日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
78 巻, 4 号
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  • 木村 茂三, 長谷川 親太郎, 中薗 昌明, 田崎 寛
    1987 年 78 巻 4 号 p. 563-571
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    Cyclosporine (CsA) 投与による腎毒性の解明のため, 雄6週齢の Sprague-Dawley ラットを用い病理形態学の面から検討したので報告する.
    実験はラットを100mg/kg, 300mg/kg連日3週間経口投与群と500mg/kg連日2週間経口投与群の4群に分け, 100mg/kg, 300mg/kg群は投与開始後1, 2, 3週, 中止後1, 2週目, 500mg/kg群は投与開始後1, 2週目に屠殺して, BUN, creatinine の測定をした. また光顕, 電顕, 電顕組織化学 (ALP ase, ATP ase) の手法を用いて病理組織学的検討を行った.
    光顕的には近位尿細管上皮の局所的な空胞変性が主で比較的軽度の変化であり, 腎機能障害も軽度であった.
    電顕的には近位尿細管上皮の管腔側からの再吸収および間質の周囲血管から基底膜を通して上皮細胞内へ移行する二つの経路があると考えられた. また細胞内小器官では小胞体を主とする細胞内膜成分の空胞変性とライソゾームの増加が腎機能障害と何らかの関係があると考えられた.
  • 三崎 俊光, 久住 治男, 上木 修, 熊木 修, 越田 潔, 中嶋 和喜, 打林 忠雄, 三好 憲雄
    1987 年 78 巻 4 号 p. 572-578
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    BBN誘発ラット膀胱腫瘍を用いHPDの局在とHPDとアルゴン・色素レーザー光照射による光力学的抗腫瘍効果を検討した.
    1. HPD 5mg/kg静脈内投与後のHPD蛍光分布は, 蛍光顕微鏡下において腫瘍のみならず肝, 脾, 腎においても認められた. 腫瘍ではHPD投与後1週間においても観察可能であったが, 肝, 脾および腎では2~4日目より減少した. 腫瘍組織におけるHPD蛍光は上皮細胞および粘膜下層に観察され, その蛍光スペクトルは627nmおよび693nmにピークを有するHPD蛍光に一致した. 一方正常部膀胱組織においてはHPDの蛍光スペクトルは検出されなかった.
    2. HPD 5mg/kg投与48時間後, 経膀胱的にアルゴン・色素レーザー光 (光強度100~500mW/cm2) を腫瘍に対し照射した. いずれの光強度においても腫瘍の変性, 破壊像が観察されたが, 光強度の増加に伴って腫瘍の変性も増大する傾向にあった. レーザー光の温度上昇はハイパーサーミア領域の温度にまでは至らず, この腫瘍変性は励起HPDの光力学的反応によるものであると考えられた.
  • 松浦 治, 絹川 常郎, 竹内 宣久, 服部 良平, 長谷川 総一郎, 大島 伸一, 小野 佳成, 平林 聡
    1987 年 78 巻 4 号 p. 579-585
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    生体腎移植に対し, pretreatment として胸管ドレナージ法 (TDD) を施行し, 移植腎の2年間完全生着という結果を得た. この臨床成績をふまえ, TDD施行症例36例を対象として, 免疫学的検討を加えた.
    検討方法として, まず第一に, TDD症例の末梢血単核球を用い, donor 予定者とのMLRをTDD前とTDD施行後, 定期的に行った. TDD施行前の Stimulation Index (SI) は, 7.3±6.7 (Mean±SD), TDD施行後10日目, 20日目, 30日目のSIが, 3.0±2.9 (p<0.025), 2.4±1.7 (p<0.005), 2.9±2.6 (p<
    0.005) であり, TDDにより donor とのMLRは, 有意に低下を認めた.
