人口学研究
Online ISSN : 2424-2489
Print ISSN : 0386-8311
18 巻
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表紙・目次
論文
  • 岡崎 陽一
    原稿種別: 本文
    1995 年 18 巻 p. 1-12
    発行日: 1995/05/31
    公開日: 2017/09/12
    ジャーナル フリー
    日本の出生率が1970年代半ばから低下を続けていることから,その対策についての議論が盛んになっている。日本や西欧諸国のような自由主義的,民主主義的社会においては,国あるいは社会の観点からする直接的な人口政策が採用され,実行される可能性はきわめて少ない。それゆえ人口が極端な少子あるいは多子の問題を起こしている場合でも,その対策として採りうる施策は,結婚あるいは出産に関する国民の行動に対して間接的に影響をあたえるような施策でなければならない。そのような状況のもとでは,人口政策の概念自体も,広義に設定する必要がある。すなわち広義の人口政策の中に,従来の意味の人口政策(狭義の人口政策)のほか,人口に影響する諸施策が含まれることになる。その場合の問題は,人口政策として考察の対象とすべき諸施策はきわめて広範囲にわたること,またそれらは本来の目的が児童福祉や社会保障を目的としたものであるから,人口に与える影響の仕方も一様ではないことである。本稿では,日本の児童手当制度を一例として,子育て支援的人口政策としての評価を試みた。
  • 府川 哲夫
    原稿種別: 本文
    1995 年 18 巻 p. 13-27
    発行日: 1995/05/31
    公開日: 2017/09/12
    ジャーナル フリー
    マイクロ・シミュレーションモデルの1つである「世帯情報解析モデル」INAHSIMは1981〜82年及び1984〜85年にかけて「世帯モデル研究会」によって開発された。INAHSIMは世帯,世帯員(個人),夫婦(配偶関係)の3つの情報単位で実社会の世帯を表現し,基礎率として出生率,死亡率,結婚率,離婚率,単身化率及び復帰率,世帯合併率等を用いて実社会の世帯の変動をシミュレートしている。このモデルから得られる結果は,世帯の種類別世帯数の将来推計の他に,世帯動態,高齢者の世帯状況,ファミリー・ライフサイクルに関する情報,基礎率を変化させた場合の世帯構成への影響評価,等多岐にわたっている。今回, INAHSIMに初期値作成手順の大幅な変更を加え, 1990年を起点として2040年までの50年間のシミュレーションを行った(1994年推計)。1994年推計の初期値は人口1.7万人,世帯数5.5千世帯であった。今回の推計によって,世帯調査から初期値を得られない場合にもINAHSIMによる世帯推計は可能であることが確認された。今回用いた標準基礎率に基づく推計によると,総人口は2010年頃,総世帯数は2010年代にピークを迎え,その後減少し始めるが,単独世帯及び世帯主が65歳以上の世帯の増加が顕著であった。その結果,65歳以上の単独世帯の割合は2000年には19%, 2040年には24%と増加することが見込まれた。世帯動態に関しても,これまでに得られていた結果を拡充する情報が得られた。今回の推計では基礎率の吟味は十分行えなかった。個人セグメントに健康状態の情報を付加すればINAHSIMから介護に関するデータが得られる等,モデルの発展の可能性も議論した。
  • 坂井 博通
    原稿種別: 本文
    1995 年 18 巻 p. 29-38
    発行日: 1995/05/31
    公開日: 2017/09/12
    ジャーナル フリー
    近年「丙午」研究の範囲が広がり, 1906年と1966年以外の「丙午」にも明かりが投げかけられると同時に1966年の「丙午」に関しては,ミクロデータを用いて出生間隔の研究もなされ始めた。しかし,今までの「丙午」研究は,次の3つの視点(1)「丙午」の影響が及んだ範囲, (2)「丙午」生まれの子ども側から見た特徴, (3)「丙午」が与えた社会人口学的影響,が欠けていると考えられるために, 1966年の「丙午」を例に検討を行った。「丙午」の影響が及んだ範囲に関しては,主に人口動態統計を用いて,「丙午」を含む前後20年の出生数,出生性比の動向を観察した結果, (1-1)在日韓国・朝鮮人や在日中国人, (1-2)外国在住の日本人, (1-3)非嫡出子に関しても「丙午」の影響が見られたことを確認し,「丙午」迷信の内容が,マスコミだけでなくパーソナルな伝播により普及した可能性が大きいことを示唆した。また,「丙午」の影響測定には,出生数と出生性比の両方を検討する必要を述べた。