日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
75 巻, 10 号
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  • 伊藤 晴夫, 村上 光右, 宮内 大成, 内藤 仁, 森 偉久夫, 山口 邦雄, 臼井 利夫, 甘粕 誠, 島崎 淳
    1984 年 75 巻 10 号 p. 1523-1527
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    コアグルム法が腎結石手術の残石率ならびに真性再発率を減少させるかどうかについて検討した. 真性再発の有無はX-Pで確認したものでのみ判定した.
    残石は単発結石では腎盂切石術の56例, コアグルム腎盂切石術の10例, 腎切石術の2例のいずれでもみられなかった. 多発結石では腎盂切石術で26例中11例 (42%) に, コアグルム腎盂切石術で34例中9例 (27%) に残石をみた. サンゴ状結石に対する腎切石術では10例中3例 (30%), コアグルム腎切石術では16例中5例 (31%) に残石をみた.
    真性再発に関しては腎盂切石術では44例中9例 (20%) (平均観察期間20カ月), コアグルム腎盂切石術では28例中3例 (12%) (平均観察期間23カ月) に再発をみた. 腎切石術では9例中2例 (22%) (平均観察期間13カ月), コアグルム腎切石術では10例中2例 (20%) (平均観察期間23カ月) であった. なお, 尿感染, 結石成分などはコアグルム使用例と非使用例で差をみなかった.
    腎盂切石術, 腎切石術とも複雑な結石に対してコアグルムを使用したことを考えると, コアグルム使用により残石率, 真性再発率とも減少したと考えられる.
  • 小寺 重行
    1984 年 75 巻 10 号 p. 1528-1540
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    ヒト停留睾丸18例を対象として, 停留によって組織的変化が生ずるとおもわれる精細管壁を電顕的に観察した. 一般に, 電顕的に精細管壁を観察すると, まず基底膜と固有層にわけられるが, さらにこれらを微細にみると基底膜は透明層, 緻密層, 網状層の3層に, 固有層は非細胞層, 細胞層の2層, 全5層に区分できた. 睾丸の停留によっておこる各層の組織変化は, 基底膜では陥入, 蛇行, 不明瞭化, 多層化, 突起, 肥厚で, 固有層では非細胞層および細胞層の collagenfeer の増生による肥厚が認められた. 観察時の年齢によって, これらの変化をみると, 基底膜の陥入像は3歳例より, 蛇行は4齢例より, 不明瞭化は3歳例よりみとめられ, 多層化および突起像は17歳例以降の症例で観察された. 基底膜の肥厚は2歳児の停留睾丸で小児対照例に比し, 1.5倍であり, 検索時の年齢がすすむとともに肥厚度は増加傾向を示し, 成人例では対照例の約2から4倍に肥厚していた. これらの基底膜の形態的変化は基底膜保有細胞である Sertoli 細胞の機能を反映していると考えられ, したがってヒト停留睾丸ではすでに2歳頃より Sertoli 細胞に何らかの機能的変化が起っているものと思われる. 停留による固有層の組織変化では, 加齢とともに肥厚が認められた. これは細胞層の collagen fiber の増生, および非細胞層における精細管壁細胞の細胞突起の間隙に存在する collagen fiber の増生によるものであった. その肥厚度は小児停留睾丸例では小児対照例に比し約1.3から5倍で, 成人停留睾丸例では成人対照例の約3倍であった.
    以上, 停留睾丸における精細管壁の変化は, 電顕的には, すでに2歳例より認められ, 従来より指摘されている変化より, さらに早期に病的変化が発現していることが判明した.
  • 佐伯 英明
    1984 年 75 巻 10 号 p. 1541-1550
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    尿管によって運ばれる輸送尿量は尿管の蠕助頻度と1回の蠕動で運ばれる bolus 量とで決定される. 雑種成犬を用い, 尿量増加時の尿管蠕動様式を蠕動頻度と bolus 量から詳細に検討したところ, 尿管はA型: 蠕動頻度増加・bolus 量減少, B型: 蠕動頻度増加・bolus 量不変, C型: 蠕動頻度増加・bolus 量増加, D型: 蠕動頻度不変, bolus 量増加, E型: 蠕動頻度減少, bolus 量増加の5つの組み合せによって尿を輸送していた.
