日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
77 巻, 11 号
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  • 第9報 実験的破砕装置の緩衝液中の爆轟波圧測定とその臨床応用
    近藤 和秀
    1986 年 77 巻 11 号 p. 1716-1725
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    微小発破による尿路結石破砕の際に, 爆薬の動的作用である衝撃波は結石にひび割れを起こし, 結石破砕に有用であるが, 爆薬の静的作用である生成ガスは, 臓器損傷などの生体への副作用を起こす可能性があって, 有害であった. そこで, 生成ガスを抑制するために緩衝液の必要性を考え, 水とグリセリンを選択し, その中で爆薬室を爆発させて爆轟波のピーク圧測定を行い, 生成ガスの緩衝作用, 緩衝液中の爆薬, 爆薬室の性能などについて検討し, 以下の結論を得た.
    1) 緩衝液中の微小発破においても, 一般の産業用発破と同様に相似法が成立した.
    2) 緩衝液中の各角度におけるピーク圧と換算距離に関して, 一定の実験式が成立した.
    3) 緩衝液中と空中とのピーク圧測定結果を比較することにより, 緩衝液は生成ガスをほとんど抑制してしまうことが証明された.
    4) これらの事実を, 17例の臨床例における膀胱結石破砕に際して確認した.
  • 白浜 勉
    1986 年 77 巻 11 号 p. 1726-1732
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    γ-GTP酵素活性におよぼす温阻血腎の影響をラットを用いて検討した.
    尿中γ-GTP酵素活性には, 日内変動が認められた. さらに, 尿中γ-GTP酵素活性は, 腎阻血の時間的経過と相関し, 30分阻血後に最大値となるが, 5分阻血後には, 軽度の増加しかみられず, 60分阻血後には酵素活性の増加は認められなかった.
    腎阻血後の尿中酵素活性の増加は, 可溶性分画よりも不溶性分画に多いことから, 近位尿細管の刷子縁に結合した形で尿中に排泄されたものと考えられた.
    腎阻血後, いったん減少した腎組織中酵素活性は, 60分阻血後に血流を解除した場合, 7日後に正常に復した. しかし, 120分阻血後には, このような酵素活性の回復がみられなかったことから, 腎臓の viability は, 腎組織中γ-GTP酵素活性から推測しうることが示唆された.
  • 家兎拡張尿管モデルおよびヒト拡張尿管での検討
    胡口 正秀
    1986 年 77 巻 11 号 p. 1733-1744
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    拡張尿管における収縮蛋白含量の変動を, 家兎モデルを用い尿管全層内含量と筋層内含量とに分けて検討した. 収縮蛋白ゐ全層内含量は尿管の組織学的変化と一致せず, 尿管の平滑筋筋量の変化を反映しなかった. 一方, 筋層内含量は拡張尿管では正常尿管と比較して変化していなかったが, この結果は, 拡張尿管における平滑筋の収縮力も変化していなかった事実とよく一致していた.
    この基礎的検討を踏え, ヒト尿管においては筋層内収縮蛋白含量を測定した. ヒト正常尿管の収縮蛋白含量は, myosin: 6.33±1.07mg/g, actin: 7.08±1.17mg/gとほぼ一定であった. 一方,. ヒト拡張尿管では, myosin が1.00mg/gから15.52mg/g, actin が1,00mg/gから21.84mg/gと種々の値を示した. これらの拡張尿管は actomyosin (myosin+actin) 含量によって, high, normal および low content の3群に分類することができた. high content 群では, 筋層および筋細胞内の収縮蛋白が myosin, actin 共に増加し, 組織学的には筋肥大の所見を示した. low content 群になると平滑筋の萎縮と線維成分の増大が認められ, 筋細胞内の myosin と actin は著しく減少していた. normal content 群に属した尿管は, high と low content 群の中間に相当する所見を示した.
    以上から, 尿管筋層内の収縮蛋白含量は平滑筋収縮装置の変化をよく反映し, 今後, 臨床面で拡張尿管の診断と治療に貢献するものと思われる.
