日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
74 巻, 6 号
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
  • 小林 峰生
    1983 年 74 巻 6 号 p. 877-886
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    Pressure Flow Study は上部尿路拡張疾患での閉塞の存在を知る動的な臨床検査法である. 著者は上部尿路拡張を有する23症例25腎盂尿管ユニットに対し延べ35回 Pressure Flow Study を施行した. 方法は腎盂より造影剤混入生食水を10ml/minの速度で灌流しつつ, 腎盂内圧及び膀胱内圧を同時測定し, 相対腎盂内圧 (relative pressure) の値を検討した.
    1. 25ユニット中, 相対腎盂内圧が15cmH2O以上は17ユニットあった. この内15ユニットは外科的侵襲を加えた. 15cm H2O末満の8ユニット中, 5ユニットは保存的に経過観察中であり, 3ユニットは手術を施行した.
    2. 10ユニットで手術前後に本検査をおこない, 術後の相対腎盂内圧は2ユニットを除きすべて正常範囲に下降した.
    3. 臨床的閉塞評価と Pressure Flow Study の結果を比較した. 臨床的に閉塞と診断された19ユニット中14ユニットは Pressure Flow Study においても閉塞を示した. 臨床的に閉塞の疑われた症例 (equivocal case) 6ユニット中 Pressure Flow Study で閉塞と診断されたのは3ユニットであった.
    4. Pressure Flow Study の結果は上部尿路拡張の程度, 尿路壁の粘弾性, 尿管蠕動, 膀胱充満, 体位, 穿刺針及び灌流路の径など多くの要因により影響をうける. このため閉塞を正しく診断するためには, 内圧変化のみならず尿路のX線透視を併用して形態学的変化にも注意を払うことが肝要である.
    5. 25ユニットに施行した Pressure Flow Study の結果から, 相対腎盂内圧が15cmH2O以上を示す症例は尿路通過障害を有する閉塞疾患と診断可能であると結論する.
  • 小林 峰生
    1983 年 74 巻 6 号 p. 887-896
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    排泄性腎盂造影または逆行性腎盂造影により上部尿路の拡張を認め, 尿路閉塞の存在が疑われた19症例, 延べ28腎盂尿管ユニット, および正常腎12ユニットに対し, 従来のレノグラムと利尿負荷レノグラム (diuresis renogram) を施行し次の結果を得た.
    1. 正常腎12ユニットに対し, 無処置レノグラムとフロセマイドによる利尿負荷レノグラムをおこない比較した. 利尿負荷によりパラメーター (Tmax, T1/2, C/B比) のばらつきは小さくなり, 尿量の増加はレノグラムの標準化に有効であつた.
    2. 利尿負荷レノグラムにより上部尿路拡張疾患28ユニットを, 正常型, 非閉塞性拡張型, 閉塞型に分類すると, 非閉塞性拡張型は11ユニット (39%) にみられた. すなわち形態学的な上部尿路拡張は必ずしも閉塞を示すものではないことが判明した.
    3. 利尿負荷レノグラムから閉塞の有無を区別する臨床的パラメーターは. C/B比が最も有用であつた. すなわちピークから10分後のカウント数Cをピーク時カウント数Bで除したC/B比の値0.6を境界として, 閉塞と非閉塞とに分けることが可能である.
    4. 利尿負荷レノグラムによる閉塞診断の結果は, X線形態学的検査や Pressure Flow Study などから導いた臨床的診断結果とよく一致した. しかし6ユニット (21%) の偽陽性症例を認めた. 偽陽性となつた原因は腎機能障害による不充分な尿量増加と, 著明な尿路拡張によるアイソトープの停滞が疑われた.
    5. 利尿負荷レノグラムは侵襲が少なく, 手技が簡単で, くり返し施行できる. 又偽陽性は認めるが今回の検討は偽陰性例はなく, 上部尿路拡張疾患における閉塞診断のスクリーニング検査法として最適である.