    尿量増加が緩徐な場合には, 尿管蠕動頻度と bolus 量の両者がともに増加する場合だけではなく, どちらか一方が一時的に減少することもあったが, お互いが相補って輸送尿量を増加させていた.
    Furosemide 投与による急速利尿群の場合, 尿量が1.0ml/分以下では蠕動頻度は急激に増加し, bolus 量は最初不変かあるいは逆に一時的に減少することはあっても比較的短時間に急激に増加し, 尿量が1.0ml/分を越えた時には, 蠕動頻度はもはや増加せず一定であり, bolus 量のみが急激に増加した.
    尿管が尿円柱を形成する時の尿量および限界 bolus 量を漸次利尿群と急速利尿群とで比較したところ, 漸次利尿群の方がいずれも大きい値をとった. 乏尿時と比較して多尿時では尿管蠕動頻度は数倍しか増加しないが, bolus 量は実に100倍も大きくなることから, 尿管の尿輸送においてはその主役は蠕動頻度よりも bolus 量といえると思われた.
  • 本山 悌一, 山本 尊彦, 佐藤 昭太郎, 杉田 収
    1984 年 75 巻 10 号 p. 1551-1557
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    ヒト睾丸胚細胞腫瘍由来の胎児性癌培養細胞, ITO株とNEC8株について, そのアルカリホスファターゼ (alkaline phosphatase: ALP) の諸性質を細胞組織化学的および生化学的方法によって検討した.
    ITO株では陽性細胞の数は少なく, 電顕的に小型の卵黄嚢癌型細胞のみ陽性であった. 後期胎盤型ALPに比べ易熱性で L-homoarginine に対しても感受性を示したが, L-leucine に対して著しく感受性が高く, 既知のアイソエンザイムには明らかな類似は求め難かった.
    NEC8株では多数の細胞がALP活性を有し, 電顕的には成人型胎児性癌細胞の微絨毛をもった自由縁に最も強い活性が認められた. 易熱性で L-homoarginine 高感受性であり, 細胞抽出物はALP3に一致した易動度を示し, これらの結果は早期胎盤型アイソエンザイムのパターンと酷似した.
    両株とも後期胎盤型ALPは検出されなかった.
  • 免疫組織化学および Radioimmunoassay による検討
    鹿子木 基二
    1984 年 75 巻 10 号 p. 1558-1571
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    原発性尿路腫瘍146例を対象として, 酵素抗体法 (PAP法) を用いて免疫組織化学的に carcinoembryonic antigen (CEA) の検索を行ない, 併せて一部の症例で, 血清, 尿中および腫瘍組織中のCEAを Radioimmunoassay 法を用いて測定し, 以下の結果を得た.
    (I) PAP法によって, 腫瘍内CEAは, 移行上皮癌 (63/127), 腺癌 (3/4), 扁平上皮癌 (5/5) に検出されたが, その他の悪性腫瘍や良性病変には検出されなかった.
    (II) 移行上皮癌の原発部位別では, 膀胱6尿管腎盂腫瘍の間で腫瘍内CEAの陽性率やその局在に有意差はみられず, CEA産生能の面で各腫瘍の類似性を示すものと考えられた.
    (III) 移行上皮癌において, 腫瘍内CEAの有無は, 組織学的異型度 (p<0.005), 深達度 (p<0.005) および局所再発の有無 (p<0.025) との間に相関がみられ, 腫瘍の悪性度を表わす parameter となり得ると考えられた.
    (IV) 膀胱移行上皮癌では, 腫瘍内CEAの有無血清CEA値および尿中CEA値の三者の間には相関はみられなかった.
    (V) 膀胱移行上皮癌では, 血清および尿中CEA値はともにスクリーニングテストとしての特異性は乏しいが, 前者は遠隔転移の出現とともに (p<0.05), 後者は high stage 群で (p<0.05) 有意に高値を示した.
    (VI) 腺癌のうち, 尿膜管癌では移行上皮癌に比べCEAのもつ特異性は大きいと考えられるが, 中腎癌では証明されず, 両者の発生母地の相違を示唆するものと思われた.
  • 特に陰部神経切断時の膀胱, 尿道の動態について
    佐藤 貞幹
    1984 年 75 巻 10 号 p. 1572-1582
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    排尿動態における陰部神経の役割を明らかにするために, 膀胱内圧, 外尿道括約筋筋電図および尿流量率同時記録法と pressure-now-plot 法を検討手段に用いて実験を行なった. 除脳無麻酔下とした雑種成犬を対象とし, 陰部神経の切断前後で膀胱の生理的食塩水による注入伸展を行なった際の膀胱および尿道の動態について検討を加えた.
