日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
77 巻, 7 号
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  • 第2報 ラットにおける実験的精索静脈瘤精巣の光顕的・電顕的研究
    笹川 五十次, 片山 喬
    1986 年 77 巻 7 号 p. 1067-1077
    発行日: 1986/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    雄性ラットの左腎静脈に部分結紮をおこない, 精索静脈瘤を作成した. 精巣組織を術後4, 8, 12, 24週で採取し, 光顕的および電顕的に検討した.
    観察結果は次のとおりであった.
    1. 光顕による観察
    Johnsen score count は精索静脈瘤群において他の群よりも有意に低値を示した. T/W比も精索静脈瘤群において低値を示した. しかしながら, Johnsen score count とT/W比の左右間における差は認められなかった. 精細管の変性は, 術後期間の長いものほど進行していた.
    2. 電顕による観察
    Sertoli 細胞の apical portion において細胞質の空胞化と小脳体の拡大を認めた. 精細胞の変性は, Sertoli 細胞の変性にひき続いて起こった. 基底膜の infolding および膠原線維の増生などの精細管壁の肥厚は, 術後24週で認められた.
  • 特に検診にて認められた血尿について
    村上 信乃, 五十嵐 辰男, 山西 友典, 始関 吉生
    1986 年 77 巻 7 号 p. 1078-1081
    発行日: 1986/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    集団検診の普及と共に最近増加した無症候性の顕微鏡的血尿を主訴とする患者への対応法を探るため, 過去3年3カ月間に, 泌尿器科的疾患の既往なく, 当科を無症候性血尿を主訴として初診した成人858名を, 顕微鏡的血尿637名 (検診群) と肉眼的血尿221名 (肉眼群) に分けて, その臨床像を比較検討した.
    (1) 最終診断が「泌尿器科疾患」であったものは, 検診群81名 (12.7%), 肉眼群101名 (45.7%) と後者に多かった.
    (2) 特に集団検診の重要な標的である泌尿器腫瘍は肉眼群52名 (23.5%) に対して, 検診群は8名 (1.3%) と少なかったが, 無視し得ず, 精密検査の必要性が確認された.
    (3) 種々の検査で血尿の原因疾患が診断つかなかった「原因不明の血尿」は肉眼群61名 (27.6%) に対して, 検診群は332名 (52.1%) とその対象の過半を占めた. これらにつき1年以上最長3年3カ月まで経過観察し得た両群の143名全員, 特にその期間に著変を認めなかった.
  • 棚橋 善克, 桑原 正明, 神部 広一, 千葉 裕, 黒須 清一, 景山 鎮一, 沼田 功, 折笠 精一
    1986 年 77 巻 7 号 p. 1082-1088
    発行日: 1986/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    約120例の尿管結石患者に対し経尿道的尿管結石破砕法が施行された. ほとんどの症例では, 硬性尿管鏡単独の治療を行ったが, 一部の症例では軟性尿管鏡の併用やファイバー光学系を持つ硬性尿管鏡の使用が試みられた. 結石破砕は75%の症例に必要であった. 砕石手段としては主として強力超音波を用い, 一部の症例で電気水圧も用いた. 結石摘出の成功率は74%であった.
  • 丸 彰夫, 南谷 正水, 小柳 知彦, 大橋 伸生, 山田 智二, 藤枝 順一郎, 大室 博, 西田 亨, 草階 佑幸, 綱野 勇, 兼田 ...
    1986 年 77 巻 7 号 p. 1089-1098
    発行日: 1986/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    膀胱移行上皮癌でG1T1以下の208例 (うち初発147, 再発61), G2T1の27例, T2以上の36例, 腎盂尿管腫瘍術後に膀胱腫瘍の発生した15例の計286例を対象に長期膀胱内注入療法をおこない, その再発予防効果を検討した.
    対照はG1T1以下でTURのみで経過観察されている初発61例と, これらの再発36例である. 注入薬剤はADM 30mg, CQ 3mgの単独とADM 20mg, CQ 3mgにCA 120mgを併用した4法を無作為に選択して生理食塩水あるいは溶解液30mlに溶かして注入した. 方法はTUR後3~4日及び10~14日の間に1回, 以後2週間隔で8回, その後1カ月間隔で8回, 2年目は3カ月に1回, 3年目以降は3~6カ月に1回の割り合いで注入した.
