日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
79 巻, 4 号
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  • 江藤 弘, 原 勲, 守殿 貞夫
    1988 年 79 巻 4 号 p. 599-605
    発行日: 1988年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    BBNにより誘発された Wistar ラットの膀胱癌を同系ラットに過剰免疫し, この脾細胞とマウスミエローマP3X63Ag8-U1を細胞融合することによってモノクローナル抗体: RS-11が得られた. 培養細胞の免疫ペルオキシダーゼ染色からRS-11はラット, イヌ, ヒトの膀胱癌培養細胞と反応し, またミエローマ, 白血病細胞, 赤血球をのぞく種々の細胞と反応した. その染色パターンからRS-11認識抗原は細胞質のみならず細胞膜上にも発現されていた. 免疫組織化学的解析からラット, イヌ, ヒトの膀胱癌組織と反応し, ヒト精巣腫瘍, 陰茎腫瘍, メニンジオーマの一部とも反応した. その他の腫瘍, ラット正常組織やヒト膵の導管, 腎の集合管の一部, 食道, 舌および皮膚の基底層あるいは中間層をのぞくヒト正常組織とは反応しなかった. RS-11は抗原陽性細胞より抽出した糖脂質分画とは反応せず, プロテアーゼで処理した細胞では未処理の細胞に比べ反応が減弱することから, RS-11の抗原決定基はタンパク上に存在することが示唆された.
  • 廣本 泰之, 平森 基起, 檜垣 昌夫, 今村 一男
    1988 年 79 巻 4 号 p. 606-612
    発行日: 1988年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    昭和56年9月から昭和62年5月までの間に昭和大学医学部泌尿器科に受診し, 生検により組織学的に診断された前立腺肥大症患者14名, 未治療前立腺癌患者42名について, 前立腺特異抗原 Prostatic Specific Antigen (以下PSAと略す) を測定し前立腺癌の腫瘍マーカーとしての有用性につきRIA法および酵素法による前立腺性酸性フォスファターゼ (以下PAP及びP-ACPと略す) と比較検討した. 前立腺癌患者については, 諸検査を行い, Stage AB群17例, Stage C群18例, Stage D群7例に Stage を分類した. PSAの前立腺非癌領域は, 7.5ng/ml以下とすることが望ましいと思われた.
    PSA, PAP, P-ACPのうちPSAのみが前立腺肥大症症例群と前立腺癌 Stage AB, C, Dの各群との間に推計学的有意差を認め, 又 low Stage 群における陽性率も他の2つの腫瘍マーカーに比べ52.9%と高く, スクリーニング検査には最も適していると思われた. PAPとPSAを同時測定することで陽性率はPSA単独に比べわずか2.4%増加したにすぎず, 前立腺癌のスクリーニング検査においてPSAの測定に加えてPAPまでも測定する必要はないと思われた. 同一血清においてPAPとPSAの相関性は比較的高かった (r=0.74).
    PSAは前立腺癌の腫瘍マーカーとして臨床上有用であることが示唆された.
  • クエン酸の蓚酸カルシウム結晶溶解作用およびラット実験結石に与える影響
    安川 修
    1988 年 79 巻 4 号 p. 613-619
    発行日: 1988年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    クエン酸が蓚酸カルシウム結石形成に及ぼす影響について基礎的ならびに動物実験による検討を行い以下の結果を得た.
    1) クエン酸は生理的pHの範囲においては蓚酸カルシウムの溶解度を増加せしめ, 且つその作用はアルカリ側において顕著であった. また平行しておこなわれた hydroxyapatite の溶解度に関する検討では, クエン酸は対照群に比べればその溶解度を上昇させたもののアルカリ側においては極端な溶解度の低下が観察された.
    2) aggregometer を用いた蓚酸カルシウムの結晶形成能についての検討結果では, クエン酸は濃度依存性に蓚酸カルシウムの結晶形成を抑制するとの結果が得られた.
    3) ラットを用いた動物実験では0.4%エチレングリコール投与によって認められる腎尿細管内の蓚酸カルシウム結晶がクエン酸塩の同時投与によって著明に抑制されることが確認された.
    以上よりクエン酸は尿中において蓚酸カルシウム結石形成に抑制的に作用することが確認され, 動物実験の結果からもカルシウム結石症に対する臨床効果が期待でき得る可能性が示唆されるものであった.