  • 大村 清隆, 熊本 悦明, 塚本 泰司
    1986 年 77 巻 11 号 p. 1745-1753
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    Salmon と Hamburger によって開発された clonogenic assay を用いて, 各種尿路性器癌におけるコロニー形成率と制癌剤の感受性につき検討した.
    対象は腎細胞癌25例, 尿路上皮癌25例, 前立腺癌2例, 陰茎癌3例, 睾丸腫瘍6例, 計61例の各種尿路性器癌である.
    採取した臨床材料別にみた5個以上のコロニー形成は, 原発巣由来の固形腫瘍37/53例, 転移リンパ節2/2例, 胸水2/2例, 腹水0/1例, 膀胱洗浄液1/3例であった. 薬効評価に必要とされる1 dish あたり30個以上のコロニー形成は, 固形腫瘍で27/53例 (51%) であった. 一方リンパ節, 胸水, 膀胱洗浄液からの材料では, 培養が成功した全例で薬効評価可能なコロニーの形成をみた. 尿路性器癌全体では32/61例(52%) であった.
    腫瘍別にみた薬効評価可能例数は, 腎細胞癌17/25例, 尿路上皮癌9/25例, 前立腺癌1/2例, 陰茎癌2/3例, 睾丸腫瘍3/4例であった. 腎細胞癌のコロニー形成が良好である点が注目された.
    制癌剤感受性試験は, 常用量を静注した場合に得られる血中最高濃度の1/20~1/10の薬剤濃度を用い, 1時間接触法にて行なった. 今回の検討では, 感受性薬剤は腎細胞癌1/27例 (3.7%) と尿路上皮癌1/46例 (2.2%) で得られたのみであった.
  • 腎静脈鋳型標本よりみた術式別術後腎機能に関する研究
    沖 守
    1986 年 77 巻 11 号 p. 1754-1766
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    各種腎手術を家兎腎に施行し, 生化学的データ, 腎静脈鋳型標本, 及び経時的病理組織学的検索により術式別優劣を中心とした検討を行った. 家兎の右腎を摘出後左腎に下記の手術を施行した. 1) 対照群 (右腎摘除術のみ), 2) 腎切半術, 3) 多発性腎切開術, 4) 楔状型腎部分切除術, 5) 横断型腎部分切除術, 6) 電気水圧衝撃波による腎結石破砕術.
    以上6群の手術を施行後, 6週間, 血清LDH活性・LDHアイソエンザイムを測定した後手術腎を摘出し, 腎静脈鋳型標本を作製した. さらに, 右腎摘出後8週経過した代償性肥大腎に腎切半術, 横断型腎部分切除術, 電気水圧衝撃波による腎結石破砕術を施行し術後の修復過程を病理組織学的に観察した. 腎静脈鋳型標本では血管の再生が認められ, 手術部に小血管の新生が観察された. この新生小血管は腎部分切除術において著明な拡張, 蛇行を呈した. 病理組織学的観察では術後1週目で全ての群に線維化が認められた. 線維化した組織内の手細血管は横断型腎部分切除術において最も拡張していた. 組織侵襲も横断型腎部分切除術で高度であった. 血清LDH活性, LDHアイソエンザイムは各手術群において有意差を認めず, 家兎においては術後の腎機能の指標とはなり得ないと判断された.
    静脈鋳型標本, 病理組織においてみられた血管の蛇行や拡張は, 実質縫合における張力によるところが大きいと予想された. 腎切半術, 電気水圧衝撃波による腎結石破砕術ではこれらの所見が殆ど見られず, 腎血管への影響が少ないと予想された. しかし, 電気水圧衝撃波による腎結石破砕術施行後6週の病理組織において, 電極刺入部とは異なった部位に二次的循環障害を疑わせる所見がみられたことは注目すべきである.
