人口学研究
Online ISSN : 2424-2489
Print ISSN : 0386-8311
11 巻
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表紙・目次
会長講演
論文
  • 大淵 寛
    原稿種別: 本文
    1988 年 11 巻 p. 5-14
    発行日: 1988/05/30
    公開日: 2017/09/12
    ジャーナル フリー
    先進諸国では近年,出生力,女子の労働供給および賃金の関係に多大の関心が払われてきた,わが国においても,石油危機以降,主婦の職場進出が顕著になる一方,出生力の低落が進んでおり,両者の密接な関係が取り沙汰されている。この問題はかねてから, '出生力の経済学',とりわけ新家政学派が追究してきたものであり,この面における理論的,実証的な研究成果の蓄積はおびただしい量に上る。本論の目的はその成果の上に立って,出生力,子供の質,妻の労働供給および女子賃金の同時決定モデルを構成し,これを戦後日本の時系列データに適用して,モデルの妥当性を検証することにある。はじめに,バッツ=ウォード,ケイン=ドゥーリー,フライシャー=ローズ,コールらによるこの方面での研究業績を展望した後,モデルの構築と使用したデータの説明を行った。モデルは4本の連立方程式からなり, 4個の従属変数と9個の独立変数を含んでいる。計算は1950〜83年に関する全国レベルの年次データについて行われた。モデルの推計結果は十分に満足すべきものであり, 4個の従属変数は相互に矛盾なく説明された。本研究の意義を要約すれば,第1に出生力と女子就業との間には明確な背反関係が存在すること,第2にその背後で賃金変動,したがって経済動向がきわめて大きな役割を果たしていること,そして第3に子供の量と質の関係が補完的ではなく,代替的であることを見出した点にあるといえよう。
  • 笠井 象
    原稿種別: 本文
    1988 年 11 巻 p. 15-30
    発行日: 1988/05/30
    公開日: 2017/09/12
    ジャーナル フリー
    コミュニティ内部の社会関係,とりわけ隣人や親族との社会的遠近度が経済生活の基礎となるジャワ農村において,出身家族との関係はきわめて重要であり,成人した第二世代が周辺地域に居住し形成する援助ネットワークは,有形無形の社会保障機能を果している。人口移動が顕著な社会において,この援助のネットワークはどのような形をとり得るのか。それは移動者の出身農村周辺を超え,日常的な援助ネットワークの機能から,出身家族への送金の授受という形へと発展するものなのか。あるいは両者の関係の崩壊へと変質していくのか。本稿は,人口流出を特色とするインドネシア・ジャワの2村において1985年に実施した標本調査に基づき,出身家族に対する村外移動者の送金を,移動者とその出身家族両者の視点から分析し,その経済的・社会的意味を検討したものである。調査結果はまず,移動者からの送金が,ライフサイクルの後期にある出身家族により多く起こること,また,送金を受ける家族だけを見ても,ライフサイクルの後期にある出身家族ほど,送り手の数が増加していることを示した。また,低所得層の出身家族ほど送金を受ける割合が高く,送金を受ける家族の中では,低所得層ほど送金に依存する割合が高いことを示した。さらに,離村期間の長い移動者ほど高い送金率を示し,自身の家族と共住してその家計維持に追われる既婚移動者が,未婚もしくは現在独身の単身移動者よりも高い金額を出身家族に仕送っているといった事実も,移動者と出身家族間の緊密な関係を支持している。以上の結果から,移動者からの送金が,出身家族の家計向上の重要な手段となっていると同時に,送り手と受け手の間の社会的紐帯が,送金のもう一つの見逃し得ない側面であることが論証される。この事例研究を一般化することには慎重であるべきだが,ここに明らかにされた送金の社会的側面は,移動者から出身家族への送金が調査対象2村にとどまらず,ジャワ農村に広範に見られる現象であることを示唆している。
  • 中西 泰之
    原稿種別: 本文
    1988 年 11 巻 p. 31-41
    発行日: 1988/05/30
    公開日: 2017/09/12
    ジャーナル フリー