  • T24細胞及び253J細胞に対する Estradiol-17β の効果
    吉本 純
    1983 年 74 巻 6 号 p. 897-906
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    人膀胱癌培養細胞株T24, 253Jに対する性ホルモンの感受性を colony formation method により検討, estradiol-17β (E2) に特異的な殺細胞効果が認められたことは報告した. 本研究においては, 両細胞の生物学的および形態学的性状に及ばすE2の効果を検討すると共に, E2の特異的殺細胞機構の解析を行つた. control としては, 人乳癌培養細胞HBC4, 人子宮頚癌培養細胞OGを用いた. 結果は以下に述べるごとくである.
    1. T24ならびに253J細胞の growth は, 5μg/ml以上のE2により抑制された.
    2. T24ならびに253J細胞の doubling time は, E2の濃度が高まるにつれて延長した.
    3. T24ならびに253J細胞の mitotic index は, E2の濃度が高まるにつれて低下した.
    4. T24ならびに253J細胞の形態学的性状は, 5μg/ml以上の濃度のE2を6時間以上添加した場合に影響を受けた.
    5. colony formation method において, E2はT24, 253JならびにHBC 4細胞に対し高度の殺細胞効果を示し, progesierone はHBC 4細胞に対し高度の殺細胞効果を示した.
    6. 4細胞株の Plating efficinecy に及ぼすE2の効果と3H-E2の labeling index との間に相関があることが認められた.
    7. E2はT24細胞のS期に特異的な殺細胞効果を示した.
  • 山本 雅憲, 三宅 弘治, 三矢 英輔
    1983 年 74 巻 6 号 p. 907-929
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1951年, Roosen-Runge によつて, 初めてラット精細管の収縮運動が観察された. しかし, その後の多数の研究にも拘らず, 精細管の収縮運動の調節機序は, 長い間不明であつた. 今回我々は, 微小穿刺法を用い, 精細管内へ色素を注入し, 精細管壁の変化を撮影して, その蠕動運動を証明した. さらに, サーボヌルテクニックによる, 微小内圧測定装置を用い, 精細管管内圧を測定し, 各種自律神経剤を投与してその反応を調べた. ラット精細管は, アセチルコリンあるいはカテコールアミンの投与に対し, 著明な内圧上昇を伴う収縮運動を示した. 次に, ラットを麻酔後, 精巣を露出し, 精巣被膜を完全に除去した後に, 精索血管周囲の神経に, Ag-AgCl ring状の双極電極を置き, 50Hz, 3Vの交流電流で5秒間刺激することにより, ラット精細管は, 著明な収縮運動を示した. 自律神経剤に対する反応及び, 各種遮断剤存在下での電気刺激に対する反応から, ラット精細管壁筋様細胞には, アドレナリン性α・β受容体とムスカリン様受容体が存在し, その収縮運動は, アドレナリン作動性線維によつて調節されていることが明らかとなつた.
    次に我々は, 組織学的に筋様細胞への神経支配の証明を試みた. まず, 真性粘菌の変形体から単離したアクチンで免疫した抗アクチン抗体を用い, HRP標識酵素抗体間接法により, 筋様細胞の染色を行つた. 次いで, Gros-Schultze 神経渡銀法を行い, 壁内を走る神経線維と, 筋様細胞との連絡が示された. さらに, カテコールアミンの前駆体投与後の電子顕微鏡的検索で, 筋様細胞を支配する, アドレナリン性神経終末が認められた.
  • EPTFE (expanded polytetrafluoroethylene) 材質を用いた実験的研究
    三輪 誠
    1983 年 74 巻 6 号 p. 930-944
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    人工血管として現在使用され良好な開存率をあげている Expanded Polytetrafluoroethylene (EPTFE) について, 人工尿管としての応用の可能性を実験的に検討した. EPTFEは fibril length 30μのものと60μのもの2種を用いた.
    予備実験としてEPTFE薄板を雑種成犬胸部皮下に埋没して経日的に摘出し病理組織学的変化を観察した. まずEPTFE網孔内に好中球, リンパ球などの炎症性細胞の侵入がみられ, ついで線維芽細胞の増生, 網孔内侵入とともに炎症性細胞の消失, 線維芽細胞の線維細胞化という一連の病理組織学的機転が判明した.
