日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
74 巻, 3 号
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  • 第2報 尿路悪性腫瘍患者における尿中 ferritin の検討
    東條 俊司, 大橋 輝久, 広中 孝作, 松村 陽右, 大森 弘之
    1983 年 74 巻 3 号 p. 293-298
    発行日: 1983年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎盂尿管癌6例, 膀胱癌36例, 前立腺癌14例および尿路悪性腫瘍術後例49例において尿中 ferritin, 尿細胞診, 尿中FDP, 尿中CEAを検討し, 以下の如き結果を得た.
    1) poor grade 群および advanced stage 例における尿中 ferritin 値は well 群, early stage 例に比し有意に高値を示した.
    2) 尿中 ferritin は尿細胞診, 尿中FDP, 尿中CEAに比し陽性率が低く, tumor marker としては適していなかつた.
    3) 前立腺癌患者において血中 ferritin と尿中 ferritin の間に有意の相関はみられなかつた. また放射線療法による血中 ferritin の上昇はみられなかつたが, 尿中 ferritin は全例著明な上昇を認めた. この事により尿中 ferritin の source は腫瘍よりの分泌および放射線による組織破壊による事が考えられた.
    4) 腎盂尿管癌のほとんどの症例に尿中 ferritin の著明な上昇を認め, この事より患側腎尿細管傷害も尿中 ferritin 増加に何らかの役割を果たしている事が示唆された.
  • (第7報) 微小発破による膀胱の障害度
    渡辺 康介
    1983 年 74 巻 3 号 p. 299-310
    発行日: 1983年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    微小発破を膀胱結石の破砕に応用するにあたり, 最も問題となる膀胱の副損傷について各種条件下において検討を加え, 安全に膀胱内で発破を行うための条件を明らかにした.
    空気, 水, ゼリーの各媒質中において, 摘出成犬膀胱片に対し種々の距離より5mgアジ化鉛爆薬の微小発破を行い, 膀胱の障害度と若干の膀胱片中の鉛の量を調べ, 以下の結果をえた.
    1) 空中よりも水中やゼリー中で発破を行つた方が, 障害の程度もはるかに軽く, 水中では1.0cm, ゼリー中では0.75cm, 爆薬室を膀胱壁より離せば全く障害はみられなかつた. 2) 膀胱片に沈着した鉛の量は, 膀胱の障害度とよく相関していた. 3) 微小発破による組織障害の要因としては, 空中では衝撃波, 生成ガスおよび高熱が, 水中およびゼリー中では主に生成ガスが考えられた.
    これらの結果より, 微小発破を膀胱内で行うに際しては, 媒質としては水あるいはゼリーを用い, さらに爆薬室を膀胱粘膜より, 水中では1.0cm以上, ゼリー中では0.75cm以上離すことが, 生体の安全を確保するためり必須の条件であると考えられた.
  • 丸岡 正幸
    1983 年 74 巻 3 号 p. 311-320
    発行日: 1983年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    前立腺癌の血清検査として前立腺性酸性フォスファターゼ (以下PAP) の測定が行なわれている. 最近, radioimmunoassay (RIA) による測定法が開発されたので, 酵素法, counterimmunoelectrophoresis (CIEP) 法との間で, PAPの測定を行ない比較検討した. RIA法は基礎検討を施行し現在測定可能な4キットの比較も行なつた. 対象は, 前立腺癌120例 (stage A 4例, B 7例, C26例, D83例) のべ624検体で, 対照は前立腺癌以外の悪性腫瘍30例を含む234例, のべ265検体であつた. 異常値は, 酵素法では stage D未治療者で出現し, 対照群は58例中2例, CIEP法は stage C, 対照群は11例中2例, RIA法は stage B, 対照群は234例中4例であつた. また, RIA法は基礎検討の結果臨床使用は全く問題なく, 酵素法との相関は4キットともr=0.837から0.999と良好であつた. 治療効果は, 組織型 ((1) 高分化型腺癌, (2) 中等度分化型, (3) 低分化型) を中心に観察したが, 低分化型程PAPは高値を示し, stage D未治療群で, (1) と (3) はp<0.05, (1) と (2), (2) と (3) はp<0.10で有意差がみられ, RIA法により, 酵素法では出来ない分化度判定の可能性も示唆された. また治療開始4週の時点でRIA法によるPAPの低下率は, 高分化型程大きく平均値±標準誤差は (1) (2) (3) の順に, 90.0±2.68%, 82.9±3.60, 75.6±2.85となり, (1) と (3) はp<0.05で有意差があり, PAPの低下率は分化度により差が生じ, 予後の指標ともなると考えた.
