日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
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76 巻, 12 号
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  • 丹田 均, 加藤 修爾, 坂 丈敏, 大西 茂樹, 中嶋 久雄, 熊本 悦明
    1985 年 76 巻 12 号 p. 1770-1783
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1984年9月1日より, 本邦で初めて, 上部尿路結石に対して, ESWL施行し, 良好なる成績を上げたので報告する.
    上部尿路結石101例に対して, 107回施行した. 硬膜外麻酔を101例中96例 (90%) に施行した. 年齢は20~74歳で, 男71例, 女30例である. 結石の大きさは鋳型結石 (5例) から1cm以下迄に及んだ. Shock wave の回数は400~2,200回で, 1,500回以下が80例 (79%) であった. 治療時間は7分から60分間で, 通常は11~40分間で87例 (86%) であった. 治療後の副作用は76%の症例には無かった. あっても発熱, 疼痛 (鈍痛が殆んどで油痛は1例) であり, 発熱は腎盂炎として治療した. 尿培養にて12例に起炎菌を同定し得た. 破砕された結石が多量に尿管下端に充満 (stone street) している症例で, 発熱, 鈍痛がある場合に尿管口切開を5例に施行し良好であった. 破砕した結石の大きさは2mm以下が99%であった. 治療後, 自然排石症例は follow up 期間は短いが47例で, 残りの症例は排泄可能の砂状結石のみである. 結石成分は, 蓚酸カルシウムを中心とした成分が, 82.2%であった. その他尿酸2例, cystine 1例であった.
    ESWLは結石の大きさ, 個数, 成分にも拘らず, 全て破砕された事が判明したが, 向後破砕された結石の排泄をどう処理するかが, 問題になる. 更に, 上部尿路結石症の open surgery に代わる最大の中心的役割を果たすと確信した.
  • 藤岡 知昭
    1985 年 76 巻 12 号 p. 1784-1794
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    酵素抗体法 (peroxidase-antiperoxidase: PAP法) を用いてレンサ球菌と各種の腫瘍との間の抗原性について検討した. 抗レンサ球菌Su株抗体および抗ラット膀胱癌BC-47抗体は, BC-47, レンサ球菌製剤OK-432の両者に対し共に陽性反応を示した. このPAP法の特異性を前述の第一抗体のホモおよびヘテロの抗原による吸収試験により研究した. また抗Su血清は腎遠位尿細管, 表皮および汗腺を除き多くの正常ラット組織で陽性反応を示さなかった. 更に抗Su抗体はBC-47に加えマウス肉腫 Meth-A, マウス肉腫S-180, Ehrlich 癌で陽性反応を, またマウス腺癌Ca. 755, Waker 癌肉腫256, マウス白血病P-388で陰性反応を示した. 抗A群特異C多糖体血清および抗A群特異抗体によるPAP法においても抗Su血清と同様の結果を得た. 更にヒト尿路性器悪性腫瘍においても抗Su抗体は陽性反応を示した. よってレンサ球菌と腫瘍とのこの共通抗原は動物およびヒト腫瘍に広く存在し, レンサ球菌のA群特異C多糖体 (Rhamnose-N-acetyl glucosamine polysaccharide) であると推察された. また抗Su抗体により陽性反応を示したBC-47, Meth-A, S-180, Ehrlich の4種の腫瘍はOK-432によりその発育がよく抑制される反面, 陰性反応を示したCa. 755, Waker 256, P-388はOK-432が無効であることが既に研究, 報告されている. よってこの共通抗原によるキラーT細胞および抗体依存細胞障害 (ADCC) の特異免疫による抗腫瘍効果が示唆された.
  • 特にCDDP腎毒性について
    鈴木 和雄
    1985 年 76 巻 12 号 p. 1795-1806
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    現在大量の補液, 利尿剤の使用によりCDDP腎毒性はかなり軽減されたが, 種々の尿路合併症を有する泌尿器癌に対しては未だ十分な予防対策とはいえない. 当科でCDDP投与を行った進行性尿路性器悪性腫瘍症例についても17例中4例, 23.5%と高頻度に腎機能障害が認められた.