    第二に, 健康人から成る third party とのMLR抑制試験を, 同様に施行した. 対照群であるHD患者及びTDD施行前の抑制率は, 各々-37±29%, -33±23%と抑制は認められなかった. TDD施行期間が増すにつれ, 抑制率が除々に上昇し, 20日を経過すると全例に強い抑制を認め, TDD施行期間と抑制率に, 正の相関を認めた (r=0.77, p<0.001).
    以上より, TDDによるリンパ球除去から, non-specific な suppressor cell が, TDD症例の末梢血単核球中に誘導される可能性が示唆された.
  • 柿木 敏明
    1987 年 78 巻 4 号 p. 586-596
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    正常家兎腎における糖質の分布を9種類の Fluorescein isothiocyanate (以下FITC) 標識レクチン (WGA, PNA, RCA-1, BSA-1, BPA, DBA, HPA, LoA, UEA-1) を使用して明確にした. レクチンはその糖特異的染色性により, ネフロン各部を識別するのに有用であった. つぎに Horseradish peroxidase (以下HRP) 標識のPNAならびにDBAレクチンを主として使用して, 実験的腎盂腎炎の急性期から, 最長2年の慢性期, および水腎症急性期の染色を行った. PNAは正常腎では, Henle の係蹄 (以下ヘンレ) の下行脚ならびにヘンレの上行脚の皮質部, 皮質部集合管を染色するが, ヘンレの上行脚の髄質外層部は染色しない. しかし, E. coli NIHJ-JC2株を用いた腎盂腎炎モデルでは, 1日目から2年群のすべての動物において, ヘンレの上行脚の髄質外層部までPNAに染色されることが認められた. また尿管結紮のみを行った水腎症モデルでも同様に, 髄質外層部のヘンレの上行脚の陽性染色所見を認めた. 尿管結紮腎では, 3時間目からこの変化が認められた. このヘンレの上行脚における複合糖質の変化が, 細菌の接着性を増加させ, 水腎症やVURでの易感染性を助長する可能性を示唆した. また慢性腎盂腎炎においてしばしば観察される甲状腺様構造を是構成している尿細管が, 髄質外層部の集合管およびヘンレの上行脚であることをPNAおよびDBAレクチンを使用して明確にし得た.
  • 漿膜筋層剥離重積法による尿失禁防止の試み
    森 義則, 藤末 洋, 細川 尚三, 荻野 敏弘, 辻本 幸夫, 藪元 秀典, 寺川 知良, 島 博基, 島田 憲次, 有馬 正明, 生駒 ...
    1987 年 78 巻 4 号 p. 597-605
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    現在のところ最もひろく行われている尿路変更法は回腸導管であるが, 生活の質という面からみると Kock pouch のような continent urinary reservoir の方がすぐれているように思われる. 最近西ドイツ・マインツ大学泌尿器科より発表された Mainz pouch はそのような continent urinary reservoir の一種であるが, 我々は最近5例の膀胱癌患者において Mainz pouch による尿路変更術を施行した.
    回結腸部を空置し, 腸間膜と反対側を縦に切開し蠕動運動による内圧上昇が打ち消し合うように縫合しなおして pouch を形成した. 尿管の逆流防止のため粘膜下トンネルをつくり結腸に吻合した. Kock pouch と同様に自己導尿を行うストーマを形成したが, そのさい stapler は使用せず, 回腸の一部の奨膜筋層を剥離して重積させ nipple valve を作り失禁を防ぐ方法をとった. 5例中4例で尿失禁もカテーテル挿入困難もなく, きわめて満足すべき結果が得られた. Pouch の容量は330~460mlで, 内圧測定で低圧性の reservoir が形成されたことが確認された. Mainz kouch は尿路変更法としてすぐれた方法であると考えられる.
