視覚の科学
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33 巻, 4 号
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巻頭言
総説
  • 宮前 博
    原稿種別: 総説
    2012 年 33 巻 4 号 p. 133-137
    発行日: 2012年
    公開日: 2019/11/22
    ジャーナル フリー

    眼内レンズ(IOL)への応用が近年著しい回折レンズの原理について解説する。回折型のIOLは,通常の屈折レンズの片面に多数の同心円状の薄い微小プリズムからなる回折面を張り付けたものである。回折面に入射した光線は,射出するときには入射光線と同じ方向に進む光線とほんのわずかに屈折する光線に分かれる。そのため回折レンズ全体は二つの焦点位置が近い二焦点レンズとなる。このとき,隣り合う微小プリズムを射出する光の位相差を制御する必要がある。また,波長によって2本の射出光線へのエネルギーの分配が変わるが,これは微小プリズム材の屈折率の分散と回折現象そのものの分散が異なることによる。

  • 梶田 雅義
    原稿種別: 総説
    2012 年 33 巻 4 号 p. 138-146
    発行日: 2012年
    公開日: 2019/11/22
    ジャーナル フリー

    私達が一定の距離にある物体を注視しているときの屈折値はリズミカルに揺れ動いている。これを調節微動という。調節微動は0.6Hz未満のゆっくりとした低周波数成分と,1.0~2.3Hzの比較的速い高周波数成分(HFC)に分けられる。HFCは毛様体筋の震えによって生じ,毛様体筋に過剰な負荷がかかると増加する。HFCは健常な毛様体筋ではある程度までの調節負荷を加えても上昇しないが,疲労した毛様体筋ではわずかな負荷でも上昇する。HFC値はビデオゲームを行った後には上昇し,休息によって低下する。HFC値が上昇していた眼では,累進屈折力レンズ眼鏡や遠近両用コンタクトレンズの装用によって有意に低下する。眼精疲労に有効といわれている健康食品(アスタキサンチン)の摂取によってもHFC値は低下する。近視の進行について多くの報告がなされており,一見矛盾するような結果が混在する。しかし調節微動に着目すれば,すべての報告に共通の関連性を見い出すことができる。近視の進行に調節微動が関与する仮説(mechanical stress hypothesis)を提案したい。眼精疲労の診断治療には調節微動の観察が有用である。生涯にわたって快適な矯正を提供するためには,これからの眼科学では屈折矯正を学ぶ前に調節機能を学習することが必須である。

原著
  • 遠藤 高生, 不二門 尚, 神田 寛行, 森本 壮, 西田 幸二
    原稿種別: 原著
    2012 年 33 巻 4 号 p. 147-151
    発行日: 2012年
    公開日: 2019/11/22
    ジャーナル フリー

    視力0.01以下の超低視力(ultra low vision)患者における視力の定量化のため,屈折異常以外の眼疾患を有さない12名に対し,弱視治療用眼鏡箔による不完全遮蔽で実験的に超低視力状態(logMAR 1.4以下)を作成した上でBerkeley Rudimentary Vision Test(BRVT)とそれをパーソナルコンピュータのディスプレイで再現した視力検査(PC TEST)装置を用いて比較した。視力検査結果のBland-Altman分析結果では,検査結果および再現性はほぼ同等で明らかな差異は認められなかった。また,視標の輝度はBRVTでは検査室の照度に大きく影響されたが,PC TESTではほぼ一定であった。PC TESTでは設定を同一にすれば環境によらず,正確で再現性の高い超低視力の視力検査を実現できる可能性がある。

  • 川島 祐貴, 福田 一帆, 金子 寛彦, 内川 惠二
    原稿種別: 原著
    2012 年 33 巻 4 号 p. 152-163
    発行日: 2012年
    公開日: 2019/11/22
    ジャーナル フリー

    本研究では,同一の空間を異なる速さで拡大する2種類のオプティカルフローを観察した場合に,どのようなベクション(視覚誘導性自己運動感覚)が生起するかを調べた。2種類のオプティカルフローの速さの差を速さ条件とし,オプティカルフローを形成するランダムドット刺激の空間密度比を変数にして,ベクションの速さを評価する実験を行った。その結果,ベクションの速さは,2種類のオプティカルフローの速さの差が小さい場合は,ランダムドット刺激の空間密度比に伴って線形に変化した。2種類のオプティカルフローの速さの差が大きくなり,オプティカルフローが二つに分離して知覚される場合は,ベクションの速さが遅いオプティカルフローにより決まる場合と両方のオプティカルフローにより決まる場合に分かれた。しかし,後者でも遅いオプティカルフローの速さの寄与が大きいことが明らかになった。このようなベクションの速さ知覚の特性をランダムドット刺激の空間密度比に対する足し合わせモデルによって説明した。

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