982 年 73 巻 6 号 p. 740-744
    発行日: 1982/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    蓚酸カルシウム結石の発生や成長には, 燐酸カルシウムと有機物が関与しているという報告も多い. 自然排出された小結石には,“純粋な蓚酸カルシウム結石”が多いが, われわれはX線回折法にて30例を選び, つづいて熱分析と赤外線分光分析を施行し, いわゆる“純粋な蓚酸カルシウム結石”にも主要な燐酸カルシウムであるアパタイトと有機物の存在を認めた.
    検量曲線から30結石のアパタイト濃度を求め, I群 (22例) とI群 (8例) に分けると, 平均アパタイト濃度はそれぞれ2.2%と9.9%であつた. また, I群は蓚酸カルシウム1水化物を主体とする結石が占め, II群は蓚酸カルシウム2水化物を主体とする結石が占めていたことから, 2水化物は1水化物に比べてアパタイトを伴いやすいことを指摘した.
    I群ではII群に比べて有機物含有量が高かつた. また, I群ではアパタイト濃度の増加に伴い有機物含有量も増加する傾向があつた. これは, 1水化物から成る結石の成長には, 有機物とアパタイトが密接に関係しているためと考えられる.
  • 根本 良介, 森 久, 阿部 良悦, 加藤 哲郎, 原田 昌興, 紫田 香保登, 加納 正史
    1982 年 73 巻 6 号 p. 745-751
    発行日: 1982/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    一般尿沈査を toluidine blue 色素で染色する迅速で簡便な尿細胞診法を用い, 1病院をモデルに尿路悪性腫瘍の mass screening を試みた. その結果, 本法により尿中の悪性細胞を明瞭に識別することができ, Papanicolaou 染色にひけをとらない成績が得られた. さらに, 本法を尿路悪性腫瘍の mass screening にシステム化し, 泌尿器科を除く一般受診者16,062名を対象に17,232回の検査を行なつた. その結果, 膀胱癌3名が発見され本法の mass screening における有用性が明らかになつた. また, 本法を泌尿器科受診者の全例にルーチン化することにより, 尿道の上皮内癌を始めとする興味ある症例を発見することができた.
    以上の結果から, toluidine blue 染色を用いた一般尿沈査細胞診は, 尿路悪性腫瘍の mass screening システムへの活用と泌尿器科受診者に対する細胞診のルーチン化が可能で, 他臓器の癌を含めた総合的な癌集団検診システムへの応用に期待できた.
  • 第1報 サンゴ状結石の臨床統計
    山本 洋, 平石 攻治, 黒川 一男
    1982 年 73 巻 6 号 p. 752-758
    発行日: 1982/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1972年1月より1978年12月までの7年間に徳島大学を訪れたサンゴ状結石患者は79例であり, これらに臨床統計的検討を行つた. サンゴ状結石とは腎盂を満し少くとも2つの腎杯に枝を出す結石を指す.
    1) サンゴ状結石の腎結石中に占める頻度は23.7%であつた. 2) 年齢別には11歳~83歳, 40歳台と50歳台にピークを有したが, 30歳台, 60歳台にも多かつた. 3) 性別では, 男子27例, 女子52例で男女比は1:1.9と女子に多かつた. 4) 部位別では右28例, 左42例, 両側9例と左側に多かつた. 5) 79例中, 69例に感染の合併が見られ, 男子では70.4%, 女子では96.2%の感染合併率であつた. 6) 検出菌としては, Proteus 群が23株 (46%) と最も多く, 次いで E. coli 11株 (22%), Klebsiella 3株 (6%) などであつた. 7) 残尿は37例中3例に, VURは37例中3例に認められた. 8) 観血的療法は56例60腎に対して行われた. このうち腎保存的手術は44例48腎に行われ腎切石術が最も多かつた. 9) 結石成分は, 感染を合併した42個の結石では, 燐酸Ca+燐酸マグネシウムアンモニウム+炭酸基の組合せが最も多く, 炭酸基の確認は感染の有無を判定する意味でも重要だと思われる. 10) 血液, 尿生化学的所見では, 正常者と比較して大差はなかつた. 11) 術前感染を有した症例の術後の感染の推移は, 結石が残存すると長期持続することが多い.
  • 第2報 サンゴ状結石における尿管拡張について
    山本 洋, 平石 攻治, 黒川 一男
    1982 年 73 巻 6 号 p. 759-766
    発行日: 1982/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎サンゴ状結石における尿管拡張について検討し次の結果を得た.
    1) 55例60尿管の尿管径は0.73±0.32cmで, 正常例42尿管0.53±0.17cmと比べ有意に拡張していた (p<0.01). 2) 感染合併48例53尿管の平均径は0.72±0.32cmで, 正常例42尿管と比べ有意に拡張していた (p<0.01). 非感染例でも0.77±0.31cmであり, 正常例と比べ差を認めた (p<0.01). しかし感染例, 非感染例では有意差を見出さなかつた. 3) 感染合併例における細菌別の尿管径では Proteus species, E. coli, Staphylococcus の間には差はなかつた. 4) 術前感染を有した31例35尿管の尿管径は術前0.73±0.30であつたが, 術後, 0.52±0.22cmと有意に縮少した (p<0.01). しかし術後感染の消失例では明らかに縮少したが (p<0.01), 感染持続例では有意差をみなかつた (p>0.05). 5) 術前, 術後とも非感染の4尿管では術前0.83±0.38cm, 術後0.54±0.22cmと著明に縮少した. 6) 術前感染を有し手術にて結石をとり残した群では術後感染の消失した8尿管は術前0.84±0.43cm, 術後0.48±0.19cmと著明に縮少したのに比べ (p<0.05), 感染の持続した7尿管では縮少傾向をみるのみであつた (p>0.05). 7) 単発性腎結石群では感染群, 非感染群, 正常群とも差はなく尿管拡張は認められなかつた.