    5年再発率では各薬剤間に有意差はなく, 一括すると, G1T1以下初発群で28.6%, 再発群で50.8%であり, 対照群の53.2%, 78.2%に比較して有意に再発予防効果を認めた.
    G2T1では48.1%, T2以上では58.8%, 腎盂尿管腫瘍術後では63.0%の再発率であった.
    再発あるいは再々発以後の組織学的異型度と深達度の進行 (up grade, up stage) はG1T1以下の注入群で15.4~19.4%にみられ, 対照群の16.7%に比較して有意差はなかった.
    G1T1以下初発例において, 乳頭状有茎性, 3cm以下, 単発が乳頭状広基性, 3cm以上, 多発に比較して再発率が低かった.
    副作用は頻尿, 排尿痛などを薬剤に差がなく, 9.1%に認めた.
  • 鈴木 孝憲, 鈴木 慶二
    1986 年 77 巻 7 号 p. 1099-1107
    発行日: 1986/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    正常 Wistar ラット13匹を使用し, 前立腺, 精嚢腺, 凝固腺, 精管などへの血管分布, 微細構築, 組織学的所見について検討した.
    1. 総膀胱動脈は総腸骨動脈において, 内腸骨動脈と近接分岐が66.7%, 内腸骨動脈分岐前分岐が33.3%であった. 総膀胱動脈は, 精管動脈, 精嚢腺動脈, 前立腺動脈, 腹側膀胱動脈を分枝し, 膀胱背側を分布・支配していた. 精管動脈分岐前に腹側膀胱動脈の分岐が20%にみられた. 前立腺動脈は, 総膀胱動脈より71.4%, 精嚢腺動脈より14.3%, 総膀胱動脈と精嚢腺動脈より7.1%, 精嚢腺動脈と middle hemorrhoidal artery より7.1%が分岐していた. 前立腺動脈は前立腺背葉, 側葉, 腹葉へと順に分枝していた. 内腸骨動脈より分岐する middle hemorrhoidal artery は, 精嚢腺背側枝を分枝し, この精嚢腺背側枝より分岐する動脈と middle hemorrhoidal artery より分岐する前立腺背側枝が前立腺背葉に分布し支配していた.
    2. 前立腺腹葉の微細血管構築は, 細動脈より分岐した毛細血管により不正4辺形ないし6辺形をなす網状血管構築で, 腺房, 導管周囲がとりかこまれていた.
    3. 組織学的には, 総膀胱動脈は筋型動脈, 前立腺腹葉枝, 側葉枝, 背葉枝は外直径平均113μmの小動脈, 導管間動脈は外直径平均42μmの細動脈, 前立腺上皮下血管は外直径平均6.4μmの毛細血管であった.
  • (II) 胎児性癌細胞の分化能について
    山本 尊彦
    1986 年 77 巻 7 号 p. 1108-1114
    発行日: 1986/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    先に樹立を報告した embryonal carcinoma 由来株, NEC 8, NEC 14, NEC 15株にITO株を加えて, その性質, 特に embryonal carcinoma cell の分化能について検討した.
    原腫瘍に yolk sac の成分を有するNEC 14とITOが, ヌードマウス移植腫瘍において, 形態学的, 機能的に分化の徴を示した.
    これらのことは, ヒトの embryonal carcinoma においても, ある程度の分化能が存在するということを示唆する.
  • 田島 惇, 須床 洋, 三橋 孝, 中野 優, 塚田 隆, 鈴木 明彦, 神林 知幸, 畑 昌宏, 太田 信隆, 鈴木 和雄, 阿曽 佳郎, ...
    1986 年 77 巻 7 号 p. 1115-1120
    発行日: 1986/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    浜松医科大学泌尿器科学教室で施行した78件の腎移植で, 7例 (9%) の上部消化管出血 (胃潰瘍3例, 十二指腸潰瘍4例) が生じた. 生体腎移植での発症頻度は43件中2例 (5%), 一方死体腎移植では35件中5例 (14%) となる. 7例 (男性4例, 女性3例) の年齢は11~42歳 (平均34歳) である. 消化管出血の発症は, 1例を除いて全例移植後3週間以内であった. また同じく1例を除いて, 発症時期も全例が移植腎機能が不十分な状態 (急性尿細管壊死) の時であった.