  • 尿路結石症患者のクエン酸排泄量の検討とクエン酸剤投与による治療効果の検討
    安川 修
    1988 年 79 巻 4 号 p. 620-628
    発行日: 1988年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1. クエン酸リアーゼを用いた酵素法による測定で正常健康人109例, 及びカルシウム結石患者231例の尿中クエン酸排泄量について検討し以下のような結果が得られた.
    1) 健康人男子72例, および女子37例の尿中クエン酸排泄量は383.9±156.5mg/day, および452.6±171.4mg/dayであり, 女子の方が5%の危険率で有意に高値を示した. また, カルシウム結石群では男子326.2±203.6mg/day, 女子374.2±219.7mg/dayであり, 男子は5%の危険率で低値を示し, 女子は結石再発群のみが有意な低値を示した.
    2) 健康人の男女の排泄量の統計学的検討により, クエン酸排泄量の正常下限値を男子200mg/day, 女子250mg/dayとして低クエン酸尿症を定義したところ, 結石群では男女とも約30%の低クエン酸尿症が認められた.
    3) 過カルシウム尿症あるいは過蓚酸尿症と低クエン酸尿症の合併は, いずれも結石群の10%前後に過ぎなかった.
    4) 尿中クエン酸排泄量と尿量, 尿中マグネシウム, 尿酸, リンおよび蓚酸排泄量の間には弱い正の相関を示す傾向が認められた.
    2. カルシウム結石患者に対し, クエン酸剤を1日3gを経口投与し, 尿中パラメーターの追跡検討を行ったところ尿pHと尿中クエン酸排泄量の有意な上昇の持続が観察された.
    また6カ月以上の投与症例での検討では結石再発防止効果が予想される結果が得られた.
  • 平岡 保紀, 秋元 成太, 西浦 弘, 陳 半水, 藤岡 良彰, 淡輪 邦夫, 小川 秀弥
    1988 年 79 巻 4 号 p. 629-634
    発行日: 1988年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    経尿道的前立腺剥離切除術をより安全により早く行なうため天井部の切除方法と剥離後の腺腫の切除方法について検討した.
    手術時間を短縮する目的で行なった剥離前の全周性部分切除の段階で天井部の腺腫をできるだけ全切除してしまう剥離前上方全切除群5例と安全性の高い方法として天井部の腺腫を少し残し気味に切除し, 静脈洞を絶対に開口させないように行ない, 剥離後の切除の仕上げ段階で残りの天井部の腺腫を切除するという剥離前上方不全切除群52例とを比較検討した. 剥離後の切除方法として安全かつ手術時間短縮の目的で8時, 4時, 6時方向で剥離面の外科的被膜まできれいに切除し, 3本の縦溝をつくったのち, のこりを切除する縦溝作成法を用いた. 天井部は切除による穿孔はきたしがたいとはいえ, 剥離前上方全切除群5例中3例 (60%) に剥離する前にすでに天井部に静脈洞開口をきたした. 剥離後の切除時間は9~60分, 平均26分であった. 全周性部分切除の段階では天井部の切除は腺腫を少し残し気味に切除を行ない剥離後のしあげの段階で全切除する剥離前上方不全切除法が安全である. 剥離後の切除に関し縦溝作成法は切除を易くし, 手術時間の短縮に有効であった.
  • PA (Prostate specific antigen) の臨床的検討およびPAP・γ-Smとの比較検討
    篠田 育男, 栗山 学, 竹内 敏視, 高橋 義人, 坂 義人, 河田 幸道
    1988 年 79 巻 4 号 p. 635-642
    発行日: 1988年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    前立腺癌患者の診断における prostate-specific antigen (PA) の有用性について, enzyme immunoassay (EIA) 法を用いて検討するとともに, PAP, γ-Smを加えた multiple marker 測定の有用性についても検討した. 未治療前立腺癌110例でのPAの陽性率は, stage A; 20%, B; 46%, C; 64%, D; 89%であった. また, PA, PAP, γ-Smの3者の同時測定を未治療前立腺癌48例に施行したところ, stage A; 0%, B; 67%, C; 60%, D; 94%となり, それぞれの single assay に比べて, 陽性率の向上がみられた.
    以上より, 本法を用いて測定した血清PA値は, 前立腺癌の診断に有用であるとともに, PAP, γ-Sm測定との併用により, 診断における陽性率の向上が認められ, multiple marker 測定の有用性が示唆された.
