日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
76 巻, 4 号
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  • 第VI報: ヌードマウス移植ヒト膀胱癌株, 前立腺癌株に対する放射線療法
    長谷川 潤
    1985 年 76 巻 4 号 p. 467-472
    発行日: 1985年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    ヌードマウス可移植性ヒト膀胱癌 (NM-B-1), 前立腺癌 (Pro-1) を用いて放射線治療の効果を検討した. NM-B-1は低分化型移行上皮癌, Pro-1は低分化型腺癌で, NM-B-1の24~27代継代株, Pro-1の35~38代継代株の生着率はともにほぼ100%, 増殖状態も安定していた. 腫瘍の皮下移植後2週の時点で linear accelerator 電子線による局所照射を行った. 治療効果は腫瘍増殖曲線, 光顕所見, 電顕所見より検討した. 各照射群における腫瘍体積の標準偏差は比較的小さく, 放射線感受性試験として適していた. 腫瘍増殖曲線上NM-B-1では12Gy, Pro-1では6Gy以上で有意の抗腫瘍効果が認められ, 効果には線量依存性がみられた. NM-B-1, Pro-1ともに18Gy照射後2週の光顕, 電顕像で間質の変性, 腫瘍細胞の破壊像が認められた.
  • 第VII報: ヌードマウス移植ヒト膀胱癌株, 前立腺癌株に対する化学・放射線併用療法
    長谷川 潤
    1985 年 76 巻 4 号 p. 473-482
    発行日: 1985年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    ヌードマウス移植ヒト膀胱癌株 (NM-B-1), 前立腺癌株 (Pro-1) を用いて化学・放射線併用療法の効果を検討した. NM-B-1は低分化型移行上皮癌, Pro-1は低分化型腺癌であり, NM-B-1の24~27代継代株, Pro-1の35~38代継代株の生着率はともにほぼ100%, 増殖状態も安定していた. 治療は制癌剤の腹腔内投与と linear accelerator による1回照射を併用した. 各株における各治療法の単独での感受性はすでに判明しているので, 最小有効濃度, 最小有効線量より低い量を組合せ, 治療した. 治療効果は腫瘍増殖曲線, 光顕所見, 電顕所見より評価し, 以下の結論を得た. I) NM-B-1を用いた実験では, 腫瘍増殖曲線上, CDDP, BLM, PEPの各薬剤と照射の併用は抗腫瘍効果を増強させた. II) Pro-1を用いた実験では, 曲線上CDDP, PEP, 5FUの各薬剤は照射との併用で抗腫瘍効果の増強を認めた. MMCは照射と併用しても抗腫瘍効果の増強はみられなかった. III) MMCまたは5FUと照射の併用群を除くすべての群で, 光顕, 電顕所見上, 細胞質の空胞化ないし浸出性破壊像と間質の浮腫硝子化が特徴的であった.
  • 第1報: Flow cytometric DNA analysis による膀胱癌の悪性度評価の試み
    吉川 和行
    1985 年 76 巻 4 号 p. 483-490
    発行日: 1985年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    65例の膀胱癌 (移行上皮癌) について Flow cytometric DNA analysis を行った. 検体処理には rapid detergent mothod を, DNA染色には propidium iodide を用いた. “腫瘍細胞のG1期の peak channel number と diploid standard のG1期の peak channel number との比”DNA index (DI) を算出し ploidy を判定した.
    1) 65例中 diploid のものが20例(30.8%)あった. aneuploid のものは45例 (69.2%) 認めたが, そのうち6例に2つの異なる ploidy の clone を認め, 1例に3つの異なる clone を認めた. ploidy の確認方法の限界と腫瘍のごく一部からしか sampling していないことを考え合わせると, 膀胱癌の clonal heterogeneity の頻度はもっと高いものと思われた.