    CDDP腎毒性の予知, 早期診断に対して尿中β2-microglobulin (β2 MG), N-acetyl-β-glucosaminidase (NAG) の測定を行うとともに, 近年急性腎不全の鑑別として利用されるようになった fractional excretion of Na (FENa) を測定し, 基礎的, 臨床的検討を行った.
    尿中β2MG, NAGはCDDP投与直後より著明に増加した. 特に不可逆性の腎機能障害を来たした症例では他の症例に比べて著明な排泄増加を示した.
    FENaはCDDP投与により有意に上昇した. 特にCDDP投与により腎機能障害を来たした症例と腎機能障害を認めなかった症例とでは, CDDP投与前のFENaの比較で明らかに腎機能悪化症例の方が高い傾向が認められた.
    CDDP腎毒性の予知, 早期診断に対して尿中β2MG, NAGの測定は有効であり, 特に今回我々がはじめて検討を行ったFENaは測定も簡便で臨床上有用な検査法であると考えられた.
  • 鈴木 博雄
    1985 年 76 巻 12 号 p. 1807-1814
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    Serratia marcescens の薬剤耐性因子に関する報告は, 接合伝達による伝達性プラスミドの検出によるものが殆んどで, DNAを抽出し形質転換による非伝達性プラスミドの検出まで行う, DNAレベルでの解析は皆無に等しい. そこで, この解析への一端として, 本研究は, 臨床由来の Serratia marcescens 99株についてその耐性型を, また, 耐性菌についてはその伝達性, 非伝達性プラスミドの検出を行った. さらに検出したプラスミドDNAについてはアガロースゲル電気泳動法でDNAを確認した. 特に薬剤耐性プラスミドのうち, PC耐性についてはβ-lactamase の型別を基質特異性から調査した.
    その結果, TC, CER, ABPCは Serratia marcescens の自然耐性とは考えられず, とくにABPCは耐性プラスミドが高頻度に検出された. このABPC耐性プラスミドは伝達性, 非伝達性プラスミドでともに検出率が最も高く相互に関係があると思われた.
    伝達性プラスミドでは, 施設と分離時期で3群に群別するとA群 (対象群: 1979年3月から1980年2月分離), B1群 (前期群: 1980年6月から7月分離) でABPC, KM耐性型が, B2群 (後期群: 1980年8月から12月) でSM, SA, ABPC, KM耐性型が最も多く, Epidemic plasmid と考えられ, これらは短期間で変化した. また, 非伝達性プラスミドの伝達性化が示唆され, 伝達性プラスミドだけでなく非伝達性プラスミドも臨床的に重要と考えられた.
  • 梅山 知一, 加納 勝利
    1985 年 76 巻 12 号 p. 1815-1823
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1978年から1984年8月までに本院及びその関連病院に於て21名の尿道下裂患者に対して, Hodgson type III法による一期的尿道形成術を施行した. 術後経過良好であった13例と軽度の合併症の4例を合わせて17例 (81%) にほぼ満足の行く結果を得ることがそきた.
    今回の経験より Hodgson type III原法では, 皮膚欠損部の修復時に背側で皮膚が不足することがあるので, 当初に陰茎背側の包皮を逆V字状に残しておいて後で使うことにより, 陰茎全体を緊張無く被うことができるように改善した. 手術手技上注意した点は, 完全に索切除を行うことと正確な新尿道の形成であったが, 索切除の確認と新尿道の長さの決定には, artificial erection technique が有用であった. また新尿道の作製時に島状皮膚弁の大きさは必要最小限の大きさに止めることが肝要と思われた. 術後排尿状態の評価として, 尿流量測定は簡単かつ非侵襲的であり, 客観的に評価し得るので有用であると思われた.
  • 移植腎生着率の向上について
    大島 伸一, 小野 佳成, 絹川 常郎, 松浦 治, 竹内 宣久, 服部 良平, 藤田 民夫, 浅野 晴好, 梅田 俊一, 平林 聡, 杉山 ...