  • 林 宣男, 杉村 芳樹, 桜井 正樹, 川村 寿一
    1988 年 79 巻 4 号 p. 643-653
    発行日: 1988年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    ラット前立腺のアンドロゲン依存性が, 微小解剖法を用いて形態学的ならびに生化学的に再検討された. 以前の論文において報告したように, ラット前立腺は形態発生学的に5つの葉 (前葉, 側葉 type 1, 側葉 type 2, 後葉および凝固腺) に分類される.
    この研究においてアンドロゲン削除による前立腺各葉の退縮とアンドロゲン投与による再生が, 様々なホルモン処置で検討された. 前立腺の退縮は, 去勢あるいは17β-estoradiolで, 再生は testosterone propionate (TP) で処置し研究された. その結果によると形態学的ならびに生化学的変化の程度や速度に著明な差異が葉間にみられた. 巨視的腺管分枝構造, 組織所見, 湿重量, DNA量に関して, 凝固腺と前葉は他葉よりも性ホルモンに対する感受性が高かった.形態や機能の維持に関して, 前葉は最もアンドロゲン依存性が高く, 逆に側葉 type 1は最も低い.
    この研究は, 前立腺がその形態や細胞活性において明らかに均一な臓器でないことを示している. 我々は, このような腺内異質性が前立腺の最も重要な生物学的特徴の一つであり, 前立腺の限局性異常増殖 (例えば前立腺肥大症や癌) の病態発生に直接関与しているのではないかと考えている.
  • 鈴木 省司, 福崎 篤, 折笠 精一, 斉藤 禎隆, 西山 明徳
    1988 年 79 巻 4 号 p. 654-659
    発行日: 1988年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    ラットの一側完全尿管閉塞腎 (CUUO) で, 閉塞開放後の表在性ネフロンの糸球体濾過機能と近位尿細管機能の変化を観察した. 糸球体濾過機能の示標として, Lissamine green 色素静注法を用いて測定した濾過機能を有するネフロン (色素の排泄が認められたネフロン) の数 (Nf) を, 近位尿細管機能の示標として, マイクロパンクチャー法を用いて測定した近位尿細管細胞の膜電位 (EM) をそれぞれ用いた.
    Nfは閉塞3日, 1週間のCUUOで共に開放直後に有意に増加した. 3日のCUUOではこれ以後Nfの有意な増加は認められなかったが, 1週間のCUUOではNfは開放後1週間までさらに増加を続けた. 濾過機能を有するネフロンの中で比較的良好な機能を有すると思われるネフロン (色素の排泄が早いネフロン) のNfに占める割合は, 3日, 1週間のCUUOで共に開放1週間後まで増加を続けた.
    EMは3日, 1週間のCUUOで共に開放直後に有意に増加した. 個々のネフロンの濾過機能が開放直後からさらに1週間後まで回復を続けるのに対し, 近位尿細管機能の示標となるEMは開放直後に回復を完了し, 以後1週間後まで有意な増加を示さなかった. 開放1週間後のNf, EMは共に control の値と比較して有意に低値を示した.
    以上の実験結果から閉塞腎の表在性ネフロンでは, 1. 閉塞開放後1週間にわたり濾過機能を有するネフロンの数の増加と, 個々のネフロンの濾過機能の改善 (質の向上) が認められた. 2. 近位尿細管機能の回復は閉塞開放直後に完了した. 3. 糸球体機能は尿細管機能に遅れて回復することが示唆された.
  • 成人ラットとの比較
    鈴木 省司, 福崎 篤, 折笠 精一, 斉藤 禎隆, 西山 明徳
    1988 年 79 巻 4 号 p. 660-665
    発行日: 1988年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    小児ラットで閉塞期間3日, 1週間の一側完全尿管閉塞腎を作製し, リッサミソグリーン注入法と微小電極法を用いて, 腎機能障害の進行と閉塞開放後の機能回復を明らかにし, 成人ラットと比較検討した.
    腎盂容量は閉塞3日目には control の15.7倍 (成人ラットでは control の6.3倍), 閉塞1週間では47.5倍 (成人ラットでは16.7倍) となった.