  • ATP-ase 染色を用いた組織化学的解析
    岡村 廉晴, 徳中 荘平, 藤井 敬三, 宮田 昌伸, 橋本 博, 八竹 直
    1987 年 78 巻 4 号 p. 606-613
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    横紋筋は生理学的に遅筋と速筋とに分類され, 筋を構成する個々の筋線維は, さらに組織化学的方法により遅筋型筋線維 (type 1) と速筋型筋線維 (type 2A, type 2B) とに分類可能である. 横紋筋の生理学的特徴は構成している筋線維の種類とその割合によって決まる.
    今回, 家兎外尿道括約筋を構成している筋線維の種類との割合について組織化学的に検討した. 6頭の家兎を屠殺し, すみやかに外尿道括約筋を含む尿道を一塊として採取・凍結後, Dubowitz らの方法に従った ATP-ase 染色によって平均1,600余りの筋線維を同定し, それぞれの筋線維型に分類した. 外尿道括約筋全体としては速筋型筋線維が87.3%と優位であったが, 構成している筋線維の分布状態は均一ではなく, 層にり異なっていた. すなわち, 内層では遅筋型筋線維が約3分の1と比較的多く分布していたが外層に向かうに従って減少し, 最外層では速筋型筋線維のみによって構成されていた. 従来, 外尿道括約筋は陰部神経支配を受ける単一な筋束と考えられてきたが, 本研究の結果からは複数の神経支配を受け, 異なった機能を分担している可能性も推察された.
  • 里見 定信
    1987 年 78 巻 4 号 p. 614-625
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    recombinant interleukin 2 (rlL-2) とIL-2依存性の cell line (NKC-3) の系を用いて, 精漿中の免疫抑制物質の作用機序と性状について検討した. 精漿の添加によりNKC-3 cell のIL-2 response が阻害され, 3H-thymidine の取り込みの著明な低下がみられた. しかしIL-2非依存性の cell line であるNS-1やYAC-1に精漿を加えても抑制はみられなかった.
    また harvest 6時間前の精漿の添加でも抑制効果はみられなかった. この精漿中のIL-2抑制物質は, ゲル濾過にて分子量74万以上の巨大分子であり, また105,000G, 2時間の超遠心にて沈殿側に抑制活性が移動することがわかった. 精漿とIL-2を混合後, 超遠心により沈殿側に抑制物質が移動すると, 上清にはほぼ100%IL-2活性が回収され, この抑制物質はIL-2に直接阻害効果を及ぼさないことが示唆された. 精漿存在下のNKC-3 cell は, 洗浄により精漿を除くとIL-2の response を回復した. 125I-rIL-2のNKC-3 cell への結合は, 精漿濃度依存性に抑制された. さらにIL-2 receptor に対する monoclonal 抗体 (3C7, 7D4) を用いた flow cytometry において, 精漿によりIL-2 receptor に対する monoclonal 抗体の結合の低下がみられた. 以上より, 精漿は細胞側のIL-2 receptor side に作用してIL-2の効果を抑制することが示唆された. 精漿中のIL-2抑制物質は, 60℃15分, 100℃15分の熱処理や凍結乾燥にも安定だった. 酵素処理を行なうと pronase, papain, periodic acid で活性が低下した. 以上のことより精漿中のIL-2抑制物質は glycoprotein と考えられた.
  • 2. 正常健康人におけるクエン酸剤投与後の尿中クエン酸及び尿路結石関連物質の経時的変化について
    安川 修, 上原 正樹, 森本 鎮義, 吉田 利彦, 深谷 俊郎, 戎野 庄一, 大川 順正
    1987 年 78 巻 4 号 p. 626-633
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    5名の健康人男子に, 3g/dayと4g/dayのクエン酸剤の経口投与をおこない, それが尿量, 尿pH, クエン酸, カルシウム, マグネシウム, 蓚酸およびクレアチニンの各排泄量に及ぼす影響が比較検討された. さらに, クエン酸剤投与が日内変動に及ぼす影響を知るため, 2時間毎の蓄尿 (夜間は6時間) がなされた.