  • 片岡 喜代徳, 永井 信夫, 松浦 健, 郡 健二郎, 秋山 隆弘, 八竹 直, 栗田 孝
    1983 年 74 巻 3 号 p. 321-329
    発行日: 1983年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    膀胱腫瘍を中心に尿路性器悪性腫瘍患者の尿中および血漿 cyclic nucleotide (cyclic AMP, cyclic GMP) と, 膀胱腫瘍組織内の cyclic AMP濃度を測定した. 1) 尿路性器悪性腫瘍患者の cyclic nucleotide の検討にあたつては, これを膀胱腫瘍患者と膀胱腫瘍を除くその他の尿路性器悪性腫瘍患者に分けて行つたが, 尿中および血漿 cyclic AMP, cyclic GMPともに対照群に比べて差異を認めなかつた. 2) しかし, 膀胱腫瘍患者の high stage 群は low stage 群に比べて尿中 cyclic AMP, cyclic GMP ともに有意に低下しており, 腫瘍が進行して初めて尿中 cyclic nucleotide が低下してくるものと思われた. high grade 群, 10w grade 群の2群間で差異はなく, また, 血漿 cyclic nucleotide については, stage 別 grade 別のいずれの2群間でも差異を認めなかつた. 3) 尿路性器悪性腫瘍患者の治療後の尿中 cyclic AMP, cyclic GMPは治療前に比べて有意に上昇しており, 尿中 cyclic nucleotide は患者の予後を知る一つの指標となるものと思われた. 4) 腫瘍を伴う膀胱において, 腫瘍組織と非腫瘍組織の cyclic AMP濃度を測定したが, 両者ともに対照群の正常膀胱粘膜に比べて低値を示した. このことは, 非腫瘍組織の代謝状態が腫瘍に近いことを示しているとも考えられ, 膀胱腫瘍が多中心性に発生する腫瘍であることを考えれば, 興味深い結果と思われた.
  • 保存的治療および逆流防止術の治療限界
    国方 聖司, 郡 健二郎, 秋山 隆弘, 八竹 直, 栗田 孝
    1983 年 74 巻 3 号 p. 330-338
    発行日: 1983年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    当院開院より1981年8月までの6年4ヵ月間に, 当科にて治療した primary VUR 177例の腎機能推移を, retrospective に検討したので報告する. 腎機能検査は, IVPと腎 radioisotope 検査 (131I-Hippuran renogram, 99mTc-DTPA dynamic study) を施行した. IVP上, 正常の腎機能と思われる軽度腎機能低下を示す例が, 比較的高率に認められた. これらの症例は, 全例保存的治療中あるいは術前に保存的治療が試みられた症例であり, low grade VUR症例でも, 保存的治療では腎機能低下を防止できない症例があると考えられた. また逆流防止術々後の腎機能を検討するに, 術前に 131I-Hippuran renogram のT1/2が18分以上の逆流腎は, 術後の腎機能回復がみられなかつた. これを逆流の grade から検討するに, grade I, II の高度腎機能障害例および grade IV 症例は, 逆流防止術をおこなつても腎機能回復ができず, grade III は腎機能を回復する症例と回復しない症例の境界領域である. VURの治療には, このように厳重な腎機能推移の観察が必要と考えられ, これにはIVPと腎 radioisotope 検査の併用が極めて有効であつた.