    2) Flow cytometry の結果と grade, stage とを比べると, a) grade が上がるにつれ diploid の占める割合が減少し, aneuploid の占める割合が増加した. grade が上がるにつれDIの平均値は有意に増加した. b) stage が進むと diploid の占る割合が減少し, aneuploid の占める割合が増加した. DIの平均値はpTa: 1.24±0.32, pT1:1.62±0.74, pT2~4:1.90±0.54であり, pTaとpT1及びpT2~4との間に有意差を認めた. 即ちDI値は浸潤型の方が非浸潤型より有意に高値を示した. これよりDIは膀胱癌のinvasive potential の指標となることが示唆された. 以上より, flow cytometric DNA analysis は膀胱癌の悪性度を迅速, 客観的かつ定量的に評価できる方法であると期待された.
  • 島田 憲次, 生駒 文彦
    1985 年 76 巻 4 号 p. 491-501
    発行日: 1985年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    尿管拡張が膀胱壁より頭側に少し離れた位置から始まる. いわゆる長い narrow segment を有する巨大尿管症例は稀であり, その成因も不明な点が多い. 過去10年間に当科で手術を行った1cm以上の narrow segment をもつ10症例10尿管を対象に検討を加えた.
    (1) レ線上の尿管拡張は軽度2尿管, 中等度3, 高度5であつた. 腎機能がほぼ正常なもの2腎, 機能低下6, 無機能2であつた. VURは認められなかつた.
    (2) Narrow segment の長さは1cmから6cmであつた. 拡張部と narrow segment との移行部が尿管外より圧迫あるいは牽引されていたのは6尿管で, 内訳は臍動脈4尿管, 精管1, 結合織帯1であった.
    (3) 手術方法は7尿管に下部尿管を切除し, 尿管膀胱新吻合術を加えた. 2尿管では圧迫血管切断し, 圧迫部の尿管分節切除のうえ尿管尿管吻合術を加えた. 他の1尿管では圧迫血管切断し, 尿管形成術を加えた.
    (4) 組織学的には拡張部尿管壁は8尿管で検討でき, うち6尿管では筋束肥大過形成, 1尿管では筋束無形成, 他の1尿管では正常筋層を示していた. Narrow segment は検討できた7尿管全例正常の筋層を示していた. 移行部は6尿管で検討でき, 3尿管は正常であつた. その他の1尿管で部分的に変性した輪走筋のみがみられ, また別の2尿管では筋束の減少が観察された.
    このような手術所見, 組織学的所見より, 先天性巨大尿管の原因として胎生期の血管による圧迫の可能性を考察した.
  • 八竹 直, 上舘 民夫
    1985 年 76 巻 4 号 p. 502-507
    発行日: 1985年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    ガスクロマトグラフィー法による尿中蓚酸の測定方法の検討を行い, エステル化剤を従来の10%塩酸-メタノール溶液にかえて, 10%塩酸-n-ブタノール溶液を使用することにより, 抽出溶媒と蓚酸のエステル化物との分離能を大幅に改善した. 分離能が改良されたうえに, 測定に要する時間は従来と同じ1検体あたり15分間で終了する. 添加回収率は97%であり, 同時再現性は変動係数で2.3% (n=8) であった. また, 本法によって成人健常人の24時間尿中の蓚酸濃度を測定した結果, 平均で34.7±9.3S. D. mg/day (n=35) であった.
    本法は凍結乾固後, エステル化反応を行うだけで簡単にしかも高感度に尿中の蓚酸を測定でき, 日常検査にも十分使用できるものである.
  • 第2報 網内系の役割について
    畠 亮, 橘 政昭, 出口 修宏, 早川 正道
    1985 年 76 巻 4 号 p. 508-515
    発行日: 1985年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    前報において制癌剤をリポソームに封入すると徐放性によって抗腫瘍効果が増強されることを報告した. その際, 腹腔内に注射したリポソーム封入薬剤が, 脾, 肝などのRESに選択的にとり込まれることに着目した. 今回は, RES機能をあらかじめブロックしてからリポソーム封入BLMを注射すれば, 腫瘍内BLM濃度が上昇し, 抗腫瘍効果がさらに増強されるのではないかという可能性について検討を加えた.