    クエン酸剤の投与により尿中クエン酸排泄量は投与量に比例した上昇がみとめられた. 尿pHは, 18時から22時までの期間での上昇がみとめられた. 尿中カルシウム排泄量は若干低下傾向がみとめられたが, 他の物質に関しては著変がみとめられなかった.
    さらに, Ahlstrand ら (1984) により記載された計算式により蓚酸カルシウムの ion activity product index を求めたところ, 投与前では20時から24時までの期間に formation product を超す過飽和状態のピークがみとめられたが, クエン酸剤の投与によりこれらの夕食後のピークは著明に低下した.
    以上より, クエン酸療法は蓚酸カルシウム結石形成の予防に効果があるものと考えられた.
  • 特に肋骨弓下横切開について
    山崎 彰彦, 中野 博, 米田 健二, 仁平 寛巳
    1987 年 78 巻 4 号 p. 634-642
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1968年3月から1985年12月までの18年間に広島大学医学部附属病院泌尿器科で腎摘除術を施行した腎癌患者85例について, 腰部斜切開, 傍腹直筋切開, 上腹部正中切開, 肋骨弓下横切開, 経胸腹膜的切開などによる各種の腎到達法別に手術時間, 術中出血量, 術中および術後合併症などの比較, 検討を行った.
    1) 手術時間の比較では単純腎摘除術が多い腰部斜切開が最短で, 肋骨弓下横切開は根治的腎摘除術に所属リンパ節郭清術併用例を多く含むため最長であった.
    2) 術中出血量を経腹膜的経路で比較すると, 各種皮膚切開の中で所属リンパ節郭清術施行例を多く含むためにもかかわらず肋骨弓下横切開が最少であった.
    3) 術前の腎動脈塞栓術は腰部斜切開による腹膜外的経路においては術中出血量の減少が認められた. しかし経腹膜的経路においては腎の剥離操作前に腎茎部の処理が可能であるから, 術前の腎動脈塞栓術併用の有無による手術時間, 術中出血量などに差は認められなかった.
    4) 所属リンパ節郭清は経腹膜的経路あるいは経胸腹膜的経路による根治的腎摘除術の症例にのみ行われたが, この操作に要する平均手術時間は105分で, 平均術中出血量は72mlであった.
    5) 術中合併症は16例, 19%に認められ, 脾損傷と血管損傷が主たるもので, 腎到達経路別では上腹部正中切開に36%と最も高頻度に見られた. 所属リンパ節郭清術に起因する術中合併症はとくに認められなかった.
    6) 術後合併症は腰部斜切開, 傍腹直筋切開に多く見られ, 高度の術後創部痛は肋骨弓下横切開では最も少なかった. またリンパ節郭清術が関与した合併症としては, 急性膵炎3例, リンパ漏1例, イレウス1例などが認められた.
    以上より著者らが現在主として行っている肋骨弓下横切開による経腹膜的腎到達法は, 腎癌に対する根治的腎摘除術に適した腎到達経路で, 併用する所属リンパ節郭清術にも好都合な十分の手術野が得られることを認めた.
  • 組織学的判定法による尿路癌の制癌剤感受性試験
    根本 良介, 内田 克紀, 島居 徹, 石川 悟, 小磯 謙吉
    1987 年 78 巻 4 号 p. 643-648
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    尿路悪性腫瘍を対象に腎被膜下移植法 (SRCA) による抗癌剤の感受性試験を行ったのでその成績について報告し, 本法の有用性と問題点について述べた. 1) 移植後4日目の組織学的検査で22例中20例に (91%) に移植片の生着を認めた. 2) 移植に失敗した2例の quality control には腫瘍組織がほとんどなく, 確実に移植できた腫瘍片の生着率は20例中20例 (100%) であった. 3) 移植後4日目に組織学的判定法により制癌剤の感受性試験を行った結果, 腎癌1/12例, 膀胱癌1/4例, 睾丸腫瘍1/3例に有効と認められる所見を得た. 以上の結果, マウスの腎被膜下移植法は従来のヌードマウス皮下移植法に比べていくつかの利点を有しているが, 感受性試験の効果判定時期や方法についてまだ解決すべき問題が残されている.