    雑種成犬20頭における尿管とEPTFEを置換させておこなつた人工尿管の実験でも予備実験と同様の病理組織学的機転を示し, さらにあきらかな異物反応がみられないこと, 結石が形成されないこと, 尿漏れ, 変形がないこと, 特に30μ群では管腔機造が保持されることが判明した.
    結論としてEPTFEは人工尿管材質として適しており, EPTFE人工尿管は従来の硬質人工尿管に比し尿路組織適合性があり, 臨床応用の可能性が高いことがあきらかとなつた.
  • 第4報 免疫化学的測定法とラジオイムノアッセイによる比較検討
    酒井 俊助, 加藤 直樹, 石山 俊次, 出口 隆, 藤本 佳則, 村中 幸二, 説田 修, 栗山 学, 河田 幸道, 西浦 常雄, 沢田 ...
    1983 年 74 巻 6 号 p. 945-955
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    前立腺癌患者16例, 前立腺肥大症患者18例, 他臓器癌患者11例および正常人男女性7例について, immunochemical method による prostatic acid phosphatase (PAPase) 活性, 従来の酵素活性測定法およびRIAによるPAPaseについて比較検討した. 正常人男女性および他臓器癌患者においては, いずれの測定法でも false positive の症例は認めず, 前立腺肥大患者においてはRIAによるPAPaseでは18例中2例に, 全酵素活性値および immunochemical method によるPAPase活性値の全酵素活性値に対する割合では, それぞれ18例中1例に false positive の症例を認めたが, L-tartrate 阻害および immuno-chemical method によるPAPase活性値では1例も認めなかつた. 前立腺癌患者における stage T1 T2群の陽性症例は, 全酵素活性値および Ltartrate 阻害によるPAPase活性値では1例も認められなかつたが, immunochemical method によるPAPase活性値では7例中2例, immunochemical method によるPAPase活性値の全酵素活性値に対する割合では7例中3例, RIAにおいては7例中1例に陽性を認めた. 以上の結果より, immunochemical method によるPAPase活性はRIAに劣らず前立腺癌の診断に有用と考えられる.
  • 第2編 臨床編, 近位尿道3時9時温存切除法, 及び全周切除法の排尿効率改善の比較検討
    浜 年樹, 安田 耕作, 中山 朝行, 香村 衡一, 山城 豊, 村山 直人, 島崎 淳
    1983 年 74 巻 6 号 p. 956-960
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    男子膀胱頚部硬化症患者に対する経尿道的膀胱頚部切除法として, 近位尿道の尿排出機構を温存する目的で近位尿道の3時9時温存切除法を8例に施行した. 排尿効率の改善を尿流測定及び残尿率で検討し, 全周切除法11例の結果と比較したところ, 平均尿流率, 最大尿流量率で5%の有意水準で3時9時温存術式が優れていた. 残尿率の改善でも3時9時温存術式が優れている傾向であつた. 経尿道的切除に際して排尿機構の破壊を防ぐ事の重要性を強調した.
  • 森田 隆, 西沢 理, 松尾 重樹, 守屋 至, 能登 宏光, 大矢 晃, 土田 正義
    1983 年 74 巻 6 号 p. 961-966
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    排尿時には膀胱利尿筋と外尿道括約筋は密接な協調作用をしている. そこで, 膀胱利尿筋を支配している骨盤運動神経が外尿道括約筋に対してどのように働くのか排尿力学的検査およびHRPの逆行性軸索内輸送を利用して検討を加えた.
    半数の成犬において陰部神経切断後も外尿道括約筋筋電図が記録され, 膀胱充満に伴つて増強し膀胱収縮時に消失する正常協調パターンを示した. この外尿道括約筋筋電図は骨盤神経を切断してはじめて消失した.
    一方, 骨盤神経にHRPを注入すると, 約半数の犬で中間外側核, 中間内側核のみならずOnuf核にHRP陽性細胞が認められた.