    シクロスポリン (Cs) 投与症例では, ステロイド投与量が従来の免疫抑制法と比較して少量であるにもかかわらず, 3例で消化管出血が生じた. これらの3例の血清Cs濃度 (trough level) は, 明らかに高値を示していた.
    消化管出血症例全例にシメチジン投与をおこない, 3例で止血できた. 残りの4例中3例は内視鏡的薬物局所注入により止血できたが, 開腹をおこなった1例は, 術後縫合不全を起こし死亡した. なお, 内視鏡的に止血できた1例も, その後DICと敗血症のため死亡した. 他の5例は全例, 現在良好な移植腎機能を維持し, 完全社会復帰となっている.
    移植腎機能の不十分な状態あるいは血清シクロスポリン高値は, 消化管出血の誘因 (risk factor) になりうると考えられる. また, 消化管出血の迅速な診断および内視鏡的止血操作を中心とした適切な処置の必要性について強調した.
  • 22症例の追加と前回報告23症例との比較
    後藤 敏明, 小柳 知彦, 松野 正
    1986 年 77 巻 7 号 p. 1121-1131
    発行日: 1986/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1977年から1985年までに経験した完全重複腎盂尿管22例を1群 (尿管瘤) 11例, II群 (逆流) 8例, III群 (その他) 3例の3群に分け検討した. 全例女子で平均年齢は各8.3歳, 18.4歳, 2.8歳で臨床症状は尿路感染が多く次いで尿失禁, 排尿困難, 瘤脱などであった. 腎シンチ, 排尿時膀胱尿道造影, 内視鏡検査が特に大切でIVP上無機能な腎の真の機能評価, 瘤外翻の有無や尿管裂隙の型決定に有用で, これらの情報は治療方針決定に必須であった. 尿管裂隙の型は腎機能や腎形成異常の頻度とも密接に関連していた. 手術的治療は18例に施行, 特に尿管末端の可及的摘出が大切でその術式を紹介した. 尿管瘤の円蓋部切除には否定的意見も多いが, 経尿道的瘤遠位部小切開は診断・治療上幾つかの利点があり, 症例を選べば逆流は生じず時には更に操作を加える必要もなくなり試みてよい方法と考えた.
  • 廃用膀胱に発生する hypertonicity の実験的検討
    加藤 久美子
    1986 年 77 巻 7 号 p. 1132-1138
    発行日: 1986/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    我々は動物実験によって, 廃用膀胱 (disused bladder) における hypertonicity 発生の時間的経移, 膀胱内圧を連続測定した場合のコンプライアンスの増大効果 (hysteresis effect), 細菌感染の hypertonicity に対する関与, コリン作動性薬剤に対する supersensitivity の有無を検討した.
    雌雑種成犬計21頭に尿路変更をおこない廃用膀胱を作製した. 術前および術後最長21週にわたって膀胱内圧を測定し, 細菌感染の有無は膀胱洗浄液培養で調べ, denervation supersensitivity test は bethanechol の皮下注射により施行した.
    最大膀胱容量・コンプライアンスは廃用によって急激に低下および減少した. この傾向は術後5~6週まで続き, その後はほぼ一定になった. hysteresis effect は, 術前群と術後10週以上の群では認められなかったが, 術後1~8週の群では有意に存在した. 術後群の55%が細菌感染を合併したが, 細菌感染は最大膀胱容量・コンプライアンスに有意の影響を及ぼさなかった. denervation supersensitivity test は, 術前群・術後群ともすべて陰性であった.
    廃用膀胱に出現する hypertonicity は蓄尿・排尿の周期的運動の欠如による平滑筋の粘弾性の変化に起因すると推測された.
  • 森下 英夫, 鳥居 哲
    1986 年 77 巻 7 号 p. 1139-1144
    発行日: 1986/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    種々の化学療法に対して難治性であった, 慢性前立腺炎, 慢性腎盂腎炎およびカテーテル操作後の敗血症患者より大腸菌を分離し, 細菌学的検討を行った.