    リッサミングリーン注入法を用いて測定した Functioning Nephron 数 (Nf: ×103/cm2) は control で14.8±0.9 (成人ラットでは15.1±0.5) であった. 閉塞3日目には control の20.9% (成人ラットでは control の12.6%) に低下したが, 開放1週間後には73.6% (成人ラットでは58.9%) にまで回復した. 閉塞1週間目には control の0% (成人では5.6%) に低下したが, 開放1週間後には48.6% (成人では47.7%) にまで回復した.
    近位尿細管細胞の膜電位 (EM) は control で-68.1±0.8mV (成人ラットでは-71.0±0.8mV) あった. 閉塞3日目には control の78.4% (成人ラットでは control の73.7%) に低下したが, 開放1週間後には92.8% (成人では88.2%) にまで回復した. 閉塞1週間目には control の58.6% (成人では67.5%) に低下したが, 開放1週間後には84.7% (成人では85.1%) にまで回復した.
    以上より, 小児水腎症は可能な限り早期に, 腎保存の方向で検討すべきと考えられた.
  • 生着過程の組織学的内分泌学的研究
    広瀬 淳, 増田 宏昭, 牛山 知己, 大田原 佳久, 太田 信隆, 鈴木 和雄, 田島 惇, 阿曽 佳郎
    1988 年 79 巻 4 号 p. 666-672
    発行日: 1988年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    ラットにおける副腎自家移植片の生着過程を組織学的, 酵素組織化学的に観察すると共に, 血中および尿中電解質, corticosterone 濃度の変化を検討した.
    ウィスター系成熟雄ラットを用い, 両側副腎を摘出し片側副腎を8分割し, 腹筋内に移植した. 対照群として開腹し両側副腎の同定のみを行った群を用意した. 各群5匹ずつを術後3日目, 7日目, 14日目, 28日目, 56日目で体重測定, 24時間採尿, 採血後屠殺した. 摘出した自家移植組織をHE染色標本, 3β-hydroxysteroid dehydrogenase (3β-HSD) の酵素組織化学的染色標本, 電顕標本として観察した.
    血中 corticosterone 濃度は, 移植後経時的に上昇し56日目には対照群と同じレベルに達した. HE染色標本により, 移植後7日目より副腎被膜に接した部分から皮質細胞の再生が始まり, 56日には副腎皮質の三層構造が形成されることを観察した. 3β-HSD染色標本では, 7日目より副腎皮質外層の再生部に陽性反応を認め, 生着に伴い反応は強くなることが判明した. また, 電顕的観察では, 再生細胞内のミトゴンドリアの形態的変化, 滑面小胞体の発達が認められ, 細胞内小器官レベルでの移植組織片の再生が確認された.
    以上のごとく, 血中 corticosterone 濃度の上昇と, 組織学的にみられた副腎自家移植片の再生過程の所見はよく一致していた.
  • 山城 豊, 安田 耕作, 香村 衡一, 村山 直人, 和田 隆弘, 島崎 淳, 服部 孝道
    1988 年 79 巻 4 号 p. 673-677
    発行日: 1988年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    尿道の末梢神経障害の診断法として, 尿道ノルアドレナリン除神経過敏テストが有用か否かを検討した. 対象は各種神経因性膀胱患者43名と神経学的に正常な慢性前立腺炎患者9名の52名である. 各種神経因性膀胱患者43名の内訳は, 子宮頚癌術後13名, 直腸癌術後11名, 腰仙部脊髄髄膜瘤11名, 脳血管障害8名である. 以上の疾患における尿道ノルアドレナリン除神経過敏の出現頻度及び膀胱ベサコリン除神経過敏との関連性等につき検討した. 尿道ノルアドレナリン除神経過敏は, 子宮頚癌術後13名中9名 (69.2%), 直腸癌術後11名中7名 (63.6%) に認められたがその他の疾患では認められなかった. 又, 膀胱ベサコリン除神経過敏との間において, 明らかな相関を示したものは, 子宮頚癌術後と直腸癌術後を合わせた症例のみであった (p<0.01). 腰仙部脊髄髄膜瘤では相関を認めなかった.
    以上の結果より, 尿道ノルアドレナリン除神経過敏は, 尿道の交感神経節後障害を来たし得る疾患に於いて出現し, その診断法として有用であると考えられる.
