この度,祁 華先生に眼鏡レンズ設計や開発の魅力と最前線の動向について,貴重なお話を伺うことができました。僭越ながら祁 華先生は,アカデミックな研究者としてのお顔と世界最前線のエンジニアというお顔とどちらからも見られる魅力的な先生と思っておりました。インタビューを通して先生のお仕事の幅の広さに驚かされましたが,私の中で特に印象に残っているのが,累進レンズ性能表示の検証です(祁 華.視覚の科学第33巻3号,2012)。従来の収差分布だけでなく装用時のぼやけ,歪み,ユレなどの程度を指数として表し,新たな評価軸を作られています。眼科臨床現場では,視力やコントラスト感度など定量的な指標を多く用いているのに,ぼけや歪み,ゆれなどの感覚は,口頭での聞き取りなど定性的に終わることが多く,これらを定量的にしていく作業が必要なのだとあらためて感じさせられました。加えて,高度な見え方のシミュレーションや近視進行抑制用眼鏡の開発も積極的に取り組まれております。これらはさらに発展してきているとのことで,今後開発される眼鏡レンズにもぜひ注目したいと思います。
祁 華先生は,一見,寡黙に見える先生なのですが,話してみるととても気さくで,多くのことをとても丁寧に教えてくれます。秘めているエネルギーもきっとすごいので,ぜひこの記事を読んだ旨と質問をしてみてはいかがでしょうか。
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