    1985 年 76 巻 12 号 p. 1824-1829
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1973年9月から1984年10月までに社会保険中京病院にて施行した103例104回の生体腎移植の免疫抑制法をはじめとする管理方法及び成績について報告した. 患者の年齢は, 6歳から59歳, 平均27.4歳であり, 男性78例, 女性26例であった. donor は両親86例, 兄弟17例, 非血縁1例であり, 組織適合度は血縁例で HLA two haploidentical 5例, HLA one haploidentical 98例で, 非血縁例はHLA A, B2抗原, DR 1抗原適合であった. なお, 87例に移植前輸血歴がみられた. 免疫抑制法は原則として steroid と azathioprine で行った. 1975年までの20例は, 移植直後に azathioprine にかわって cyclophosphamide を用いた. 1975年以後の42例は, steroid, azathiorpine に加えて移植直後にALGを用い, 拒絶反応に対する治療を一定の制限を設けて行った. 1980年7月以降の42例のうち33例は移植前治療として胸管ドレナージによるリンパ球除去を行い, また9例では cyclosporine と steroid による免疫抑制を行った.
    全症例の患者生存率, 移植腎生着率は, 1年で91.7%, 80.5%, 3年で85.0%, 67.9%, 5年で78.1%, 56.2%, 10年で71.8%, 50.6%であった. また最も新しい方法で行った最近の42例の患者生存率, 移植腎生着率は, 1年で100%, 100%, 3年で100%, 82.6%であり, 初期に比べ患者生存率, 移植腎生着率とも飛躍的に向上した. 本論文では, これらの成績向上の歴史的な変遷を, 私共が対処してきた方法を提示しながら述べた.
  • 丸岡 正幸, 宮内 武彦, 長山 忠雄
    1985 年 76 巻 12 号 p. 1830-1835
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    千葉県がんセンター泌尿器科で治療した睾丸腫瘍は55例で, 精母細胞由来は51例であった. いずれの症例も高位除睾術を施行した. (1) seminoma は31例で, 29例は放射線単独, 1例はCDDPを併用, 1例がCDDP単独治療であった. 癌死は4例でいずれもM1の症例であった. なお, T2N3MOの例で扁桃, 小脳, 両肺と転移したにもかかわらず, 放射線治療により, 初診より7年3カ月, 最終治療より4年1カ月CRを得ている症例がある. (2) nonseminomatous type 20例は, 放射線治療と化学療法を施行したが, 現在では, CDDP単独投与を中心とした化学療法を主体として施行し, CDDP例は9例である. 癌死は6例ありいずれもN3以上もしくはM1であった.
    CDDP投与11例中, 再発転移なく, 腫瘍マーカーも正常化しているのは7例, PR1例, 癌死3例である. 最長生存例は症例番号1 (Fig. 1) の例で, 初診より6年4カ月CRにて生存している. 副作用は, 全例に悪心, 嘔吐, 2例に輸血を必要とした赤血球減少, 1例に shock をみている. 投与中止は shock の1例のみである.
    なお, CDDPの投与法は, (1) 導入療法としてCDDP 30~50mg/m2を週1回, 10週間静注する. (2) 維持療法として, CDDP 30~50mg/m2を1~2カ月に1回, 2年間投与する. また, 投与当日の輸液量は2,500mlで, 500ml輸液した時点でCDDPと制吐剤を静注し, 30分後に利尿剤を静注する.
  • 江藤 耕作, 河合 忠, 石井 勝, 大倉 久直, 大森 弘之, 斉藤 泰, 島崎 淳, 園田 孝夫, 土田 正義, 新島 端夫, 西浦 常 ...
    1985 年 76 巻 12 号 p. 1836-1842
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    原らによりヒト精漿より精製されたγ-Smの酵素免疫測定法によるキットを前立腺癌の診断を目的として検討した. 病理組織学的に確定診断された未治療前立腺癌, 前立腺肥大症およびその他の泌尿器疾患について血清中のγ-Smを測定した. ステージAの前立腺癌と前立腺肥大症群との間には統計的有意差はなかったが, ステージB, CおよびD群では明らかにγ-Smの濃度は上昇し, 前立腺肥大症群との間に有意差を認めた.
    前立腺癌全症例の診断率は約70%となり, またγ-SmとPAPとの相関性はなかった. これらのことから, γ-Smは前立腺癌診断に有用な新しいマーカーであることが示唆された.