  • 田仲 紀明, 熊本 悦明, 岡山 悟
    1987 年 78 巻 4 号 p. 649-660
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    急性腎盂腎炎患者において尿中β2-microglobulin (以下β2-MG), N-Acetyl-β-D-Glucosaminidase (以下NAG) を測定し, 感染部位診断法および治療経過を反映する指標としての有用性につき検討した. 対象は急性腎盂腎炎患者50例で, 急性単純性膀胱炎患者18例, 健康成人20例を対照とした. β2-MG, NAG の測定は, 治療前, 治療開始4日, 7日, 10日, 14日後に行った. また同時に赤沈, CRP, 末梢白血球数 を測定した. 急性腎盂腎炎患者では治療前にβ2-MG, NAGの尿中 creatinine 比 (以下β2-MG index, NAG index) はそれぞれ2.28±0.71μg/mg (M±S. E. 以下同じ), 22.6±9.0U/g creatinine であり, 48例(96%), 40例(80%)において上昇を認めた. 一方, 膀胱炎患者においては上昇を認めなかった. 以上の結果から, β2-MG, NAGは上部尿路感染症に特異性が高く, 感染部位診断法として有用な検査法 と考えられた. 治療開始後の正常化は, β2-MG index(7.5±0.7日), NAG index (7.5±1.2日) では解熱(3.8±0.5日)よりも遅れ, 膿尿の消失(7.7±1.5日)とほぼ同時期で, CRP(8.9±1.3日), 赤沈(14.6±1.5日)よりも早期にみられる傾向を認めた. また尿路の基礎疾患の有無について検討すると, 単純性およびVURを有する症例よりも尿路の閉塞を有する複雑性腎盂腎炎症例において, 各検査項目の反応レベルが高く, また正常化に要する日数が延長する傾向を認めた.
  • II. 膀胱腫瘍における尿中剥離細胞ABH抗原の検討
    辻橋 宏典, 松浦 健, 秋山 隆弘, 栗田 孝, 井口 正典
    1987 年 78 巻 4 号 p. 661-666
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    膀胱腫瘍において組織ABH抗原の検索は腫瘍の生物学的悪性度の指標になると言われ, ABH抗原消失と再発, 浸潤性との関係が示唆されている. しかし組織ABH抗原は臨床上遡及的な方法であることは否定出来ず, 今回尿中剥離細胞を用いて prospective な検索を試みた. 染色は酵素抗体法を用い, 正常6, 膀胱炎4, 膀胱腫瘍26例で行った. 組織ABH抗原との比較では表在性腫瘍の1例を除き陽性度は一致した. 尿中剥離細胞によるABH抗原の検出は非侵襲的な prospective な方法であり, 組織ABH抗原と併用して臨床応用されると考える.
  • 足立 祐二, 野々村 克也, 富樫 正樹, 坂下 茂夫, 丸 彰夫, 小柳 知彦
    1987 年 78 巻 4 号 p. 667-673
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1975年1月より1985年12月までの11年間に当教室で施行された尿道形成術は130症例で, その内訳は一期的尿道形成術92例, 二期的尿道形成術38例であった.
    両者の比較として, a) 手術時間は一期的手術及び二期的手術とも'平均約4時間で差がなかったが, proximal type では一期的手術の際, 約30分間長く要した. 麻酔合計時間は一期的手術で短かかった.
    b) 全入院日数は一期的手術で26日間, 二期的手術では46日間と, 手術から退院までの日数とあわせ, 一期的手術により患者の負担の軽減がはかられていた. c) 合併症は, 両術式を通じ瘻孔形成が最多であり, 次いで尿道口後退と続くが, 二期的手術でよりその治療に困難を極めた. d) 初回手術での成功率は, 両者とも全体の7割であった.