    神経切断前のコントロール時には再現性の良好な反射性排尿を認め, 膀胱収縮と外尿道括約筋の律動性攣縮により膀胱内容の排出が行なわれるが, 多くの場合残尿が存在することが特徴的な排尿動態であった. 陰部神経切断後の排尿動態は以下のように分けられた. すなわち両側陰部神経切断後も膀胱収縮が持続したもの, 両側陰部神経切断後に初めて横溢性尿失禁が生じたもの, 片側陰部神経切断後にすでに横溢性尿失禁を生じたものに分けられた. 神経切断後に膀胱収縮が生じた場合には, 排尿動態は神経切断前と比較すると明らかに異なっており, 外尿道括約筋の律動性攣縮の減弱または消失に伴って排尿効率の低下を認めた.
    陰部神経は排尿の中断ならびに随意的蓄尿保持作用を司さどるとされてきたが, 除脳犬においては排尿時に外尿道括約筋の律動性攣縮をひき起こすとともに膀胱内容の排出に大きく寄与すると考えられた.
  • 経尿道的電気凝固によるラット膀胱粘膜の再生性過形成
    赤座 英之, 小関 清夫, 森山 信男, 鈴木 徹, 新島 端夫
    1984 年 75 巻 10 号 p. 1583-1587
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    種々の機械的あるいは化学的傷害から膀胱粘膜上皮細胞がどのように治癒していくかを調べることは, 組織学的興味のみならず膀胱発癌の研究にも重要である. 我々は, 経尿道的電気凝固によりラット膀胱粘膜に潰瘍を形成し, 膀胱粘膜の再生過程を光顕および走査電顕を用いて研究した. 光顕的には, 結節性あるいは乳頭状の過形成が認められ, 7~14日目に最も著明となった. 走査電顕的には, 再生上皮細胞表面に short microvilli が観察された. これらの形態学的変化は28日目には認められなかった. 従って, 電気凝固により誘導されたラット膀胱粘膜の再生性過形成は可逆性と考えられた. 膀胱発癌剤および抗癌剤の膀胱内注入療法の影響について考察をすすめた.
  • 平石 攻治, 米沢 正隆, 中村 章一郎, 山本 修三, 黒川 一男
    1984 年 75 巻 10 号 p. 1588-1594
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    徳島大学泌尿器科で, 19年間に24例の小児尿路結石患者が見出された. 年間0~3例で年次的に大きな変動はなく, 全尿路結石患者に対する割合は1.2%であった. 結石部位は, 21例 (87.5%) は上部尿路結石で, 3例は下部尿路結石であった. 性別では男児18例, 女児6例で男女比は3:1であった. 年齢的には4歳以下の乳幼児は全くみられず, 12~15歳に14例が集中していた. 主訴としては, 無症状で尿所見に異常を指摘された9例が最も多く, 無症候性肉眼的血尿が3例にみられた. 尿路感染症は12例 (50%) に見られ, 検出菌では proteus 群が最も多かった. 原因疾患は16例 (66.7%) に明らかであり, 代謝性疾患が9例 (37.5%) で最も多く, 次いで尿路奇形の4例, 薬剤1例, 異物2例であった. 原因不明は3例で, 十分な代謝異常についての検討がなされなかったのは5例であった. 手術療法は15例に17回施行され, 腎切石術, 腎盂切石術, 尿管切石術が各4回と多く, 腎摘出術は1回もなかった. とり残し結石は2例に認められた. 結石成分は蓚酸Caが最も多かった. 結石再発は, 1年以上 (平均5年3カ月) 追跡された14例中3例 (21.4%) に認められた. 本邦における今までの報告と比べて, 患児の年齢が高く4歳以下の乳幼児はみられなかったこと, 原因疾患として代謝性疾患が高頻度 (37.5%) にみられたこと, 手術では腎摘出術が1回もなかったことが特徴であった.
    さらに欧米の小児尿路結石症は, 疫学的に欧州型と北米型に分類でき, この原因について文献的に考察した.
  • 第1報
    斎藤 薫, 加藤 広海, 米田 勝紀
    1984 年 75 巻 10 号 p. 1595-1601
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    当科入院の尿路疾患患者について尿中NAG活性をNAG測定用キット (シオノギ), Uvidec-60分光光度計 (日本分光) を用いて測定した.