  • その2. 間質性膀胱炎のアレルギー学的検討 (1) 肥満細胞浸潤と好酸球及び円形細胞浸潤との関係について
    山田 哲夫, 田口 裕功
    1985 年 76 巻 12 号 p. 1843-1847
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    組織におけるI型アレルギー反応の発現には肥満細胞は必要不可欠な細胞である. 間質性膀胱炎におけるI型アレルギーの関与を検討するために, 最初に膀胱組織中の肥満細胞の存在とその意義について調べた. 対象は臨床的にアレルギーの関与が診断された3例といまだアレルギーの関与が明らかでない3例の計6例の間質性膀胱炎である. 臨床的にアレルギーの関与が診断された3例の間質性膀胱炎において肥満細胞は中等度以上存在した. これらの3症例において好酸球も中等度以上で, 円形細胞は中等度以下であった. いまだアレルギーの関与が明らかでなく著しい萎縮膀胱を呈した3例の間質性膀胱炎において肥満細胞は中等度以上存在した. これらの3例において好酸球や円形細胞も中等度以上存在した. 一方, 間質性膀胱炎以外の各種膀胱炎において肥満細胞にはほとんど認められない症例から中等度認められる症例まで各種の段階であった. これら15例において好酸球はいずれも軽度以下であり, 円形細胞はほとんど認められない症例から強度認められる症例まで各種の段階であった. これらの結果から間質性膀胱炎においてI型アレルギー反応を惹起し得る必要条件が最も備わっていることが判明したと同時に, アレルギーの関与がいまだ明らかでない間質性膀胱炎の3例にもI型アレルギーの関与が組織像から示唆された.
  • 1. クエン酸リアーゼを用いた尿中クエン酸の測定
    安川 修, 高松 正人, 戎野 庄一, 森本 鎮義, 吉田 利彦, 大川 順正
    1985 年 76 巻 12 号 p. 1848-1854
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    クエン酸リアーゼ (以下CL) を用いた尿中クエン酸測定法につき検討した. 本反応の原理は, クエン酸がCLによりオキザロ酢酸に変換され, さらにオキザロ酢酸がリンゴ酸脱水素酵素とNADHの存在下にリンゴ酸に変換されるときに消費されるNADHの量を340nmで比色測定するというものである. 本測定法に影響を与えると思われる諸因子につき検討したところ, Tris HCl buffer のpHは7.2付近が最適と思われ, 亜鉛イオンの添加は反応を促進することが確認されたが, pHや亜鉛イオンの影響はCLの量が増加してゆくにつれて生じにくくなった. また Tris HCl buffer の濃度は0.1M付近で良好な反応が得られ, 高濃度の buffer は反応を阻害するようであった.
    本法におけるクエン酸の添加回収率は98.5~103%, triplicate assay での変動係数は平均3.1%と信頼に足り得るものであった. 本法によって測定した健常人の24時間尿中クエン酸排泄量は男子397±159mg/day (n=66), 及び女子474±209mg/day (n=23) であった.
    本測定法は前述した正確さに加え操作がきわめて簡便であり, 日常検査として活用できるすぐれた方法であると思われた.
  • 平賀 聖悟, 黒川 順二, 内島 豊, 荒木 重人, 竹内 信一, 牛山 武久
    1985 年 76 巻 12 号 p. 1855-1868
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    小児VUR 12症例についてレ線透視下膀胱内圧測定 (CG-CM) を行なった. 対象の内訳は非閉塞性VUR 7例, 神経因性膀胱に伴なうVUR 5例の計18尿管であり, 次の結果を得た. 過去においても同様の検査が行なわれたが, 本検査法に基づくVURの分類が膀胱内圧曲線 (CMG) を中心にしておらず, 臨床例と適合しないところもあるので新分類を試みた. すなわち, CMGの静止圧時における低圧逆流をType I, 排尿反射時の高圧逆流をType II, 腹圧による意識圧時の高圧逆流をType IIIとした.