「丙午」生まれの子ども側から見た特徴に関しては,主に厚生省人口問題研究所が1985年に行った「昭和60年度 家族ライフコースと世帯構造変化に関する人口学的調査」(サンプル数7,708)の全国調査の分析により,他の年次生まれの子どもと比較して,「丙午」生まれの子どもは, (2-1)父方のおじ,おばは多くないが,母方のおじ,おばが多く,その母親の出産意欲に母親自身の兄弟姉妹数が正の影響を及ぼした可能性のあること, (2-2)特に第2子の場合,男女とも兄弟姉妹数が多いこと, (2-3)父がホワイトカラーの割合が大きく,迷信から自由な出産が多かった可能性があること, (2-4)「丙午」前後生まれの者も含めて「丙午」の迷信をよく知り,さらに,自分も「丙午であっても出産した」と答える割合が大きい,という知見を得た。「丙午」と関連する社会人口学的影響に関しては,人口動態統計と人口移動統計により,「丙午」の年において, (3-1)例年より低い3月の出生性比と例年より高い4月の出生性比, (3-2)低い移動性比, (3-3)女子の自殺の増加,自殺率の上昇, (3-4)母子世帯の増加と翌年の減少,「丙午」と翌年の性病罹患数の増加,を見出した。その原因に関しては,それぞれ,「丙午」と関連させて,「丙午」年度生まれの女子を忌避する届出操作,出産を控えた女子の人口移動の活発化,女性の価値の低下,家庭内禁欲に伴う家庭外性行動の活発化の観点から論じた。
研究ノート
シンポジウム
  • 河野 稠果
    原稿種別: 本文
    1995 年 18 巻 p. 45-52
    発行日: 1995/05/31
    公開日: 2017/09/12
    ジャーナル フリー
    1994年の日本人口学会シンポジウムは「地球人口を100億人以下に抑えこめるか」であった。これに対する答は「イエス」であり「ノー」である。1994年の国連世界人口推計によれば,途上地域の出生率がよほど劇的に低下しない限り,地球人口を100億人以下にすることは難しそうである。答えが「イエス」になるためには,女性の役割の拡大,地位の向上,総じて女性のエンパワーメントしかない。1994年9月にカイロで開催された国際人口・開発会議のキーワードはそれであり,女性の完全な協力と参加による人口活動等,特に家族計画プログラムの円滑な実施こそが,世界人口の安定化をもたらすとの合意が行われた。女性のエンパワーメントの大きな挺子はりプロダクティブ・ライツとヘルスの確立と推進である。相当数の途上国では,出生率抑制政策とそれに関連する家族政策普及活動は上意下達主義で,行政の末端の町村レベルでは往々にしてノルマの達成のために,女性の選択,健康,権利を無視して行われていた。これでは家族計画普及活動は強制になるし,長い目で見るとその効果は疑しくなる。また,大多数の途上国の家族では伝統的家父長制が支配しているが,そのような状況では若い嫁が一人前の地位を獲得できる唯一の手段は,多くの子供をを次々と産むことだけである。本当はもう子供は産みたくないのに,家長や夫の要求で出産を続け,みすみす母体の健康を損っているケースが多い。リプロ・ヘルスとライツの考え方が浸透すれば,このような望まれざる出産は減り,出生率低下は加速されることになろう。世界にはもう子供は欲しくないと思っているが,家族計画の知識がなく,薬剤・器具が不足しているために子供を産み続けているカップルが1億以上あるという。リプロ・ヘルスの運動が徹底すればこのようなアンメット・ニーズは解消し,途上国の出生率は予想以上に低下するであろうと期待されている。
  • 林 謙治
    原稿種別: 本文
    1995 年 18 巻 p. 53-63
    発行日: 1995/05/31
    公開日: 2017/09/12
    ジャーナル フリー
    第二次世界対戦後,国際間の安全保障の観点から人口問題が注目され,アメリカの主導のもとに家族計画を中心とする政策が形成された。しかし,政策が実行に移されるまで,アメリカ国内において激しい論議が戦わされ,その論点の違いはそのまま後に国際社会に持ち込まれた。1960年代に開発途上国が頻発した自然災害のために食糧危機に見舞われ,アメリカの人口政策が急速に具体化した。しかし,家族計画は微妙な問題を含むため国際ネットワークを通して推し進められた。戦後の開発途上国は,国家予算の50%を対外援助に依存しており,当時の国際環境も絡み家族計画を政策として受入れた国は少なくない。しかし, 1970年代に入り依存経済から脱皮する国が増え,これを背景に開発を中心とする人口政策が模索されはじめた。1980年代以降では,開発,健康,家族計画を包括する総合政策が取られはじめた。最近ではプログラムの効果的運用の観点から,脱中央化の方向が目指されている。それと同時にサービス対象の個別化が重視されるようになった。わが国の国際貢献は国連機関を中心に進められてきたが,経済的に発展した結果,二国間協力もかなり大きな規模に達している。政府間ベースで行われている協力は,国際機関の重点項目とほぼ一致しており,内容的にも遜色はないと思われる。しかしながら,運営面では改善すべき問題があり,今後努力する必要がある。
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