日本創傷・オストミー・失禁管理学会誌
Online ISSN : 1884-2321
Print ISSN : 1884-233X
19 巻, 4 号
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原著
  • 福田 守良, 田端 恵子, 西澤 知江, 臺 美佐子, 仲上 豪二朗, 野口 博史, 中谷 壽男, 大桑 麻由美, 真田 弘美, 須釜 淳子
    2015 年 19 巻 4 号 p. 365-377
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は底づき回避機能が褥瘡部位の接触圧、底づき、積算値(接触圧×底づき時間)に影響するかどうか検証することである。対象は65歳以上、坐骨結節部、尾骨部に褥瘡のある、もしくは、それらの部位に既往がある者で座位姿勢に問題のある者とした。クッションは自動圧切り替え型クッションを使用した。本研究は、クロスオーバーデザインである。介入群は、クッションの機能である底づき回避機能をONにし、対照群は底づき回避機能をOFFにした。結果、17名を分析対象者とし、接触圧、総底づき時間割合、積算値を算出した。介入群の接触圧(座位A)は、クッションの適正体圧時と非底づき時に有意差はなかったが(p =.16)、対照群では適正体圧時より非底づき時のほうが有意に高かった(p =.00)(座位A:バックレストに背中が触れている状態)。介入群における総底づき時間割合(座位A、B、D)は、対照群よりも有意に低かった(座位B:バックレストから背中が離れ、荷重が垂直にかかる状態、座位C:手足の動作により、荷重の位置が移動する状態D:座位A、B、Cの座位後の状態)(p =.00)。介入群における積算値は、対照群よりも有意に低かった(p =.03)。以上より、圧切り替え型クッションにおける底づき回避機能は褥瘡部位または既往部位における接触圧、底づき、積算値に対して静止型より有効性を示した。

  • 吉永 美佳, 武 亜希子, 西薗 見咲, 竹原 沙織, 松留 由佳, 前原 佑美
    2015 年 19 巻 4 号 p. 378-385
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、直腸癌患者の低位前方切除術に伴う一時的ストーマ保有に対する思いと対応の仕方について明らかにすることである。データ収集は、外来通院中の患者5名に半構成的面接を行い、質的帰納的に分析した。結果、見出された2つの時期において12カテゴリが確認された。初めの【混乱したなかの一時的ストーマの引き受け期】の患者は、《癌発病への衝撃と不安の押し寄せ》を体験したあと、癌手術のために引き受けざるをえない期間限定のこととして《抵抗のある一時的ストーマ造設術の引き受け》を行っていた。つぎの【ストーマ閉鎖への待望期】になると、手術後の《一時的ストーマを保有する現実への動揺》を体験しながら、ストーマケアの練習に取り組んでいた。退院後は《周囲のサポート》と《元の自分に戻りたい望み》を支えにして、《ストーマ保有の苦しみへの直面化》に耐えていた。そして《ストーマのある生活の工夫》にも取り組めるようになっていた。一方、《ストーマ保有の苦しみへの直面化》を体験しても、諦める気持ちを維持してすぐに《ストーマのある生活の工夫》に取り組む者もいた。以上から看護師は、気持ちが不安定な者には《元の自分に戻りたい望み》を支えにストーマ保有の苦しみを傾聴して周囲のサポートが得られるように調整し、深く悩まない者には《ストーマのある生活の工夫》への努力を承認し、自信が高まるように支援することが重要である。

  • 竹原 沙織, 武 亜希子, 西薗 見咲, 吉永 美佳, 松留 由佳
    2015 年 19 巻 4 号 p. 386-393
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、直腸癌低位前方切除術とともに一時的ストーマを造設した患者がストーマを閉鎖したあとに、排便障害を負ったときの思いと対応の仕方を明らかにすることである。データ収集は、外来通院中の患者5名に半構成的面接を行い、質的帰納的に分析した。結果、見い出された2つの時期において10カテゴリが確認された。初めの【排便障害への対応期】では、ストーマを閉鎖して《元の体を取り戻した安堵》が生じた直後に《排便症状への苦痛》を体験すると、《自己を奮起させる努力》によって気持ちを立て直し、《下痢に応じた生活の工夫》に取り組んでいた。つぎの【癌発病体験の統合期】になり、《生活の楽しみを再開》できるようになると、自らの感情と向き合う者は癌発病以来の体験を振り返り、自己を承認すると《ストーマ手術の受容》にいたり、《健康意識の高まり》も確認された。なかには《癌になった意味の見い出し》にまでいたる者もいた。一方、排便障害にも動揺せずに対応しすぐに《生活の楽しみを再開》した者の根底には《再発に対する楽観視》があり、《健康意識の高まり》もさほどなかった。以上から看護師は、患者の排便障害の捉え方を支援の目安にして、苦痛がある者には《自己を奮起させる努力》を支持して生活の回復を促し自信を高め、動揺せずに楽観視する者には《下痢に応じた生活の工夫》への努力や療養生活の成功体験に着目して承認し、排便障害に取り組み続ける動機づけを培うことが重要である。

  • 村山 陵子, 内田 美保, 大江 真琴, 高橋 聡明, 大屋 麻衣子, 小見山 智恵子, 真田 弘美
    2015 年 19 巻 4 号 p. 394-402
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

     本研究は、末梢静脈カテーテル留置が、症状・徴候を伴う留置継続困難(signs and symptoms-related catheter failure:SRCF)にいたったことと、血液検査所見を含む患者背景、輸液製剤との関連を明らかにすることを目的とした後ろ向き研究である。都内大学病院における2ヵ月の調査ののち、診療録よりデータを取得した。2,150人に留置された4,854カテーテルのうち、857カテーテルがSRCFであった。SRCFのリスク因子として、女性、刺激性薬剤の投与、抜去日に最も近い血液検査値が関連していた。C反応性蛋白(CRP)が 2.0mg/dL以上、血清アルブミン(Alb)が 3.5g/dL未満であることは、多変量解析において有意に関連が認められた(調整オッズ比;OR = 1.37, 95%信頼区間;CI = 1.11-1.69、1.35, 1.07-1.70)。さらに、血清アルブミン低値であることは、抜去日に刺激性薬剤が投与されていない場合でもSRCFに関連しており(OR = 1.57,CI = 1.14-2.16)、血清アルブミン値が低いことはSRCFを促進している可能性があった。SRCFのリスク因子には性別、既往歴、刺激性薬剤のみならず、特に血清アルブミン値のような血液検査値も含まれていた。医療職者は症状や徴候を観察するだけでなく、血液検査所見を含めた患者背景情報を考慮する必要がある。

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