  • 井上 武夫, 長田 尚夫, 黒子 幸一, 星野 孝夫, 矢島 通孝
    1988 年 79 巻 4 号 p. 678-683
    発行日: 1988年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    昭和49年4月から昭和61年10月までに聖マリアンナ医科大学病院に入院した尿道狭窄は100例である. 外傷性尿道狭窄は32例 (32%) で, 球部尿道狭窄12例 (37.5%), 膜様部尿道狭窄19例 (59.3%), 外尿道口狭窄1例 (3.1%) である. 内尿道切開術を10例に行い不明の1例を除いて8例が成功し, 端々吻合6例, Badenoch 法15例, Michalowski 法1例は全例成功した. 内尿道切開術の再手術1例と小さな部分的修正手術が数例あったが, 最終的には狭窄は解除され, 拡張のため通院している患者はいない. 1例の完全尿失禁をみとめるが医原性と思われる. 勃起不能 (IMP) は不完全2例, 完全2例である. 外傷の程度の他に年齢, 補償が関係すると考える. 狭窄部位の違いが, 狭窄, 尿失禁, 性機能に大いに関係するから, 球部と膜様部を明らかに区別することを望む.
  • 骨盤内血流改変術併用の間歇的動注療法
    中村 健治, 江崎 和芳, 足達 高久, 船井 勝七, 前川 たかし, 森 勝志, 前川 正信
    1988 年 79 巻 4 号 p. 684-692
    発行日: 1988年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    前立腺癌に対する新しい抗癌剤動注法として骨盤内血流改変術併用の間歇的動注療法を考案し, 8例に対して本法を行いその治療効果について検討した.
    方法は, 先ず一側内腸骨動脈を金属コイルで塞栓し骨盤内の血流改変を行った. 次に動注チューブを鎖骨下動脈分枝から (5例) あるいは大腿動脈から (3例) 挿入し, 先端を非塞栓側の腸骨動脈内に留置し他方を皮下に埋込んだリザーバーと接続した. 薬剤注入は経皮的に27G翼状針で皮下に埋込まれたリザーミーを穿刺し, 持続注入器で約10分間で注入した. 投与薬剤は cisplatinum と adriamycin で, 週1回各10mgを投与し4回を1クールとして有効と判定されれば以後も継続投与した.
    骨盤内血流改変術前後に行った血管造影やRIの検討から, 本法によれば1本の動注チューブでも腫瘍部全域に均一で濃厚な薬剤注入が可能であることが示された.
    本法の治療成績は評価可能な6例全例が有効と判定された. すなわち, 排尿困難や頻尿などの臨床症状の著明な改善と各種画像診断で腫瘍縮小が全例で観察された. さらに, 超音波検査による前立腺重量の計測では, 本療法後の腫瘍縮小率はいずれも50%以上と極めて高値を示した. 本法の副作用は食欲不振, 尿失禁, 貧血, 皮膚発赤などを4例に認めたが, いずれも軽度で一過性であった. また, 水付加なしに薬剤を投与した例でも消化器症状の発現例はなかった.
    以上の成績から間歇的動注療法は従来治療困難な進行前立腺癌に対して極めて有効で, 且つ安全に施行しうる有力な治療法と考えられた.
  • 藤末 洋, 寺川 知良, 細川 尚三, 島 博基, 藤末 健, 有馬 正明, 生駒 文彦
    1988 年 79 巻 4 号 p. 693-699
    発行日: 1988年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    利尿超音波断層法 (DUT) を腎盂尿管移行部狭窄 (PUJS) の8症例に行い, その閉塞の程度を評価した. 尿道下裂および停留睾丸の8症例を正常対照群とした.
    フロセマイド (0.5mg/kg) 負荷前および負荷後, 5分間隔で60分まで腎盂の解離の変化を縦断走査および横断走査で計測した.
    正常対照群のフロセマイド負荷前の中心エコーの解離幅は, 縦断走査で2.3±2.8mm (mean±S. D.) 横断走査で1.9±1.2mmであった. 負荷後の解離は5mm以内であった. PUJS 8症例のエコーパターンを閉塞パターン, みかけ上の閉塞パターン, および正常パターンの3つに分類した.
    閉塞パターンとは, 利尿剤負荷後中心エコーの解離が増強し, 時間が経過しても解離が改善しないものとし, みかけ上の閉塞パターンは, 時間が経過すれば解離が改善するものとした. 対照群を含めたDUTの結果を, 99mTc-DTPAを用いた利尿レノグラムの結果と比較したところ, 利尿レノグラムにおける閉塞群は, 全例DUTで閉塞パターンを示し, DUTは, PUJSの評価法として満足のいく検査法であった. またDUTは, 安全性, 正確性, 非侵襲性であり閉塞性尿路疾患の程度を評価するのに, ふさわしい検査法であると考える.
