原発性尿路腫瘍146例を対象として, 酵素抗体法 (PAP法) を用いて免疫組織化学的に carcinoembryonic antigen (CEA) の検索を行ない, 併せて一部の症例で, 血清, 尿中および腫瘍組織中のCEAを Radioimmunoassay 法を用いて測定し, 以下の結果を得た.
(I) PAP法によって, 腫瘍内CEAは, 移行上皮癌 (63/127), 腺癌 (3/4), 扁平上皮癌 (5/5) に検出されたが, その他の悪性腫瘍や良性病変には検出されなかった.
(II) 移行上皮癌の原発部位別では, 膀胱6尿管腎盂腫瘍の間で腫瘍内CEAの陽性率やその局在に有意差はみられず, CEA産生能の面で各腫瘍の類似性を示すものと考えられた.
(III) 移行上皮癌において, 腫瘍内CEAの有無は, 組織学的異型度 (p<0.005), 深達度 (p<0.005) および局所再発の有無 (p<0.025) との間に相関がみられ, 腫瘍の悪性度を表わす parameter となり得ると考えられた.
(IV) 膀胱移行上皮癌では, 腫瘍内CEAの有無血清CEA値および尿中CEA値の三者の間には相関はみられなかった.
(V) 膀胱移行上皮癌では, 血清および尿中CEA値はともにスクリーニングテストとしての特異性は乏しいが, 前者は遠隔転移の出現とともに (p<0.05), 後者は high stage 群で (p<0.05) 有意に高値を示した.
(VI) 腺癌のうち, 尿膜管癌では移行上皮癌に比べCEAのもつ特異性は大きいと考えられるが, 中腎癌では証明されず, 両者の発生母地の相違を示唆するものと思われた.
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