    1) 尿中NAG活性には日内変動がみられ, 午前6時から9時に高値となる傾向があった.
    2) 平均値は6.0±4.6U/Lで, 性差はなく, 高齢者で高値となる傾向がみられた.
    3) 疾患別には腎不全がもっとも高く, 悪性腫瘍, 前立腺肥大症などの下部尿路通過障害に高い傾向がみられた.
    4) 尿中β2-ミクログロブリン, クレアチニンクリアランスの正常者と異常者には, NAG活性の有意の差が認められた.
  • 99mTc-DMSA腎シンチグラフィーによる逆流腎の機能評価
    近田 龍一郎, 折笠 精一, 中道 五郎
    1984 年 75 巻 10 号 p. 1602-1610
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    小児VUR52例78腎に99mTc-DMSA腎シンチグラフィーを行ない, 各腎のDMSA腎摂取率・腎シンチグラムを求め, VURによる腎機能障害について検討した.
    DMSA腎摂取率は, 高 grade VURやIVP異常例に低値を示すものが多かったが, 必ずしも grade やIVP所見とは一致せず, 低 grade VURの14%, IVP正常例の11%に高度腎機能障害を認めた. renal ratio で-2SD以下の small kidney では, DMSA腎摂取率は1.7%~21.4%, 平均14.3%と非常に低値であり, 高度腎機能障害の存在が立証された. β2-MG urinary ratio で1.0以上の高値の例にDMSA腎摂取率低値を示す傾向が認められたが, 両者間に相関はなかった. これは, renal ratio も含め各々が異なった腎機能障害の時期を反映しているためと思われた.
    腎シンチグラムでは, IVP正常例の40%, 異常例の76%に腎シンチグラム異常を認めた. 腎シンチグラム所見とIVP所見は必ずしも一致せず, IVP正常例でもすでにかなりの例に腎皮質障害を伴っていることがわかった.
    以上, VURの grade やIVP所見は, 逆流腎の機能障害の目安となり得ず, β2-MG urinary ratio 1.0前後, DMSA腎摂取率20%前後が保存的療法の限界点と思われた. 尚, renal ratio にて-2SD以下の small kidney では高度腎機能障害を伴っており, small kidney になる前に逆流防止術等適切な処置が必要である.
  • I. 提供者側諸因子および腎阻血時間と機能回復性の関係について
    井原 英有, 有馬 正明, 生駒 文彦, 市川 靖二, 石橋 道男, 佐川 史郎, 高羽 津, 園田 孝夫
    1984 年 75 巻 10 号 p. 1611-1618
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    死体腎移植20症例において, 年齢, 性別, 死因, donor source といった一般的な腎提供者側諸因子および腎の阻血時間から腎の機能回復性が予知しうるか否かについて検討した.
    脳出血死の提供者からの腎の利尿開始が, 他の死因で死亡した提供者からの腎に比べて有意に遅延したが, その後の腎機能回復性には有意の差はなかった. したがって, 提供者の死因は利尿開始時期を推測する参考とはなるが, 機能回復性を予知せしめるとはいえなかった.
    提供者の年齢, 性別, donor source および腎阻血時間も機能回復性と相関せず, これらから機能回復性を予知するのは困難と考えられた.
    利尿が開始すれば, その機能発現様式から機能回復性を予知するのは可能と考えられた.
  • II. 超音波ドプラ法による移植腎血行動態計測に基づく機能回復性予知についいて
    井原 英有, 有馬 正明, 生駒 文彦, 市川 靖二, 石橋 道男, 佐川 史郎, 高羽 津, 園田 孝夫
    1984 年 75 巻 10 号 p. 1619-1630
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    死体腎移植における移植腎の機能回復性の予知, 無尿期間中の急性拒絶反応の診断を目的として, 死体腎移植20症例において移植腎動脈血流を超音波ドプラ法によって測定した.
    術後1週間以内の早期の血流測定結果と機能回復性との間に相関を認め, この1回測定の結果から機能回復性を予知しうるが, 反復して測定することにより予知能は一層向上した. 血流測定で得た血流パターンの指標のうちでは収縮期血流の加速時間 (acceleration time, Δt) が機能回復性と良い相関を示した.