  • 後藤 百万, 斎藤 政彦, 加藤 久美子, 近藤 厚生
    1988 年 79 巻 4 号 p. 700-704
    発行日: 1988年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    モルモット膀胱体部より採取した平滑筋筋条片を用い, ボンベシンおよびGRP (Gastrin Releasing Peptide) 関連ペプチドの膀胱に対する収縮作用を, in vitro にて検討した. GRP1-27および2種のC末端フラグメントGRP14-27, GRP18-27は, 同程度の強さで, 筋条片の用量依存性の収縮を惹起した. しかし, GRP1-27のN末端フラグメントGRP1-14はまったく筋条片の収縮を引き起こさなかった. ボンベシンも用量依存性の収縮を惹起したが, GRP関連ペプチドよりやや強力であった. GRP18-27により惹起される収縮は, 筋条片の phentolamine, propranolol, atropine, tetrodotoxin, hexamethonium, hemicholinium-3による前処置によりまったく抑制されなかった.
    以上の結果より, GRP関連ペプチドはボンベシンと同様, 膀胱平滑筋の収縮作用を有し, C末端デカペプチドGRP18-27がこの作用に必要な最小ペプチド鎖であることが示唆された. また, この収縮作用は神経活動やアドレナリン, コリン作動性レセプターを介さず, 筋細胞への直接作用によることが示された.
  • 大西 規夫, 高田 昌彦, 朴 英哲, 国方 聖司, 郡 健二郎, 栗田 孝, 田村 峯雄
    1988 年 79 巻 4 号 p. 705-712
    発行日: 1988年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    長期透析患者39名に対し, 超音波検査とX線CTを施行し, 長期透析患者の残存固有腎について画像診断による形態的検討を加えた。
    嚢胞形成をX線CT上39名中35名 (87.7%) に, 超音波検査上23名中8名 (34.8%) に認めた。腎実質厚は透析療法導入後4~5年で急速に萎縮し, 嚢胞形成は透析療法導入後数年で出現しはじめ, 5年以降急激にその大きさを増す傾向を示した。また abnormal density を持つ嚢胞をX線CT上4例 (10.3%) に認め, その鑑別には dynamic CTが有用であった。
    一方, 腎内石灰化をX線CT上39名中26名 (66.7%) に, 超音波検査上23名中8例 (34.8%) に認めた. 腎内石灰化群は非石灰化群に比べ有意に透析期間が長期におよぶ症例が多く, 透析療法による影響が示唆された. しかし, 両群間にALP, PTH, Ca値は差を認めなかった.
    透析患者の高血圧の多くは体液量依存性といわれているが, PRAは透析期間とともに上昇する傾向を示した。PRA高値群は正常群に比べ有意に腎実質の萎縮が高度であり, PRA上昇と腎実質の萎縮との関係が示唆された。しかしPRAと腎長軸径, 嚢胞形成とは特に関連を示さなかった。
  • 織田 英昭, 小田 剛士, 横山 雅好, 竹内 正文, 大岡 啓二, 内海 爽
    1988 年 79 巻 4 号 p. 713-718
    発行日: 1988年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    TUR治療を行った63症例について, Thomsen-Friedenreich 抗原 (T-Ag) と腫瘍特異的 soybean agglutinin 抗原 (SBA-Ag) を検索した. 患者は全て3年以上の経過観察がなされている症例である. T-Agはヒトの赤血球より精製したT-Agに対するモノクローナル抗体を用いて検索した.
    腫瘍特異的SBA-Agは, O型血清と抗Tモノクローナル抗体にて組織をブロックした後検索を行った.
    T-Ag陽性細胞と, neuraminidase 処理後のみに表現される cryptic T-Ag陽性細胞におけるG3/G1-3比は, それぞれ5.6%と6.7%であった. 一方, T-Agと cryptic T-Agいずれも陰性の腫瘍のG3/G1-3 比は, 46.7%であった. このように, T-Ag表現と組織学的異型度とは有意差が認められた (p<0.05). また, T-Agと cryptic T-Agいずれも陰性の腫瘍は, 再発率も他の群に比し高い傾向にあった.