    1) いずれもブドウ糖, 乳糖を発酵し, インドール産生, Voges-Proskauer (VP) 反応陰性などの点では定型的な大腸菌であったが, 運動性がなく, ムコイド (M) 型を示していた. これらの集落は継代を続けるうちに, 非ムコイド (N) 型にM→N変異した.
    2) この推移を走査電子顕微鏡で観察すると, M型では菌体周囲にベン毛以外の莢膜様物質が付着していたが, N型では表面平滑であった.
    3) 薬剤感受性に関しては, 前立腺液および尿由来の菌株は比較的MICが低かったが, 血液由来の大腸菌はPC, CEZ, TC, CP, SMなどに耐性を示すとともに, R-プラスミドの存在が判明した.
    4) ファージに対する感受性をみると, 前立腺由来株はT7, W31, P2c, 尿由来株はT2にプラック形成性を示していたが, 血液由来株ではみられなかった.
    5) 細菌の世代交代時間を調べると, 前立腺液, 尿および血液由来株はそれぞれ49分, 39分, 17分であり, 自記微生物光度計を用いた増殖曲線でも同様な傾向であった.
  • 24時間連続測定による検討
    濱田 吉通, 松本 泰, 岡戸 三枝
    1986 年 77 巻 7 号 p. 1145-1150
    発行日: 1986/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    24時間連続で尿比重, 尿量, 尿の移動平均量を測定した. 測定にはテルモ尿比重 monitor, 尿量 monitor, 12打点記録計を用いた. 血液生化学上肝腎機能が正常で, 心肺機能に問題なく, 代謝性疾患なども認められない3症例を対象とした. 食事は一般常食に準じた. 食事含有水分量は1,400mlで全量摂取を原則とした. 食事以外の水分摂取は水のみとし, 特別の水分制限は施行せず飲水は自由とした. 利尿効果のあるものは避け, 果汁成分も除外した. 検査施行中はあらゆる薬剤の服用は行なわず, 喫煙習慣のある症例は禁煙とした. 連続測定した data を分析すると尿比重の変動の幅は老年者より若年者の方が大きいようであった. 変動の仕方も老年者に比べ若年者の方がより rhythmical であった. 尿排泄 ultradian rhythm を尿の移動平均量から見ると10分から80分前後で, 年齢による差は設められなかった. 尿排泄 circadian rhythm の検討は, 水分摂取自由の条件でも症例固有の rhythm が観察された. 今回の検討では全て健康例で, 腎機能の指標となる marker が正常範囲内であった. しかし1例に昼夜逆転例とも思われる尿排泄 circadian rhythm を認めた. 本症例が病的なものか, あるいは正常範囲内のものであるかは今後の検討を待たなければならない. 以上のように各症例固有の尿排泄 circadian rhythm が存在し, この rhythm を検討する事は腎機能検査の一法として利用できるようにも思われ興味深いと思われた.
  • 沼田 功, 星 宣次, 高橋 薫, 吉川 和行, 栃木 達夫, 折笠 精一, 益子 高, 橋本 嘉幸, 今井 克忠
    1986 年 77 巻 7 号 p. 1151-1158
    発行日: 1986/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    〔目的と方法〕ヒト膀胱腫瘍由来の培養細胞KU-1, T24, 5637とヒト組織球由来の培養細胞U-937に対するモノクローナル抗体を用いて, 膀胱腫瘍組織に対する反応性と臨床像を検討した. 86例の膀胱腫瘍患者から得た組織を用い, モノクローナル抗体に対する反応性は, アビジン・ビオチン複合体を使用して, 酵素抗体法にて検討した.〔結果〕T24, 5637に対する抗体は, 移行上皮腫瘍とほとんど反応しなかったので, 以後の検討から除いた. KU-1に対する抗体, HBA4, HBG9, HBH8とヒト組織球由来の培養細胞U-937に対するLeu-M1は, それぞれ17%, 27%, 64%, 50%の症例に陽性反応を認めた. HBH8は最も陽性率が高かったが, 正常膀胱上皮とも約30%の例と反応した. 他の抗体は腫瘍の部位のみに特異性を認めた. 次に抗体の反応性と腫瘍の Grade, Stage との関係を検討したが, 有意な関連性を認めなかった. 腫瘍の染色型式には, 腫瘍層全体, 腫瘍表層部のみ, 腫瘍基底部付近のみ染色される3種類のパターンがみられた. 腫瘍基底部のみが染色される例は low grade, low stage の乳頭状腫瘍のみであった. これらの抗原性が腫瘍再発を繰り返す間に変化するか否かを, 再発を繰り返す5症例の表在性腫瘍で検討した. 経過中抗原性が変化することは少なかった.〔結論〕今回検討した4種類のモノクローナル抗体いずれかに対して, 移行上皮腫瘍の約80%が抗原性を示し, 膀胱腫瘍の早期診断, 治療に応用できるものと考えられた.