    術後無尿期間が存在する症例においても, 無尿期間中に良好な血流パターンを維持するほど機能発現が速やかで機能回復も良好であったことから, 無尿状態からの機能回復性も予知可能であった.
    無尿期間中に出現する急性拒絶反応は血流パターン上, 主として拡張期血流 (d/sratio) の低下ないし消失として示されることを認めた.
    本法による血流測定は死体腎移植後の無尿の原因の検索, 無尿期間中の急性拒絶反応の診断, 移植腎の機能回復性の予知に有用な方法であることを述べた.
  • 能登 宏光, 原田 忠, 菅谷 公男, 森田 隆, 西沢 理, 土田 正義, 宮川 征男
    1984 年 75 巻 10 号 p. 1631-1636
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    外尿道括約筋筋電図を, 針電極で経尿道的に導出するためのカテーテルと電極を試作した. 試作カテーテルは20Fr. 3Way尿道留置カテーテルを改良したもので, 固定用バルーンを膀胱頚部に位置させた時に, 外尿道括約筋部に接するカテーテルの部位に開口する, 2経路を新たに設けた. したがって, カテーテルはバルーン用経路を除いて4経路を有することとなり, それぞれを膀胱内水注入用, 膀胱内圧測定用, 尿道内圧測定用そして筋電図用電極挿入用とすることで, 膀胱, 尿道内圧および外尿道括約筋筋電図同時測定が可能となる. また, 針電極は直径0.2mm, 長さ1cmの単極電極で, 導線はカテーテル内に挿入できるようにテフロンチューブで被覆した. 試作カテーテルを膀胱内に挿入し, バルーンを拡張させて膀胱頚部に位置するまでカテーテルを引き戻すと, 電極用経路開口部は外尿道括約筋部に接するため, 経路内に電極を挿入するだけで, 誰にでも簡単かつ確実に外尿道括約筋筋電図を測定できる. 加えて, 電極が細く先が鋭いため刺入時の痛みも少なく, 下部尿路機能検査を行うにあたって, 有用な手段となり得ると考えられる.
  • 核型による悪性度と予後について
    中西 正一郎, 柏木 明, 坂下 茂夫, 丸 彰夫, 小柳 知彦, 有門 克久, 森 達也, 川倉 宏一, 大橋 伸生, 山田 智二, 斯波 ...
    1984 年 75 巻 10 号 p. 1637-1645
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1969年から1982年までの14年間の追跡可能であった腎細胞癌症例153例 (男110, 女43) を対象とし臨床病期 (stage) および病理組織学的所見とくに核の大きさ, 円形性, 均一性, 核質および核小体の状態を指標とした核型のみによる悪性度 (grade) と予後につき検討した.
    (1) stage 別の5年生存率は stage I-68.0%, II-64.9%, III-34.9%, IV-6.2%であり明らかに予後と相関していた. しかし stage IとIIには統計学的に有意差を認めなかった.
    (2) 細胞型, 組織構築による分類では細胞型では紡錘細胞の混在をみるものまた組織構築では肉腫様の構築の混在をみるものは比較的少数ではあったが明らかに予後不良であった. 一方他の細胞型, 組織構築には予後との相関は認められなかった.
    (3) grade 別の5年生存率は grade 1-80.4%, 2-71.5%, 3-33.1%, 4-7.9%で stage と同様に明らかな予後との相関を認めたが grade 1と2には有意差を認めず grade は low grade と high grade の2段階分類としても良いと思われた.
    (4) stage と grade との組み合わせでみると low stage (I~II) では low grade 症例の占める割合が高くまた予後も良好であったが high grade 症例はやはり low stage といえども明らかに予後不良であった. また high stage (III~IV) では逆に high grade の占める割合が高く長期生存例はほとんどが low grade 症例であった.
    (5) 腎細胞癌の予後をある程度知る上で, stage と核型による grade との組み合わせで検討する事が臨床的に有用であると考えられた.
  • 勝岡 洋治, 川嶋 敏文, 白水 幹, 村上 泰秀
    1984 年 75 巻 10 号 p. 1646-1651
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎細胞癌の対側副腎への孤立性転移症例を経験したので報告する.