  • 特に腫瘍組織を中心に
    荒川 創一
    1983 年 74 巻 3 号 p. 339-348
    発行日: 1983年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    Human chorionic gonadotropin (hCG) のヒト各種組内織濃度を測定した. 対象とした組織は泌尿生殖器系腫瘍組織, 正常組織および良性疾患組織である. 手術または剖検により得た109例の検体 (組織) のうち主たるものは睾丸腫瘍, 正常睾丸, 腎腺癌, 正常腎, 前立腺肥大症腺腫 (BPH), 膀胱腫瘍等である. またこれらの対象患者を中心に末梢および精巣静脈血中hCGをも測定した. hCG測定は抗hCG-β抗血清を用い, 二抗体法 Radioimmunoassay により免疫学的に特異的に行なつた. 組織内hCG陽性率は, 正常睾丸および Germ cell 由来の睾丸腫瘍でともに100%と高く, その平均濃度は Nonseminomatous germ cell tumor (NSGT), Seminoma, 正常睾丸の順で前者に高い値であつた. 一方, 抗男性ホルモン療法中の前立腺癌患者の睾丸では68.8%にhCG陽性をみた. また, 正常腎で66.7%, 腎腺癌で41.7%, 膀胱腫瘍で85.7%, BPHで33.3%, 正常副睾丸で60%にhCG陽性を認めた. 末梢血中 hCG は Seminoma で58.8%, NSGTで60%に陽性をみた. 精巣静脈血中hCGは Seminoma で91.7%, NSGTで50%に陽性であつたが, 正常睾丸および前立腺癌患者睾丸ではすべて陰性であつた. 末梢血中hCG陽性の睾瘍丸腫瘍では組織中, 精巣静脈血中および末梢静脈血中hCG濃度が前者に高い勾配をもつて相関し, 腫瘍組織からのhCG分泌が示唆された.
  • 第2報 化学療法による術後転移の防止について
    沼沢 和夫, 柿崎 弘, 渡辺 博幸, 高見沢 昭彦, 政木 貴則, 平野 和彦, 平野 順治, 久保田 洋子, 菅野 理, 斉藤 雅昭, ...
    1983 年 74 巻 3 号 p. 349-356
    発行日: 1983年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    膀胱癌患者の膀胱全摘除術および膀胱部分切除術術後の転移防止を目的として, 術前 one shot 動注と術後経静脈性全身投与による化学療法を施行した.
    術前 one shot 動注は, 術前の骨盤動脈造影の際に内腸骨動脈より Mitomycin C 12mg, Endoxan 300mg, Thiotepa 18mg, 5FU 500mgを4剤同時に one shot にて1回だけ動注を行なつた. 術後化学療法はFT2074,000~8,000mg, Cylocide 200mg, Toyomycin 20mgあるいは Toyomycin にかえて Neocarzinostatin 20,000単位を多剤併用あるいはFT207単独投与にて点滴静注により5週間で投与した.
    術後1年以上経過した31例について術後転移の頻度をみると, 31例中11例 (35.5%) に転移を認めたが, 11例中10例は組織所見で癌細胞の脈管内侵襲所見が陽性であつた.
    すなわち脈管内侵襲所見は31例中15例 (48.4%) に認められ, 15例中10例 (66.7%) に転移がみられた. しかし化学療法と転移との関係をみると, 15例中12例の化学療法施行例では7例 (53.8%) にみられたが, 化学療法非施行例3例では全例に転移がみられた.
    また術前の one shot 動注施行では, 術後転移の発生頻度は50%であつた.
    すなわち, 膀胱癌の術後転移防止の為に術前 one shot 動注と術後全身投与による化学療法が有効であつた.
  • 戸塚 一彦, 西村 泰司, 秋元 成太, 近喰 利光, 小川 秀弥
    1983 年 74 巻 3 号 p. 357-359
    発行日: 1983年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    過去5年間に自然排出された上部尿路結石108個 (患者108例) にX線分析を施行し, 純粋な蓚酸カルシウム結石-65個, 蓚酸カルシウムと燐酸カルシウムの混合結石 (以下, 混合結石)-31個, 燐酸カルシウム結石-6個, その他-6個を認めた.
    次に, 性・年齢・構成成分について, 高崎が報告した上部尿路結石632個 (患者601例) と比較した. その結果, (1)自排石は男子に多い (p<0.01), (2)自排石は30歳以上に多い (p<0.01), (3)自排石には純粋な蓚酸カルシウム結石が多く (p<0.01), 燐酸アンモニウムマグネシウム結石と混合結石は少ない (ともに, p<0.01) ことを認めた.
    次に, 純粋な蓚酸カルシウム結石と混合結石について重量と大きさを比べ, 前者は軽く (p<0.05), 小さい (p<0.01) ことを認めた.
    以上より, 自排石の過半数を占める純粋な蓚酸カルシウム結石は, その成長が緩徐であるため, 小さく, 自然排出されやすいと考えられる.