    VUR起始時の平均膀胱内圧はType I, 25.6mmHg, Type II, 41.4mmHg, Type III, 86.3mmHgであった. その時の平均膀胱容量はType I, 387.9ml, Type II, 245.6ml, Type III, 53.3mlであり, 非閉塞性VURで膀胱容量が大きく, 神経因性膀胱に伴なうVURでは小さい傾向が示された. 本検査法によるVUR起始時の grade はスクリーニングのために行なった one-shot の膀胱撮影乃至は排尿時膀胱尿道撮影と異なる頻度であった. VUR発現の過程におけるどの grade を真の grade とすべきかという問題が生ずるが, CG-CMによりVURの時間的因子を含めた機能的 grading が可能である. VURの各 Type における grade と水腎症の程度とを比較すると, Type Iでは両者がほぼ一致し, Type IIとType IIIでは grade に比し水腎症が軽度であった. VURの各 Type におけるCMGは, Type Iでは大部分正常型及至は弛緩型膀胱, Type IIから Type IIIへかけて痒性膀胱あるいは無抑制膀胱の割合が増加した. 本検査法の最終目標は小児VURの治療方針の決定にある. 臨床症例が少なかったため, 今回は明確な結論は得られなかったが, Type Iで grade の低い場合は経過観察でよいが, 高 grade のものは外科的治療を要し, Type IIから Type IIIへかけて保存療法の割合が増える傾向が示された.
  • Proteus mirabilis による実験的腎盂腎炎における腹腔 Macrophage の機能亢進と感染防御効果の検討
    赤澤 信幸
    1985 年 76 巻 12 号 p. 1869-1879
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎盂腎炎に対する生体防御機構において, Macrophage (Mφ) が果たす役割を明らかにする目的で, Proteus mirabilis (P. mirabilis) によるラット逆行性腎盂腎炎を作成し, 腹腔Mφの Superoxide (O2-) 生成能をその機能の指標とし, 感染腎の病理組織学的 grade および mortality rate を感染防御効果の指標として検討を加えた. 薬剤により生体防御機機構を修飾した状態で両指標の変動を比較検討した結果, Mφの感染防御的役割について, 以下の知見を得た.
    1) P. mirabilis 膀胱内接種後7日目の腹腔MφのO2-生成能は, 正常ラットのそれとくらべ明らかに増強した.
    2) 生体防御機構に修飾を加えたラットに P. mirabilis を膀胱内接種した結果, 腹腔MφのO2-生成能はMφの機能亢進剤 (Diethylstilbestrol) で有意に増強, 免疫賦活剤 (OK432) で増強傾向を認めたが, 免疫抑制剤 (Cyclophosphamide) およびMφの機能抑制剤 (Carrageenan) では, 有意の減弱および検出限界以下であった.
    3) 感染腎の病理組織学的 grade および mortality rate を指標とした感染防御効果の検討では, OK432を投与した場合にのみその効果がみとめられ, Cyclophosphamide, Carrageenan 投与のみならず Diethylstibestrol 投与においてもその効果は認められなかった.
    これらの結果より, Mφは P. mirabilis の感染により機能亢進を示すが, Mφの機機能充進剤およびMφの機能抑制剤投与下ではO2-生成能には変化をきたすものの, 感染腎の grade と mortality rate を総合した感染防御能の検討では差を認めず, 本実験系における感染防御効果としては従たる役割であると考えられた.
  • 高井 計弘, 鈴木 徹, 新島 端夫
    1985 年 76 巻 12 号 p. 1880-1888
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    ヒト膀胱腫瘍表面所見に着目した松本らの内視鏡的分類の有用性を検定すべく, 35例の膀胱腫瘍を松本らの分類にのっとって分け, 各々で膀胱腫瘍最外層細胞表面の走査型電子顕微鏡観察による特徴, 腫瘍細胞の異型度膀胱腫瘍の層の厚さ, 膀胱腫瘍の臨床経過を調べてみた. (1) 対象症例は男26, 女9の計35例であり, 松本らの分類の bush type は14例, grapes type は16例, knoll type は5例であった. (2) 腫瘍悪性度との関係をみると, bush type では grade 1:43%, grade 2:57%, grade 3:0であり, grapes type では grade 1:25%, grade 2:63%, grade 3:13%であり, knoll type では全例 grade 3であった. (3) 細胞層の厚さの関係をみると, bush type, grapes type 間に有意の差はみられず, knoll type では細胞配列は無秩序で数は数えられなかった. (4) 腫瘍最外層細胞表面形態との関係をみると, bush type では plemorphic microvilli の多様性 (pleomorphism) の少い最外層細胞が多く, grapes type では pleomorphic microrilli のplemorphism の高い細胞が多い傾向を示した. knoll type では表面無構造のものが多かった. (5) 臨床経過とり関係をみると, bush, grapes type の間に再発頻度に関して差はみられなかったが, grapes type では浸潤性癌に進行したものがあった. knoll type は全例膀胱全摘除術を施行した. 以上の結果より膀胱腫瘍表面の形態に注目した松本らの内視鏡的分類は従来の細胞悪性度分類や腫瘍表面の微細形態分類と完全に一致した関係は得られなかったが, 比較的良い相関を示した. 今後さらに症例を重ねて検討する必要があると思われた.
