千葉大学医学部泌尿器科を受診した未治療前立腺癌23例 (stage A 2例, B3例, C14例, D4例) と内分泌療法無効3例 (stage D) に速中性子線療法を施行し, その効果を判定した. 速中性子線単独は15例, リニアックX線との混合照射は11例であり, 線量は time dose and fractionation (TDF) の概念を導入し, TDF 98から109は21例, 110から124は5例であつた. 照射野は原発巣のみ11例, 小骨盤腔と原発巣10例, 小骨盤腔のみ5例であつた. また, 照射後6カ月以内の短期効果は, 前立腺局所所見の改善は26例中24例 (92%), 排尿障害改善は測定した8例全例, 前立腺性酸フォスファターゼ値の改善は8例中7例 (88%), 生検は大星の分類に従うと9例中 effect I 1例, IIA 3例, IIB 1例, III 4例と良好な成績であつた. 長期照射効果は, 再燃2例, 転移5例, 死亡7例で観察すると, 転移死亡に共通な1例を除くと, 全例初期照射例でTDF 100から101, 照射野は原発巣に限局し, 病理組織は, 3例が中等度分化型腺癌, 残りは全例低分化型であり, 高分化型は1例もなかつた. 実測3年生存率は stage Cは, 内分泌療法群を上回るが, stage DはD群全体は上回るが, 内分泌療法群より低値であつた. 次に副作用は, 6カ月以上持続した肉眼的血尿1例と尿道狭窄2例の他は, 治療上問題にならなかつた. 従つて, 速中性子線療法は stage C以下には有効な治療法であるが, TDFの増大, 照射野の拡大が必要で, 低分化型腺癌には追加治療の必要がある.
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