  • 石川 博通, 小磯 謙吉, 友政 宏, 吉井 慎一, 武島 仁, 梅山 知一
    1986 年 77 巻 7 号 p. 1159-1163
    発行日: 1986/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    男子不妊症患者の精液112検体に含まれている14種類の微量金属について誘導結合高周波プラズマ発光分析法を用いて各々の含有量を測定した. また微量金属含有量と精液所見との関連について検討した.
    1) Ca, ZnおよびMgが精液中に多量に含まれFe, AlおよびMoの含有量がそれらに次いで多いことがわかった.
    2) 精子濃度とFe含有量との間に正の相関が認められた (p<0.01).
    3) 精子運動率とZn, Mo (p<0.01) およびAl, Ca, Mg (p<0.05) の含有量との間に負の相関が認められた.
  • 藤目 真, 赤座 英之, 吉田 雅彦, 黒岡 雄二, 谷口 淳, 岸 洋一, 梅田 隆, 岩動 孝一郎, 新島 端夫
    1986 年 77 巻 7 号 p. 1164-1168
    発行日: 1986/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1975年より1984年までの10年間に, 東京大学医学部泌尿器科において, 腎細胞癌と診断された80症例中5例 (6.3%) に, 小脳への転移をみとめた. そこでこれら5例につき, 同時期に診断された大脳転移例8例との臨床的な比較検討を行った. 両者の間にみられた主な相違は転移の出現時期について, 小脳転移の場合, 全例に先行する転移が見られたのに対し, 大脳転移の場合は, 半数例において, 脳への転移が最初に出現していたことと, また, 脳転移出現後の予後で, 小脳転移例の最長生存が, 転移出現後10カ月であったのに対して, 大脳転移では, 1年以上生存した例が2例あり, うち1例は10年の長期生存を得ていた. 1年以内に死亡した例は, 半数の4例で残り2例は, 現在経過観察中である. これらの結果から, 腎細胞癌の小脳転移は, 多臓器転移の終末形として現われることが多く, 転移出現後, 1年以上の延命を図ることが困難であると思われるのに対し, 大脳転移では, 積極的な外科療法と adjuvant therapy により, 1年以上延命の期待できる例も存在すると考えられ, 治療計画を立てる上で, この点に対する考慮が望まれる.
  • 栗山 学, 武田 明久, 加藤 直樹, 西浦 常雄, 鄭 漢彬, 土井 達朗, 小出 卓也, 伊藤 康久, 酒井 俊助, 波多野 紘一
    1986 年 77 巻 7 号 p. 1169-1176
    発行日: 1986/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    性行為感染症患者の尿道・子宮頚管分泌物からChlamydia trachomatis 抗原の検出を目的として enzyme immunoassay 法 (EIA, chlamydiazyme) の基礎的検討とともに臨床的評価を行なった. 本kit中の陽性コントロール, 培養クラミジア, 陽性臨床例おのおのの希釈曲線は平行して推移し, 同一抗原を測定しているごとを傍証した. また, 100IFU/ml程度が測定限界であった. 一方, 再現性試験では吸光度のc. v. は12%以下を示し, 良好な成績であった. 保存条件の検討結果から, 室温でも5日間, 4℃以下であれば7日間は失活しないことも確めえた. 本抗原は, 298例・437検体の臨床例で測定した. このうち, 246例の初診患者中217例で細胞培養法を同時に行なって比較した. 培養法陽性42例中, 本法陽性は37例, 陰性175例のEIA陰性は159例であった. 以上より, 培養法に対する感度は88%, 特異性は91%となり, Micro Track 法のそれらより優れていた. 検討全検体中の培養陽性例61例において, EIA法の陽性率は100IFU以下の78%から相関を示して上昇していた. しかし, 吸光度と培養封入体数との相関係数は0.4005と高くなく, 本法のままでの定量化は困難と思われた. さらに, 経時的に追跡測定しえた症例のなかには, 培養陰転後もEIA陽性例が散見され, 抗原の局所残存を示唆していた. 以上の結果から, 本EIA法は, 簡便さ, 多量検体処理能力の面からも, C. trachomatis 検出の優れた方法の1つと考えられた.