  • 実験病理学的研究
    柿木 宏介
    1986 年 77 巻 11 号 p. 1767-1778
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    水腎症の病理過程を解明するため, ウサギの左側腎孟尿管移行部を完全結紮して, 結紮後300日までの期間にわたり病理形態学的並びに腎孟撮影・顕微鏡的血管造影法 (microangiography: MAG) による検索を行ない, 以下の成績を得た.
    (1) 実験の早期に集合管・尿細管等の拡張と, その部の上皮の萎縮が生じた. この過程はネフロンの全域に及んだが, 腎孟に近い遠位側により強く, また, 直走する部分よりも迂曲部あるいは係蹄の頂の部, およびこれらの近傍の部により目立つという傾向を示した.
    (2) 尿細管上皮は次第に萎縮し, それに伴いミトコンドリアの小型化, 極性の消失, 液状の内容物を容れた大きなライソゾームの増加, 基底膜の肥厚・屈曲・蛇行, および上皮細胞との離開部の繊細な基底膜様構造の発達が見られた. 糸球体は比較的早期に係蹄上皮足突起の癒合, 毛細血管内皮の小孔の乱れや消失を来し, 最後には硝子化するものも認められた.
    (3) ボウマン嚢・尿細管等の拡張していた管腔が結紮後40日以降には狭窄に向かい, 腎盂も内腔の縮小を示し始めるようになった. 腎組織の萎縮と硬化はその後も進行を続け, ついには水腎症性萎縮腎というべき状態にまで進展した.
    水腎症は, 尿路の通過障害にもとつく圧迫性萎縮, 尿路の内圧亢進による阻血性萎縮, および糸球体の濾過機能の低下に伴う萎縮とそれぞれに続く硬化の過程が複雑に関連して進展していくものと考察された.
  • 岡野 達弥, 井坂 茂夫, 宮城 武篤, 佐藤 信夫, 島崎 淳, 松嵜 理, 堀内 文男, 五十嵐 辰男, 村上 信乃
    1986 年 77 巻 11 号 p. 1779-1783
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎盂, 尿管腫瘍の確定診断には, レ線及び画像診断に加えて, 尿細胞診での悪性細胞の確認が, 重要な位置を占める. 今回我々は, 昭和50年4月より昭和60年3月までの11年間の, 腎盂, 尿管腫瘍患者53例につき, 術前レ線及び画像診断と細胞診診断に関して検討し, 以下のような結果を得た.
    レ線診断では, 腫瘍を疑わせる直接所見は逆行性腎盂造影で92.9%, 腎穿刺造影で100%と非常に高率であった.
    尿細胞診全体での正診率は, 52.0%であった. 自排尿細胞診の正診率は, 32.7%と低いが, 尿管カテーテル尿で64.3%, 擦過細胞診で57.1%, 腎穿刺腎盂尿では75.0%と高い正診率を示した. このうち, 昭和57年4月以降の岩最近3年間について見ると, 尿細胞診全体での正診率は, 75.0%と向上していた.
    腎盂腫瘍では, 自排尿細胞診の正診率は, 81.8%と高かったが, 尿管腫瘍では, 38.5%であった. しかし, 後者に対しては, 腎穿刺腎盂尿細胞診で83.3%と高い正診率を示した.
    腫瘍の grade 及び stage と, 尿細胞診の陽性率の間には, 明らかな関係は認められなかった.
    以上より, 腎盂, 尿管腫瘍に対しては, 擦過細胞診, 腎穿刺腎盂尿の細胞診などを含めた細胞診検査が, その診断率の向上に有用であると考えられた.