    以上の結果より, 一期的形成術の方が二期的形成術よりすぐれていると考えられた.
  • 小林 弘明, 小幡 浩司, 安藤 正
    1987 年 78 巻 4 号 p. 674-679
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1975年より1985年までに当院を受診した膀胱腫瘍患者中, 経過観察が可能であった91例について, ABH型血液型物質と異なる細胞膜抗原であるMN型抗原の precursor であるとされている Thomsen-Friedenreich antigen (以下T-Agと略す) の有無を Avidin-Biotin-Peroxidase Complex (ABC) 法を用いて調べ, その抗原性の消失と腫瘍の異型度, 深達度との関係, 再発率, 生存率との関連などを検討した.
    正常組織中, T-Agは siliac acid に mask された cryptantigen の形で存在するためT-Ag陰性でかつ Cryptic T-Ag陽性の場合を抗原性正常とした. 検索を行なった膀胱腫瘍91例中46例 (51%) においてT-Ag陽性または Cryptic T-Ag陰性 (以下抗原性消失群と記す) であった. 抗原性の消失は, Grade I 32例中11例(34%), Grade II 32例中15例 (47%), Grade III 27例中20例 (74%), low stage (<T2) 65例中27例 (42%), high stage (≧T2) 24例中18例 (75%) にみられ, high grade, high stage のものほど抗原性の消失率が高かった.
    また膀胱保存手術のなされた67例中, 抗原性消失群の63%, 抗原性正常群の35%に再発がみられ, 再発率は有意に抗原性消失群において高かった. 生存率は異型度や深達度が同じでも, 抗原性が消失している方が抗原性の正常群よりも低い傾向をしめし, この傾向は推計学的有意差はないが, high grade, high stage ほど, より著しかった. 従って, 従来の Grade Stage などの組織学的診断に加えT-Agの有無を検討することは, 術後の再発率および予後を推測する上に参考になると考えられた.
  • 井坂 茂夫
    1987 年 78 巻 4 号 p. 680-689
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    尿路悪性腫瘍患者の血液, 尿, 組織を対象としてTPAの臨床的有用性を検討した. 血液, 尿の測定はRIA 2抗体法により行ない, また組織については組織化学的方法で観察した.
    血清TPAは, 膀胱癌43例で陽性率65.1%であり, 異型度, 深達度の高いものほど高値を示す傾向を認めた. 膀胱全摘除術術後の患者では再発の時点で有意に高値を示した. 前立腺癌34例では陽性率78.6%であり, 低分化癌と遠隔転移のあるものが高値を示した. 治療効果と血清TPA値はよく相関し, 再燃時には高値を示すことが多かった. 腎細胞癌12例の陽性率は58.3%であり, 病期, 組織型とは関連がなかった.
    尿中TPAは膀胱癌患者では健常人及び泌尿器科良性疾患患者と比べて著明に高値を示すものが多く, 診断, 治療経過の観察に役に立つと思われた.
    組織化学的検索では, 膀胱癌はTPA陽性を示すものが多く, 腎細胞癌は陰性のものが多かった. しかし, TPAは正常組織中にも広範囲に存在するので, 血中, 尿中の異常値は必ずしも癌と関連しない場合が多かった.
  • 鈴木 省司, 福崎 篤, 折笠 精一, 斉藤 禎隆, 西山 明徳
    1987 年 78 巻 4 号 p. 690-696
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    リッサミングリーン色素 (LG) 注入法を用いて, ラットの一側完全尿管閉塞腎に於ける糸球体濾過機能と腎血行動態を検討した. 閉塞期間は, 1日, 3日, 1週間であった. 経静脈的に注入したLGは糸球体濾過を経て, 腎表面の近位尿細管に流入した. この様なネフロンを Functioning Nephron (FN)と定義した.