    Fesin (含糖酸化鉄) あるいは単味のリポソームを投与して, あらかじめ担癌マウスのRES機能を過飽和状態にしてからリポソーム封入BLMを腹腔内投与した. そして12時間と24時間後の腫瘍内BLM濃度を測定したところ遊離BLM投与の場合と比較して, それぞれ1.7~3倍, 1.7~2.7倍の濃度上昇を認めた. さらに担癌マウスをRESブロック群と非ブロック群に分け, それぞれリポソーム封入BLMを投与したあと10日間, 腫瘍径を測定して growth rate をもとめた. そして両群間で growth rate の平均値を比較し, 腫瘍縮小効果を判定したところ, RESブロック群においてより強い腫瘍縮小効果が確かめられた. しかしこの効果は48時間までで, 3日目以降には rebound 現象があらわれ, RESブロック群の腫瘍縮小効果は減弱した.
    われわれの実験結果を臨床に応用することを前提として考えられる問題点につき検討を加えた.
  • 第1報: Contact-Micro-Colpohysteroscope による膀胱上皮細胞の観察
    中尾 昌宏, 三品 輝男, 小林 徳朗, 前川 幹雄, 中川 修一, 豊田 和明, 渡辺 決
    1985 年 76 巻 4 号 p. 516-520
    発行日: 1985年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    生体の膀胱上皮細胞の細胞レベルでの観察が可能な contact-micro-cystoscopy の開発に関する基礎的研究として, 各種生体染色用色素の膀胱上皮細胞に対する染色性について検討を行った.
    生体染色用色素としてメチレンブルー, トルイジンブルー, チオニンおよびクレシールバイオレットアセテートを用い, 膀胱上皮細胞の観察には Storz 社製 Contact-Micro-Colpohysteroscope 26156Bを使用した.
    イヌの膀胱を摘出し, 上記色素で上皮細胞に染色を施して観察を行ったところ, クレシールバイオレットアセテートの染色性が最も良好であった. また膀胱腫瘍患者の膀胱全摘除術後の膀胱を, クレシールバイオレットアセテートを用いて染色を施し観察すると, ある程度の病理組織学的診断が可能であった.
    本法は装置の改良により, 生体への応用も可能であると考えられる.
  • II: 培養細胞株KU-2の腫瘍形成能について
    長倉 和彦
    1985 年 76 巻 4 号 p. 521-527
    発行日: 1985年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    ヒト腎癌細胞由来培養株KU-2の heterogeneity 解析の一環として, KU-2とクローン株N-2, 3, 5~11, 13の腫瘍形成能および natural killer (NK) 細胞に対する感受性について検討した.
    In vitro における clonogenicity, 即ち軟寒天中のコロニー形成をみると, 104コ/mlの細胞濃度においてKU-2は45.7%と高い plating efficiency (PE) を示したが, クローン株では6.8%~54.9%と, クローンにより差がある事が判明した. そこで, これらよりN-7 (PE=21.7%), N-8 (40.0%), N-10 (22.1%), N-13 (6.8%) を選び, KU-2と共にヌードマウスでの腫瘍形成能について検討した. 2~5×107コの細胞を側腹部に皮下注した結果, KU-2, N-8, N-10では各々3/5, 2/6, 3/6に腫瘍形成を認めたが, N-7, N-13では全く腫瘍形成を認めなかった. 次いで, 腫瘍形成能とNK感受性との関連について解析するため, ヒトPBL中のNK細胞による細胞障害作用を51Cr-releasing assay により検討した. その結果, NK細胞による障害に対して最も抵抗性を示したのはN-8で, 次いでN-10, KU-2, N-13, N-7の順であった.
    以上, KU-2が異なる腫瘍形成能を持つ細胞より成ること, 腫瘍形成能は in vitro における clonogenicity とNK抵抗性に正の相関を示すことが判明した. 更に parent cell であるKU-2は高い腫瘍形成能を示しており, これからN-7, N-13の様な腫瘍形成能の低いクローンが分離されたことは, 腫瘍細胞の一部はより分化型へと移行する可能性があると考えられた.