  • 米国南西部泌尿器科研究班の経験
    森 勝志, Donald L. Lamm, E. David Crawford
    1986 年 77 巻 11 号 p. 1784-1789
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    総数162例の表在性膀胱腫瘍患者が, BCG注入療法の有効性をアドリアマイシン膀胱内注入と比較する目的で無作為に臨床検討された. 患者は, 全例3ヵ月毎の膀胱鏡, 尿細胞診及び膀胱生検により腫瘍の再発の有無について観察された. 固有粘膜層を越えない腫瘍の104例の内, 経尿道的切除後BCG療法を受けた52例の腫瘍再発率は, 12例 (23%) とアドリアマイシン治療52例中の34例 (65%) に比し, 有意に低く (p<0.001), 而もその再発迄の期間もBCG治療群で有意に延長していた (p=0.001). 一方, 上皮内癌 (Carcinoma In Situ) の58例において, 30例のBCG投与を受けた22例に腫瘍の消失を認め, その反応率は, アドリアマイシン注入群の28例中僅か8例にのみ消失を観察したものに比し, 有意に高値であった. この臨床研究の結果, BCG注入療法は, 表在性膀胱腫瘍の治療, 殊に, 上皮内癌に対してアドリアマイシン療法より優れている事が示唆された.
  • 柿崎 弘, 沼沢 和夫, 鈴木 騏一
    1986 年 77 巻 11 号 p. 1790-1795
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    ヒト膀胱癌由来の細胞を長期間にわたり継代培養した. 培養した組織は病理組織学的には, grade 3, pT3bの未分化細胞癌であった. 膀胱全摘除術を施行したが, 術後2週目に肺転移をきたし, CDDP, ADM, 5-FUなどの強力な化学療法にもかかわらず術後4週目に皮膚転移を認め, 6週目に癌死した.
    初代培養より16ヵ月, 88継代を重ね細胞株として樹立されたと考えられ, YTS-1と命名した.
    YTS-1はヌードマウス異種移植で腫瘍を形成し, 病理組織学的には原発の膀胱癌と同じ未分化細胞癌であった.
    初代培養における染色体分析では46と80前後にピークを認める二峰性のヒストグラムを示したが, 第65継代及び第83継代の染色体分析では80~81に mode を認めた.
    倍加時間は継代中変化なく20.2~22.5時間であり, コロニー形成率は100個当たり89.6±4.7であった.
  • I. ヒト腎癌細胞培養株を用いた再増殖法による抗癌剤感受性試験
    大沢 哲雄
    1986 年 77 巻 11 号 p. 1796-1804
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎癌に対する有効抗癌剤を選択するためにヒト腎癌培養細胞株を用いての再増殖測定法による抗癌剤感受性試験を行った. 標的細胞として腎癌由来株2種 (NRG-12, KU-2) および対照としてのヒト羊膜上皮細胞由来株 (FL) を用いた. 検討した薬剤はACNU, CQ, ADM, MMC, CDDPならびに5-FUの6種類であった. 薬剤負荷時間は2時間とし, 再増殖測定法にて各薬剤のそれぞれの培養株に対する90%致死濃度 (LD90) を求めた. このLD90の値を基に, (1) 治療係数 (薬剤の最大耐量/LD90), (2) 臨床係数(LD90/常用投与量での推定血中薬剤濃度), (3) 副作用係数 (LD90/FL株に対するLD90) の3係数を得た. これらの係数より各薬剤を比較検討した結果, NRC-12とKU-2の両腎癌株はCQとADMに強い感受性を示した. 他の4剤に対する感受性は低く, 両株の薬剤感受性にはある程度の共通性が認められた. 両腎癌株に対するLD90と正常羊膜上皮由来株に対するLD90を比較して得た副作用係数は, CQおよびADMは共に小さく, 両薬剤の腎癌に対する臨床効果が充分に期待できた.
    次に腎癌株に有効であったCOとADMのうち, ADMの臨床投与における血中および組織内濃度を測定した. ADM 40~60mg/body 静注後60~120分間は, in vitro で得た腎癌細胞に対するLD90に匹敵する血中濃度を維持しており, 組織内濃度も正常腎実質部より低濃度であったが, 腎癌腫部分にも高濃度にADMの集積が認められた.
  • II. Adriamycin と Carboquone 併用療法
    大沢 哲雄
    1986 年 77 巻 11 号 p. 1805-1813
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    In vitro にてヒト腎癌培養細胞が強い感受性を示した doxorubicine hydrochloride (ADM) と carboquone (CQ) を腎癌術後の adjuvant chemotherapy および進行 (advanced) 腎癌に対する化学療法として臨床的に用いて, その効果を検討した. 1978年から1983年の間の腎癌症例49例のうち, 20例に対してADM-CQ併用化学療法 (A-C療法) を adjuvant chemotherapy として行い (A-C群), その他の補助療法または腎摘のみの29例を対照とした.