    SBA-Agは有意差は認められないものの, 組織学的異型度と関係があった. また, T-Ag SBA-Agが共に陰性の腫瘍は再発率が極めて高い傾向にあった.
    以上により, 2種類の marker (T-AgとSBA-Ag) の検索は, 尿路腫瘍の予後を知るうえで有用であると思われた.
  • 高井 計弘, 鳶巣 賢一, 垣添 忠生, 手島 伸一, 岸 紀代三
    1988 年 79 巻 4 号 p. 719-725
    発行日: 1988年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腹腔内再発を繰り返した成人型ウイルムス腫瘍の2例を報告する. 症例1は32歳男性. 血尿を主訴に, 前医を訪れ左腎腫瘍の診断で左腎摘除術を施行された. 術中, 腫瘍被膜を損傷した. 病理診断は, 成人型ウイルムス腫瘍で, National Wilms, Turmor Study のプロトコールにより, 放射線, 化学療法がなされた. 1年半後腹腔内に再発腫瘍を認め摘出術がなされた. その1年後再び腹腔内再発を認めたため, 当科を受診した. 腹腔内に手拳大腫瘍2個を認め, 腫瘍摘出術, 周囲臓器合併切除を行った. その1年後腹腔内の3カ所に再発を認め, 摘出術を施行したが, 肝転移も出現し全経過約4年で癌死した. 症例2は, 50歳男性, 血尿を認め, 当科を初診した. CTで左腎盂に腫瘍像, エコーで, 左腎上極に嚢胞様腫瘍, 血管撮影で上極に hypovascular な腫瘍像を認めた. 尿細胞診で移行上皮癌細胞がみられた. 腎実質に浸潤した腎盂癌の診断で, 左腎尿管全摘, 膀胱部分切除, リンパ節郭清を行った. 術中, 腫瘍被膜損傷をおこした. 病理所見は, 成人型ウイルムス腫瘍の診断であった. 術後, 化学療法, 放射線療法を加えたが, 約半年後, 腹腔内全域に拡がる多数の腫瘍結節再発を認め, 全経過約10カ月で癌死した. 上記2例と内外の成人型ウイルムス腫瘍の報告を集計検討し, 小児型との相違点, 術中腫瘍散布の予後への影響, 根治手術の重要性について考察を加えた.
  • 山口 誓司, 客野 宮治, 長船 匡男, 松宮 清美, 高橋 香司, 桜井 幹巳, 中村 仁信
    1988 年 79 巻 4 号 p. 726-731
    発行日: 1988年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎被膜平滑筋芽腫の1例を報告する. 症例は36歳の女性で左側腹部腫瘤を主訴として1985年1月21日に当科に入院した. 左逆行性腎盂造影にて左腎盂, 腎杯の上内側への圧排と左尿管の内側への偏位がみられた. 腹部CTにて巨大な腫瘍を認めた. 選択的腎動脈造影では上被膜動脈と穿通中被膜動脈により栄養される血管豊富な腫瘍と左腎の下縁の圧排像がみられた.
    1985年1月25日経腹膜的左腎摘除術を施行した. 切除重量は1030gmで, 組織学的診断は腎被膜より発生した腎平滑筋芽腫であった. 患者は術後26カ月を過ぎた現在再発の兆候はなく健在である. 欧米及び本邦文献においても腎被膜平滑筋芽腫は我々の症例が2例目であった.
  • 後藤 修一, 福井 巌, 長浜 克志, 笠松 得郎, 北原 聡史, 木原 和徳, 竹内 信一, 束 四雄, 大島 博幸, 永松 秀樹, 筧 ...
    1988 年 79 巻 4 号 p. 732-737
    発行日: 1988年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    BVP療法に不応と考えられた4例の進行睾丸腫瘍症例にCDDPとVP-16の salvage chemotherapy を施行した.
    high dose 療法 (CDDP 100mg/m2, VP-16500mg/m2の5分割投与) を行った2例はCRを得たが, low dose 療法の2例は salvage できず, salvage therapy としては high dose 療法を施行すべきであると考えられた. しかし salvage therapy 中の強い骨髄抑制の発現より, 進行睾丸腫瘍症例では high dose のCDDP, VP-16併用療法が初回治療として適当であろうと考えられた.
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