  • 安藤 正夫, 武田 裕寿, 水尾 敏之, 安島 純一, 牛山 武久, 平賀 聖悟
    1985 年 76 巻 4 号 p. 528-539
    発行日: 1985年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    神経学的に正常な男子30例と, 脊髄損傷, 脊髄圧迫疾患, 脳血管障害, Parkinson 病, 糖尿病など種々の神経疾患を有する170例, 合計200例の男子症例について, 誘発筋電図法による球海綿体反射 (以下誘発BCRと略) を検討した. 方法は, 陰茎部を矩形波にて電気刺激し肛門括約筋誘発電位を表面電極にて導出. 50~150回の誘発電位を加算平均して潜時を測定した. 同時に, 尿流測定, 膀胱内圧測定, 尿道内圧測定などの urodynamic 検査も行い, 次のような結果が得られた.
    1) 対照群の誘発BCRは全例陽性で, 潜時は27~42msec (32.2±4.0msec: mean±S. D.).
    2) 頚損群では全例誘発BCR陽性で潜時も正常であったが, 下部胸髄, 腰・仙髄損傷群では, 34例中9例 (26%) は誘発 BCR 陰性で, 2例 (6%) で潜時が延長していた.
    3) 脊髄群で誘発 BCR 陰性例は全例膀胱内圧曲線上無反射型を示し, 最高尿道内圧が誘発BCR陽性例と比較し有意に低値を示した.
    4) 脊髄圧迫疾患群91例中, 3例 (3%) に誘発BCRの潜時延長を認めた.
    5) 脳疾患群の誘発BCRは全例陽性で潜時も正常であった. その他の群では直腸腫瘍術後再発の1例で著明な潜時延長を認めた.
    今回の成績から, 誘発BCRには種々の問題点は残されているが, 仙髄反射弓に関する客観的検査法として有用であり, urodynamic 検査法の有力な補助的診断手段の1つになり得ると考えられた.
  • 宮内 大成, 伊藤 晴夫, 村上 光右, 山口 邦雄, 臼井 利夫, 甘粕 誠, 桜山 由利, 島崎 淳
    1985 年 76 巻 4 号 p. 540-545
    発行日: 1985年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    昭和50年1月から, 昭和56年12月まで千葉大学泌尿器科を受診した患者で, 静脈性腎盂造影を施行した6,520例中, 海綿腎と診断された者は, 男子15例, 女子21例であり, 頻度は0.55%であった. 海綿腎で結石を有する者は29例で, この間の結石患者新患数は940例で, 頻度は3.1%であった.
    主訴は結石に関するものが多いが, 結石の無い者では, 肉眼的血尿を主訴とするものが多かった.
    PSP試験, クレアチニン・クリアランスで低下を示すものは少なく, 経過中に悪化を示すものは少なかったが, 低下するものもあり, 注意が必要である. 尿酸性化障害, 高カルシウム尿の頻度は, それぞれ23例中3例, 26例中5例と高くなく, 単なる合併と思われた. 濃縮力試験では18例中9例が低下しており, 低下例全例に結石を認めた.
    結石は18例中10例に増加, 増大を認めた. 何れも小結石であるが, 注意が必要である.
    海綿腎のX線像は, 副甲状腺機能亢進症, 尿細管性酸血症等のX線像と異なり, 単一疾患と考えてよいと思われた.