    A-C群の3年相対生存率は72.3%で, stage 別の3年生存率は stage I が100%, stage II+IIIが75.8%, stage IV が17.4%であった. 対照群の3年相対生存率は61.7%で, stage 別の3年生存率は stage I が95.3%, stage II+IIIが80.2%, stage IV が24.5%であった. 両群間では有意差を認めなかったが, 今回の集計以前に行っていた術後放射線療法を中心とした時代に比べ, low stage 特に stage I の生存率は有意に向上しており, low stage 腎癌に対する術後 adjuvant chemotherapy が有用であることがわかった.
    進行 (advanced) 腎癌に対するA-C併用療法は9例に行った. Karnofsky 効果判定法では, I-A; 2例 (22%), O-A; 4例 (44%), O-B; 1例 (11%), O-O; 2例 (22%) であった. A-C併用療法後の平均生存期間は, I-A群が78週, O-AとB群が47週, O-O群が7週であった. A-C療法は進行腎癌に対しても, 自覚症状の改善 (56%) や生存期間の延長に有用であると考えられた.
  • 第1報 正常成人男子での検討
    森田 勝, 岡本 正紀, 渡辺 喜代隆, 越知 憲治, 竹内 正文
    1986 年 77 巻 11 号 p. 1814-1819
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    正常成人男子36例の排尿時同時測定から腹圧排尿を検討した. 腹圧排尿は個人個人の排尿習慣によると考えられるが, 排尿量が少なく, 排尿前の尿意が弱いか, ほとんどない場合では1型の腹圧がみられる症例が存在した. 排尿量が多い場合は4型が多くみられ, 排尿量が少なくなるに従って2~4型の出現頻度は同程度となった. 腹圧排尿と排尿量については有意な差はみられず, 又, 年齢に関しても同様であった. 最大努責圧は5~39mmHgが全体の93.7%を占めた. 腹圧排尿群と非腹圧排尿群では排尿量が最小尿意量から200ml未満の間で平均尿流率と排尿時間にそれぞれp<0.05, 0.01で有意差がみられ, 又, 排尿量が100mlから最小尿意量未満の間で排尿時間にp<0.05で有意差がみられた. 腹圧のそれぞれの型と関係があると考えられる各種のパラメーターを検討したが, 2型の腹圧と開口時間及び開口時内圧, 2型又は3型の腹圧と最大尿流率及び最大排尿筋圧のいずれにも有意差はみられなかった. 2型又は3型又は4型の腹圧と平均尿流率及び排尿時間の検討では腹圧排尿群と非腹圧排尿群の間には排尿量が最小尿意量から200ml未満及び100mlから最小尿意量未満において排尿時間にp<0.05で有意差がみられた.
  • 第2報 排尿障害患者での検討
    森田 勝, 岡本 正紀, 渡辺 喜代隆, 越知 憲治, 竹内 正文
    1986 年 77 巻 11 号 p. 1820-1824
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    膀胱頚部硬化症15例, 前立腺肥大症70例, 尿道狭窄症19例の計104例の排尿障害患者において排尿時同時測定を行い, 腹圧排尿について検討した.
