腎盂, 尿管腫瘍の確定診断には, レ線及び画像診断に加えて, 尿細胞診での悪性細胞の確認が, 重要な位置を占める. 今回我々は, 昭和50年4月より昭和60年3月までの11年間の, 腎盂, 尿管腫瘍患者53例につき, 術前レ線及び画像診断と細胞診診断に関して検討し, 以下のような結果を得た.
レ線診断では, 腫瘍を疑わせる直接所見は逆行性腎盂造影で92.9%, 腎穿刺造影で100%と非常に高率であった.
尿細胞診全体での正診率は, 52.0%であった. 自排尿細胞診の正診率は, 32.7%と低いが, 尿管カテーテル尿で64.3%, 擦過細胞診で57.1%, 腎穿刺腎盂尿では75.0%と高い正診率を示した. このうち, 昭和57年4月以降の岩最近3年間について見ると, 尿細胞診全体での正診率は, 75.0%と向上していた.
腎盂腫瘍では, 自排尿細胞診の正診率は, 81.8%と高かったが, 尿管腫瘍では, 38.5%であった. しかし, 後者に対しては, 腎穿刺腎盂尿細胞診で83.3%と高い正診率を示した.
腫瘍の grade 及び stage と, 尿細胞診の陽性率の間には, 明らかな関係は認められなかった.
以上より, 腎盂, 尿管腫瘍に対しては, 擦過細胞診, 腎穿刺腎盂尿の細胞診などを含めた細胞診検査が, その診断率の向上に有用であると考えられた.
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