人口学研究
Online ISSN : 2424-2489
Print ISSN : 0386-8311
38 巻
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表紙・目次
論文
  • 石井 太
    原稿種別: 本文
    2006 年 38 巻 p. 1-20
    発行日: 2006/05/31
    公開日: 2017/09/12
    ジャーナル フリー
    我が国の出生率は,長期的に総人口が維持される水準である人口置換水準(合計特殊出生率が概ね2.1)を下回ってから30年近くが過ぎようとしているが,仮に今すぐ少子化が解消されたとしても,最終的な総人口水準は現在のものが維持されるわけではなく,より低い水準まで低下してしまう。この最終水準と現時点の水準との比率を「人口モメンタム」と呼ぶ。通常,人口モメンタムは全国規模の人口で考えられることが多いが,全国を幾つかの地域に分割して考えた場合,地域毎の出生・死亡水準の格差や地域間の人口移動の存在を考慮する必要が生じる。これらの考慮が人口モメンタムに及ぼす影響の分析は,我が国の人口について必ずしも広く行われてきたとはいえず,多角的な人口分析を深める視点からも重要な研究対象といえる。本研究では,人口モメンタムに関する分析を深める観点から,多地域人口モデルを構築し,多地域人口モデルにおける人口モメンタムの理論的整理を行うとともに,実データによる評価分析を行った。本研究では主に,多地域人口モメンタムは年齢要因のみによる人口モメンタムに比べやや低い値を示すことや,静止状態における各地域の人口水準及び経路は,多地域人口モデルによるものと,地域毎に封鎖人口として人口モメンタムを考えたものでは大きな差を示すことなどの結果が得られ,我が国における実データに基づく多地域人口モメンタムの特性が明らかになったとともに,通常の人口モメンタムにはない,多地域人口モメンタムのみが持つ,より複雑な人口構造を反映する特徴が明らかとなった。
  • 藤野(柿並) 敦子
    原稿種別: 本文
    2006 年 38 巻 p. 21-41
    発行日: 2006/05/31
    公開日: 2017/09/12
    ジャーナル フリー
    Becker(1965)らによる家計生産モデルによれば,男性の家計内での時間配分は,考慮されていない。このため,この理論モデルから得られる結論は女性の市場賃金率上昇による女性の労働供給増加は,育児時間の機会費用を増加させ,出生率を低下させるというものとなる。ところが,マクロレベルでの国別クロスセクションデータを用いてみたとき,昨今の女性の労働力率と出生率とは,正の相関関係にあることが確認できる。夫の家計内での時間投入を考慮すれば,夫の家計内での生産活動は,妻の育児時間の機会費用を低下させることになる。そこで,総効果としては,女性の所得増大効果と併せ,子ども数が増加する可能性が出てくるのである。わが国では,最近,男性の長時間労働を見直し,家事育児分担を増やすことが,出生力の回復に貢献すると考えられ,少子化対策の中でも強調されてきている。しかし,夫の家計内生産活動と出生力との関係が実証的に明らかにされることは非常に少なかったと思われる。そこで,本稿では,著者の行った社会調査(兵庫県「若い世代の生活意識と少子化についてのアンケート」2003)で得られた最新のミクロデータを用いて,従来のベッカー理論の変数をコントロールした上で,夫の家事育児分担が夫婦の追加予定子ども数を高めることができるのか,実証的に解明する。本稿の分析から,夫の家計内生産活動が夫婦の予定子ども数を高める重要なファクターであることが,明らかとなり,従来のベッカー理論に新たに夫の家庭内での時間配分を考慮すべきことが示唆された。また,妻が非正規就業で働く家計,専業主婦の家計において,夫の家事育児分担が進む場合,夫婦の出生力が高まるという結果が得られた。
  • 坂爪 聡子
    原稿種別: 本文
    2006 年 38 巻 p. 43-55
    発行日: 2006/05/31
    公開日: 2017/09/12
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,出産が女性の就業に与える影響を明示的に取り入れたモデルを用いて,少子化の進行要因を明らかにすることにある。従来の理論研究では,出産により就業状態や就業条件が変化することは考慮されていない。それに対して,本稿では,子供をもつ場合ともたない場合,あるいは子供数による女性の就業における違い-生涯所得格差や賃金格差-をモデルに取り入れている。なぜなら,日本では出産を機に退職する女性は依然多く,たとえ再就職してもその条件は悪いため,出産が生涯所得や賃金に与える影響はきわめて大きいからである。少子化の分析において,これらの影響を考慮することは不可欠である。本稿のモデルは,基本的にはベッカーなどに従うものの,上述の設定により子供のコストが従来のモデルとは異なる。このことは,予算制約の形に影響を与え,本稿のモデルでは子供をもたない選択をするケースが導出される。さらに,このケースが成立する可能性は,出産による損失所得や賃金低下の程度が大きくなるほど,高くなる。
  • 増田 幹人
    原稿種別: 本文
    2006 年 38 巻 p. 57-72
    発行日: 2006/05/31
    公開日: 2017/09/12
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,多くの要因からなるモデルを連立方程式体系として組み立て,要因相互間の影響の程度を見るとともに,そこから日本における将来の合計特殊出生率(以下TFR)のシミュレーションを行うことである。本研究の特色としては,第2子以上の出生率も考慮に入れたことと,現在問題とされているフリーターの増加が結婚を遅らす効果を考慮に入れるため,女子パートアルバイト就業率を変数に組み入れたことである。推定はOLSを用い,将来シミュレーションは点推定で行った。推定の結果,機会費用を表す女子賃金の係数および有意水準は第1子より第2子以上の方が強く,第2子以上の方が機会費用が強いことが示された。また,女子パートアルバイト就業率と女子初婚率との間には予想通り負の相関が見出された。将来シミュレーションについては2019年まで行い,6通りのシナリオを用意した。その内最も高いケースは2019年に1.34となり,最も低いケースは0.82となった。前者は,保育所定員数が年率2%で増加し,GDPが年率1%で増加するケースであり,後者は保育所定員数が2003年以降変わらず,GDPが年率2%で増加するケースである。経済環境の改善には,女子賃金の増加を通じて出生率を低める負の効果と,女子パートアルバイト就業率の低下,そして女子初婚率の上昇を通じて出生率を高める正の効果があるが,前者が後者を上回っていた。しかしながら,政策によって保育所定員を増加させるというような育児支援を充実させ,機会費用を除去するように努めれば,女子賃金と出生との負の関係がある程度まで改善され,正の効果が大きくなることが示唆される。
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