色収差は様々な面で視覚およびその生理機能に関与している。ヒトの眼球光学系においては,色収差に影響するのは主として角膜と水晶体である。眼内レンズ(IOL)挿入眼においては,IOL素材の違いによる色収差の違いが視機能に影響する可能性がある。最近では,屈折型と回折型の光学部を組み合わせて球面収差と色収差の両方をキャンセルする「色消し」IOLは光学的な質を向上させ,計算上は偏位や傾斜がなければdiffraction-limited(回折の影響以外を受けない)光学系に近い多色光modulation transfer function(MTF)を示すことが報告されている。しかし,色収差の低減は網膜像コントラストを向上させる一方で,焦点深度を減少させる。したがって色収差のコントロールをすべきかどうかは今後の検討課題である。
近視laser in situ keratomileusis(LASIK)を受けた患者に対し,術前および術後6カ月での自覚屈折度数および他覚屈折度数の関係について検討を行った。対象は15例30眼,平均年齢29±5歳(22~39歳),矯正量は平均−4.09±1.89D(−1.5~−8.38D)であった。自覚屈折検査には自覚第二法を用い,他覚屈折検査にはオートレフラクトメータを用いて調節麻痺前後の値を,また,高次収差測定装置による4mm径および6mm径での眼屈折度数および角膜,眼球の高次収差測定を行った。術前屈折度数の結果は各群間に有意差は認められなかった。術後の結果ではプラス側からミドレフ値,自覚屈折値,ミドレフ4mm値,オートレフラクトメータ値,ミドレフ6mm値となり,オートレフラクトメータ値に対し,ミドレフ値,自覚屈折値が有意にプラス寄りの値を示した。瞳孔径の測定領域が広いと術後の球面様収差によりマイナス寄りの値になったと考えられた。