    以上より, 骨盤神経には外尿道括約筋を支配する体性線維が含まれる可能性が示唆された.
  • 第1報 細胞型, 組織構築, 悪性度について
    大西 哲郎, 増田 富士男, 町田 豊平
    1983 年 74 巻 6 号 p. 967-976
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎細胞癌の病理組織の詳しい分析は, 比較的少ない, 今回我々は, 1957年1月より, 1980年12月末までの24年間に慈恵医大泌尿器科およびその関連病院において手術を施行した162例の細胞型, 組織構築, 組織学的悪性度および病期も含めて, それらの関連について検討した.
    細胞型では, 明調細胞型が43%を占め, その他, 混合細胞型が27%, 紡錘細胞型が17%, 顆粒状細胞型が12%の順であつた. 組織構築では, 単一構築型が58%, 重複構築型が29%, 未分化型が13%であつた. さらに各構築型を細分類すると, alveolar pattern が92%と大部分を占めており, その他, papillary pattern, tubular pattern, cystic pattern, trabecular pattern が分類可能であつた. 組織学的悪性度では, grade Iが20%, grade IIが39%, grade IIIが31%, grade IVが10%であつた.
    細胞型と組織学的悪性度の関係では, 明調細胞型に low grade が多く, 逆に紡錘細胞型に high grade が多く, 顆粒状細胞型および混合細胞型は, 前記二者の中間であつた. 細胞型と病期の関係では, 明調細胞型は, low stage が多く, 紡錘細胞型は, high stage が多く, 顆粒状細胞型および混合細胞型は, 前記二者の中間であつた. 組織学的悪性度と病期の関係では, low grade には low stage が多く, grade の上昇に伴つて high stage の占める率が高かつた.
  • 中田 瑛浩
    1983 年 74 巻 6 号 p. 977-988
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    正常Na食 (150mEq/day), 低Na食 (15~20mEq/day), 高Na食 (400mEq/day) を各, 1週間継続し, 尿中カリクレイン排泄量におよぼす因子を15人の健常者, 13人の本態性高血圧症患者, 9人の原発性アルドステロン症患者において追究した. 健常者, 本態性高血圧症患者はいずれのNa制限食下においても, PAHクリアランスと尿中カリクレイン排泄量はほぼ正の相関関係を示した. 腺腫による原発性アルドステロン症患者 (APA) の尿中カリクレイン排泄量は, いずれのNa制限食下においても本態性高血圧疾患者, 健常者, 副腎皮質過形成による特発性アルドステロン症患者 (IHA) のそれより有意に (p<0.05-p<0.001) 高値を示した. 尿中カリクレイン排泄量/PAHクリアランスを指標とすると, 原発性アルドステロン症患者では9例中8例が健常者, 本態性高血圧患者より高レベルであつた. 血圧, 年齢, UNaV, UKV, 血漿レニン活性も尿中カリクレイン排泄量と何ら有意の相関関係はなかつた. 本態性高血圧患者の尿中カリクレイン排泄量, 尿中カリクレイン排泄量/PAHクラアランスは健常者のそれと大差なかつた. 低Na食摂取下の健常者において, 尿中アルドステロン排泄量と尿中カリクレイン排泄量には軽度ながら正の相関 (r=0.53, p<0.05) が認められた. また, 本態性高血圧患者の尿中カリクレイン排泄量は, 正常Na食より低Na食に変えることにより有意に(p<0.05) 増加した. 以上を要約すると結論は以下に述べるごとくである. 1) 尿中カリクレイン排泄量は健常者でも本態性高血圧患者でも, わずかにアルドステロンの影響を受けることは否定できないが, 主として腎血漿流量の影響を強く受ける. 2) 本態性高血圧症の昇圧の病因に, 尿カリクレインは重要な役割を果していない. 3) 腺腫による原発性アルドステロン症の尿中カリクレイン排泄量は副腎皮質過形成による特発性アルドステロン症のそれより高値で, 本酵素活性の測定が両者の鑑別に有用である.