  • 高塚 慶次, 宮本 慎一, 田宮 高宏, 後藤 康之
    1983 年 74 巻 3 号 p. 360-367
    発行日: 1983年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    幼小児の膀胱内圧測定は協調性に乏しいため, しばしばその実施が難かしいことにであう. そのような場合, 麻酔下および鎮痛剤投与下での内圧測定が考えられる. しかしながら, 麻酔薬や鎮痛剤が内圧所見に影響を与える可能性がある. この点を解明するため, フローセン, 笑気, ジアゼパン, ペンタゾシンの小児の膀胱内圧曲線への影響をしらべた.
    われわれは覚醒時と麻酔下 (フローセン, 笑気) で小児17例に膀胱内圧測定を実施した. ジアゼパン, ペンタゾシン投与前と投与後にて, 小児24例に内圧測定をおこなつた.
    結果は次の通りであつた.
    (1) フローセン麻酔は無抑制性膀胱収縮を消失させ, 膀胱容量を増大させた.
    (2) 笑気麻酔は無抑性膀胱収縮を抑制し, 膀胱容量を増加させた.
    (3) ジアゼパンは不安定膀胱8例のうち, 1例の無抑制性収縮を抑制した.
    (4) ペンタゾシンは無抑制性膀胱収縮に影響を与えなかつた.
  • 辻村 玄弘, 平石 攻治
    1983 年 74 巻 3 号 p. 368-378
    発行日: 1983年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    正常者の尿中カルシウム (以下Ca) 排泄量を基準とし, 尿中Ca排泄量が男子250mg/day, 女子200mg/day以上のものを高Ca尿症とした. 尿路結石症の中から特発性高Ca尿症を選びだし, 同じ尿路結石症で尿中Ca排泄の正常なものを対照として種々の検査成績の比較検討を行なつた. その結果, いわゆるCa結石症男子123例, 女子72例中, 男子24例 (19.5%), 女子21例 (29.2%) の計45例 (23.1%) の特発性高Ca尿症を見出した.
    特発性高Ca尿症群と対照群との比較では, 普通食投与特の検査で血清尿酸値が男女とも特発性高Ca尿症群において有意の低値を示し, 尿中Ca, マグネシウム (以下Mg) 排泄は高値を示した. Ca制限食にすると, 尿中Ca排泄は両者とも著明な減少を認め, また普通食で低値を示していた特発性高Ca尿症群の血清尿酸値が上昇し, 両群間で有意差を認めなくなつた. また経静脈性Ca負荷試験では血清Ca, リン (以下P) 値および尿中P排泄量の減少については両群間に有意差は認められなかつた.
    この特発性高Ca尿症に対しては, 尿路結石再発予防として trichlormethiazide の投与を試みた. 本剤の使用にて特に重篤な副作用をみることもなく尿中Ca排泄量の効果的な減少を認めた. また, 同じ特発性高Ca尿症で経過観察のみ行なつている群と比較すると明らかに結石の再発が少なく, 特発性高Ca尿症に対する結石再発予防として本剤の投与が非常に有効と考えられた.
  • 藤岡 知昭
    1983 年 74 巻 3 号 p. 379-383
    発行日: 1983年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    膀胱癌症例においてその進行過程を予測することは治療法を選択する上で重要である. 近年 Specific Red Cell Adherence (SRCA) 試験によるABO (H) 抗原の有無と膀胱癌の予後との関係が注目を浴びている. しかしSRCA試験は感度の上でO抗原の検索に問題があり, また組織に吸着した赤血球が組織構造を被覆するために同一標本における病理組織所見の検討が困難などである. 今回著者らはPAP法により23例の膀胱癌組織の血液型抗原を検索した. PAP法はSRCA試験と比較し, より鋭敏な反応であり, またその施行は容易である. さらに同一組織薄切標本上でPAP反応と病理学的検討を同時に可能とせしめる. しかもPAP法によれば微細な段階での抗原の存在を知りうる. 本法はABO抗原の検査としてよりふさわしいものと考える.
  • 第一報: continence に必要な尿道長について
    中山 朝行, 安田 耕作, 香村 衡一, 山城 豊, 浜 年樹, 島崎 淳, 服部 孝道
    1983 年 74 巻 3 号 p. 384-389
    発行日: 1983年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    尿道内括約筋の continence mechanism を探究する目的で, 雑種雌成犬に, microsurgery を施行し, 近位尿道の一定の長さを intact とし, それより遠位の尿道粘膜及び粘膜下組織を残し外層の平滑筋及び横紋筋を切除した所謂内括約筋犬を作成した.
