人口学研究
Online ISSN : 2424-2489
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44 巻
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表紙・目次
論文
  • 是川 夕
    原稿種別: 本文
    2009 年 44 巻 p. 1-17
    発行日: 2009/05/31
    公開日: 2017/09/12
    ジャーナル フリー
    在日外国人は,戦後の一時期を除けば継続的に増加しており,特に1980年代後半のバブル経済期に大幅に増加した。在日外国人は,特定地域への集住の観点から論じられてきた。その結果,日本における外国人研究は,おもに都市,地域社会学によって,東京の新宿,池袋,そして静岡県浜松市といった個々のエスニック・コミュニティに焦点を絞って行われてきた。それとは対照的に,外国人の特定地域への集住現象,とりわけ外国人の住み分けについて定量的な観点から行われた研究は非常に少ない。一方,最近では,外国人の定住化が進むとともに,一部の地域では,外国人住民と日本人住民との摩擦が見られ始めているといった状況を反映して,定量的な観点から外国人の住み分けについて分析することの必要性が高まっていると言えよう。本稿では,外国人と日本人の住み分けの程度を算出するため,全国の自治体から外国人比率の高い上位10%を抽出し,それぞれについて国勢調査小地域集計に基づき,非類似性指数を求めた。この結果に基づき,重回帰モデルを用いて,外国人の住み分けを促進・抑制する要因を明らかにした。このモデルは,自治体ごとに,国籍構成などの外国人口の属性,及び,自治体の人口規模や産業構造などを含む,都市生態理論に基づいたものである。その結果,日本における外国人の住み分けは,自治体ごとに大きくことなることが示され,各自治体の外国人の住み分けの実態を反映したものであることが明らかになった。さらに,重回帰分析による推定結果からは,日本における外国人の住み分けが,欧米における事例とは異なり,大都市インナーエリアではなく,地方の工業地帯において見られることが示された。また,国籍別ではブラジル国籍人口の増加が住み分けの促進に正の影響を,フィリピン国籍女性の増加が,住み分けを抑制する効果を持つことが明らかになった。ブラジル人の多くは日系人であることから「デカセギ」労働者として社宅などにまとまって居住する,「顔の見えない定住化」現象が現れたものといえるだろう。また,フィリピン国籍女性の増加が住み分けを抑制する効果を持つことは,フィリピン人女性の多くが日本人と結婚して在留しており,住み分けにつながりにくい構造を持っていることに起因すると思われる。以上のことから,在日外国人の住み分けについて,これまで定性的研究によって明らかにされて来たことが,定量的な観点から支持されたといえるだろう。また,このことは,日本が,移民受入れ国家として,外国人の社会統合について対処しなくてはならない歴史的段階に達していることを示唆するだろう。
  • 村越 一哲
    原稿種別: 本文
    2009 年 44 巻 p. 19-32
    発行日: 2009/05/31
    公開日: 2017/09/12
    ジャーナル フリー
    旗本の出生力を分析したヤマムラ(1976)は,徳川幕府が開かれて以降200年の間に旗本一人あたりの平均子ども数が著しく低下したと主張している。そしてその原因は,実質所得一定のもとで消費欲求が増大したことから生じた経済的困窮に旗本が直面したことと,階層間移動の減少により所得の増加が見込めず次三男への分知の困難さが増したことにあると説明している(「経済的困窮仮説」と呼ぶ)。この研究の問題点は,適切な方法によって旗本の出生力が求められているとは言いがたいという点である。そこで,本稿は,旗本の出生力を推計し直し,その意味するところを明確にすることを第一の目的とし,推計された出生力が上述の考え方によって説明できるか検討することを第二の目的とした。まず史料として用いる「寛政重修諸家譜」の編纂過程を概観し,そこから標本を抽出する手続きについて説明した。つぎに旗本当主のもうけた男子から,記載漏れの可能性が高い,成人するまえに死亡したと考えられる男子を除いて,旗本当主一人あたりの平均成人男子数を求めた。推計された平均成人男子数は17世紀の間に大幅に低下したが18世紀にはそれほど変化せず,その傾向は19世紀前半まで続いた。そしてその動きは大名家臣のものとほとんど同じであった。また低下後の出生力は旗本の人口を単純再生産する水準以上にあったと推測した。さらに,17世紀における出生力の低下は「経済的困窮仮説」によって説明されないことを示した。そのうえで,17世紀前半まで高かった次三男の召出可能性が世紀後半以降低下してゆき,子どもを多くもうけても彼らに武士社会のなかで生きてゆくことを保証できなくなったことが出生力低下の原因である,という「社会的制約仮説」が旗本にも適用可能であると結論した。
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