皮膚障害は肥満の合併症の一つとされるが、その関連は十分明らかではない。本研究の目的は、肥満者の肥満度・減量と皮膚障害・生理機能の関連の検討である。デザインは非ランダム化クロスオーバー試験であり、BMI 25以上の対象者に3ヵ月間の減量プログラムを実施した。初回、中間回、最終回に腹部、上腕、大腿の皮膚状態(角質水分量、pH、経皮水分喪失量、粘弾性、臨床所見)を評価した。対象者は41名であり、前期実施群が22名、後期実施群が19名となった。BMI 27.5以上の対象者には、「間擦部の湿疹性局面」(p=0.035)、「色素沈着と粗化」(p=0.042)が多く観察された。最終回時点では、BMIとpHが正の相関(腹部p=0.044; 上腕p=0.037; 大腿p=0.013)、R0が負の相関(腹部p=0.044; 上腕p=0.027; 大腿p=0.001)を示した。最終回までにBMIは有意に減少した(p<0.001)。BMI減少率は、中間回までのR0の増加率(腹部p=0.001; 上腕p=0.008;大腿p=0.005)および最終回までの皮膚pH低下率(腹部p=0.001; p<0.001; 大腿p=0.045)と有意に相関した。肥満度は特有の皮膚所見に関連し、皮膚生理機能の変化としてpH上昇、変形能低下が観察された。また、肥満に伴う皮膚生理機能変化は、減量により改善する可逆的変化であることが示唆された。
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