    平常動作時の排尿状態は, 機能的尿道が0cmでも continence は保たれた. クロラロース麻酔下でX線テレビ下に膀胱内圧を同時に測定したところ, 機能的尿道長が0.5cm以上あれば continence は保たれており, 排尿が起こる膀胱容量よりやや少い膀胱容量でα-blocker の投与を行つたが continence は保たれていた. 機能的尿道をつけたまま, 膀胱を摘出すると, 内括約筋0.5cm犬は incontinence であるが, 内括約筋2.5cm犬では continence を保つた.
    以上より, 近位尿道の continence mechanism には非神経性の passive mechanism が重要な役割をはたしている事が示唆された.
  • II 進行前立腺癌に対するマイトマイシンCマイクロカプセルの動脈内注入療法
    根本 良介, 森 久, 阿部 良悦, 加藤 哲郎, 原田 昌興, 石田 晃二, 千葉 隆一, 新藤 雅章, 加藤 弘彰
    1983 年 74 巻 3 号 p. 390-400
    発行日: 1983年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    進行前立腺癌8例にマイトマイシンCマイクロカプセル (MMC-m. c.) の選択的動脈内注入療法を施行した. このうち6例は再然癌, 1例は心不全合併例, 1例は多発性骨髄腫の合併例であつた. MMC-m. c. の注入は延17回行ない, MMCの一人あたり平均総投与量は20.9mgであつた. 腫瘍縮小効果は50%に認められ, 排尿困難や血尿および会陰部痛に対して有効であつた. Karnofsky の総合判定では1-A以上75%となり, 再燃癌を主とする進行前立腺癌に対する治療成績としては満足すべき結果であつた. 副作用としては25%に造血障害を認め, このうち1例に治療を必要とした. 局所の皮膚障害は63%に認められたが腫瘍非支配動脈の塞栓術を前処置として施行することにより防止可能であつた.
  • 黒田 昌男, 古武 敏彦, 宇佐美 道之, 清原 久和, 三木 恒治, 吉田 光良, 細木 茂, 石黒 信吾
    1983 年 74 巻 3 号 p. 401-408
    発行日: 1983年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    前立腺被膜下摘除術を行なつた25例について, 摘出標本の連続平行割面を作成して, 潜在癌の検索およびその病巣の大きさ, 組織学的悪性度, 摘出標本の辺縁への癌の浸潤の有無について検討した. 25例のうち5例で潜在癌が発見された. 組織学的悪性度はG1, 3例, G2, 1例, G3, 1例であつた. 潜在癌の認められた5例の平均年齢は78.6歳であり, 潜在癌を認めなかつた20例の平均年齢69.7歳に比べて, 有意に高齢であつた. 病巣の大きさは, 5例中2例はきわめて小範囲であつた. 他の3例はかなり大きな病巣を有していた. 前立腺癌に対する治療は, 3例は治療を行なわず経過観察のみで, 1例は抗男性ホルモン療法を行ない, 他の1例は抗男性ホルモン療法と放射線療法を行なつた.
  • 丸岡 正幸, 安藤 研, 野積 邦義, 伊藤 晴夫, 島崎 淳, 松嵜 理, 森田 新六, 恒元 博
    1983 年 74 巻 3 号 p. 409-417
    発行日: 1983年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    千葉大学医学部泌尿器科を受診した未治療前立腺癌23例 (stage A 2例, B3例, C14例, D4例) と内分泌療法無効3例 (stage D) に速中性子線療法を施行し, その効果を判定した. 速中性子線単独は15例, リニアックX線との混合照射は11例であり, 線量は time dose and fractionation (TDF) の概念を導入し, TDF 98から109は21例, 110から124は5例であつた. 照射野は原発巣のみ11例, 小骨盤腔と原発巣10例, 小骨盤腔のみ5例であつた. また, 照射後6カ月以内の短期効果は, 前立腺局所所見の改善は26例中24例 (92%), 排尿障害改善は測定した8例全例, 前立腺性酸フォスファターゼ値の改善は8例中7例 (88%), 生検は大星の分類に従うと9例中 effect I 1例, IIA 3例, IIB 1例, III 4例と良好な成績であつた. 長期照射効果は, 再燃2例, 転移5例, 死亡7例で観察すると, 転移死亡に共通な1例を除くと, 全例初期照射例でTDF 100から101, 照射野は原発巣に限局し, 病理組織は, 3例が中等度分化型腺癌, 残りは全例低分化型であり, 高分化型は1例もなかつた. 実測3年生存率は stage Cは, 内分泌療法群を上回るが, stage DはD群全体は上回るが, 内分泌療法群より低値であつた. 次に副作用は, 6カ月以上持続した肉眼的血尿1例と尿道狭窄2例の他は, 治療上問題にならなかつた. 従つて, 速中性子線療法は stage C以下には有効な治療法であるが, TDFの増大, 照射野の拡大が必要で, 低分化型腺癌には追加治療の必要がある.