    排尿障害患者においては腹圧排尿の頻度は高くなる傾向にあるが, 30~59歳の間での年齢では正常人と比べると統計学的な有意差はみられず, 又, それぞれの3群の排尿障害患者の間の腹圧排尿の頻度, 型にも有意差がみられなかった. そして, 腹圧排尿群と非腹圧排尿群との間には各種のパラメーターとして前立腺肥大症群での開口時内圧 (p<0.05) 以外には年齢, 排尿量, 平均尿流率, 最大尿流率, 排尿時間, 残尿量, 開口時間, 最大排尿筋圧には有意差がみられず, 又, 腹圧の型とそれぞれ関連があると考えられる各種のパラメーターとも尿道狭窄症群での排尿量 (p<0.01), 最大尿流率 (p<0.05), 最大排尿筋圧 (p<0.05) 以外には有意差がみられず, 腹圧は排尿障害患者においても個人の排尿習慣にかかわるものではないかということが強く示唆された. 腹圧の型については1型は排尿障害群で正常人と比べて頻度が高いと考えられ, これは下部尿路閉塞や加齢などの為に充分な尿意があっても排尿筋収縮が生じにくくなっている為ではないかと考えられた. 2~4型は排尿障害群と正常人では差がみられなかった. 又, 腹圧の大きさについても排尿障害群と正常人では差がみられなかった.
  • 第3報 前立腺肥大症患者での術前術後の検討
    森田 勝, 岡本 正紀, 渡辺 喜代隆, 越知 憲治, 竹内 正文
    1986 年 77 巻 11 号 p. 1825-1830
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    前立腺肥大症患者69例に対して術前術後に排尿時同時測定を行い, 腹圧排尿について比較検討した.
    腹圧排尿の頻度, 型, 最大努責圧には術前と術後は余り変化がみられない症例が多く, 腹圧に関しては術前の排尿様式が術後も持続する傾向がみられた. 術後の腹圧排尿群と非腹圧排尿群との間では年齢, 排尿量, 平均尿流率, 最大尿流率, 排尿時間, 残尿量, 開口時間, 開口時内圧, 最大排尿筋圧といったパラメーターには統計学的な有意差はみられなかった. 又, 腹圧のそれぞれの型と関連があると考えられる各種のパラメーターも同様であった.
    前立腺肥大症の術後も腹圧排尿が持続することに関しては2つの考え方がある. 1つは排尿様式は個人個人の習慣によるというものと, もう1つは前立腺肥大症術後では腹圧により尿流が増加する症例がある為という考え方である. この様に前立腺肥大症の術前術後の腹圧排尿を比較することにより単純に腹圧排尿の意義を検討することはできないが, 腹圧排尿の大部分は個人の排尿習慣にかかわるものではないかと考えられた.
  • 日本人における特発性高カルシウム尿症の境界値設定の試み
    北村 唯一, 上田 大介, 平野 美和, 新島 端夫, 河村 毅
    1986 年 77 巻 11 号 p. 1831-1839
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    日本人における特発性高カルシウム尿症 (IH) の境界値を設定する目的で, カルシウム (Ca) 含有上部尿路結石患者 (SF) 113例と正常対照者 (Normal) 10名に対して, 普通食下およびCa制限食下 (Ca 400mg/day) において, 尿中Ca排泄量を測定した. SFは, 経口Ca負荷試験施行後, Pak et al. の分類に準拠してグループ分類した. 113例中, normocalciuric nephrolithiasis (NN) 82例, absorptive hypercalciuria (AH) 11例, renal hypercalciuria (RH) 20例であった. 尿中Ca排泄量は, mg/24hr, mg/kg BW/24hr, mg/mg creatinine の3種の表記法にて表した.
    特発性高Ca尿症の境界値に関しては, NormalおよびNNとの overlap は大きいものの, 普通食では3.6mg/kg BW/24hr, Ca制限食では2.1mg/kg BW/24hrが妥当と考えられた.
    尿中Ca排泄量は, mg/24hrで表すと男子に多く, mg/mg creatinine で表すと女子に多い傾向がみられたので, 尿中Ca排泄量はmg/kg BW/24hrで表すのが適当と考えられた.
  • 高山 秀則
    1986 年 77 巻 11 号 p. 1840-1850
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    ヒトおよびラットの精巣内毛細血管の透過性および精巣, 血液関門の構造を硝酸ランタンを動脈側より注入灌流するか, 精巣組織を直接に硝酸ランタン液内に浸透させ電子顕微鏡的に観察した. また, 精巣毛細血管の通常電子顕微鏡観察をすることによって血液関門としての微細構造につき検討した.