    患者は77歳の男性で尿閉と濃血尿を主訴に某市内病院に緊急入院した. 尿路悪性腫瘍を疑われ精査目的で当科へ転入した. 腹部および腎動脈撮影と下大静脈撮影にて静脈内腫瘍栓塞を有する右腎細胞癌が判明した. 撮影時に止血と腫瘍縮小を目的に transcatheter embolization を行なった. その後右腎全摘出術および右腎静脈の下大静脈内流入部を含む壁切除を施行した. 退院後は外来にて定期的に諸検査が行なわれ, 明らかな転移巣は認められなかったが, 術後約1年後に行なわれたCT scan で左副腎に一致して腫瘍病変が発見され, 孤立性の転移性副腎腫瘍が強く疑われたので手術目的で再入院. 左副腎摘出術が行なわれ, 摘出標本の病理組織学的診断では腎細胞癌と同一の所見であった. 副腎摘出後はハイドロコーチゾンによる補充療法と非特異的免疫賦活剤により2年以上転移もなく順調に経過した.
  • 増田 宏昭, 藤井 一彦, 畑 昌宏, 太田 信隆, 鈴木 和雄, 田島 惇, 阿曽 佳郎, 井田 時雄
    1984 年 75 巻 10 号 p. 1652-1657
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    浜松医大泌尿器科では, 先天性単腎に発生した腎動脈瘤1例を含め, 3例の腎動脈瘤を経験した. 全例に腎体外手術による腎動脈瘤切除後自家腎移植術を施行し, 良好な結果を得た. 先天性単腎の1例は, 術後急性腎不全となった. しかし9回の血液透析により腎機能は回復し良好な経過をたどった. 他の2例の術後経過も順調であった.
    本邦では, 自験例3例を含め, 168例の腎動脈瘤の報告がみられる. そのうち先天性単腎に発生した症例は, 自験例を含め8例にすぎない. また腎動脈瘤の治療法として, 腎体外手術による腎動脈瘤切除例は, 自験例を含め7例であった. 腎体外手術による腎動脈切除法は術後の腎機能保存に有用であるのみならず, 動脈瘤が腎動脈分岐部またはそれより遠位側の分枝に存在し in situ で切除が困難と思われる場合でも安全に施行することができ, 積極的に行ってよい方法と考えられた.
  • 平賀 聖悟, 内島 豊, 黒川 順二, 小山 右人, 木原 和徳, 竹内 弘幸, 酒井 邦彦
    1984 年 75 巻 10 号 p. 1658-1664
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例1は8歳女児, 急性腎盂腎炎の反覆と夜尿症を主訴として来院, 諸検査後尿道末梢部狭窄と診断, TUR-Bnと尿道拡張術を施行した. 症例2は9歳男児, 尿の混濁と間歇的発熱を主訴に来院, 諸検査後 Paquin らのいわゆる巨大膀胱症候群と診断, 両側腎瘻造設術を施行した.
    自験2例は臨床的には異なる診断を行なったが, ともに高度のVURと水腎水尿管症を持ち, urodynamic study により尿道内圧が異常高値を示し, functional obstruction が存在しながら detrusor-sphincter dyssynergia を欠くという共通の病態が認められた. この知見はこれら先天性下部尿路障害の疾患の本態とも関わる興味あるものと思われ, 小児拡張尿管における下部尿路機能の検索の重要性をも強調した.
  • 大西 周平, 西本 和彦, 上田 陽彦, 野田 春夫, 岡田 茂樹, 松瀬 幸太郎, 高崎 登, 金田 州弘
    1984 年 75 巻 10 号 p. 1665-1669
    発行日: 1984/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    26歳, 男性. 回盲部痛を主訴に入院した. 右下腹部ならびに左頚部に腫瘤を認め, 左頚部腫瘤の生検をおこなったところ, 組織の大部分は embryonal carcinoma の像を呈し, 一部に choriocarcinoma の像も見られた. 右側睾丸は軽度腫大していたが表面平滑, 硬度正常であった. 左側睾丸は触診上異常は認められなかった. 右側睾丸は生前に, 左側睾丸は死亡後に摘除し, 組織学的に詳細に検索したが, 精細胞腫瘍の存在を思わせる所見は認められず, 原発性性腺外精細胞腫瘍と診断された.
    原発性性腺外精細胞腫瘍は, 精細胞起源の腫瘍が性腺以外の部位に発生したものであるが, その発生頻度は非常に少なく, 欧米で数十例報告されているにすぎない. われわれは, 本疾患の1例を経験したので報告するとともに, その治療方針について考察した.
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