  • 岡田 清巳, 吉田 利夫, 平野 大作, 朝岡 博, 北村 和子, 斎藤 忠則, 清滝 修二, 佐藤 安男, 熊谷 振作, 北島 清彰, 岸 ...
    1985 年 76 巻 12 号 p. 1889-1895
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    過去12年間当科において経験した416例の原発性膀胱腫瘍を基に予後規制因子および最善の手術療法に関して臨床的検討を行った. 腫瘍深達度は表在性腫瘍 low stage および浸潤性腫瘍 high stage の2群に分類した. 腫瘍異型度, 組織像は低異型度群 low grade と高異型度群 high grade の2群に分類した. 深達度と異型度, 組織像とは平行した関係がみられたが low stage-high grade ないしは high stage-low grade の症例も存在した.
    遠隔成績に関してこれらを4群に分けてみると, low stage-low grade 群が最もよく, high stage-hlgh grade 群が最も低い生存率であった. low stage-high grade 群および high stage-low grade 群はその中間にあり, 両者に有意の差はみられなかった. 次に癌死率をみると, low stage-low grade 群は低く, high stage-high grade 群は高く, low stage-high grade および high stage-low grade 群はその中間にあり, ほぼ同じ癌死率であった. 手術療法別解析により low stage-low grade 群は膀胱保存療法でコントロール可能であり, low stage-hlgh grade 群は膀胱全摘が必要な場合もあり, high stage-low grade 群では根治的膀胱全摘術がのぞまれる. high stage-high grade 症例はTURなどの膀胱保存療法ではコントロール不可能であり, 根治的膀胱全摘術を行うべきと考える.
  • 各種条件下の尿中γ-カルボキシグルタミン酸排泄量について
    中村 章一郎, 平石 攻治, 白根 由美子, 米澤 正隆, 黒川 一男
    1985 年 76 巻 12 号 p. 1896-1900
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    われわれは, カルシウム (以下Ca) 結石症患者の尿中γ-カルボキシグルタミン酸 (以下Gla) 排泄量が健常者に比し低値を示すことはすでに報告した. この理由として, Gla がCa結石形成の抑制因子として働いているのかもしれないが, ただ単に結石表面に吸着されているだけかもしれない. このことを明らかにするために, Ca結石存在下と非存在下における尿中Gla排泄量を比較検討した. また, 尿中Ca排泄量の変化に対し, Gla排泄量はいかに変動するのかをみるために, 特発性高Ca尿症患者において, 低Ca食前後, およびサイアザイド剤投与前後の尿中Gla排泄量を比較検討した.
    結石存在下では, 男性 (n=12) では, 38.3±8.6μmol/dayで, 女性 (n=7) では, 30.7±5.3μmol/dayであり, 結石摘出後は, 男性で42.2±5.7μmol/dayと増加傾向にあり, 女性では39.5±7.0μmol/dayと有意に増加した (p<0.01).
    低Ca食前では, 男性 (n=17) 39.5±8.6μmol/dayで, 低Ca食後は41.6±7.3μmol/day, 女性 (n=6) では, 34.5±7.8μmol/dayから37.0±4.4μmol/dayといずれも有意差は認められなかった.
    サイアザイド剤投与前では, 男性 (n=11) 40.9±7.1μmol/dayで, 投与後は45.2±7.5μmol/day, 女性 (n=10) では, 38.2±7.2μmol/dayから36.7±6.5μmol/dayといずれも有意差は認められなかった.