  • 1. ヒトLDH-X (C4) の精製・分離
    内島 豊, 平賀 聖悟, 根岸 壮治
    1985 年 76 巻 4 号 p. 546-553
    発行日: 1985年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    精巣組織および射精液中のみ認められる乳酸脱水素酵素-X(C4)〔LDH-X〕の精製・分離を試みた. (対象) 当科および東京医科歯科大学泌尿器科不妊外来を受診した症例より得た射精液を用いた. (方法並びに結果) 射精液を遠心分離後, その上清に対して40~60%硫安塩析法で得られた試料を500μMNADH含有緩衝液と共に oxamate-Sepharose カラムにかけてLDHを結合させ, 1.6mM NAD+含有緩衝液でLDHを溶出させた. LDH-1の方がLDH-5より遅くカラムより溶出し, LDH-Xは分画No. 18から分画No. 21の間の溶出液中にのみ認めた. Oxamate-Sepharose カラムクロマト法で得られた試料を緩衝液と共に AMP-Sepharose カラムにかけてLDHを結合させ, (i) 1.6mM NAD+含有緩衝液, (ii) 500μM NADH含有緩衝液でLDHを溶出させた. (i)より得られたLDHは活性染色および蛋白染色で1本のバンドのみを示し, そのバンドは射精液中LDH-Xのバンドと同じ位置に泳動した. 最終的にLDH-X活性は平均28.135±5.447mU/mg protein と著明に高くなり, LDH比活性は最低345から最高664倍の増加を示した.
  • 特に術前照射の意義について
    山田 拓己, 福井 巌, 関根 英明, 大和田 文雄, 横川 正之, 堀内 淳一, 渋谷 均
    1985 年 76 巻 4 号 p. 554-559
    発行日: 1985年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1975年から1981年の7年間に, high stage (T2~T4) 及びhigh grade-low stage (T1) の膀胱腫瘍患者52例に対し放射線治療を施行した. このうち23例では2,000~4,000radの術前照射に引き続き膀胱全摘を, 4例では膀胱部分切除が行なわれた. 主として70歳以上の高齢者や膀胱全摘を拒否した25例には5,000~6,000radの治癒的照射が行なわれた.
    1) 術前照射群のT1, T2, T3の3年および5年生存率は, それぞれT1で100%~100%, T2で80%~43%, T3で45%~23%であった.
    2) 放射線治療による downstaging は全体で45% (21/47) にみられた. 組織型別にみると非乳頭状微小浸潤癌では100% (7/7) と高率にみられたが, 表在性乳頭状癌では50% (4/8), 浸潤癌では31% (10/32)と 低率であった.
    3) 術前照射を施行した浸潤癌症例のうち, downstaging のみられた6例では, 3年生存率100%, 5年生存率57%と比較的予後良好であったが, downstaging のみられなかった16例では, 3年生存率50%, 5年生存率11%と不良であった.
    4) 術前照射群では, 局所再発の頻度は7% (2/27) と少なかったが, 遠隔転移の発生は22% (6/27) と多かった.
    また, 全転移例の58%は1年以内に, 92%は3年以内に発生した.
  • 黒田 俊, 浜尾 巧, 黒子 幸一, 吉尾 正治, 中野 勝, 星野 孝夫, 末永 直, 長田 尚夫, 井上 武夫, 田中 一成
    1985 年 76 巻 4 号 p. 560-568
    発行日: 1985年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    前立腺肥大症 (BPH) の手術である, TUR, open prostatectomy (OPEN), 凍結手術 (CRYO) について検討した. 1974年5月より1984年2月まで約10年間に手術を行なったBPH患者290名を対象とした.
    術後カテーテル留置期間の平均は, TUR 5日, OPEN 10日, CRYO 15日, また術後入院期間の平均は, TUR 15日, OPEN 28日, CRYO 38日であった. 術後合併症はOPENに最も多く発生し, 再手術はCRYOに最も多かった.
    TURは術後合併症の発生が少なく, カテーテル留置期間も短かく, したがって早期退院が可能であった.
    BPHは良性疾患であり, 安全性と確実性の高い手術が希望され, 手術法の泱定は, 患者, 術者, 施設の諸条件で総合判断されるべきである.
    我々の教室では, CRYO は効果不安定のため現在はほとんど行なわれておらず, 術後合併症の軽減, 術後早期退院を目的とすれば, TURが最も有利な手術法と考えている. しかし, 大きなBPHに対しては, TURよりOPENの方がより確実な手術法と考えている.