    FN数はコントロールでは15.1 (×103/cm2), 閉塞1日目では5.5であった. 閉塞期間の延長に従い, FN数はさらに減少した. 閉塞腎ではLG静注後, FNの出現する時間は個々のFNにより異っていた. 次にLGを注入後, LGが腎表面の尿細管周囲血管に出現するまでの時間 (TLG) を測定した. TLGはコントロールで2.6秒, 閉塞1日目, 3日目にはそれぞれ3.7秒, 4.3秒となり, 閉塞1週間目ではTLGは測定不能であった. 閉塞開放1時間後にTLGは著明に改善するが, 開放1週間後にもコントロールの値までは回復しなかった.
    以上の結果より, 1. 閉塞腎に於いて, 糸球体濾過機能を有するネフロンの存在と, FN間の機能的不均一性の存在が示唆された. 2. FN数と腎血行動態の間には密接な関係のあることが示唆された. 3. 尿管閉塞による腎血管の変化には, 閉塞開放により回復する可逆的変化と, 開放により回復しない非可逆的変化のあることが示唆された.
  • 鈴木 省司, 福崎 篤, 折笠 精一, 斉藤 禎隆, 西山 明徳
    1987 年 78 巻 4 号 p. 697-705
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    マイクロパンクチャー法を用いて, ラットの一側完全尿管閉塞腎の近位尿細管に於ける再吸収機構の解折を行った.
    再吸収機構を知る目的で, 基底外側膜電位 (EMperi), 細胞内K+活量 (aiK), そして管腔内電位 (EMTT) をK+感受性二連型微小電極を用いて測定した. コントロールのEMperi, aiKは各々-68.7mv, 81.2mEq/lであった. 閉塞1日, 3日, 1週間と閉塞期間の延長に従いEMPeri, aiKは減少した. しかしコントロール及び閉塞腎のaiK値は電気化学平衝以上であった. このことは, 閉塞腎のNa-K pump 活性はコントロールに比較し低下してはいるが, その活性は維持されていることを示す. EMTTは尿管閉塞により有意な変化を示さなかった. 次に Split Oil Drop 法を用いて, コントロール及び閉塞3日目の腎に於ける近位尿細管の水再殊量 (JVL; nl/secmm) を Ringer 液とNa+-free 液 (Choline Cl液) を用いて測定した. Ringer 液を用いた場合の閉塞腎のJvLは0.0065 (コントロールの22%) で, JVL値はEMperiに依存した. 一方Na+-free 液を用いた場合には, コントロール, 閉塞腎ともにJVLはゼロであった. 以上の結果から, 閉塞腎近位尿細管では, 正常腎と同様に, Na-K pump によるNa+の能動輸送と, これに伴う水再吸収が行なわれていることが示唆された. そして, この様な近位尿細管に於ける水再吸収は, 閉塞腎の糸球体濾過機能の維持に重要な役割をはたすと考えられた.
  • 大川 光央, 中嶋 孝夫, 徳永 周二, 島村 正喜, 菅田 敏明, 久住 治男
    1987 年 78 巻 4 号 p. 706-713
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    Trichomonas 症の多くは性行為感染症と考えられているが, 男性側における意義に関しては意見の一致をみているとはいえない. そのため, すべての尿検査が中検にて施行されている3関連施設における43,050尿検体の鏡検による T. vaginalis の検出頻度について調べるとともに, 淋菌性尿道炎 (GU) 患者61例 (平均年齢28.6歳), 非淋菌性尿道炎 (NGU) 患者113例 (平均年齢31.7歳), 慢性前立腺炎患者55例 (平均年齢42.7歳) および膣 Trichomonas 症患者の配偶者 (夫) 19例 (平均年齢39.6歳) を対象として T. vaginalis の鏡検および培養法による検索を施行した. 尿検体については, 男性では22,199検体中54症例の69検体 (0.31%), 女性では20,851検体中66症例の85検体 (0.41%) より検出されたが, 男性陽性者には高齢者が多く, 平均年齢は65.7歳で, また尿路の基礎疾患が31.5%の患者に認められた. T. vaginalis は, 慢性前立腺炎患者の14.5%から検出されたが, GU患者では1.6%, NGU患者では1.8%, 配偶者では5.3%から分離されたにすぎなかった. なお, T. vaginalis 陽性の慢性前立腺炎患者の平均年齢は60.3歳と高く, また75.0%の患者に尿路の基礎疾患が認められた. 以上より, T. vaginalis は男性にとってあくまで opportunistic pathogen であり, むしろ男性は T. vaginalis の運搬者としての役割を果たしていることが推察された.
