日本創傷・オストミー・失禁管理学会誌
Online ISSN : 1884-2321
Print ISSN : 1884-233X
17 巻, 1 号
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日本創傷・オストミー・失禁管理学会ブラッシュアップセミナー講演
原著
  • 駒形 和典, 仲上 豪二朗, 玉井 奈緒, 加藤 啓史, 杉本 隆, 飯坂 真司, 須釜 淳子, 繁田 佳映, 真田 弘美
    2013 年 17 巻 1 号 p. 11-22
    発行日: 2013年
    公開日: 2021/05/07
    ジャーナル フリー

     目的:男性の尿失禁に起因する皮膚障害の予防にはパッドを用いた従来のケアでは不十分である。そこで本研究は新たに開発したパウチを用いた男性用尿失禁ケア用具(パウチ付き紙おむつ)を使用してモデルおよび健常人実験を行い、おむつ内・外への尿漏れ防止効果ならびに皮膚生理機能へ与える影響を評価した。方法:モデル人形と健常男性を対象にパウチ付き紙おむつの使用またはパッドを陰茎に巻くケアを行い、各ケアがおむつ内・外への尿漏れや皮膚生理機能、温湿度、使用者の主観的評価に与える影響を群間で比較した。本研究は東京大学大学院医学系研究科倫理委員会の承認を得て行った。結果:モデル実験ではパウチ付き紙おむつ使用群ですべての実験条件で有意におむつ内・外への尿漏れ割合が減少した。健常人実験(N=15)では、パウチ付き紙おむつ使用群でおむつ内への尿漏れ割合が有意に減少した。また皮膚生理機能は、角質水分量がパッドによるケアで鼠径部、仙骨部、殿部で排尿前より排尿後に有意に上昇し、皮膚pHはパッドによるケアで仙骨部および殿部で排尿前より排尿後に有意に上昇していた。使用者の主観的評価は排尿後の履き心地、かゆみとにおいにおいてパウチ付き紙おむつ使用群のほうが有意に良好であった。結論:パウチ付き紙おむつの使用はパッドによるケアよりもおむつ内への尿漏れの発生や皮膚生理機能の変化を抑えることができた。さらに使用者の主観的な評価も高いことから、新たな尿失禁ケア方法として用いることが期待できる。

  • 堀井 素子, 須釜 淳子, 大江 真琴, 峰松 健夫, 長瀬 敬, 藪中 幸一, 赤瀬 智子, 仲上 豪二朗, 伊吹 愛, 真田 弘美
    2013 年 17 巻 1 号 p. 23-32
    発行日: 2013年
    公開日: 2021/05/07
    ジャーナル フリー

     肥満者では、慢性創傷や炎症性皮膚疾患の増加が報告されている。近年、肥満モデルマウスにおいて、変性した皮下脂肪組織における酸化ストレス上昇を介したコラゲナーゼ発現亢進による真皮コラーゲンの分解が示された。本研究の目的は、ヒトにおける真皮構造変化と酸化ストレスおよび皮下脂肪組織変性との関連を明らかにすることである。対象(男性61名)は、一般企業および一般病院より募集し、BMI<25、25-30、≧30の3群に分類した。真皮および皮下脂肪組織の超音波画像を取得した。また酸化ストレスの指標として、毛根におけるheme oxygenase 1(HMOX1)の発現をリアルタイムRT-PCR法により測定した。超音波画像を基に、真皮の構造は真皮の厚さおよび高エコー斑点の分布から3タイプ(A~C)に分類された。BMI<25では約80%がタイプAを有していたが、BMIが25以上ではタイプBおよびCが増加していた。またタイプB、Cにおいて、タイプAにくらべHMOX1の発現は有意に上昇しており、皮下脂肪組織の変性を有する対象者の割合も増加していた。以上より男性において肥満に伴う真皮の構造変化に毛根の酸化ストレスの上昇および皮下脂肪組織変性が関連することが明らかとなった。軽度の肥満段階から皮膚アセスメントが必要であり、肥満に伴う皮膚疾患などの予防的スキンケアとして、少なくとも男性においては酸化ストレスを標的とした介入が有効である可能性が示された。

  • 松尾 淳子, 福田 守良, 井内 映美, 西澤 知江, 大桑 麻由美, 須釜 淳子, 紺家 千津子, 真田 弘美
    2013 年 17 巻 1 号 p. 33-39
    発行日: 2013年
    公開日: 2021/05/07
    ジャーナル フリー

     骨突出部位にかかる外力を管理するために体圧分散寝具が使用されるが、シーツの張りによってハンモック現象が生じ褥瘡発生の原因ともなりうる。そこで本研究目的は、ベッドメーキング方法の違いによる、エアマットレスの圧再分配機能への影響を明らかにすることとした。
     静止型エアマットレスに綿100%平織りのシーツを敷いた。その上に、骨突出モデルを設置し垂直荷重を加え、沈み込み距離と接触面積、最大接触圧を測定した。シーツは、シーツの角を三角に折り込む「コーナー法」、コーナー処理をしない「処理なし法」、シーツの角をマットレスの裏面に折り込んで結ぶ「結ぶ法」、エアマットレスのカバーのみの「シーツなし」に分類し比較検討した。
     結果、「シーツなし」に対して、「処理なし法」は接触面積、最大接触圧値に有意差はみられなかった。「コーナー法」は、接触面積が0.61倍に縮小、最大接触圧値が1.87倍に上昇しており、マットレスの圧再分配機能が阻害されていた。また、「結ぶ法」も同様に圧再分配機能が阻害されていた。以上より、シーツのコーナー処理がエアマットレスの圧再分配機能に影響を及ぼしていることが示唆された。

  • 清水 菜穂子, 山本 昭子, 黒柳 能光
    2013 年 17 巻 1 号 p. 40-49
    発行日: 2013年
    公開日: 2021/05/07
    ジャーナル フリー

     本研究では、ヒアルロン酸(HA)を基材としたスポンジ状シートに上皮成長因子(EGF)、アルギニン(Arg)、ビタミンC誘導体(VC)を含有した機能性創傷被覆材の開発を行った。所定量の分子間架橋剤を混合した高分子量HA水溶液をトレーに分注し、その上にArg、VCを含有した低分子量HA水溶液を分注し、凍結真空乾燥により2層性の被覆材(I群:EGF(-)被覆材)を作製した。上記と同様の方法でEGFを含有した被覆材(II群:EGF(+)被覆材)を作製した。ヒト線維芽細胞をコラーゲンゲル内に組み入れた培養真皮を用いて創傷面モデルを作製し、MTT assayで細胞代謝活性、ELISAで血管内皮成長因子(VEGF)および肝細胞成長因子(HGF)産生量を測定した。溶出したEGFが効果的に線維芽細胞の代謝活性を高め、VEGFおよびHGF産生量を顕著に増加した。またSDラット腹部に全層皮膚欠損創を作成して被覆材を貼付し、肉眼的および組織学的に創傷治癒を評価した。対照群として市販のアルギネート被覆材を貼付した。I群およびII群は対照群と比較して血行に富んだ良好な創面が観察され、創面積は減少し、血管新生を伴った肉芽組織形成が促進された。特に、II群はEGFによって炎症反応が早期に終息傾向を示した。以上より本被覆材は、創傷面モデル実験および動物実験において創傷治癒促進効果をもつことが明らかとなった。

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