  • 第1報 1,120例の生存率
    横川 正之, 福井 巌, 関根 英明, 山田 拓己, 野呂 彰, 根岸 壮治, 細田 和成, 河合 恒雄, 鷲塚 誠, 酒井 邦彦, 斉藤 ...
    1985 年 76 巻 4 号 p. 569-574
    発行日: 1985年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1960年から1982年までに東京医科歯科大学および関係病院の泌尿器科において初回治療をうけた膀胱腫瘍患者1,120例を集めて生存率を算出した. 全体としての生存率は2生率73%, 3生率68%, 5生率61%, 10生率51%であった.
    つぎに, この生存率に影響を与えるであろう9つの因子について, 生存率との関係を求めた. 患者側因子としては, 初回治療時の年齢が高齢の場合より若年の場合が, 女性より男性の生存率が良好であった. 腫瘍側因子としては, 多発腫瘍より単発, 大きい腫瘍より小さい腫瘍, Tカテゴリーの低いもの, 病理学的 grade が高いものより低いものの生存率が良好であった. 細胞型では移行上皮癌に比して扁平上皮癌, 腺癌はかなり不良であった. 治療方法に関してはTURの成績が最もよく, 膀胱全摘が最も不良, 膀胱部分切除などの切開手術がその中間の成績であったが, これは術式の優劣というより, 対象とした腫瘍の性質が反映されたものと考えられた.
    最後に, 1960年以来23年間の治療成績を年代別に5グループに分けて比較したところ, 年を追って最近になるほど成績が向上していることがうかがえたが, これには多くの因子が関与した結果であろうと考えられた.
  • 水腎尿中成分と水腎の機能回復について
    斎藤 雅昭
    1985 年 76 巻 4 号 p. 575-587
    発行日: 1985年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    臨床上, 閉塞性腎障害である水腎症に対して, 保存的に治療すべきか腎摘をすべきか苦慮することが多い. これは水腎の機能回復を予知できないためである. そこで著者は水腎の機能回復に必要な条件を明らかにするため以下の実験を行った.
    実験方法: 雑種雌犬50頭を用いて一側尿管を完全結紮して水腎症を作製し, 閉塞朔間に伴う水腎の尿中成分及び腎機能の各種パラメーターの推移を観察した. また閉塞を解除した後, 対側尿管を結紮し, 閉塞何週までの腎が単腎で生命維持可能なレベルまで機能が回復するかを観察した. そして水腎の機能回復に必要な条件を検討した.
    結果: (1)脱水時UUN, Cr, Kは閉塞期間とともに低下した. また分腎尿量比, 自由水クリアランス, 浸透圧クリアランスも閉塞期間とともに低下した.
    (2) 閉塞解除時の尿中成分及び腎機能の各種パラメーターの数値を, 機能回復群と非回復群の2群に分け有意差を検討した. 脱水時の水腎尿浸透圧, K濃度及び利尿時の自由水クリアランス, 分腎尿量比に有意差 (p<0.01) を認めた. それぞれ320mOsm/l, 16mEq/l, 0.07ml/分, 0.2以上を示した水腎は単腎で生命維持可能なレベルにまで機能回復すると考えられる.
    (3)単腎で生命維持可能なレベルにまで機能が回復するのは閉塞5週の水腎までであった.
    (4)NAG活性は水腎では正常腎より高値を示したが, 回復能を示すパラメーターとはなり得なかった.
  • 木村 明, 簑和田 滋, 友石 純三, 木下 健二, 松田 忠義
    1985 年 76 巻 4 号 p. 588-591
    発行日: 1985年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は51歳女性. 無症候性血尿にて1981年7月来院. 左尿管腫瘍の診断にて, 9月10日左腎尿管全摘術を施行した. 腫瘍は筋層を越え周囲組織に浸潤していた. 1982年2月, 左側腹部皮下, 後腹膜腔に再発を生じた. Cis-diamminedichloroplatinum 300mg投与と放射線療法を行なったところ, 完全寛解にいたり, 2年後の現在も再発転移を認めない.
    Cis-diamminedichloroplatinum と放射線療法の相乗効果につき文献的考察を行なった.
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