  • 安藤 研, 丸岡 正幸, 桝鏡 年清, 島崎 淳, 松嵜 理
    1983 年 74 巻 6 号 p. 989-993
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    千葉大学医学部附属病院泌尿器科において剖検した前立腺癌患者22例について生検時と剖検時の病理組織像を比較し, grade の変化の有無を検討した. 前立腺において grade に変化がみられたのは8例 (36%), 不変であつたのは14例 (64%) であつた. この両群について観察時間, 治療内容, 治療効果等を比較検討したが, grade 変化群には局所が臨床的に制癌されている例が多く grade 不変群には放射線療法施行例の割合が多かつた. grade 不変群の中で遠隔転移部位が前立腺と異なる grade を示したのが4例あつたが, 3例はより低分化となつていた. grade 別に検討を加えた場合, 低分化型には grade 不変群でかつ内分泌療法無効例が多かつた.
  • とくに尿水力学的下部尿路機能評価との関係から
    能登 宏光, 原田 忠, 西沢 理, 森田 隆, 土田 正義, 木村 行雄
    1983 年 74 巻 6 号 p. 994-1002
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    二分脊椎症に起因する先天性神経因性膀胱患者16例に対し, 膀胱, 直腸内圧および外尿道括約筋筋電図同時測定と尿道内圧曲線測定を行ない, 下部尿路機能を評価した. その結果をもとに, 臨床所見や尿路管理成績について検討した.
    膀胱機能は大部分 (75%) が inactive bladder であった. 尿道機能も過半数 (60%) が inactive sphincter であつたが, hyperactive sphincter (contraction) も33%にみられた. また, 膀胱, 尿道機能の組み合わせからは, inactive bladder で inactive sphicter を示した症例がもつとも多かつた.
    下部尿路機能と臨床所見との関係をみると, 尿失禁を主訴とした症例の多くは inactive sphincter で, 排尿困難例はすべて hyperactive sphincter (contraction) であつた. また, 残尿が101ml以上の症例の67%と水腎例の75%は hyperactive sphincter (contraction) 群であり, 膀胱頚部開大例は全例 inactive sphincter を示した. したがつて, 二分脊椎症患者の一般臨床所見は, 膀胱機能との関係はいうまでもないが, 尿道機能状態と関係が深いことが示唆された.
    初診時の排尿様式は手圧排尿3例, 腹圧排尿4例. 尿道留置カテーテル4例, 集尿器やオムッへの垂れ流し5例であつた. 下部尿路機能評価をもとに, 最終的に選択された排尿管理法は手圧排尿4例, 間歇的自己導尿12例であつた. その結果, 両者とも75%に尿失禁の改善がみられ, 後者では腎障害の回復や膀胱容量の増大も認められた.
  • 本邦報告例の統計を含む
    島田 憲次, 薮元 秀典, 森 義則, 生駒 文彦
    1983 年 74 巻 6 号 p. 1003-1014
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    過去8年半に経過した14例の異所性尿管瘤を報告する. 完全重複尿管は11尿管(両側性1例), 単尿管は4尿管であつた. 瘤所属尿管におけるVURは5例にみられ, うち1例ではcecoureterocele であつた. 瘤所属尿管はほとんどが拡張屈曲していたが, 3尿管では逆に細く索状化しており, 所属腎は高度の異形成を示していた.“異所性”尿管瘤の診断には尿管口の位置が重要であるが, 約1/3の症例では瘤壁上の尿管開口部は不明瞭であつた. 本疾患の治療に際しては所属腎が無機能, 異形成のために腎摘除あるいは半腎摘除されることが多い. われわれは患児の状態が許せば尿管下端, 瘤壁の処理も含め一期的に手術を施行している. 瘤壁遠位端の切除は困難を伴い, これを残せば尿道弁類似の通過障害をきたす. 術後も排尿時レ線検査あるいは内視鏡検査により瘤壁残存の有無を追跡する必要がある. 完全重複尿管においては瘤所属尿管のみでなく同側対尿管も同時に処理することが重要である.
    本邦における異所性尿管瘤51例 (自験例も含め) の統計も合わせ報告した.