    ヒト精巣毛細血管ではすべての毛細血管にランタンの透過性を認めるのではなく, 一部のものに限られた. しかも, 毛細血管を透過したランタンは間質組織を通過し, 精細管内に達するものはみられなかった. ITCとPTCとでは透過性の相違は認められなかった.
    ラット精巣毛細血管はITC, PTCの区別なくランタン透過性は良好で, 血管外に透過したランタンは間質, 精細管壁を透過し, 精細管内のセルトリ細胞間の特殊結合部位で停止した.
    ヒト, ラットの精巣毛細血管の微細構造は本質的には同様であるが, 内皮細胞間の結合様式に相違が認められた. つまり, ヒトの場合には tight junction や desmosome 様の結合様式をとることが多いが, ラットの場合には gap junction の形態をとることが多い. ここにランタン透過性に相違が認められる根拠があると考えられる.
    ラットの精巣毛細血管は精巣・血液関門としての機能を有しないが, ヒトの場合に不完全ながら関門としての機能を有し, 能動的な物質交換の場となり得ると考えられる.
  • 第1報: 膀胱癌の flow cytometric DNA-histogram の指数化について
    橘 政昭, 中村 聡, 柴山 太郎, 実川 正道, 出口 修宏, 馬場 志郎, 中薗 昌明, 畠 亮, 田崎 寛
    1986 年 77 巻 11 号 p. 1851-1856
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    125例のヒト膀胱生検試料に対して, flowcytometric DNA-histogram の検討を行なった. 25例の正常あるいは良性膀胱粘膜標本では全例で diploid pattern のDNA-histogram を示したのに対し, 100例の膀胱癌組織では54例に diploid pattern を, 他の46例で aneuploid pattern を認めた. 46例の aneuploid pattern を示した症例中24例 (52.2%) は病理組織学的に grade-III, 14例 (30.4%) が grade-II, 4例 (8.7%) が grade-Iの移行上皮癌であり, 悪性度の高い膀胱癌において, DNA-histogram の diploid からの逸脱を強く認めた.
    細胞集団における平均DNA含量を基に計算した Heterogeneity index (HI) の検討においても, 良性膀胱粘膜は平均2.103±0.054, grade-I 2.34±0.535, grade-II 2.522±1.018, grade-III 3.413±0.642と悪性度の高い腫瘍においてHI値の高値を認めた.
    以上の結果は, 膀胱癌に対する flowcytometric DNA-histogram の検討が腫瘍の悪性度を客観的かつ定量的に表現する組織化学的指標となる可能性を示すと考えられた.
  • 第2報: 膀胱腫瘍組織と膀胱洗浄液標本における flow cytometric DNA-histogram の比較検討
    橘 政昭, 中村 聡, 柴山 太郎, 実川 正道, 出口 修宏, 馬場 志郎, 中薗 昌明, 畠 亮, 田崎 寛
    1986 年 77 巻 11 号 p. 1857-1863
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    56例の膀胱癌症例について, 膀胱腫瘍組織と同時に採取した膀胱内洗浄液標本との flowcytometric DNA. histogram を対比検討した. 56症例中49例 (87.5%) において腫瘍ならびに洗浄液標本での histogram pattern の一致が認められた. 病理組織学的悪性度による検討では, 移行上皮癌 grade-Iの腫瘍では11症例中8例 (72.7%) において両者の検体とも diploid pattern の histogram を示したのに対し, grade-IIIでは, 17例中15例 (88.2%) が両者共に aneuploid pattern を呈した. 腫瘍組織の histogram が diploid pattern にもかかわらず膀胱洗浄液標本が aneuploid pattern を示した5症例においては, 経尿道的膀胱腫瘍切除後も4例において尿細胞診, 膀胱洗浄液標本のDNA-histogram にて異常所見を認めた.