  • 山口 邦雄, 高原 正信, 甘粕 誠, 宮内 大成, 村上 光右, 伊藤 晴夫, 島崎 淳
    1986 年 77 巻 7 号 p. 1177-1181
    発行日: 1986/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    尿路結石症に占めるカルシウム含有結石の割合は高く, その再発予防は重要である. 千葉大学附属病院泌尿器科で治療され, 結石が消失した134例のカルシウム含有結石症例を対象として, 再発および薬剤の再発予防効果を検討した.
    サイアザイドを投与した高カルシウム尿群と, アロプリノールを投与した高尿酸尿群では, 再発率は観察期間2年以上でそれぞれ4%, 6%と低値であった.
    高カルシウム尿と高尿酸尿合併群では, 再発率はサイアザイド投与群のみが低値を示し, アロプリノール投与群や, サイアザイドとアロプリノール併用投与群および無処置群では高値を示した.
    カルシウム・マグネシウム比低値以外に異常を示さない群には, 酸化マグネシウムを投与したが, 再発はみられなかった.
    以上のごとく, 高カルシウム尿・高尿酸尿合併例の再発予防が困難であったことを明らかにするとともに, stone clinic effect を含めて再発予防および効果判定のもつ問題点について考察した.
  • 小林 克己, 小松 秀樹, 滝花 義男, 白須 宣彦, 田辺 信明, 石浜 達彦, 武井 孝, 山田 豊, 上野 精
    1986 年 77 巻 7 号 p. 1182-1187
    発行日: 1986/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    5例の進行膀胱癌患者に cisplatin (CDDP), methotrexate (MTX) による併用療法を施行した. 投与方法は第1日にCDDP 70mg/m2, MTX 40mg/m2, methylprednisolone 500mg, 第8日にMTX 40mg/m2を点滴静注する. 以上を1 course として3週間ごとに施行し, 3~4 course を目標とした. 効果は complete response (CR) 2例, minor response (MR) 1例, no change (NC) 1例, progressive disease (PD) 1例であった. 肺転移例がCRとMR, リンパ節転移を有し手術不能例であつたT4例が化学療法施行後手術可能となり, 術後の病理組織検査で腫瘍細胞が発見されずCRと判定した. 骨転移例に対してはNC 1例, PD 1例と無効であった. MRを示した肺転移例は3 course 終了後白血球数が300/mm3, 血小板数が13,000/mm3となり, 肺炎を合併したため死亡した. 口内炎はMTX投与日, 氷を口に含ませ口腔内温度を下げることによって軽減できた. 腎障害に関しては血清クレアチニンの一過性の上昇が認められたが治療上問題とならなかった.
  • 高橋 公太, 太田 和夫, 東間 紘, 寺岡 慧, 渕之上 昌平, 八木沢 隆, 本田 宏, 山下 賀正, 奥村 俊子, 中沢 速和, 合谷 ...
    1986 年 77 巻 7 号 p. 1188-1199
    発行日: 1986/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    当センターでは, 1971年6月より1985年6月までに349例のレシピエントに353回の腎移植を施行した. 症例数は年々増加しており昨年は87例に達した. これらの症例のうち260例 (73%) が生体腎移植であり, 残りの93例 (27%) が死体腎移植であった.
