本研究は、末梢静脈カテーテル留置が、症状・徴候を伴う留置継続困難(signs and symptoms-related catheter failure:SRCF)にいたったことと、血液検査所見を含む患者背景、輸液製剤との関連を明らかにすることを目的とした後ろ向き研究である。都内大学病院における2ヵ月の調査ののち、診療録よりデータを取得した。2,150人に留置された4,854カテーテルのうち、857カテーテルがSRCFであった。SRCFのリスク因子として、女性、刺激性薬剤の投与、抜去日に最も近い血液検査値が関連していた。C反応性蛋白(CRP)が 2.0mg/dL以上、血清アルブミン(Alb)が 3.5g/dL未満であることは、多変量解析において有意に関連が認められた(調整オッズ比;OR = 1.37, 95%信頼区間;CI = 1.11-1.69、1.35, 1.07-1.70)。さらに、血清アルブミン低値であることは、抜去日に刺激性薬剤が投与されていない場合でもSRCFに関連しており(OR = 1.57,CI = 1.14-2.16)、血清アルブミン値が低いことはSRCFを促進している可能性があった。SRCFのリスク因子には性別、既往歴、刺激性薬剤のみならず、特に血清アルブミン値のような血液検査値も含まれていた。医療職者は症状や徴候を観察するだけでなく、血液検査所見を含めた患者背景情報を考慮する必要がある。
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