  • 古畑 哲彦, 中尾 日出男, 仙賀 裕, 小川 勝明, 西村 隆一, 高井 修道
    1983 年 74 巻 3 号 p. 418-426
    発行日: 1983年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    睾丸腫瘍中 seminoma は予後は良い. しかし少数例ではあるが, 予後の悪い例, 再発例がある. 全 seminoma 例を完治するためには, 特殊例, 失敗例の分析が必要である. われわれの経験した89例の seminoma 例につき, 臨床的分析を行なつた.
    Seminoma 全体の5年生存率は92.7%, うち stage I 94.3%, stage II 85.2%であつた. 一方 anaplastic seminoma 57.8%と悪かつた.
    Stage I例の3例の死亡中, 2例は anaplastic seminoma 例であり, 他の1例は他疾患での死亡だつた. Stage II例では, N1例の6例中1例と, N3例の6例中1例が死亡した.
    Anaplastic seminoma は予後が悪いので, 放射線治療の他に化学療法の併用が必要である. Stage 決めの失敗, 照射野決定の失敗, 照射方法の誤りなどには注意を要す. 巨大後腹膜リンパ節転移腫瘍には化学療法の併用が必要である.
  • 安富祖 久明, 福井 巌, 山内 昭正, 大島 博幸, 横川 正之, 畑野 良侍
    1983 年 74 巻 3 号 p. 427-435
    発行日: 1983年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    本症例は腫瘍の存在部位が右側であり, 側副血行路が十分に完成され, また転移が臨床的に認められなかつたことにより右腎摘術および腫瘍血栓を含めた下大静脈切除術によつて根治性が期待された.
    下大静脈内腫瘍血栓の診断においては下大静脈撮影の重要性は一般に認められているが, CT, 超音波検査においても同様に診断的有用性が認められた. さらに, 超音波検査では腫瘍血栓の頭側端をも診断できた.
    根治的拡大手術を施行したところ, 術前の toxic sign および細胞性免疫能が著明に改善された.
    症例の呈示を行なうと共に腎細胞癌の下大静脈腫瘍血栓合併例における, (1) 頻度・性別・原発腫瘍の患側 (2) 症状, (3) 診断, (4) 治療および予後について文献的考察を加え報告する.
  • 高橋 茂喜, 矢崎 恒忠, 小川 由英, 加納 勝利, 北川 龍一
    1983 年 74 巻 3 号 p. 436-445
    発行日: 1983年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    電顕学的には多数の糸粒体を細胞質にもち, 光顕的には大きな好酸性顆粒状細胞質をもつ oncocyte よりなる腎 oncocytoma は, 従来希有な疾患とされてきた. 今回われわれは本邦3例目と思われる腎 oncocytoma の1例を経験したので, その病理組織, 画像診断, 臨床像を中心として報告した.
    症例は41歳男性, 他院で高血圧, 蛋白尿を指摘され, 精査目的で当院内科へ入院した. IVPで右腎腫瘍が疑われ, 精査で右腎腫瘍と診断され腎摘出術が施行された. 摘出腫瘍は8.5×5.0cm, 境界は鮮明で割面は一様に茶褐色を呈し, 壊死・出血などの肉眼所見はなかつた. 腫瘍の光顕的, 電顕的所見は従来報告されてきた oncocytoma の所見に一致していた.
    電顕用準超薄切片の toluidine blue 染色では, 明るい胞体をもつ細胞と暗い胞体をもつ細胞の2種が区別された. 電顕学的には前者は従来いわれてきた oncocyte と同一所見を呈していたが, 後者は前者より多数の糸粒体をもち, 核濃縮像もみられ, 前者の変性した像と考えられる.
    文献的に集計し得た自験例を含む61例の臨床像を解析したが, 生存の確認された最長のものは13年であり, 予後の良好な腫瘍と考えられる.
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