    今回は, これらの症例を ciclosporin 群 (193例) と azathioprine 群 (160例) にわけ, cumulative life table 法に基づいて, 腎移植の成績を求めた.
    生体腎移植において, 2年生存率は ciclosporin 群で95%, azathioprine 群で94%であったが, 2年生着率は ciclosporin 群で92%, azathioprine 群で69%と, 前群が後群より危険率p<0.001の有意差で良好な成績を示した.
    死体腎移植において, 2年生存率は ciclosporin 群で100%, azathioprine 群で82%と後群では低下した. さらに生着率においては, 前群が80%, 後群が31%で前群が危険率p<0.001の有意差で良好な成績を示した.
    これらの成績より, ciclosporin は副作用に十分注意しながら使用すれば, 有効な免疫抑制剤である.
  • 平野 繁, 蝦名 謙一, 染野 敬, 森田 隆
    1986 年 77 巻 7 号 p. 1200-1206
    発行日: 1986/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    不完全 Adenine Phosphoribosyltransferase 欠損による腎結石症例を報告する. 患者は26歳男で, 1985年1月に左側腹部痛を訴えて入院した. DIPおよびRPでレ線透過性の左腎尿管結石が疑われた. 1985年2月27日手術を行なったところ, 腎盂切開時に腎盂尿管内に結石が充満しており, 左腎摘出術術を施行した. 結石を Infrared Spectrophotometer により分析した結果, 2, 8-Dihydroxy adenine (2, 8-DHA) であることが判明した. 患者の赤血球中の Adenine Phosphoribosyltransferase (APRT) 活性を測定したところ control と比較して20.3~24.4%であり, 不完全APRT欠損症と考えられた.
    不完全APRT欠損症は常染色体劣性遺伝の形態をとると考えられているため, 患者の家族調査を行ったところ, 患者の父母姉兄の赤血球APRT活性は Control と比較して19.2~39.6%であり, 患者も含め5人の家族内不完全APRT欠損症が発見された. 現在患者は Allopurinal 200mg/day投与維持療法と低プリン食による療法で経過観察中である.
  • 福井 巌, 東 四雄, 木原 和徳, 後藤 修一, 安島 純一, 小林 信幸, 吉野 修治, 児島 真一, 高木 健太郎, 松原 修
    1986 年 77 巻 7 号 p. 1207-1213
    発行日: 1986/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は30歳の男子事務員で, 7カ月来の女性化乳房, 5カ月来の右陰嚢内の硬結および受診前に急激に増悪した呼吸困難を訴えて来院した. 原発巣の病理組織像は胎児性癌であったが, 一部に合胞体性巨細胞が認められた. 肺には胸部レ線上最大6.6×6.3cm大のものを始め多数の転移巣を認め, そのため動脈血PO2は50.1mmHgと著明に低下していた. また, 入院時の血清β-HCGは4,840ng/ml, LDHは1,679U/lと異常高値を呈した. BLM, VBL (VCR) とCDDPによる併用化学療法を施行したところ4コース後に肺転移巣の部分寛解をみ, 血清LDHとβ-HCGの著明な改善がみられたが, BVP 6コース後 (治療開始5カ月後) 2.2×1.6cm大の脳転移が出現した. そこで, 化学療法をCDDPとVP-16の併用療法に変更したところ, わずか1コースでCTスキャン上脳転移巣の完全消失が認められた. 本療法を3週毎に繰り返すと共に全脳照射を追加することによって,脳転移の再発は以後認められなかった. しかし, CDDPとVP-16の化学療法7コース施行後, 末梢神経障害のために以後の化学療法への協力が得られず, 当科受診1年9カ月後, ほとんどCRにまで至った肺転移巣の再燃により死亡した. 剖検時の肺転移巣は組織学的にすべて絨毛癌であったが, 脳には陳旧性の軟化巣を見るのみであった. また, CDDPの組織内濃度を測定したところ, 脳正常部には検出できなかったが, 陳旧性軟化巣には0.55mcg/gの濃度が測定された. 肺については正常, 腫瘍, 搬痕部共に1mcg/g前後のCDDPが検出された.
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