  • 中田 瑛浩, 片山 喬
    1987 年 78 巻 4 号 p. 714-719
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    無症候性血尿患者86例に和漢薬を投与し, 一部の患者に高圧酸素療法 (OHP) を併用し, すぐれた治療効果が得られた. 腎血流の増加, 利尿作用などが報告されている小柴胡湯・五苓散, 各7.5g/日を投与下に, 絶対圧2気圧, 90分/日のOHP療法を施行した. 治療期間22±6 (平均値±標準誤差) 日にて患者の50%に血尿の消失が見られ (有効), 治療期間30±6 (平均値±標準誤差) 日にて患者の33.3%に尿中の赤血球数が5~9個/GF, 400倍と減少した (改善). 上記の和漢薬のみであると治療期間が45±3 (平均値±標準誤差) 日で, 有効率は17.2%が得られ, 治療期間が47±4 (平均値±標準誤差) 日で, 改善率は21.9%であった. この和漢薬に carbazochrome sodium sulfate 90mg/日, tranexamic acid 750mg/日を併用してもしなくても治療成績はほぼ同じであった. いずれの治療法でも, 治療前後で血清クレアチニン, BUN, 血清電解質に有意の変動はなかった. 以上よりの成績より, 従来の治療法で止血効果の得られない症例には, これらの和漢薬とOHPの併用療法を試みてもよいものと推測された.
  • 杉山 高秀, 江左 篤宣, 朴 英哲, 金子 茂男, 栗田 孝
    1987 年 78 巻 4 号 p. 720-725
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    排尿筋反射亢進や, 低コンプライアンス膀胱の膀胱内圧に神経因子, 筋性因子がどの程度関与しているかを明らかにすべく本検討を行なった.
    対象は1980年1月から1985年4月までに, 近畿大学医学部附属病院泌尿器科で排尿障害のために, 排尿機能検査を施行した99例である. 方法は, DISA炭酸ガスシストメータを用い流量150ml/minで副交感神経遮断剤 Scopolamine-N-butylbromide 20mg静注負荷前後の膀胱内圧を測定した. その結果, 臭化ブチルスコポラミン負荷膀胱内圧測定により, 1. 排尿筋反射亢進か, 低コンプライアンス膀胱か判別不能な症例を適確に2型に分類出来た. 2. 頻尿もしくは遍迫尿失禁を示す症例に対する経口投与療法の効果を予測出来た. 3. 仙骨神経ブロックの適応を判定出来た.
  • 仲地 研吾, 藪元 秀典, 鹿子木 基二, 島 博基, 森 義則, 生駒 文彦
    1987 年 78 巻 4 号 p. 726-731
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    精管異所開口は稀な奇形であり, そのほとんどの報告が尿管・膀胱への開口である. 男子小子宮への精管の異所開口は今までに6例報告されているが, その発生機序は不明な点が多い. われわれは男子小子宮に開口した精管異常の2例を報告し, 合計8例について診断時年齢, 合併奇形, 発生機序及び治療に関し若干の文献的考察を加えた.
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