人口学研究
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50 巻
選択された号の論文の60件中1~50を表示しています
表紙・目次
会長講演
論文
  • ランツィエリ ジャンパオロ
    原稿種別: 本文
    2014 年 50 巻 p. 7-28
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2017/09/12
    ジャーナル フリー
    本論文は,少子高齢化社会における様々な地域の共通点と相違点に着目し,欧州各国との比較という観点から日本の過去から将来にかけての人口動向を明らかにするものである。今後予測される人口減少と高齢化に対処するための二つの人口の選択肢(出生力の回復と移民の受け入れ)の役割と影響力を1960年から2060年における人口動向の観察と形式人口学的分析により検証した。日本は40年にわたる人口置換水準以下の出生率に加えて大幅な移民の受け入れがない場合の帰結を長きにわたり受け入れることになる。これは,近年,欧州地域の人口増加において移民が,最大とは言えないまでも,重要な要素となった欧州との違いをもたらしている。確かに,出生率の回復は日本の人口減少と高齢化の影響を緩和するものの,それが人口減少と高齢化を回避させるわけではない。実際,現在の人口構造は,たとえ突然のベビーブームにより出生率が人口置換水準にまで回復し,死亡率の改善がまったくなくなったとしても,現在の過程がしばらく続くことになる。いくつかの欧州の国では,今後の移民動向に依存して人口増加が続く,あるいは減少が緩やかになることが期待されるが,人口減少がすでに始まっており今後より加速的になると見られる日本では状況が異なる。人口高齢化については,欧州のすべての国で予測されているものの,その水準は日本で推計されているものより(はるかに)低い。人口構造と高齢化の水準は,日本と欧州の人口の経路の乖離をもたらす両者の違いにおける実質的な要素と言えるであろう。
  • 永瀬 伸子
    原稿種別: 本文
    2014 年 50 巻 p. 29-53
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2017/09/12
    ジャーナル フリー
    本稿は短時間オプションの義務化(3歳未満児のいる雇用者に1日原則6時間勤務の選択肢を提供すること)が,第1子出産,無子者の出産意欲,および第1子出産後の就業継続に与える効果を厚生労働省『21世紀成年者縦断調査』2002-2010を用いて計測した。法施行が101人以上企業に先行し義務化されたことを利用し,これ未満の企業勤務者との差の変化を測定したところ,政策実施企業において,法施行直後に,線形確率固定効果モデルを用いた推計において,第1子出産ハザードと出産意欲の上昇がそれぞれ有意に見出された。正社員の時間の自由度を拡大する政策は,大卒女性を中心に第1子出産確率を高め,無子者の出産意欲を高める効果を持つことが明らかとなった。他方,第1子出産後の就業継続のプロビット分析からは短時間オプションの有意な効果はみられなかったが,2007年以降就業継続確率の有意な上昇が見出された。2007年と2010年に育児休業給付が拡充されていることが背景にあるだろう。ただしこうした政策の対象となる正社員は,出産年齢にある無配偶女性の半数をしめるに過ぎない。非正規雇用者に対する保護の拡充がなされない限り保護の厚い正社員の女性の採用が削減されることが懸念される。さらに35-36歳の正社員女性や契約社員女性の無子割合は5割を超えているが,出産意欲は比較的高い。出産意欲が実現できる非正規雇用者を含めた雇用環境や保育環境の一層の整備が望まれる。
  • 茂木 暁
    原稿種別: 本文
    2014 年 50 巻 p. 55-74
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2017/09/12
    ジャーナル フリー
    本稿は,日本女性の結婚への移行について,夫婦がどのようにして出会ったかという「出会い方」の違いに注目しながら分析する。従来の研究では,移行元として未婚という状態から,移行先として既婚という状態への単一の移行を分析対象とする移行像(単一移行)を想定し,移行が起こりやすい年齢と,移行の発生に影響する要因(規定要因)について分析してきた。これに対して本稿では,夫婦の出会い方(以下,「出会い方」)の違いに対応して,移行が起こりやすい年齢と規定要因とが異なる可能性について検証する。具体的には,「仕事・職場」,「友人紹介」,「学校」,「インターネット・携帯」,そして「その他」という5種類の「出会い方」を想定した上で,「出会い方」別の結婚を,競合リスク事象として取り扱い,それぞれの結婚への移行ハザード率を,年齢と,初職属性や学歴などの規定要因によって説明するモデルの推定を行う。『働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査』を利用した分析の結果,上記の可能性を支持する実証結果を得た。第一に,年齢の違いについて,「学校」は,移行が起こりやすい年齢区間が他の「出会い方」と比べて狭くなること,「インターネット・携帯」は,移行が起こりやすい年齢が他の「出会い方」と比べて高くなるという知見を得た。第二に,規定要因の違いについては,初職属性である雇用形態・企業規模・労働時間の3つが「仕事・職場」という「出会い方」での結婚への移行に対してのみ影響するという結果を得た。また,学歴の高さについては,「仕事・職場」や「友人紹介」での結婚を抑制するという結果を得たが,「学校」という「出会い方」についてのみ結婚を促進することが明らかになった。
研究ノート
  • 趙 彤, 水ノ上 智邦
    原稿種別: 本文
    2014 年 50 巻 p. 75-89
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2017/09/12
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,晩婚化・非婚化問題の原因解明のため,男性の結婚に焦点を当て,男性の結婚経験は雇用形態によりどのような影響を受けているのかについて「就業構造基本調査(平成19年)」(総務省)を用いて実証的に分析することである。本稿では,女性は結婚相手の選択に際し,男性の将来所得を示すシグナルを観察し,それを基に結婚を決定しているという仮説を立てる。男性の将来所得のシグナルとしては,現在の雇用形態(正規雇用,非正規雇用),初職の雇用形態,職業や学歴などが利用されると考えられる。上記仮説を,「就業構造基本調査」の個票データを用いて検証し,男性の結婚経験率に与える要因を分析した。さらに,その要因が年齢階級によってどのように変容するのかを分析している。分析結果から得られた知見は次の通りである。第1に,将来所得のシグナルである雇用形態が,全年齢階級にわたって男性の結婚経験に影響を与える。具体的には非正規雇用と非就業であることが結婚経験率を低下させる。第2に,初職の雇用形態が非正規であったことは,それ以前の世代とは異なり,バブル崩壊以後に大学を卒業した世代に対して結婚経験の確率を低下させた可能性がある。第3に,学歴は20代から30代においては将来所得のシグナルとして有効ではなく,むしろ高学歴であることは若年層において結婚のタイミングを遅らせる効果を持つことが明らかになった。
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