近年, いくつかの癌細胞に対し分化誘導作用のあることが認められているビタミンD
3の, ヒト腎細胞癌培養株KU-2ならびに Caki-1 の増殖に対する効果とこれらの細胞のビタミンD
3に対するリセプターの存在について検討した. その結果, ビタミンD
3代謝物はこれらの細胞の単層培養における増殖と軟寒天培地における clonogenicity を抑制した. また, KU-2と Caki-1には, ともに活性型ビタミンD
3である1α, 25-dihydroxyvitamin D
3に対して特異的に結合する3.2Sのリセプター蛋白の存在することが判明し, リセプター結合量は各々87, 17fmol/mg protein であった. 比較したビタミンD
3代謝物中では1α, 25-dihydroxyvitamin D
3が最も増殖抑制能が高く, 次いで1α, 24R, 25-trihydroxyvitamin D
3, 25-hydroxyvitamin D
3, 1α-hydroxyvitamin D
3, 24R, 25-dihydroxyvitamin D
3の順であり, これはリセプターに対する結合親和性と良く相関した. 以上の結果はビタミンD
3による腎癌細胞の増殖と clonogenicity に対する抑制がリセプターを介するものであることを示し, また, 活性型ビタミンD
3は, 腎細胞癌の発生や増殖, あるいは他の細胞機能の発現に対する制御因子の一つである可能性を示唆した.
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