  • 中田 瑛浩, 秋谷 徹, 嘉川 宗秀, 片山 喬
    1983 年 74 巻 6 号 p. 1015-1022
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    Adriamycin (ADM) 50mgを生理食塩水30mlに溶解し, 22例の膀胱腫瘍を推測される患者の膀胱腔内に注入し, 2時間後に, 腫瘍部, 非腫瘍部を切除し, 各組織内のADM濃度を測定した. 本剤の膀胱腔内投与直前, 投与2時間後の血清ADN濃度も測定した.
    全例を比較すると, 腫瘍部のADM濃度は非腫瘍部のそれより3.4倍(p<0.01) 高値であつた. 部位区に見ると頂部の腫瘍へのADMの取り込みは比較的低く, 他の部位では腫瘍へのADMの取り込みは高値傾向を示した. 初発腫瘍では腫瘍内へのADMの取り込みは, 非腫瘍部のそれより3.8倍 (p<0.01) 高濃度であつたが, 再発腫瘍では, 腫瘍部と非腫瘍部における本剤の取り込み濃度に有意差はなかつた. 腫瘍が単発でも多発でもADNは腫瘍部によく取り込まれた. 乳頭状腫瘍では浸潤型でも, 非浸潤型でも, ADM濃度の取り込みは高く, Ta~T2でとくに高値を示し, 組織分類では移行上皮癌が高濃度を示した. また血清ADM濃度はいずれも0であつた.
    以上の成績より, ADMの膀胱腔内注入は, 乳頭状の腫瘍で, 膀胱頂部に存在せず, Ta~T2に属していれば, 単発, 多発, 年齢に関係なく腫瘍内に高濃度に取り込まれると云えよう. 本研究は膀胱腫瘍患者に対するADMの膀胱腔入注入療法の適応, 再発予防に参考となると考えられる.
  • 光畑 直喜
    1983 年 74 巻 6 号 p. 1023-1043
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    前立腺癌を除く65例の男子尿路性器悪性腫瘍患者を対象として血中LH, FSH, Tを中心にACTH, F, DHA, DHA-Sを測定し, 一部症例にLH-RHテスト, clomiphene citrate 負荷テスト, rapid ACTHテスト, 精液検査, 睾丸生検を行ない, 制癌剤の多剤併用療法及び放射線療法の視床下部・下垂体・性腺系と副腎皮質機能に及ぼす影響を検討した. 治療前値の検討では, 尿路上皮腫瘍, 陰茎癌, 腎癌例に加齢による睾丸機能低下と一部症例にDHA-Sの低下が認められたのに対し, 睾丸腫瘍例では有意なFSHの上昇, Tの低下がみられており, 精子濃度, 睾丸生検を含めて健側睾丸の機能低下が示唆された. これに関連して睾丸腫瘍例のDHAの低下傾向は睾丸性DHAの低下によるものと推定される. 放射線療法を含む制癌剤療法後尿路上皮腫瘍, 陰茎癌, 腎癌例ではFSH (p<0.01), LH (p<0.05) の上昇が認められ, また主に放射線療法を実施した睾丸腫瘍例では, FSH (p<0.01) のみ上昇した. しかし放射線単独療法を行なつた腎癌例では全くFSH, LHに変化が認められなかつた. 血中Tに関しては治療中, 治療後も有意な変動はなかつた. 対射線療法を含む制癌剤療法では少なくとも視床下部, 下垂体の障害は認められず, 個々の制癌剤の cytotoxic action と scattered fractionated irradiation による精細管障害を主体とする原発性睾丸機能低下を惹起すると推察される. またこれらの治療前後の副腎皮質機能は影響を受けないと考えられた. PRLについても同様に治療により有意の差は認められなかつた.