    以上よりサンゴ状結石における尿管拡張は第1に尿路感染, 第2に感染と結石による pace maker への障害が主な原因であろうと考えられる.
  • 森 康行
    1982 年 73 巻 6 号 p. 767-781
    発行日: 1982/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    経直腸的超音波断層法を施行した症例のうち, 前立腺正常と判定された348例の前立腺の大きさおよび重量を計測した.
    前立腺重量の計測値は16~55歳, 16.0±2.8-18.0±2.6g, 56~65歳, 14.5±2.4-14.72.6g, 66~90歳10.4±.7-11.9±3.6gであつた.
    その推移をみると, 21~25歳の年齢区分で最高値に達し, 56歳以後減少をはじめ, この傾向は66歳を過ぎるとさらに進行することがわかつた.
  • 金重 哲三
    1982 年 73 巻 6 号 p. 782-808
    発行日: 1982/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    ヒト膀胱粘膜上皮および膀胱腫瘍細胞の表面微細構造を走査型電子顕微鏡を用い観察すると共に, bacteriophage T4を marker とする免疫学的標識法を用い ABH isoantigen の分布様式を解析した.
    正常膀胱粘膜表面には microridges, short microvilli の他 microplicae を認め, 特に三角部では microplicae を多く認めた. Isoantigen はすべての正常粘膜表面に密に分布した. 感染に伴ない表面微細構造は種々の変化をうけたが, isoantigen の分布には本質的変化は認めなかつた.
    ヒト膀胱腫瘍においては, 表面微細構造のみならず isoantigen の分布様式にも明らかな腫瘍性変化を認めた. 特に, pleomorphic microvilli の出現は腫瘍に特徴的であり surface marker として重要であつた. 表面微細構造, 特に microvilli の plemorphism および細胞間結合の相異により, 腫瘍細胞は以下の SEM cell type に分類し得た. Type 1: short microvilli と microridges の混在する細胞より成る型, type 2: least pleomorphic microvilli の一様に分布する細胞より成る型, type 3: moderately pleomorphic microvilli の一様に分布する細胞と smooth surface 細胞とが混在する型, type 4: highly plemorphic microvilli (HPMV) および, その偏在・集合を認める細胞より成る型, type 5: 明らかに細胞間結合は疎となり球形化した細胞より成る型. これら5つの SEM cell type と histological grade, ならびに isoantigen の有無との間に明らかな相関を認めた.
  • 第2報 検体中よりの白血球除去法および検体保存法について
    松浦 健, 秋山 隆弘, 栗田 孝
    1982 年 73 巻 6 号 p. 809-815
    発行日: 1982/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    Flow cytometry による膀胱腫瘍の剥離細胞診をより正確なものにするため, DNA histogram pattern に影響をおよぼす検体中の白血球除去方法につき検討を加えた. リンパ球分離に用いられている Ficoll-Paque 上に Triton X-100で処理した検体を重層し, 100g, 10分間遠心すると, 境界面は白血球核, cell debris で占められ, 管底はほぼ上皮細胞のみとなり, 白血球除去は可能であつた. 白血球除去前後の検体に Papanicolaou 染色を行い比較すると, 両者はほぼ一致し, 上記分離操作で悪性細胞が失なわれないことが確かめられた. さらに白血球除去前後の DNA histogram pattern を比較すると, 白血球除去後は diploid の cell population が減少し, polyploid ピークがはつきりしてくることが確認された. また, 検体の保存方法を検討したところ, 50% ethanol 固定で2週間の保存は, propidium iodide, acridine orange 両染色法に影響なく, DNA histogram の再現は良好であつた.
    以上, flow cytometry を行うに必要な検体の前処理につき基礎的検討を行つたが, これらを利用することにより, flow cytometry の膀胱腫瘍の剥離細胞診への応用は正確なものとなり, さらに広範な応用も可能であると考えられる.
  • 大塚 薫, 秋元 晋
    1982 年 73 巻 6 号 p. 816-820
    発行日: 1982/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    癌患者にはしばしぼ白血球増多症がみられ, 従来より leukemoid reaction としてしられておりその成因はよくわからなかつた. 今回我々は従来の leukemoid reaction の定義とは多少異なる好中球増多症を呈した腎細胞癌を経験し, 内外の分献を調べてみると, この症例はCSF産生腫瘍の可能性が強く疑われたので報告する.
    症例は62歳男子で血尿と右腰部痛を主訴として1980年5月8日初診, 即日入院となつた. 排泄性腎盂撮影, CT scan, 細胞診などより腎細胞癌と診断した. 胸部X線にて肺転移を認めた. 全身状態の悪化のために腎動脈撮影は施行できず, 癌化学療法を行う機会もないまま入院後24病日で悪液質と肺転移巣の増加による呼吸困難のため死亡した. 白血球数は最高111,000/mm3にも達し, 90%以上が好中球であり, 幼若細胞の末梢血中への出現はみられなかつた. 序々に血清Ca値も上昇した.
    発熱などの感染を疑わしめる臨床症状はなく, 骨X線, 骨スキャン, 骨髄穿刺などの検査でも骨転移は認められないため, 好中球増多は腫瘍より産生する液性因子が強く疑われ, CSF測定を試みたが, 残念ながらうまくいかなかつた. 本邦でCSF産生腫瘍の報告は5例みられるだけであり, いまだ泌尿器悪性腫瘍の報告はない.
feedback
Top