    以上の結果より, 尿中Gla排泄量は尿中Ca排泄量の変動による影響は受けず, 尿中Glaが結石に吸着されている可能性があると考えられた.
  • 長倉 和彦, 中村 宏, 早川 正道, 田崎 寛
    1985 年 76 巻 12 号 p. 1901-1908
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    近年, いくつかの癌細胞に対し分化誘導作用のあることが認められているビタミンD3の, ヒト腎細胞癌培養株KU-2ならびに Caki-1 の増殖に対する効果とこれらの細胞のビタミンD3に対するリセプターの存在について検討した. その結果, ビタミンD3代謝物はこれらの細胞の単層培養における増殖と軟寒天培地における clonogenicity を抑制した. また, KU-2と Caki-1には, ともに活性型ビタミンD3である1α, 25-dihydroxyvitamin D3に対して特異的に結合する3.2Sのリセプター蛋白の存在することが判明し, リセプター結合量は各々87, 17fmol/mg protein であった. 比較したビタミンD3代謝物中では1α, 25-dihydroxyvitamin D3が最も増殖抑制能が高く, 次いで1α, 24R, 25-trihydroxyvitamin D3, 25-hydroxyvitamin D3, 1α-hydroxyvitamin D3, 24R, 25-dihydroxyvitamin D3の順であり, これはリセプターに対する結合親和性と良く相関した. 以上の結果はビタミンD3による腎癌細胞の増殖と clonogenicity に対する抑制がリセプターを介するものであることを示し, また, 活性型ビタミンD3は, 腎細胞癌の発生や増殖, あるいは他の細胞機能の発現に対する制御因子の一つである可能性を示唆した.
  • 長倉 和彦, 高尾 雅也, 松崎 章二, 家田 和夫
    1985 年 76 巻 12 号 p. 1909-1913
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    medroxyprogesterone acetate とOK-432により肺転移巣の完全退縮をみた稀な腎細胞癌の一例を報告する。
    症例は59歳の男性で, 血疾を主訴に来院, 胸部X-P上, 無数の小円形陰影を認め, 諸検査の結果, 左腎腫瘍と肺, 副腎転移と診断した. ただちに左腎・副腎全摘術を行い, 組織学的に淡明細胞を中心とする腎細胞癌と同側副腎転移と診断, また肺腫瘍に対しては気管支鏡的肺生検を行い, 腎癌の転移であることを確認した. adjuvant 療法としては vinblastine の投与を行ったが無効であったため, OK-432の投与を開始, 更に medroxyprogesterone acetate 100mg/dayの内服を始めたところ, 1カ月後より肺転移巣の退縮がみられ, 2カ月半後には完全消失した. その後, 再発の徴候はなく, 手術後1年, 完全寛解8カ月後の現在, 全身状態も極めて良好である.
  • 中辻 史好, 林 美樹, 橋本 雅善, 丸山 良夫, 馬場谷 勝廣, 平尾 佳彦, 岡島 英五郎
    1985 年 76 巻 12 号 p. 1914-1918
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    膀胱原発の Malignant fibrous histiocytoma (以下MFHと略す) は極めてまれであり, 本邦では現在までに1例のみ報告されているにすぎない.
    本症例は排尿困難を主訴として1982年6月4日当科を受診し, 膀胱鏡にて頂部右側に直径約2cmの表面平滑な腫瘍と三角部に小豆大の乳頭状腫瘍を認めた. 入院時諸検査に異常を認めなかった. 膀胱二重造影, 膀胱エコー, 膀胱CT及び骨盤動脈造影にて頂部の腫瘍は臨床的深達度T3a, 三角部の腫瘍は臨床的深達度T1の診断のもとに7月28日TURBtを施行した. 病理組織学的に頂部の腫瘍はMFH, 三角部の腫瘍は Inverted papilloma と診断され, 頂部の腫瘍に対しては8月10日膀胱部分切除術を施行した.
    術後 vincristine 1mg, peplomycin 10mg, adriamycin 30mgによる多剤併用化学療法を3コース施行し, liniac 4,200radを照射した. 術後28カ月現在, 再発転移を認めず, 経過観察中である.
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