  • 赤血球増多症を伴う腫瘍の本邦文献例の検討
    柳沢 良三, 阿部 定則, 三方 律治, 木下 健二
    1983 年 74 巻 6 号 p. 1044-1050
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    赤血球増多症を伴つた膀胱癌の1例を報告する. 症例は60歳男子で, 1980年6月20日, 肉眼的血尿を主訴に当科を受診した. 膀胱鏡にて乳頭状腫瘍と, 腫瘍周囲膀胱粘膜の広範な発赤を認めた. 検査成績では赤血球増多と著明な血漿エリスロポエチン活性の上昇を示した. 以上より赤血球増多症を伴う膀胱腫瘍と診断し, 1980年7月24日, 膀胱全摘および回腸導管造設術を施行した. 術中出血は1,300mlになつたが輸血は不要だつた. 病理組織学的診断は膀胱の papillary urothelial carcinoma, grade III, stage pT2であつた. 膀胱全摘後, 血液学的所見と血漿エリスロポエチン活性は正常化したが, 術後6カ月目に再び赤血球増多症が発症し, 同時に血漿エリスロポエチン活性も上昇した. 腫瘍の再発が疑われたため, 胸部単純撮影, 腹部および骨盤部CTスキャン, 肝シンチ, 骨シンチおよび腫瘍シンチ等を繰り返し行なつたが腫瘍の再発を示す所見は認められず, 現在経過観察中である.
    本邦文献上, 赤血球増多症を伴つた腫瘍, 73例を集計した. このうち腎腫瘍, 肝細胞癌, 小脳血管腫が多く, 3者で全体の88%を占めた. 性比では男が女より圧倒的に多かつた. 赤血球増多症を伴つた膀胱癌症例は, これまでに報告をみない.
  • 胡口 正秀, 鈴木 孝行, 高橋 美郎, 村上 房夫, 一条 貞敏
    1983 年 74 巻 6 号 p. 1051-1056
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    広範な下大静脈浸潤と孤立性肺転移を来たした腎癌症例に根治手術を行ない, 良好な結果を得たので報告する.
    症例は, 58歳男. 全身倦怠感および体重減少を主訴として来院した. 右季肋部に腫瘤触知, 各種検査の結果, 広範な下大静脈浸潤を見, 右中肺野に孤立性の転移を伴う右腎癌と診断された.
    経胸腹式到達法により, 下大静脈切除を含む広範右腎摘出術, および右中肺葉切除術を施行した. 総腫瘍重量470g, 摘出下大静脈11cm, 肺転移巣1×1×1.5cmで, 術中出血量6,900mlであつた. 組織学的には, いずれも異型性の強い明細胞癌で, 下大静脈部は壁に深く浸潤していた.
    術後, 腎および血流障害はみられず経過が良好で, 胸部レントゲン照射を行なつた後退院した. 術後18週になる現在, 全く異常をみていない.
    腎癌は血管構築上の特異性から, 下大静脈浸潤例, 肺転移例といえ必ずしも進行癌とはみなされない. 当症例のごとき広範な下大静脈浸潤例, しかも肺転移例といえども積極手術の適応になり得る.
  • 内島 豊, 坂本 修一, 平賀 聖悟, 岡田 耕市, 根岸 壮治
    1983 年 74 巻 6 号 p. 1057-1065
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    XX males の報告は性分化異常の中でも稀で, De la Chapelle (1964年) の最初の報告以来100数例の報告のみで, 本邦でも自験例を含めて16例が報告されているに過ぎない.
    (症例) 29歳. 不妊を主訴として受診. 筋肉質の男性的な身体つきで, 身長167cm, 体重64kg. 女性化乳房認めず. 陰茎は正常大. 両側睾丸はいずれも約8ml. 尿道撮影では男性膣を認めず. 血中のFSHおよびLHは高値を示し, 血中の testosterone 値は僅かの低値を示した. 両側精巣組織はいずれも精細管内には Sertoli 細胞のみで, 間質では Leydig 細胞の増生を認めた. 口腔粘膜細胞の22%にX染色質を認めた. 口腔粘膜細胞および皮膚線維芽細胞にY染色質を認めなかつた. 未梢血および皮膚組織の染色体検査で46, XXであつた. H-Y抗原陽性であつた.
    XX males について文献的考察を加えた.
feedback
Top