    以上の結果は, 膀胱洗浄液標本による flowcytometric DNA-histogram の検討が腫瘍組織の histogram pattern をよく反映し, さらに同時に潜在する膀胱内病変をも判別しうることを示すものであり, 膀胱癌患者のスクリーニングあるいは, monitoring の方法として有力な一法となる可能性が考えられた.
  • 第3報: 膀胱洗浄液標本による flow cytometric DNA-histogram と尿細胞診との比較検討
    橘 政昭, 中村 聡, 柴山 太郎, 実川 正道, 出口 修宏, 馬場 志郎, 中薗 昌明, 畠 亮, 田崎 寛
    1986 年 77 巻 11 号 p. 1864-1867
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    膀胱癌患者に対する膀胱内洗浄液標本の flowcytometric DNA-histogram と尿細胞診との陽性率につき比較検討した.
    56例の膀胱癌症例中尿細胞診陽性率は24例 (42.9%) に対し, DNA-histogram では41例 (73.2%) に陽性を認めた. 一方, 尿細胞診あるいは膀胱内洗浄液標本による flowcytometry の両者あるいは一方で陽性を示した例は80.4%であり, それぞれ単独の検査法における陽性率より高かった. これを組織学的悪性度により検討するとgrade-I 72.7%, grade-II 78.6%, grade-III 88.2%と low grade の膀胱癌においても高い陽性率が得られた.
    以上の結果より膀胱内洗浄液標本の flowcytometric DNA-histogram の検索は, 膀胱癌患者のスクリーニングあるいは monitoring として有用であり, 尿細胞診との併用により更に診断精度を高め得るものと考えられた.
  • 膀胱訓練
    山西 友典, 始関 吉生, 五十嵐 辰男, 村上 信乃, 村山 直人, 山城 豊, 香村 衡一, 安田 耕作, 島崎 淳, 服部 孝道
    1986 年 77 巻 11 号 p. 1868-1873
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    機能性夜尿症患者96例に膀胱訓練を施行した. その結果は, 著効28例 (29%), 有効36例 (38%), 無効32例 (33%) であった. また, 治癒例は24例 (25%) であった.
    症例を7歳未満, 7歳以上11歳未満, 11歳以上の3群に分け, 膀胱訓練の効果を比較検討した. 有効以上の症例数は, 11歳以上の群において7歳未満の群よりも有意に多く (p<0.01), また11歳未満の2群を合わせたものと比較しても有意に多かった (p<0.025).
    膀胱容量は, いずれの年齢群においても, 訓練後有意に増加した. (7歳未満群, p<0.05; 7歳以上11歳未満群, p<0.01; 11歳以上群, p<0.001). また, 膀胱訓練による膀胱容量は, 有効以上の群において, 無効群と比較して, 有意に増加した (p<0.025).
    以上により, 膀胱訓練は, いずれの年齢でも膀胱容量を増加させ, 夜尿症に対し有効な手段であると考えられた. 特に訓練の意義が理解可能な, 低年齢層以外の群では, 夜尿症の治療の第一選択となり得ると考えられた.
  • 坂本 善郎, 村田 方見, 福島 岳志, 諸角 誠人, 川地 義雄, 高橋 茂喜, 小川 由英, 北川 龍一
    1986 年 77 巻 11 号 p. 1874-1878
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は右睾丸原発のカルチノイド腫瘍である. 患者は50歳男性. 主訴は14ヵ月来の右陰嚢内有痛性腫瘤で, 右睾丸腫瘍の診断の下に高位除睾術を施行した. 病理組織学的には, カルチノイド腫瘍に特徴的な所見を示した. グリメリウス染色, フォンタナーマッソン染色でも陽性所見を示し, 電顕像では細胞内に分泌顆粒を認めた. 種々のX線および血清学的検査でも他の腫瘍の存在は否定され, 臨床的に右睾丸原発のカルチノイド腫瘍と診断した. 術後経過は良好であり, 現在外来通院中である. 本症例はわれわれが欧米および本邦で集め得た限りでは38例目で, 本邦では4例目である. 症例報告するとともに, 若干の文献的考察を加える.
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