上下プリズム効果による水平眼位および回旋偏位と調節力への影響を検討した。水平眼位および回旋偏位の検査の対象は,健常被験者6名(平均年齢22.1±3.5歳),調節力検査の対象は,同じく11名(平均年齢21.3±2.6歳)とした。方法は優位眼・非優位眼それぞれに2,4,6⊿を基底上方と下方に装用させた上でシノプトフォア(Clement Clarke International)を用い,水平眼位および回旋偏位を測定した。また両眼開放下にて優位眼に1, 2⊿のプリズムをそれぞれ装用させ,visual display terminal近点計NP-200(TOMEY社)を用いて調節力を測定した。その結果,水平眼位は被験者の基準データの大きさに伴って,回旋偏位は近視度数の強さに伴って増加する傾向がみられた。また,調節力は基準データに比べ2⊿基底上方にて0.82 D,2⊿基底下方にて1.10 D減少した(ANOVA, Scheffé, p < 0.05)。これらの結果から,プリズムによる上下偏位が生じることによって,水平眼位と調節力に変化を及ぼすことが示唆された。
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