    マルサスのoscillation論は欧米文献や経済学史学会ではほぼ無視されている。他方,我が国の人口学会における通説のように増殖原理と規制原理の単なる機械的結合とみるのは,マルサスの内在的研究の結果とは思われず支持できない。本稿の目的はマルサスの内在的研究によって, oscillation論がマルサス『人口論』において不可欠の意義と役割を担っていることを示すことにある。すなわち,まずoscillation論は問題提起としての役割をもって第1章に登場するが,第2章で提示される人口波動の定式は,その中に後章で展開されるはずの内容を多く含んでおり,マルサスの問題意識群の凝縮ともみることができる。この定式は,人口増加の優位がもたらす不幸と悪徳が,ほかならぬ近代社会において具現するメカニズムを論理的に解明しようとするものであり,三命題を導出する論理ともなることによって,第3章以下の,いわゆる初版における歴史編を導くものである。その歴史編においては,第3章では牧畜部族の分化,拡大,戦争を説明する原理となり,第5章では救貧法批判の一根拠をもなす。さらに第7章では,流行病の発生が人口波動との関連で把握され,それを媒介として人口動態変数の解釈論が導かれる。また,第8章ではコンドルセのoscillation論がマルサスのoscillation論によって批判される。第2章の人口波動の定式はその内に経済学への通路を含んでおり,近代社会における人口波動の分析の武器が経済学,とりわけ短期の需給分析であることをしめしている。第16章で展開されるこの経済学は,下層階級の安楽が,労働を維持する基金すなわち土地生産物の下層階級への分配分に依存する,という学説である。そして,この学説はスミス批判に直結するとともに,イングランドの現状分析の道具となり,農業の奨励こそが貧民の状態を改善するとの政策批判の基準ともなっているのである。加うるに,第16章では生活水準論(という人口波動論自体に内在している問題)に属する文言がとりわけ多くみられるが,それらは,マルサスが人口波動を通じての生活水準の上昇を,明示してはいないが,おそらくは展望していたであろうことを示すものである。マルサス人口波動論はこのような意義と役割を担う『人口論』の一大支柱なのである。
  • 勝野 真人
    原稿種別: 本文
    1988 年 11 巻 p. 43-57
    発行日: 1988/05/30
    公開日: 2017/09/12
    ジャーナル フリー
    CourbageとFarguesによって開発された死亡力の間接推計法は,死亡率の相対的年齢格差と平均寿命水準との密接な関連に着目し,死亡登録の不完全性に対して安定度の高い死亡年齢分布を媒介変数としてモデル生命表上の平均寿命レベルを推計する方法である。この方法は人口の安定性や閉鎖性の仮定を必要としないので,広範な適用範囲を持つが,安定した結果を得るためにはモデル生命表の適切なfamilyの選択が極めて重要である。そこで,今回,本法の適用上の前提条件である5歳以上の年齢層における死亡登録率の一定性に立脚したモデルの選択基準を導入した。これは,モデル生命表の各familyに,それぞれ本法を適用した際,副次的に得られる年齢階級別死亡登録率について,変動係数を比較することにより適切なモデルを選択するものである。そこで,これを35カ国の発展途上国のデータに適用して, CoaleとDemenyの4種,及び国連の5種のfamilyのモデル生命表の中から,変動係数の最も小さいモデル死亡率を選び出し,結果を検討した。得られた平均寿命レベルは,モデル選択を行なわずにCoaleとDemenyのWest Modelのみから得られた平均寿命レベルとともに,国連推計による平均寿命レベルや,生データから直接算出された死亡率に基づく生命表の平均寿命レベル等との比較において評価された。これらの推計値は,合計特殊出生率,一人当りGNP,識字率など死亡力水準との強い統計的関連が知られている人口指標や社会経済指標との関連の面からも検討され,さらに選択されたモデルの地理的分布状況も検討された。その結果,一部の国を除いては,平均寿命水準についてもモデルの地理的分布についてもほぼ妥当な死亡率モデルが得られたと考えられ,今回のモデル選択基準の導入により本推計法の信頼性は改善されたと結論した。
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